Fate/EXTRA SSS   作:ぱらさいと

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 この話を読む前に言っておくッ! おれは今、衝撃の事態をほんのちょっぴりだが体験した。

 い……いや……。体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……。



 あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!

「おれは二日もあればお気に入り登録数が一件は上がっている思ったら、いつのまにか倍以上になっていた」

 な……何(・ ・ ・ ・)を言って(・ ・ ・ ・)いるのか(・ ・ ・ ・)わからね(・ ・ ・ ・)ーと思うが(・ ・ ・ ・ ・)俺も何を(・ ・ ・ ・)されたの(・ ・ ・ ・)か分か(・ ・ ・)らなか(・ ・ ・)った……(・ ・ ・ ・)

 頭がどうにかなりそうだった……。
 名作だとか新作タイトルだとか、そんな分かりやすい理由じゃあ断じてねえ。
 もっと不思議なものの片鱗を味わったぜ……。

 (訳)なにこれこわい


第二回戦:紙一重の差

 征服王イスカンダル。日本ではアレクサンダー大王として知られるマケドニアの王だ。

 若くして、強壮なるアケメネス朝ペルシアのダレイオス三世を撃破しシリア・エジプト・ペリシアを征服、バビロンに凱旋するもインド到達を目前に病没する。

 その後はFate/zeroで開かれた王の座談会の席にてアルトリアが指摘した通り、一代で築き上げた大帝国は分裂、混乱の最中に血族は死に絶えてしまうわけだが、征服王の死因については諸説ある。

 一般的には熱病や発作だが、毒殺なんてのもあるので一概に搦め手が通じない相手でもなかったりする。

 ではフランケンシュタインはどうか?

 

 ……ない。これっぽっちもない。

 ここを攻撃すれば倒せる特別な部位だとか、これを使えば殺せる特別なアイテムが存在しないのだ。そもそもあの怪物は本来なら数ヵ月で複数の言語をマスター出来る高度な頭脳を持ち合わせており、頭が悪いというのは後世の創作にすぎない。

 しかも数少ない欠点である容姿も、こちらの世界では聖杯マジックで美少女になったことにより克服している。

 強いて言えば、魔力パラメーターがDランクであることくらいだろうか。

 この貴重な弱点を利用するため、先日はアリーナ探索を断念し、あえてマイルームにこもっていた。

 購買部で準備した薬品をアサシンの道具作成スキルで調合し、古今東西の猛毒を精製していたのだ。古代から多用されていたシアン化合物、トリカブト、マンドラゴラからボルジア家の秘毒カンタレラまで何でもありの複合薬である。

 毒殺者の原典たるセミラミスだからこそ精製可能な猛毒と悪意に満ちた死の濃霧。ロビンフッドの『祈りの弓(イー・バウ)』に着想を得たフィールドトラップだ。

 玉座に身を預けたアサシンは毒で満たされた小瓶を片手に呟く。

「この霧を吸えばいかな天才魔術師も無事では済むまい。なんせ我でさえ浄化薬を作るのに手間取ったのだ。生半に取り除けるようなちゃちな毒ではない」

「炉心はワニ型のエネミーでいいとして、いくつくらい作れそうだ?」

「五つ、急げばその倍は確実に用意できよう」

 流石は大魔術師。俺ではまず精製すらも満足に出来なかった。頼もしいことこの上ないアサシンに感謝しつつ、昨日取り損ねたプライマトリガーを取得するためアリーナへ向かう。

 

 

 

 

 

 アリーナに入ると、エネミーの残骸があちこちに散らばっていた。凄まじい力で殴られた後から推察するに、フランケンシュタインが戦鎚で吹き飛ばしたのだろう。

 生半可な馬力ではない。弱い英霊とは言えやはりバーサーカーだ。こちらがアサシンのサーヴァントである以上は出来るだけ接触を避けた方がいいな。

 一回戦の第一層と変わらない無機質で無愛想な迷宮にバーサーカーとフラットがいる。ここで回収できる資源は少ないだろう。トリガーを取得したら早々に帰るべきだ。

 安全のため相手のマスターとサーヴァントがいないかアサシンに確認する。

『アサシン、バーサーカーはどの辺りか分かるか?』

『出口のそばを行き来しておる』

 アサシンが二人の存在を感知した辺りには回復の泉があったから、往復しつつエネミーを狩っているのだろう。対エネミー用の礼装をテストしているのかもしれない。ともかく、まずはトリガーだ。あれを取らないことには始まらない。

 俺はアリーナの硬い床をためらいなく踏みしめながら進み、立ちはだかる雑魚はアサシンが捕縛してしまう。拘束から逃れた場合は魔術の光弾を発射してエネミーが塵となる。馬鹿げた火力で複数の雑魚をまとめて消し飛ばし、経験値がザクザク入る。

 十分ほど歩いたところで、何体目かのヘビ型エネミーを倒し坂を上りきる。そこではトリガーの入ったボックスがアリーナを見下ろしていた。

 手をかざしボックスを開く。トリガーコードαを無事に回収し、回復の泉の辺りを見てみる。純白のドレスを翻しつつフランケンシュタインは戦鎚を、青色のジャケットを踊らせてフラットは二挺拳銃でエネミーに立ち向かっている。

 銃は刀語の炎刀・銃を思わせるリボルバーとオートマチックの組み合わせで、命中精度はまちまちだ。カッコつけて変なポーズをキメながら撃っているのもかなり大きいだろう。ウェスカーなみの身体能力でもなかったらそんな姿勢じゃ無理だよ。

 レオンを見習え。アイツ、大統領直属のエージェントになっても新米時代に習ったスタイル貫いてんだぞ。

 用もないのにあまり長居してフラットたちに発見されても面倒なので、さっさとリターンクリスタルを使ってアリーナから退出しようとアイテム欄を漁り、右手で掴んだ両端が尖った六角柱の水晶を握りつぶす。

 正規の退出プログラムが起動し、俺とアサシンの身体が瞬く間に校舎へと転移されていく。視界は白く爆ぜ、五感が一瞬だけ遮断される不快感を味わいながら、無機質な廊下を上履きのゴム底で踏む感触に安堵する。

 アサシンを霊体化させ、誰かに見つかる前に個室へ戻ろうとホログラムは画面を出す。『個 室(マイルーム)』と記された枠を選択しようと指を動かした瞬間、目の前に巨大な影が現れて――

「おお。お前さんは確か、昨日書庫で会った魔術師ではないか」

「……ライダーか」

 俺も決して背が低いわけではないと先に断っておく。数え十七歳の運動嫌いが身長173cmもあれば大したもので、俺が小柄に見えるのはイスカンダルが大きすぎるだけだ。

 神経の図太さがよく表れた巨躯は逞しい筋肉の装甲で覆われ、燃えるような赤髪は滾る情熱を連想させる。

 機嫌の悪い俺の様子などお構い無しに征服王はご機嫌な様子だ。

「……マスターを放って徘徊とは暢気だな」

「なあに、調べ物の邪魔にならぬよう散策しておるだけだ。お前さんもどうだ? 迷宮の探索も終えたのであろう?」

「結構だ。放浪癖はない」

「放浪癖とはこれまた言うてくれるわい。魔術師ってのはみぃんなそんな調子なのか? 閉じ籠ってばかりでは魂を腐らせるだけだぞ」

 どうしてここまで俺に絡むのか理解出来ん。

 昨日たまたま図書室で会っただけで、顔見知りと呼ぶにも遠い間柄のはずだ。それなのにどうしてこうも食い下がる? 俺が転移しようと指を動かせばすかさずこの征服王につまみ上げられて身動きを封じられる。

 逃げ道などないが、言いなりになるのは癪に障る。きっとこの男に蹂躙された国のまっとうな(・ ・ ・ ・ ・)指導者たちは今の俺と同じような、どうにもならない怒りを抱いていたに違いない。

 これが地上の聖杯戦争ならまず真っ先にライダーを排除しようとしていただろう。それくらい不愉快な奴だが、ムーンセル式の聖杯戦争である手前、そうもいかないのが腹立たしい。

 略奪と蹂躙に終始するこの暴君の辞書に妥協などと言う単語は存在しない。

 拒否権を封じられた俺は渋々ながら、大人しく従うことにする。

「よしよし。ではこれより弓道部を訪ねるとしようではないか。あの地には何でも最強のAIがいるという話だ。そうと聞いては余も是非――」

「………………」

 ライダーが背中を晒して隙を見せた瞬間、俺は素早くホログラムを操作して転移先を指定する。

 掠れるような電子音にライダーが気づいて振り返るが、俺はすでにその場から逃げていた。そのため、征服王がどんな顔をしていたのかは分からない。

 

 

 

 

 青空に映る無数の1と0があまりに空々しい。

 ただ一人の勝者のみが生還できる月の監獄に投影された虚像の太陽が照らす校舎の屋上で、玲瓏館美沙夜は右手の甲に浮かんだ令呪を見ていた。

 強者としての威厳と威信に溢れた真紅の瞳には、日頃の毅然とした佇まいからは想像出来ないほどの迷いがある。

 地上に残した肉体は持って一年、良くて半年もすれば死ぬ。不運にも、先祖が悪魔と交わした契約を何十代も隔てた彼女が支払う義務を負ったことが美沙夜の聖杯戦争に参加するきっかけである。

 予選を通過した彼女にムーンセルが授けたサーヴァントはルーマニアの英雄、ワラキア公国領主ヴラド三世だった。

 串刺しによる粛清で国を建て直し、串刺しによる威圧で異教徒の侵攻を退けたキリスト教世界の盾と名高い武人である。吸血鬼ドラキュラのモデルでもある極刑王の苛烈で高貴な生き様こそ美沙夜の理想であり、怪物と成り果てることを否定する有り様は二人の相似点であった。

 傍らにて主人を守護する彼女の()は、何も言わずにいる。霊体化したまま、主の不安を拭えぬ我が身を呪っているのだ。

 負の感情に満ちた静かな時間の流れは、まるで時が止まったようにすら思えるほどに異質な状態だった。だが、物事には必ず終わりがあり、この空気を打破したのは校舎のどこかから転移した周だった。

 物憂げな雰囲気を引っ込め美沙夜は、くたびれた顔の闖入者へ容赦なく言葉の暴力を叩きつける。

「空気の読めない男ね。アンニュイな気分に浸っていたのに、貴方の顔を見たら意味もなく落ち込んできちゃったわ」

「自己陶酔を邪魔して悪かったな。そのまま噴水に映った自分にダイブしてくれて構わないが?」

「口の回る男は異性から嫌われてよ?」

「上から目線の女は豚男からしか好かれないぞ」

 皮肉の応酬を繰り広げる両名に呆れたサーヴァントは、実体化して会話に割り込む。

「美沙夜よ、年頃の娘が白昼からあまり見苦しい真似をするな」

「そなたがこれほど食いつくのは小娘から詰られる趣味でもあるからなのか?」 

「そうねランサー。(わたくし)としたことがはしたない」

「俺にそんないかがわしい趣味はない。というか、どうしてその結論に至ったのか教えてくれ」

 一息入れて気持ちをリセットしたマスター二名は改めて真面目な話題で会話を始める。実態は美沙夜の質問に周が答えるだけなのだが。

「フラット・エスカルドスの魔術師(ウィザード)としての素養と発想力はハーウェイ家でも制御しきれないほどのレベルよ。それこそ、騎士王クラスのサーヴァントを狂化しても差し障りないはずだわ」

「にしては、フランケンシュタインの怪物がサーヴァントなんて微妙な英霊だけどな」

「魔術師として破格のマスターと、英霊としてある意味では破格のサーヴァントなのよ。自然の摂理から逸脱した英霊は数多いけど、フランケンシュタインはその中でも別格と言ってもいいわ」

 美沙夜の言わんとしていることは周もなんとなく理解している。

 科学が世界を支えるようになった時代、神秘が廃れ始めた時分に産み出された人造人間は信仰の対象としては立派なものだ。科学技術で死を超越したとあらばなおさらだろう。

 しかし他の英霊と比しても明らかに劣る低ランクのサーヴァントであり、マスターはやはり界隈では指折り馬鹿であることは間違いなかった。

 いくら魔術師として優れていようと、頭が悪ければ聖杯戦争を生き残れない。

 周の脳内では、着実に二回戦で勝利を手にするための式が組み立てられていく。

 彼の中には誇りなどない。手っ取り早く確実に勝つことこそが最優先であり、美沙夜への対策も万全である。




 二日ほど用事で空けてしまい、ようやく更新できるぜと小説情報を見たらお気に入り登録件数が倍増しているという状況。
 なんだかたいへんなことになっちゃっぞってレヴェルじゃねーぞ!!
 気まぐれで思いつきその時の気分で書いている駄作にこんなに沢山の方が高い評価を下さったことに感謝してもしきれません。開いた口も塞がりません。ビビりました。
 拙い文章と至らぬ構成ですが今後ともよろしくお願い致します。
 感想や評価もお待ちしておりますので、お気軽にどうぞ。

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