GODEATER2 AnotherBlood 作:Vekterアイギス
「何?前説?
どうして私がそんなこと...
#21はロミオ先輩の話です。
別に、見てくれなくても良いんだからね!」
オレがメディカルチェックを終えて、フライアから戻って来た時のことだった。
「副隊長~!」
ナナがオレに駆け寄ってくる。何やら慌てている。
「どうした、ナナ?おでんパンでも切れたか?」
「そんな冗談、言ってる場合じゃないよ!早く来て!」
ナナは強引にオレを引っ張っていく。
連れてこられた先では、ロミオとギルが言い争っていた。
「おい、ロミオ...さっきのミッションなんだよ...全然なってねえ。」
「あんま固いこと言うなよ、ギルちゃーん。
頼れる後輩もいるわけだし、もっとこう、余裕をもってさー」
ロミオの態度にギルの苛立ちが爆発する。
「余裕と油断は違うだろ...後輩に抜かれまくって
やる気がなくなったのか?だったらいっそ、やめちまえよ!」
「やる気がないだと...」
ギルの言葉にロミオが拳を握りしめる。
「ギル...取り消せよ。」
「何...?」
ロミオが振り返り、ギルを思いっきり殴る。
「うわっ!?....何しやがる!」
「お前になんか、分かるわけないんだよ!
そんなこと...俺が一番分かってんだよ!
ロミオの不満が爆発する。
「俺には、お前やシエルのような経験はないし...
ナナみたいに開き直れるほど大物でもない...
ましてやクロサキみたいに...怪物みたいなジュリウスと肩を並べるなんて...」
皆が、ロミオの心の叫びを黙って聞いていた。
「俺だって、皆の役にたちたいよ!
でも...俺はどこに行っても...役立たずで...どこにも居場所なんて無くて...」
皆が、ロミオを見ていた。
視線に耐えきれなくなったロミオは、そのまま飛び出して行ってしまった。
ナナが追いかけようとするが、クロサキが制止する。
「今は一人にしてやろう...戻ってこなかったら、必ず探しに行こう。」
ナナは小さく頷いた。
「仲間だもんな。」
+++++
その頃ロミオは、郊外をさまよっていた。
神機も何も持たずに、そのまま飛び出して来てしまった。
「腹、減ったな~」
ふと空を見上げると、見覚えのある赤い雲が目に入った。
「あれ...赤乱雲?」
「おう...また赤いのが降るか...」
近くの民家からおじいさんが出てくる。
ロミオに気付くと、
「ああ、あんた神機使いか...」
とっさに、ロミオは腕輪を隠そうとする。
「隠す必要はなかろう、立派な仕事だ。」
おじいさんは優しく言った。
その時、けたましいサイレンが鳴り響く。
「赤い雨がこっちに来るようだな...中に入れ。」
「え、俺大丈夫だよ...」
「良いから、とっとと入れ、えんりょすんな。」
その後、何となく居心地がよくなったロミオは、すぐに老夫婦と打ち解けてしまった。
「へー、ブラッドってすごい人たちなんだねえ。」
「そうなんだよ!皆、すごい強くてさ!隊長とか副隊長とかまるで化け物だよ...」
そこまで言ってロミオはうつむく。
「皆、ずっと俺より凄くて...オレに出来ることなんて、ほとんど無くて...
経験も知識も無いし...意志も弱いし、人の顔をうかがってばかりで...」
堪えようとしても、涙が止まらなかった。
「それが嫌で...皆から逃げてきたんだ...」
「お前さんは...人や友達が大好きなんだな。
それは、本当に胸を張っていいことだ。」
「でも、俺...!逃げ出して...」
おばあさんがロミオの手を握る。
「休むのと、逃げるのは違うでしょ。
ロミオちゃんが戦っているおかげで、私たちが安心して暮らせるのよ?
少しぐらい、休んだっていいでしょ。」
その言葉がロミオの胸に染みる。
ロミオは顔をあげると、また泣き出した。
今度はうれし泣きだった。
+++++
外に出ると快晴だった。
「ありがとう...俺、戻らなきゃ...」
ロミオの目にもう迷いはなかった。
「ああ、戻ると良い。お前さんの居場所に、な。」
「また、遊びにおいで。」
二人の言葉に笑顔で頷いた時だった。
突然、地面が揺れる。
「これは、アラガミ...!」
二人をサテライト拠点に退避するよう促すと、ロミオは駆け出した。
「あ...やべ、神機どうしよ...」
走り出してから、自分が手ぶらだということを思い出す。
「忘れもんですよ、先輩!」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、
「皆...何で...?」
「討伐命令が出たからに決まってんだろ...
それに、仲間も回収しねぇといけないしな。」
ギルがばつの悪そうに言う。
「その割には、一番気にしてたよね~」
「うるせ!」
ナナの言葉にギルが慌てる。
「ロミオ先輩、私チキン5ピースで許してあげるから!」
「じゃあ、私はバレッドの材料を。」
「なら、俺はどうするかね...」
困惑するロミオにクロサキが近づく。
「先輩!オレ達にとって先輩は大切な仲間です。
だから、一緒に戦いましょう。」
そう言って、ロミオに神機を手渡す。
「...ああ!もちろんさ!皆、俺に力を貸してくれ!」
皆は力強く頷いた。
+++++
今回の敵はさほど強敵ではなかった。
結束を高めたブラッドの敵ではなかった。
「皆...俺...」
うつむくロミオの額を、ギルが小突く。
「お前の休暇届は勝手に出しといた。
これは貸しだ...二度とすんなよ。」
そう言ってギルは先に歩き出す。
「今日は、良い動きだった。この調子で頼む。」
ギルの言葉にロミオは立ちすくむ。
「へへー、ギル、ずっとロミオ先輩のこと気にしてたんだよ。
言い過ぎた、って。」
ロミオは少し考えると、ギルに向かって駆け出した。
「ハハッ、ギルちゃーん可愛いとこあるねぇー。」
「おい、やめろ!引っ付くな!離れろ!」
「またまた~恥ずかしがっちゃって~」
二人の光景になんだかこちらまで笑えてきた。
「よし、帰るか!」
「そうですね。」
「ロミオせんぱーい!チキン忘れないでね~8ピース!」
皆が笑顔になれる居場所がそこにあった。
+++++
そんないつもと変わらぬ日々が、ずっと続くと思っていた。
ある者は泣き崩れている。
また、ある者は悔しそうに拳を握りしめる。
庭園の花畑に囲まれた墓標。
そこに刻まれた名前は...
というわけでロミオ先輩回でした。
なぜ、前後編じゃないかは分かっているな...
おいおい、俺の口から言わせるな。
最後はネタバレっぽくなってしまいましたが、
次回もお楽しみに