GODEATER2  AnotherBlood   作:Vekterアイギス

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ついに始まった神機兵との合同任務。
目立ったトラブルもなく、順調に行くと思われていたが…
裏では彼女の思惑が動き出していた。


#24 君にサヨナラを

「ふえ~すごいな。」

ロミオは感嘆の声をもらす。

それもそのはずだ。

目の前では神機兵がアラガミと交戦を繰り広げている。

俺達は安全圏からそれを眺めているばかりだった。

「確かに、凄いっすけど...神機兵の任務って住民の護衛じゃ?」

オレはふと、疑問に思ったことを口にする。

「ん~そう言えばそうだな。

まあ、俺らの代わりに戦ってくれるのは、ありがたいことじゃないか?」

「それも、そうですけど...」

オレは神機兵に目線を戻す。

ちょうど、ヴァジュラが絶命したところだった。

顔面が切り裂かれ、マントはボロ雑巾のようにズタズタなってしまっている。

神機兵が勝利の咆哮をあげた時だった。

「あ。あの雲...赤い...」

ロミオが指を指した方向、すぐそこまで赤乱雲が迫っていた。

「赤い雨...!全員シェルターまで避難しろ!急げ!」

後ろに居たジュリウスが叫ぶ。

 

同じ頃、

明かりの点いていない研究室に、ラケルは居た。

画面を操作しながら、ラケルは呟く。

「雨は降りやまず...

時計仕掛けの傀儡は、来たる時まで...」

画面には神機兵の内部図。

「眠り続ける。」

ラケルは微笑む。

その笑顔は、画面に照らされてより一層、妖しくみえた。

 

ジュリウスの誘導で、オレ達はシェルターまで退避していた。

「ブラッドβ、聞こえるか?状況を報告しろ!」

ジュリウスの呼びかけにシエルが応答する。

-こちらブラッドβ。敵残数、一体です。-

「赤い雨が来る。中央シェルターまで撤退しろ。」

-了解!シェルターまで撤退します。-

「皆こっちだ!早く中へ!」

クロサキ達の呼びかけに、住民が押し寄せる。

「先輩!コウタさんにつながりました?」

「ん、ちょっと待ってろ...よし!つながった!」

通信機にコウタの声が流れる。

-こちら、コウタ。周辺住民の護送が終わりそうだ!-

-後は、神機兵に任せて退避する!-

しかし、住民の避難が完了しかけた時、事件は起こった。

 

「おいおい...どういうことだよ...」

目の前の神機兵が次々と停止していく。

「なんで、神機兵が...!止まってく...!」

見回りに出ていたロミオが驚く。

その声は、通信機を通して聞こえていた。

「そんな...隊長!」

「ああ...他の所でも同じような事態が起きている。」

ジュリウスも困惑した様子だった。

-フライアから緊急連絡!全ての神機兵が停止していきます!現時点で原因は不...-

 

『人もまた自然の循環の一部なら、

人の作為もまたその一部、そして...』

 

赤い雨が降り出した。

「全員、避難し終えたか?名簿の照合、急げ!」

ロミオが頷き、避難名簿をめくる。

めくって行くうちに、あることに気付きロミオの顔に焦りの色が現れていく。

「居ない...!北の集落の人達が、爺ちゃんたちが居ない!」

「隊長!大変だ!」

他の隊員から報告を受けたギルが奥から走ってくる。

「どうした!」

「ノースゲート付近にアラガミが出たらしい。」

そこまで言うとギルは表情を曇らせる。

「あの白いアラガミ...マルドゥークだ。」

 

『ああ...やはり、貴方が王の為の贄だったのね...』

『ロミオ...』

 

「爺ちゃん...婆ちゃん...」

ロミオは意を決して、防護服を手に取る。

「ゴメン、ジュリウス!俺、ちょっと行ってくる。」

ロミオは赤い雨の中を、北の集落に向かって走り出した。

「あのバカ!何してやがる!]

「行くぞ、ギル!」

追いかけようとするギルとクロサキを、ジュリウスが制止する。

「待て、俺が連れ戻す。

お前達は、ここでアラガミの侵入を食い止めてくれ。」

 

+++++

『ロミオ...貴方は、この世界に新たな秩序をもたらす為の礎。』

 

走るロミオの前にガルムが立ちふさがる。

ガルムの攻撃をかわし、そのまま着地する。

が、そこに別のガルムが飛び掛かってきた。

その時、ジュリウスが現れ、ガルムを切り裂く。

ガルムはそのまま倒れ、沈黙した。

二人は顔を見合わせ、静かに頷く。

 

『貴方のおかげで...新たな歯車が回り出す...』

 

そこにガルムを引きつれた、マルドゥークが姿を現す。

マルドゥークが咆哮と共に、二人に襲い掛かる。

対抗するが、その力に二人とも弾き飛ばされる。

 

『ああ、ロミオ...貴方の犠牲は、世界を統べる王の名のもとに...』

 

立ち上がろうとするジュリウスにマルドゥークが牙を剥く。

 

『きっと、未来永劫...語り継がれていくことでしょう...』

 

ゆらりとロミオが立ち上がる。

目の前には、ジュリウスが倒れていた。

 

『お休み、ロミオ...新しい"秩序"の中で、また会いましょう...』

 

ロミオの頭の中に走馬灯のように記憶が巡る。

-俺はジュリウス・ヴィスコンティだ。これからよろしく頼む。-

 

ロミオはマルドゥーク達と対峙する。

 

-ロミオ先輩!はい、おでんパンあげる!-

 

ロミオは最後の力を振り絞って、神機を振りかぶる。

 

-ロミオさん。報告書がまだですよ。-

 

赤い光を纏った斬撃がガルムを切り裂いた。

 

-ロミオ!もっと、敵の動きを見ろ!-

 

しかし、マルドゥークを足止めするには至らない。

 

-ロミオ君がそこまで言うなら、私も精一杯歌わせてもらうよ!-

 

マルドゥークの爪がロミオを捉え、ロミオの体が宙を舞う。

 

-また、何時でもおいで。なんなら、うちの子になるかい?-

 

そこにもう一度、爪の攻撃。

ロミオは地面に打ちつけられた。

 

-先輩!頼りにしてますよ!-

 

それでも、ロミオは立ち上がる。

その異様な気迫にマルドゥークが後ずさる。

(皆...は...俺が...)

ロミオの中で力が覚醒する。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

ロミオの叫びはサテライト中に響き渡り、アラガミ達はそれに呼応するように去って行った。

 

+++++

 

 

しばらくして、ジュリウスは降りそそぐ雨の音で目覚めた。

「くっ...俺は...ロミオは...?」

ジュリウスは辺りを見渡す。

倒れているロミオを見つけ、すぐさま駆け寄る。

ロミオは血まみれで、息も絶え絶えだった。

見ると腹部からの出血がひどかった。

「おい、ロミオしっかりしろ!」

ジュリウスの呼びかけに、ロミオが目を開ける。

「...ジュリウス?ゴメン...アイツ、倒せなかったよ。

あ、爺ちゃんたちは...?」

「ああ、無事だ。お前のおかげでな...」

実際のところはまだ分からない。

だが、真実を言ってしまえば、何かが終わってしまうような気がした。

「ヘヘッ...良かった...

なあ、ジュリウス...ゴメンな...俺が勝手に...」

「もういい...それ以上、喋るな...」

腹部からの出血は先程よりも酷くなっていた。

「最後まで、皆に迷惑かけて...弱くてゴメンな...」

「そんなことは無い!お前が...皆を守ったんだ。」

ロミオはその言葉に微笑む。

「ありがとう...」

ロミオはゆっくりと目を閉じる。

「ロミオ...?ダメだ...一人でも欠けたら、意味がないんだ...」

ロミオの手が力が抜けたように下がった。

「逝くなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ジュリウスの悲痛な叫びは、雨の音の中に消え去った。

赤い雨はまだ、降り終わる素振りを見せなかった...

 




次回、二章最終回です

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