異形の英雄──歪んだ瞳に映る物──   作:バルシューグ

8 / 11
第七話 馬鹿と天才は紙一重

七話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「包囲しろ!!全員でやるぞ!」

怪人の怒号の声と共に数十の怪人が鵞仙を取り囲む。

一人、また一人と雄叫びを上げて槍を振りかざすも舞うように躱し、受け流されて黒く輝く指先の刃で切り裂かれていく。

それも急所を確実に狙い、当てていく為に怪人達は一撃で仕留められていった。

 

 

「脆い…!

脆すぎるぞ…!人を超越する者ならば、私を倒してみせろッ!」

鵞仙は怪人達を見回し、そしてニタリと嗤う。

 

「いや、所詮は残党か…

私の知るシャープインサニティはこの程度では無いだろう?

見せてみろ…!本当の力を…!」

怪人を一撃で葬り、余裕の表情で呟いた。

 

ーその笑みは人の笑みならずー

 

血が掛かった顔はより凶悪さを引き立たせていた。

 

 

「ば…化物め!!

何がヒーローだ!貴様のようなヒーローがあってたまるか!」

怪人は吐き捨てるようにそう叫ぶ。が、

「化物、か……

強ち間違えでは無いかも知れぬぞ。

だが、貴様に英雄を語る資格など有りはしない。無に帰れ、怪人」

鵞仙はそう言うと取り囲んでいた最後の怪人を殺し、ガントレットに飛び散った血を振り払った。

 

 

 

「弱過ぎる……

本当に奴等なのか…?

奴等の振りをする怪人集団ではないのか?…いや、それではあれ程までに被害が出るとは思えん…

どういう事だ?」

 

 

「こういう事さ!!」

 

 

鵞仙の呟きに突然、何者かが答えて斬撃を放つ。

紙一重で躱し、斬撃が放たれた方向を見る。

 

 

「貴様は…少尉スレンか?

生きていたとはな…」

その姿を視界に入れた瞬間、鵞仙は顔を歪め、スレンジを睨みつける。

 

 

「あ〜らあらあら!覚えてくれてたんだね、嬉しーーよ!!

僕も忘れた事なんか一度も無いからねー!!」

スレンは舞い踊るようにして喜び、微笑む。

 

「黙れ……愚物。

貴様のその穢れた顔面を苦痛で歪ませてくれる…!」

鵞仙は歯をむき出して呟き、静かに構える。

 

「いやーん!!

そのまま僕を同人誌みたいにするんでしょ!?幾ら可愛くてもそれは許さないよー!」

体をくねらせて笑うスレン。

鵞仙はその様子に苛立ち、更に顔を歪ませる。

 

 

 

スレンが可愛いと自画自賛した理由は実際に可愛いからである。

顔は少女を思わせる愛らしさを持ち、身体は華奢で小さい。

その為に彼女が持つ剣は細く、小さい。が、それでは何処が怪人だというのだろうか…?

 

理由は彼女にある頭部の鋭利な角にある。

 

 

 

 

 

ーースレンは鬼である

 

 

 

 

 

 

彼女の華奢な体もその細く、小さい手足も凝縮された筋肉が有る。

しかし、彼女は鬼族でも上位の種族であり、その種族間では力は弱くとも中位の鬼達では敵わない力を持つ。

 

 

 

 

故に強い。

 

 

 

故に強大。

 

 

 

故に少尉。

 

 

 

 

侮れば死が己に迫る。

それ程の者なのに彼女は所謂変人だった。それもドがつくほどに…

 

 

 

 

「………まあ良い。

貴様を切り刻めばよい話だ。

その憎たらしい踊りも頭にくる笑いも出来なくしてくれる…!」

鵞仙は苛立ちながらも頬を緩ませ、そう言った。

 

「あっ!笑った!今笑った!

僕を見て笑った!やったぁー!

やっと僕の魅力に気付いたんだね!

よし、今抱きついてあげる!」

しかし、スレンが着目した事は頬を緩ませたことであった。

 

鵞仙は話にならないと何とか怒りを抑えて理解した。

 

 

一気に距離を詰め、指先を伸ばし、

彼女の首を突こうとするも、

 

「いきなりなんて酷いよ〜!

でも許しちゃう!!こうして僕に会いに来てくれたから!」

と言いながら軽々と躱し、鵞仙の体に抱きついた。

ソレを振り払おうと切り裂くも剣て受け止められ、間合いを取られる。

 

「だーめ‼︎もっと速くしなきゃ当たらないよ?ほらほら僕を痛めつけて殺すんでしょ?もっと力強く頑張らなきゃ!!それとも僕が好きなの?」

と、笑いながら挑発する。

 

 

「巫山戯た野郎だ…!

貴様に抱くのは苛立ちと殺意だ。

他の感情など抱く価値すらない…!」

鵞仙はスレンを睨みつけ、吐き捨てるようにそう呟いた。

しかし、スレンはその鋭き眼光を見て惚気な表情を浮かべる始末である。

 

鵞仙が再び構えようとすると

 

「ヒーロー、スチールフィンガー参上!!助太刀に来た!」

と、隣から鎧を纏うヒーローが現れた。

 

 

鵞仙はその姿を横目に眺め、

「なんだ貴様、この燃え盛る火の中をその姿でやって来たのか…?」

と、呆れた表情で見る。

 

「この俺が操るのは炎、これくらい屁でもないぞ!!

と、どうやら苦戦している様だから助太刀に来た!」

と、スチールフィンガーは叫ぶ様に言った。

 

「声を抑えろ…

貴様の声は頭に響く…

だが、私一人では確かに少々時間が掛かる。良い時に来たな」

と、少し微笑みながら言った。

 

「当たり前だ!

俺は鋼鉄の英雄、スチールフィンガー!人々を守る為に力は惜しまん!」

高らかに叫ぶスチールフィンガー。

 

「そうか…

ならば、此奴は貴様に任せる。

苛立ちで相手をする気すら失せるからな。頑張れよ」

と、鵞仙は笑いながら呟き、走り去った。

 

「………え?

 

なっ!待て!

俺一人で倒せと言うのか!おい!

…………いや、待てよ!

彼奴は俺を信用したということだよな?そうだ、きっとそうだ!!

よし、ならばやってやろう!」

スチールフィンガーは自己解釈をし、スレンに向き合う。

 

 

 

 

対するスレンは…

 

 

 

 

「お前、僕と鵞仙君の会話を…

殺し合いを邪魔したな?

僕と愛しき鵞仙君の……

しかも、鵞仙君の笑顔を見たな?

 

 

 

よくも…よくも……

 

 

死ね、死ねよお前。

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」

 

 

と、狂ったように無表情で呟き、剣を構える。

 

「な、なんだ?

邪魔などしとらんぞ!

俺は鵞仙に任されたのだ!!

ヒーローとしててめえを倒す事を!

よくわからんが人々を殺戮する貴様は許さん!此処で討つ!!」

スチールフィンガーは少し困りながらもそう言い、構える。

 

 

「お前になんか負けない。

お前になんか絶対に…

殺してやる。剣で突き刺して切り刻んで手足を捥いで殺してやる!

お前が生きる資格なんてねえんだよ!!」

スレンは目を黒く光らせてスチールフィンガーに怒鳴り叫び、殺気をスチールフィンガーに向ける。

 

 

「生きる資格が無いのはてめえだ!

この手でその殺戮を断つ!!

覚悟しろ!怪人!!」

スチールフィンガーも負けじと言い返し、全身に力を込める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厄介ごとを押し付けられた(勘違いで信用と思っている)ヒーローと同じように勘違いしている怪人の

殺し合いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 




あれ?
想像してたのと違う…!?
もっと、こう………
と、文才のなさに頭を抱える作者ですがアドバイス、感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。