UBWは感動的でした。桜ちゃんかわいい。
アーチャーとランサーの戦闘シーンの白熱ぶりもさることながら、凛が髪をおろすと葵さんに似ていたり、サーヴァントとの接し方が時臣と異なったりとzeroファンも嬉しい演出でしたね。桜ちゃんかわいい。
冬木の虎も美人でした。桜ちゃんかわいい。
テレビ放送でもニコニコ動画でも見れないなら、Blu-rayかDVDを買えばいいじゃない。桜ちゃんかわいい。
さて、今回で六回戦は完結となります。
やはり修羅場となるとラブコメ臭くなり雰囲気ぶち壊しになるので、そちらはCCCにて。
二兎追うものは一兎も得ずと言いますし、私の技量ではそこまでバランス取れません。
apocryphaとは違うセミラミス様をお楽しみいただければそれで作者は幸せです。
六回戦最終日の朝。寝ぼけながらセミラミスと美沙夜の不仲に首をかしげていた俺は、不意にかつて自ら命を絶った少女の言葉を思い出した。
――無神経だからこそ、キミは面白いんだよ
人を実験用のモルモットか何かみたいに見つめながら、ソイツは俺に微笑んだ。誰も彼も小馬鹿にした皮肉な笑みを―年中口の端を吊り上げた厭な表情でだ。
思い返すだけでハラワタが煮えくり返る。
苛立ちながら上体を起こす。
不愉快さのあまりに覚醒した脳が網膜の映像を正確に受け取る。身体は雲のように柔らかで白い布団の上、上を見てみると豪華な極彩色の彫刻が施された天蓋。
「……むぅ、若いくせに朝が早いのぅ……」
鼓膜から脳髄へと染み渡る糖蜜の声。
発信者は俺より低い位置にいるらしい。誰だと思い下を向いて、硬直した。
「本当にそなたは人間か? まさかとは思うが……機械仕掛けではあるまいな?」
いつもの淫蕩な笑みなど気配を微塵も感じさせない微睡んだ表情のセミラミスが、重い目蓋をこすりながらゆっくりと起き上がる。
「失礼な。俺はれっきとした人間だ。顔色はアレだが、赤い血も流れている」
「血も涙もない卑劣の輩が言いよるわ……」
間の抜けた欠伸をするセミラミスは口元を手で覆い隠す。その拍子に身体を包んでいたシーツがはらりと落ちた。
シーツが失われ、女帝の肢体を包むものがなくなったことで露になる素肌が眩しい。肩から腰、脚にかけての滑らかな曲線と無防備なポーズは今までにない姿だ。
朝陽を浴びて煌めく見事な黒髪が無造作に垂れ、純白の素肌にコントラストを添える。
ひんやりと心地好い冷たさがこちらの手に伝わるのは、細く優美なセミラミスの指が俺の長く痩せた指と絡まっているからか。触れ心地のいい彼女の手にいつまでも包まれていたいと思うのは仕方がない。
端的に言えば、全裸のセミラミスが俺と手を繋いだ状態のまま隣で寝ていた。
「……おい。どうしたと言うのじゃ我が主よ?」
セミラミスは、状況を把握した結果さらなる混乱に叩き落とされ、結果的に処理停止へ陥った俺の両肩を掴み前後させる。その動きに遅れて彼女の豊満な胸元の双丘も大きく揺れ、視覚の暴力は激しさを増した。
「死んだのではあるまいな? 死人なのは顔色だけでよいのだぞ?」
無礼千万な身の案じ方だが、思考が停止した俺は言葉が出なかった。
目が覚めたら自分のサーヴァントが全裸で隣で寝ていたのだ。混乱しない方がどうかしている。
――いや待て。俺は普段、部屋のすみにある敷き布団で寝ているはずだ。それがどうしてセミラミスのベッドで目覚めた?
ふとした疑問が喝となり、停止していた思考が再び動き出す。
「――………おい、なんでお前、全裸なんだよ」
「我は床につくときはいつもこうしておる。これでは不満か?」
「俺が何かする可能性を考えなかったのか?」
男をかどわかすのはセミラミスにとって手慣れたものだろう。しかし、自分のマスターが安全だという保証はない。俺はセミラミスの不用心さを諌めようとしたが、返ってきたのは――
「構わんぞ。契約したときから、そなたが我を求めれば応じてやるつもりであった」
こちらの予想を覆した。
見よ。この堂々とした皇帝の威厳に満ちた顔を。
いつも浮かべていた嘲りや不吉な微笑みとは全く逆の、力強い表情だ。
「そなたが自身をどう評価しているか知らぬがな、我はムーンセルめがそなたのサーヴァントとして遣わした時から、ずっとそなたを信じておったぞ」
闇も影もない純粋な言葉だった。
いつも愉悦に満ち堤ていた黄金の双眸が、真っ直ぐに俺の黒々とした瞳を見つめている。
「やはり、こればかりはそなたにも見通せなんだようじゃな。しかし考えてもみるがよい。我は夫婦の契りを交わした男を翌日に殺めた女よ。信じておらねば、ここまでつき従うものか」
また俺は言葉が出なかった。
頭が真っ白になるというのは、もしかしたらこんな感覚なのだろうか。
指摘されると、なるほどである。万事において俺よりずっと優れているはずのセミラミスは、重要な場面で常にマスターである俺に指示を求めていた。
こんな取り柄のない人間にだ。本気で信じていなければ出来ない行為ではないか。
――ああ、確かに俺は無神経だった。
――ふと、あの少女が見せた妙な笑み思い出した。
嫌みも皮肉もない、俺にとって未知の笑みだ。
「……ありがとう、セミラミス」
これだけは言わなければ。そんな気がした。
人格難で陰険で姑息な俺のような人間にここまで律儀なサーヴァントはあまりにも惜しい。不釣り合い過ぎる。
とにかく、彼女は最高のサーヴァントだ。
それだけは断言できる。
「礼などいらぬ。アサシンの英霊でここまで勝ち進んだそなたには感服しておるくらいじゃ」
「感服するのはまだ先だ。……なぁセミラミス、こんな俺でよければ最後までついて来てくれるか?」
残る七回戦。打ち倒すべき最後の敵は取るに足らない程度の力しか持たないが、それでも油断することは許されない。
最善の一手を着実に打ち、慎重に事を運び、幾重にも罠を張り巡らせる必要がある。そのためには俺だけではだめだ。サーヴァントの、セミラミスの力なくしてはどうにもならない。
「我は求められればいくらでも応じるが……よ、よいのか?」
悪いはずがあろうか。
戸惑いの顔で目をそらすセミラミスに、俺は――
「セミラミス、俺にはお前しかいない。これまで一緒だったんだ。これからも一緒に来てくれ」
彼女の手に、自分の意思で触れた。恐らく、聖杯戦争が開催されてから初めて。
掌に伝わるひんやりとした肌の感触を確かめながら、見開かれた魔性の瞳をみつめて頼んだ。
「う、うむ……。その、なんだ。よもや時の果てでその顔から同じ台詞をぶつけられるとはのう……」
セミラミスは何か静かに呟き、次の瞬間には視界がぐにゃりと歪んだ。後頭部が枕に受け止められ、天蓋を背景にセミラミスの美貌が間近にあった。
見ているこっちが恥ずかしくなるほど可憐な
「不肖の身だが、よろしく頼むぞ。マスター」
▽
▽
▽
荒廃した闘技場の真ん中で、岸波白野とレオナルド・ビスタリオ・ハーウェイは向き合っていた。
白野の隣には紅蓮の剣を携えたローマ最高の美しさを誇る皇帝、レオの傍らには太陽の聖剣を担う騎士王の忠臣がいる。
聖杯戦争六回戦で敗退したレオが、岸波白野へと語りかける。
「……体に、力が入らない。不可解です……心臓を貫かれたのに、欠けた穴を埋められたような気がする……」
敗者を消し去るノイズに蝕まれ、手足の先から色を失っていくレオは顔は晴れやかだった。
「そう、か……信じられないと思ったこと、敗北を想像しなかったのが……僕の限界だったのですね」
決戦前に薔薇のセイバーが指摘した、レオに足りないもの。レオはようやくそれが何か気づき自嘲を漏らしながら、哀しげに俯く。
「勝利しか知らず、敗北の先にある感情を学ばなかった。それが無欠ではなく恐れを知らないことだと――そんな当たり前の心が、僕には無かったのですね」
周囲から完璧を望まれ、周囲から完全な形に調えられて完成したが故に不足だった。
誰にも教えられなかった敗北を我が身で受け止めたレオは、死を迎えながらも喜びを噛み締めていた。王としてではなく、人として、達成することの喜びだ。
「不条理と、不合理への反発……“もう一度”“次こそは”ですか。……うん、難しいですが、これはいい感情だ」
少年王が踏み出した一歩は、恐らく彼の生涯で最も大きな一歩となったことだろう。しかし、その道はここで途絶える。
たとえ完全な王であろうとムーンセルに慈悲はない。聖杯戦争の敗者として、粛々とレオを削除するだけだ。
「諦めないことがこんなにも、強い力になる……。凄く、勉強になりました」
死への恐怖、生への執着、そして悔しさ。それらを最期の時まで知らなかったことをレオは自ら皮肉る。
「はは――本当に、愚かです。そんな人間に、人々を導ける筈もなかったのに」
それでも白銀の従者は無言を貫く。
自分へと向いた主に、残り僅かな余力を振り絞りながら向き直る。
太陽の如く輝いていた鎧にはあちこちに傷が入っていた。赤いセイバーとの打ち合いで負った傷も、或いは決着の要因だったのかもしれない。
「ガウェイン。貴方は、知っていたのですね。真の王となる為に、足りないものが何であるかを」
「レオ――王よ、私は……」
ガウェインの言葉を、全て分かっていると首を横に振ってレオは封殺する。
「分かっています、ガウェイン。敗北が必要であっても、僕を勝利させるために全力で忠義を尽くしてくれた。いつか、僕が敗北する時のために」
彼の忠義の証であった
太陽の威光を秘めた聖剣は輝きを失い、消え行く星の残滓のように消滅していった。
ガウェインはそれに目もくれず、レオは聖剣の最期を傍目で看取ってから、言葉を続ける。
「貴方は敗北の時が必ず来ると知った上で、僕の成長に付き添ってくれた。あまりに非合理的な生き方ですが――」
ガウェインにとって最上であろう微笑みで、レオは静かに、そして心を籠めて告げた。
「礼を言います――ありがとう、ガウェイン。僕の剣であってくれて」
ひたすらに黙して受けるセイバーは決して臣下の礼を崩さず、レオに次の言葉を促しているように見えた。
王と従者という、完全に主従関係を決定付けられた身でありながら、今のセイバーは子の成長を採点している親のように見える。
「貴方でなければ、僕は気付けなかった。この敗北を、ただ偶然と見なして無情に切り捨てていただけでしょう」
「――いいえ、王よ。貴方ならばどのような敗北であれ、受け入れたでしょう。私は騎士として剣を捧げたまで。貴方の成長は貴方によるものです」
「――――」
そんな、当然といった物言いを聞いて、レオの表情に変化が表れる。
これまでの彼ならば絶対に見せないであろう、驚嘆の表情でセイバーの言葉を受け止めた。
「ですが、今はその成長に立ち会えた事を光栄に思います。貴方は真実――誉れある王だった」
セイバーは瞳を閉じて語る。
その目蓋の裏には何が映っていたのか。レオという王に仕えた戦いの日々であったかもしれない。
一言一句に重さを乗せながら全てを言い切って、目を瞑ったまま、もう一騎のサーヴァント・セイバー、誉れ高き円卓の騎士サー・ガウェインは消え去った。
敗北の言い訳も命乞いも、辞世の句もないまま―最期まで王に付き従い、一振りの剣となる事に徹した完全なる理想の騎士として。
彼は全力で戦い、己が全てをレオに捧げた。生前に抱いた、自分の浅慮な行いが
そこに、恥じ入るものなど欠片もない。
忠義に殉じた従者の跡を暫く見つめ、レオは白野に振り返る。
「……レオ」
白野は思わず、目前の少年の名前を漏らした。
騎士が遺した言葉を聞き届けた王の目からは、彼らしからぬ、しかしながら、年相応の一筋の涙が流れていた。
「恐怖も絶望もありますが……貴方には他に伝えるべきことがあります。まずは、白野さん。貴方に最大の賛辞と感謝を。そして、去り逝く者として贈り物を」
壁の隙間から差し出されたレオ手には、一つのデータファイルが乗っていた。
「貴方を待ち構えるのは真の狂気です。心を持たず、心を解さず、心を拒否するヒトの形をした魔物……。『彼』はそういう存在です。どうか、貴方に勝利あらんことを」
白野は一つ頷き、レオからファイルを受け取った。
「貴方は僕が持っていなかったもの、『彼』が持たないものを全て持っている。それは僕からの餞別です……。貴方なら、その光で闇を払えるでしょう」
「……俺はそんな大した人間じゃない。王だとか英雄だとかは、君の方がよく似合う」
どこまでも頑固な白野の言い様にレオは苦笑する。
「やはり貴方に敗北するのは必然でした。その頑固さも、人の強さなのだから」
レオは儚げに、しかしこれまで何度も見てきた笑みを白野へ向ける。
羽を得たカゲロウのように、極僅かな羽ばたく時間を、彼は笑って終える。
「この敗北は僕の王道に必要なものだった。それを活かせないのがただ、残念ですが……“また”があるのなら……きっと……」
そんな、あまりにも矮小な、しかしてありえない希望を呟きながら、レオは消えた。
影も形も残さずに――これまで破れ去っていった全てのマスターと同じく、黒いノイズとなって消えた。
勝利を約束された王の死とは思えないほどに儚く
「セイバー、俺は……レオに勝ったんだな」
実感の伴わない事実を受け確かめるため、慣れない虚無感を受け入れるために白野は唇を震わせた。
「そうだ。そなたが勝ったのだ、奏者よ」
「俺が、七回戦に……」
「うむ。そなたが勝ち進むのだ」
沈みゆく夕陽はどこまでも紅く、立ち尽くす白野とセイバーを容赦なく照らしていた。
聖杯戦争六回戦、勝者――岸波白野及び南方周。
狂いだした歯車を眺めながら、無人となった
全てを見通すラプラスの悪魔が、物語の結末を見定めた瞬間だった。
セミ様&シロウとの差別化を狙いつつ、apocryphaであまり語られていない愛妻の一面を押し出してみたらこうなりました。
周死ね。ついでに誠死ね。
白野はレオから何か受け取り、周はセミ様となんだかいい感じになって次回は七回戦。
最弱のマスターと最低のマスターが決着をつける最終章までさようなら。
感想も評価も堂々と学校に結界を張るくらいの感覚でどうぞ。お待ちしております。