EXTRAでセイバー、アーチャー、キャスターしか使えず絶望した気持ちがずるずる尾を引いた結果、この二次創作が生まれました。
アサシンで召喚されたセミラミスをサーヴァントに、謎の転生主人公がEXTRAの世界を駆け抜けるお話です。
英霊召喚:女帝降臨
目の前で生徒が倒れる。
顔のない奇妙な木偶に何度も斬られ、肉体が限界に達したらしい。
俺にとって数少ない話し相手の役を演じてくれていた訳だから、せめてもの礼だ。別れの挨拶と死に水くらいは取ってあげるとしよう。
「やあ、七原さん。顔色が悪いけど大丈夫?」
第一声から間違えた。
自分から話しかけるのに慣れていないもんだから口調がおかしくなってしまった。
安っぽい三流アイドル面の少女は、絶望に染まった顔をさらに絶望させて俺を見る。……三流は所詮三流、見ていてもつまらないことこの上ない。
涙を流し、餌を与えられた鯉のように口をパクパクと開閉する。痛みが酷いのか声も出ないらしい。
このままではムーンセルに消されておしまいだろうから、俺の役に立って死んでもらいたいところだ。
「
無傷の木偶が放つ不意打ちを七原さんのボロボロになった肉付きのいい身体で遮る。
どうやらそこで形を保てなくなったのか、盾は塵になって消えてしまった。こちらも木偶があるので、感覚で指示を出す。
あちらの木偶が放つ斬撃と刺突をこちらの木偶があしらい防いで隙を狙っては殴り吹き飛ばす。
受け止めた損傷は軽微だ。あと二合ほどで決着はつくだろう。
待機状態に戻った木偶に追加で指示を与え、突進させる。
結果は明確。
どうやら殴打が装甲の薄い部分に直撃したらしく、あちらの木偶は力なく地面に倒れた。
『随分と惨いことをするものだな、少年。仮初めとは言え、恋人だった相手にああして止めを刺すとは。私も久々に面白い思いをさせてもらった。そして、そんな君の冷徹で手段を選ばぬ主義に相応しいサーヴァントが残っている。期待しているよ』
声が途絶えると、四方からガラスが砕け散る甲高い音が響く。それまでの、海底を彷彿とさせる薄暗さから一転、目映い光が空から降り注ぎ、背景も聖堂のような荘厳な装いに変わった。
破砕音と急な眩しさに驚いた俺は手で目を守る。
光が弱まったように感じて恐る恐る目を開くと、部屋の中央に背筋が凍るほど美しく、それでいて浮かべた笑みは男なら無条件に見蕩れる妖艶な黒衣の女性が立っていた。
「ふん。見た目は及第点か……久々に契約相手が現れた手前、幾つかの不敬は見逃そうぞ」
美女は不満げな目で俺を値踏みし、ため息をつく。
たったそれだけの仕草さえ美しいとは、やはり逸話は伊達ではなかったようだ。
「では問おう。貴様が我のマスターか?」
「いかにも。聖杯を手にするため、力を借りたい」
俺の答えに美女は何故か笑った。
「アサシンとして喚ばれた我に力を貸せとな? ククク、泣きを見ても知らんぞ?
自らをアサシンと名乗った女性は俺をマスターと認めた。
焼き印を押されるような張り付く痛みを引き連れて、選定に合格した
『手に刻まれたソレは令呪。サーヴァントの主人となった証だ。サーヴァントの力を強化。或いは束縛する、三つの絶対命令権。簡単に言えば使い捨ての強化装置だ。だが、それはこの戦争の参加資格でもある。精々、使いすぎない様にすることだ』
麗しき漆黒の暗殺者は、部屋の端に転がされた無数の男女の骸を眺めて微笑んでいる。
『一先ず、おめでとう。取り敢えずはここがゴールだ』
手の甲の痛みはますが、ここに来る間際に味わったモノに比べれば大したことはない。
『勝ち残るには智恵が必要だ。それは
重々しく、厚みのある男の声が薄れていく。
見るとアサシンの肉体も徐々に透過している。ここから、元いたあの校舎に転位されると考えてよさそうだ。視界が白に染まる直前、アサシンの艶めいた唇が笑ったような気がしたが、確かめる間はなかった。
かくして、俺の二度目の人生は幕を切った。
128人の魔術師によるトーナメント――月の聖杯ムーンセル・オートマトンを賭けた戦いに、必ず勝ち残らねばならない。
そのためなら俺は手段を選びはしない。
七人の魔術師を斃し尽くし、熾天の玉座に至ってやる……そうだ、他のマスター全員を踏み台にしてでも。
オリ主のチートはFate作品に登場したサーヴァントのマトリクスを把握しているだけです。性能は
マスターのプロフィールとセミラミス様のステータスは次回の後書きにて記載します。
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