東方風祝録   作:井戸ノイア

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多少強引かもしれません。
それと、独自解釈を含みます。ご注意を。


神力と奇跡

「たっだいま戻りましたー」

 

 そう言って神社の中に入っていく。神奈子様と諏訪子様は居間でコタツに入ってテレビを見ていた。テレビは一昔前のもので、昼間なので番組もあまりいいものが無いらしく暇そうにしている。ちなみにコタツはいつも梅雨の辺りまで出ている。

 

「ご飯作りますねー」

「あ、今日は作っておいたよ」

 

 どうやら神奈子様がお昼ご飯を作ってくれたらしい。今から作り始めると若干遅くなりそうだったので嬉しい心遣いだ。

 神奈子様が作ったお昼ご飯をコタツへ持っていく。テレビは相変わらず付いたままだ。どうせ誰も見ていないがなんとなく付いている。食事をし終えると神奈子様が話しかけてきた。

 

「うーん、やっぱり持っているな」

「何がですか?」

「あー、いや早苗がちょっと前から神力を持ち始めたなーと思ってね」

 

 神力?私が持っているのは霊力だけのはずだ。神力が神様、霊力が人間、妖力が妖怪という具合にそれぞれが違う力を一つづつ持っているはずだ。

 

「どういう意味なんですか?」

「まあ簡単に言うと早苗も神様の仲間入り、現人神になったって感じかな」

 

 そうして神奈子様の説明が始まった。神力というのは他の二つの力と違って少し特別な力らしい。他の二つの力が自身の持つ力なのに対して神力というのは他人からの信仰によって発生する力らしい。つまり、信仰さえあれば人間でも妖怪でも持つことができる力ということだ。

 

「でも、何で私に?」

「そりゃあ、小さいころからここに住んでいるからだろうな。普通の人には私たちは見えないから幼い子が一人で神社に住んでいるように見えて、そんな小さい子が一人で生きていけるはずがないという考えから神の使いみたいな存在に思われてたんじゃないか?」

 

 言われてみればそんなこともあるかもしれない。母は小さい頃に亡くなったし、父は見たこともない。ずっと神奈子様と諏訪子様と私の三人で暮らしてきたのだ。普通の人には二人は見えないので数歳の子供が一人で暮らしているように見えたのだろう。そんな子を見たら私だって神様の使いか何かと考えるかもしれない。

 

「確かにそういう可能性もあるかもしれませんね。でも、何でそれを今?」

 

 先ほどやっぱりと言ったということはだいぶ前から持っていることはなんとなく分かっていたはずだ。ならば、確認も兼ねてその時に言えばいいのに今いうということは何かがあるはずだ。

 

「いや、前話した私と諏訪子の能力、乾を創造する程度の能力、坤を創造する程度の能力のことを話しただろ?たぶん今くらい神力を持っていれば早苗も似た様なことができるはずだ」

 

 最初に気づいた時は量が足りなかったってことか。

 

「歴代の風祝(かぜほうり)で神力を持った子達は皆、奇跡を起こせるようになっていたよ。たぶん早苗も神力さえ使えるようになれば起こせるはずだと思ってね」

 

 奇跡か……すごそうだ。それに最近、霊力の修行も慣れてきて時間が余るようになっていた。タイミングがいい。

 

「ぜひ教えてください!」

「よし、裏に行くか」

「はい!」

 

 私たちは神社の裏側に移動する。諏訪子様は話しを聞いていただけで特に何も無かったが付いてきた。ここは一般人は入れないし、なかなか広い。大きめの湖があるからだ。空を飛べる私たちには湖の上も広さのうちに入る。

 

「それじゃあ始めようか、と言っても霊力と同じようなやり方だけどな」

 

 そう言って神奈子様は手を出してきた。

 

「私が神力を流すから同じような力を見つけるんだ」

 

 手を取ると神力と思われる力が流れてきた。霊力よりだいぶ濃く、強い力だ。私は霊力を見つけた時のように集中する。見つけるべき力の感覚は分かっているのでだいぶ楽だ。そこまで苦労せずに見つけることができた。

 それを身体の全身に満遍なく行き渡らせる。身体が温かくなってきた。

 

「そこまで使えればもう大丈夫だろ」

 

 神奈子様が言って私は目を開ける。心の中でそよ風をイメージしながら神力を使うと実際にそよ風が吹いた。これが奇跡の力か。

 

「おお、もう使いこなしてる」

 

 諏訪子様が驚く。教えてもらって十数分で使えるようになったというのは自分でも驚いている。

 

「今みたいな簡単な奇跡なら一言で起こせるが、もっと大規模なのを起こそうとすると長い詠唱が必要だから気をつけてね」

「大規模というと……嵐とかですか?」

「そんなもんじゃないよ、起こそうと思えば天変地異だって起こせるね」

 

 ただ、数日かけての詠唱がいるけどねと諏訪子様は笑う。まあどのみちそんな大災害を起こすつもりはないから問題ない。しかし、良い能力だな。授業中暑い時に風を吹かしたり、面倒な体育の授業などを雨で中止にできるではないか。そんなことを思っていると神奈子様に叩かれた。

 

「しょうもない使い方はしないように」

 

 ばれていたらしい。確かにしょうもないので使うのは控えようと思った。

 

「早苗も神力を使えるようになったし三人で撃ち合いでもするか?」

「いいですねー」

「それじゃあやろっか」

 

 修行のための霊力弾、神力弾の撃ち合いだ。特にルールは無いが最初に当たった人から抜けていく。

 

「私、新しく技作ったんですよ!」

「ほう、見せてもらおうじゃないか」

「行きますよ!奇跡『ミラクルフルーツ』!!」

 

 

    場の空気が固まった。

 

 

 

 その後、復活した神奈子様と諏訪子様にその名前だけはやめろと言われた。良い名前だと思ったのに……




最後の撃ち合いは弾幕ごっこと似て非なるものです。
簡単に言うとボム無限の弾幕ごっこです。スペルカードはありませんが。

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