GODEATER2  AnotherBlood   作:Vekterアイギス

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ヒバリ
「今日は私の番ですね。
これからも、皆さんをバックアップできるよう
頑張りたいと思います!
では#23始まります!」



#23 ブリキの兵隊

#23  支部長室前

 

「ありがとう、ちょっと待っていてくださいね。」

そう言ってラケル博士は、支部長室に入って行った。

これから赤い雨、そして黒蛛病の治療法について話すらしい。

オレは支部長室までの案内を任された。

「ここにも、ずいぶん慣れたな...」

極東に来て、一か月が経とうとしていた。

ここまで迷わずに来れたのは、やはり日頃からアナグラ中を駆けずり回ってるからだろう。

(いっそここに住むか...なんてな。)

そんなことを考えていた時、向こうのエレベータから一人の男性が降りてきた。

見た目には科学者のように見える。

オレがその人を何となく見てると、相手も気付いたようだった。

「ん?サカキのおっさんは来客中か?」

その言葉がオレに向けられているものだと分かるまで、少しかかった。

「...あ、はい。」

「その腕輪...噂のブラッド、って奴か。サカキのおっさんに何の用だ?」

彼はオレの腕輪を見てそう言った。

「いや、オレじゃなくて...ラケル博士の付添です。」

それを聞くと、男は壁にもたれかかり、ため息をつく。

「あのおっさん、フライアまで巻き込むつもりか...」

支部長をあのおっさん呼ばわりとは...

ますます、目の前の男の正体が気になった。

「あの、極東の方ですか...?」

「ああ、そうだ...いや、今はむしろ...」

彼が、口を開いた時だった。

支部長室のドアが開き、ラケル博士が出てくる。

「...?お知り合い?」

「いや、今さっき、な...」

彼の言葉にオレは頷く。

ラケルは彼の顔を見て少し考えると、思い出したように言った。

「貴方...もしかして、シックザール前支部長の...?」

オレにも、その名前は聞き覚えがあった。

(でも、その人は確か...)

「ん...ああ、ソーマ・シックザール。

ヨハネス・フォン・シックザールの息子だ。」

ソーマと名乗った彼に、ラケルは軽く頭を下げる。

「...ご挨拶が遅れて申し訳ありません。

ラケル・クラウディウス...貴方のお父様には、一度お世話になったので

是非、一度お会いしてお礼を申し上げたいと...」

「ああ、礼なら直接、本人に言いに行ってくれ...

いずれ、あの世で会える。」

オレは、ソーマの言動から何かを感じた

(これは...敵意...?)

「フッ、すまない...冗談だ。」

「ずいぶんとキツイ冗談を仰るのですね...

もしかして、それが原因で...」

そこまで言ってラケルは、ソーマを見据える。

「お相手に、月まで逃げられてしまったのですか?」

その言葉にソーマが少し反応する。

「フフッ...冗談、です。」

「...あんたとは同じ匂いがするな。

俺と同じで、混ざって壊れた匂いだ。」

「フフ...光栄ですわ...そろそろ失礼します。

さ...参りましょう。」

「...あ、はい!」

二人のやり取りに固まっていたオレに、ラケルが声をかける。

そこで我に返り、ラケルの後をついて行く。

すれ違いざま、ソーマに話しかけられた。

「お前はどことなく、俺のダチに似た匂いがする...

良い神機使いなってくれ、じゃあな。」

そう言って、ソーマは支部長室に入っていた。

 

+++++

 

 

アナグラ ロビー

 

「神機兵との合同任務?」

「そうだ。」

ブラッドの面々はアナグラのロビーに集まっていた。

「神機兵の生体制御装置が完成し、そのテストにも先日成功したらしい。」

そう言えば、この前フライアに戻った時...

 

「いやーありがとう!

貴方の協力のおかげで、研究がはかどりましてねぇ!」

ラケル博士の頼みで、オレはクジョウ博士の元に来ていた。

相変わらず血色わりぃ顔をしていたが、今日は上機嫌だった。

「はあ...それは何よりです...」

「そうなんですよ!今度、神機兵のテストを再開することになりましてね。

それが成功すれば、今度こそ神機兵の無人運用を現実化できる!」

クジョウの熱弁に、若干気圧される。

「...そんな簡単に行くもんなんですか?」

その言葉にクジョウはニタリと笑う。

この上なく気持ち悪い。

「フッフッフ...なんといっても今回は、ラケル博士が協力してくれましたからね...」

「ラケル博士が...?でもあの人は有人制御を推し進めてたんじゃ...」

「実は、お手紙で直々に呼ばれまして...

なんと!あの方自ら研究成果を横流...いえ、提供してくださりまして。

いや~本当に、ラケル先生は素晴らしいお方です。」

このままだと長くなりそうだと悟ったオレは、適当な理由をつけてその場を後にした。

 

なるほど...結局、成功したのか...

「クロサキ?聞いているのか。」

「うえ!?あ、すいません...」

「なんだ、なんだ?彼女のことでも考えてたか?」

「ちょ、先輩!居ませんよ、そんなの!」

ロミオにからかわれて、クロサキは慌てる。

「フッ...話を戻すぞ。

今回は極東支部の部隊も投入される大規模な合同作戦だ。

ラケル博士の発明したシステムにより、サテライト周辺に

局地的に多量の赤い雨が降ることが予測された。」

ラケル先生とサカキ博士の話はそのことか。

「神機兵は退避する住民を護衛し、

俺達はその間、サテライト拠点の防衛に努める。

準備が整い次第、指示に従ってくれ。以上だ。」

そこで、解散となった。

 

自室へ戻ろうとした時、ジュリウスに声をかけられた。

「ロミオのこと、あの場に居れなくてすまなかったな。

...また、お前に助けられてしまったな。」

「いや、オレは大したことしてないっすよ。

...ロミオ先輩が、自分で乗り越えたんです。」

「...そうか。そう言ってもらえると助かる。」

ジュリウスはフッと笑うと、戻って行った。

入れ違いでロミオがやって来た。

えらく上機嫌な様子で、クロサキに話しかけてくる。

「おい、やったぜ!クロサキ!」

「どうしたんすか、先輩?

ユノさんに声かけられたりしたんですか?」

その言葉に、ロミオは顔の前で指を振る。

「チッチッチ...なんと、ユノさんがな...

今回の任務の後で、俺達の為に、歌を歌ってくれるんだってさ!」

「へえ...凄いですね。」

周りから見れば、すごい温度差だろう。

「とにかく、今回の俺は一味違うからな!期待して待ってろよ!」

「はいはい、分かりましたよ。ただ、油断だけは...」

話半分にロミオは走り去って行ってしまった。

「まったく...相変わらずだな、先輩は...」

半ば呆れつつ、自分の部屋に戻った。

ふと、窓から外を見る。

遠くの空に赤い雲が見えた。

「いつ見ても、嫌な雲だな...」

なぜだかは分からない。妙な胸騒ぎを覚えた。

「気のせい、だよな...」

 

その胸騒ぎは数時間後、現実のものとなる事をまだ知る由もなかった...

 

+++++

 

オレはフライアの庭園に居た。

周りを見る。

ある者は泣き崩れている。

また、ある者は悔しそうに拳を握りしめる。

いつの間にか、オレの目からも涙がこぼれていた。

オレは目線を下ろす。

庭園の花畑に囲まれた墓標。

そこに刻まれた名前は...

 




という訳で、#23でした。
心の準備は出来ましたか?
プレイ済みのかたは、今後の展開は分かっていると思います。
ですが、オリジナル展開にするつもりはありません。

次回で二章は終了で#25から第三章に入ります。
ご期待ください。

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