Fate/EXTRA SSS   作:ぱらさいと

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 Fate/prototype蒼銀のフラグメンツのライダーさんが私のストライクゾーンド直球でした。
 超火力の移動用宝具に神獣、おまけに固有結界クラスの巨大な複合神殿まで持っていてしかも全部が彼だけの持ち物ですからねえ。
 うーん、これはCCCやるとしてら征服王リストラの可能性が大気中の窒素含有率レベルで存在してますね……。
 後は美紗夜のお父さんが契約したキャスターとかも楽しそうですねえ~。 でもこの人出すならアヴィケブロン先生でもいいような気がしてます。


狩猟ゲーム:決意

 アタランテがエリザベート目掛けて高速で突撃、弓を構える。手すりを足場にしてジャンプし、滞空時の隙を鋭い三連射で埋めた。

 歪な槍を振るい神速の矢を弾くエリザベートだが、俺の左右を駆け抜けたセイバーたちによる三連続の斬撃はさばききれないと判断し、ドラゴンの羽を展開して空中で回避する。

 黒い靄に包まれた謎の戦士(ランスロット)重厚な甲冑で素顔を隠した騎士(モードレッド)胸元と背中を晒した灰色長髪の剣士(ジークフリート)が空中に逃げたエリザベートとランルーを見上げる。

「コンサートは静かに聞くものって知らないの!? ああもう、また頭痛がするじゃない!!」

「ケッ。音痴が何言ってやがる。音程もクソもねぇのに歌姫気取ってんじゃねえよハネトカゲ」

 頭を掻きむしるエリザベートにモードレッドが噛みつく。ジークフリートも無言で首肯していた。どうやら二人は過去にあの超音痴攻撃を受けていたらしく、声と表情だけでも相当に苛立っているのが分かった。

 そりゃあアレを美声と勘違いするのは人類にもう一人いれば十分だろう。そうでなければ地球が滅ぶ。

 体育館に二十体、校舎に四十体、弓道場に十体、美沙夜の護衛に十体割り当てたハサンたちも、音痴のコンサートに対しては困惑ぎみである。 セミラミスも気配遮断したままではあるが、不快げだ。

『あの駄竜をどうするつもりだ。怪物退治は英雄の職務と捨ておく訳にもいかんぞ』

『エリザベートは無視してランルーを仕留める。今は眺めているだけでいいさ』

『そなたが言うならば従おう。我はサーヴァントであり、そなたはマスターであるからな』

 セミラミスに待機を指示したのは、この場で動けば多くのマスターの目に留まってしまうからである。

 無論のこと、俺はそれを良しとしない。

 見たところエリザベートが圧されているが、セイバートリオはモードレッドが突出しすぎているせいで連携が取れていない。二本も魔剣が揃っていながら、実にだらしない。(ランスロットは宝具簒奪宝具『騎士は徒手にして死せず(ナイト・オブ・オーナー)』で適当なクルタナを代用している)

 そのせいでアタランテも手を出せない状況に陥っている。さて、先程からしきりに声を張り上げているモブマスターがモードレッドとジークフリートの主人と見て良さそうだが、いつ処分するか。

 エリザベートの苦戦とセイバートリオの混乱を眺めながら思索していると、聞き覚えのある野太い男の声が響いた。

「お主もこのゲームに参加するか! 既知がおるとは心強いのう!!」

 髪から肌から衣服に至るまで白で統一された少年の傍らにそびえ立つ、巌のような赤――。新しいおもちゃに瞳を輝かせる子供と同じ目をした巨漢は誰あろう征服王イスカンダルその人だった。

 俺の不快感と警戒心の上昇に応じてセミラミスも闇色の姿を見せた。鼻孔から脳へと染み込む甘い香りが辺りに立ち込める。

「征服王よ、同盟を望むなら相応の態度を取ることだ。主が認めようと、我が頷かねば共闘は成らぬのだからな」

「そうは言うてもなぁ、あ奴らだけに見せ場をくれてやるというわけにもいかんであろう?」

「確かにエリザベートを他人が仕留めるのはマズい。だがお前らに手を貸すつもりもない」

 ライダーの言い分は正しいが、それだけで手を取り合う理由になるかと言えば、否である。早い者勝ちのゲームで共闘などアホのやることだ。

 提案を拒絶された征服王は、こうなると分かっていたかのように力なくため息をついた。伊勢三は悲しそうな目で微笑んでいる。

「そうとあらば余も全力であの竜娘を狩るだけだ! さあ行くぞ伊勢三よ!!」

 征服王の大音声を無視して階下に目を向けると、ランルーを抱いたまま屋根を突き抜けてエリザベートが逃走した瞬間であった。ネロの乱入が決定打となったらしい。

 一方、全体の七割近いマスターは参加するつもりがないらしく、その場に留まっている。エリザベートの追跡を始めたのは白野とネロ、モードレッド、ジークフリートの他には沙条綾香とランスロット、伊勢三とイスカンダルだ。

 全員の姿が消えてから、念話で体育館に潜ませたハサンたちに指示を送る。

『俺が体育館を出たら、そこの剃り込みヘアと金髪ボブカットを始末しろ。校舎組は一分後にトラップを起動だ。この二組は完了後、直ちに霊体化すること』

 直ぐ様ハサンから了解の応答が返ってきた。

 少しばかり予定外の接触があったことを忌々しく思いつつ、転移先を校舎一階に指定し、承諾ボタンを押す。

 

 さあ、お前らに教えてやろう。

 聖杯戦争の真の有り様、遺伝子の一片にまで刻み込んで死んでも忘れられなくしてやる。

 

 それまでの有りとあらゆる感情が内で蠢いている。

 生存競争なんて生易しいもので済ませるつもりは毛頭ない――何故なら、ここからは講義の時間である。

 

 

 

 

 レオにエリザベートの逃げ出した先を指摘され、慌てて校舎へ戻る。しかし、下足室の扉を開こうと伸ばした手は、セイバーに阻まれた。

「待て奏者よ。この中は悪意の魔窟と化している。一度踏み入れば肺を毒で満たすことになろう」

 ……あのバーサーカーと毒に犯された状態でまともに戦える自信はない。いや、そうなるとここには彼女たちはいないのがむしろ自然だ。

 あの奇妙なバーサーカーが逃げそうな場所に思い当たりがないか記憶を探っていると、遠くから激しい雷鳴と牛の嘶きが聞こえてきた。どこから音がするのか見渡すと、体育館の上空からこちら目掛けて二頭立ての戦車(チャリオット)が突進してきた――!?

 

「避けよ奏者!!」

 

 セイバーが腕を引いてくれたおかげで、車輪に取り付けられた巨大な鎌で切断されずに済んだ。

「おおスマンスマン、危うく轢き殺すところであったわい」

「スマンで済むか馬鹿者が!」

 御者台で手綱を握る大男が頭をボリボリと掻きながら謝罪する。セイバーの怒りももっともだが、事故か故意かを確かめている場合ではない。 

 大男のマスターらしき少年にバーサーカーを見なかったか聞いてみる。

「彼女は校舎の屋上です。飛行・浮遊能力があるサーヴァントなので外部から侵入できたみたいですね」

 言われてみれば確かに、外部から屋上への転移は不可能だった。校舎三階の中央階段が唯一の出入り口だが、毒ガスがそれをさせようとしない以上、空中から押し入る他にない。

 しかし、あのバーサーカーがどんな宝具を所持しているか分からない以上、迂闊に正面から殴り込むのも危険だ。戦車(チャリオット)ともなれば小回りが利かないだろうし……。

 思考に費やす時間に比例して焦りも募る。徐々に冷静さを失っていく最中に、薄ぼんやりとした新たな気配がした。セイバーとライダーは剣を構え警戒の態勢を取る。

「先程、体育館にて件のバーサーカーとは異なるサーヴァントが暴走いたしました。間もなくこちらに到着すると思われます」 

 声はすれども姿は見えず。アサシンと思わしき何者かの登場で、場の空気が瞬く間に張り詰める。

「姿もろくに見せぬ輩の言葉を信じよと? 貴様も英霊ならばそこまで馬鹿でもあるまいて」

「全くだぞ影法師。よもや臆病風に吹かれたなどと抜かすまいな!」

 ライダーとセイバーの挑発に応じる様子はなく、至って落ち着き払った声は冷ややかに告げる。

「トラキアの叛逆者にどこまで立ち向かえるか、お手並み拝見と参りましょう。ではこれにて」

 それっきり曖昧だった声の主が放つ存在感は消失した。彼の口にした言葉を鵜呑みにはしないが、気になる単語はあった。

 それは皆が同時に呟いた一言――

 

 

『トラキアの叛逆者』

 

 

 ――ただそれだけである。

 

 

 

 

 体育館を出て教会前の噴水広場に潜んでいると、ハサンの一人から報告があった。どうやらエリザベートとは別のバーサーカーが暴走し、アタランテとランスロットが足止めしているらしい。

 どれだけ強いサーヴァントなのかと恐ろしくなったが、よくよく考えてみれば候補なんて限られたもので、容姿を説明させて安心した。アーチャーで奴を潰すならギルガメッシュクラスの火力が必要になる。その点、総合火力が低いアタランテとランスロットなら脅威にはならないだろう。

 陽光を浴びて煌めく芝生が眩しい弓道場には、物陰に隠れて戦況報告に耳を傾ける俺と、退屈そうにしているセミラミスだけしかいない。

 幸い、モードレッドとジークフリートの始末は問題なく完了している。それならばエリザベートをこちらに誘導し、弓道場を吹き飛ばすのも悪くない。屋上に逃げられた以上、もしもの時にハサンたちの隠れる場所がないので仕方ない。

 何よりあそこでは目立つ。階下のサーヴァント連中にハサンと俺の契約が露呈するのは困るのはマズい。

『のう小僧よ、たった今面白い企みを閃いたのだが知りたくはないか?』

 それまで静かにしていたセミラミスが珍しく口を開いた。あどけなさとは無縁の、邪悪に満ち溢れた淫らな笑顔である。

 だが彼女の知恵は確かなものであるため、俺は無言で首肯しておいた。

『なあに、そう畏まるな。そなたの策より稚拙に過ぎる幼子の戯れに等しいものだ』

 然り気無く罵倒されたが事実なので我慢する。

『暴走した叛逆者を皇帝たる我が捕らえ、手駒とするだけのこと。庭園も一応、大神殿としての機能ならば備わっておる。まず何より、あれしきで真名が露呈するものか』

 セミラミスはこの通り全身全霊で慢心しているが、レオやユリウス(ハーウェイ兄弟)や凛とラニたちはすぐにたどり着きそうなものだ。巨大な庭園を築いた女帝がそう何人もいるとは思えない。

 俺のとてつもない不安を読み取ったのか、セミラミスは挑発的に微笑んでいる。

『さてどうする? 時間が過ぎれば他の連中があの道化どもを討ってしまうやもしれんぞ?』

『……まずは下準備だ。手空きのハサンたち五名で沙条綾香の始末をしろ。他はもう一方のバーサーカーと契約しているマスターを見つけて、ここに連れてこい』

 聞いたことを後悔するなんてよくあることだが、これほど悔やまれるのは人生で一度あれば十分だ。

 待機しているハサンたちに新たな指示を与えた俺は珍しく天を仰ぐ。

 ……俺はこの先、他のマスターの影に潜んでいられなくねるだろう。その前に一人でも格上の奴らを潰しておかなければ。

 勝つために手段を選ばないのは戦争の基本だ。その決定に迷う必要性はない。

 

 

 

 ランルーを仕留めれば否が応にも注目が集まるのだし、腹を括る時が来たと思っておこう。




 ジークフリートとモードレッドについては何も言いません。
 色々と話がややこしくなってきた『狩猟(ハンティング)』ですが、まだまだ続きます。

 今回も例のごとく感想&評価募集しております。
 市場でワインを樽ごと奪う程度の気分でよろしくどうぞ、お待ちしております。

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