ブラック・ブレット『漆黒の剣』   作:炎狼

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執事編 最終話

 薫の宣言と共にリアが飛び出してきた。

 

 狙いはレオのようだ。レオもそれに反応してすぐさま迎撃態勢に入ろうとするが、彼女の腕はそれの上を行く。

 

 呻りをあげて急接近する小さな拳は外見的には大したことがないようにも見える。けれど、レオの瞳にはとても巨大な拳に見えていた。

 

 だが、その拳はレオの身体に激突する前に凛によって止められた。彼がつかんだのは拳そのものではなく、リアの手首であり衝撃が伝わってはいないようだ。

 

 すると凛はレオに視線を送り、レオもそれに頷くとその場から離脱して薫を制圧しに向かった。レオの後姿を見ているとリアが冷静な声音で告げてきた。

 

「なるほど……私の相手はアナタということですか」

 

「まぁそうなるね。それにしてもすごい力、抑えてるのでやっとかな……!」

 

 リアの手首をがっちりと握っている凛であるが、その顔はどこか苦い表情だ。ふと、そこでリアが笑みを見せる。

 

「すごいですね。私の拳を止められる人は初めて見ました。……ですが!」

 

 瞬間、リアの力が今まで以上に強くなり凛は大きく弾き飛ばされた。それでも冷静に空中で身体を反転させて着地してからリアを見ると、彼女は腰を下げて息をついていた。

 

「一応私のモデルを言っておきます。私のモデルはライノー。つまりサイです。ゾウやマッコウクジラには及びませんが、パワー系のイニシエーターです」

 

「イニシエーター……やっぱり君達は民警か」

 

「はい。IP序列九三二位、リア・アトキンソンです。以後お見知りおきを」

 

 小さく頭を下げたリアに対し、凛も笑みを浮かべると燕尾服を脱ぎ捨ててリアに対して告げる。

 

「せっかく名乗ってくれたんだから、こちらも相応の対応をしないとね」

 

「? アナタの名前ならもう教えていただきましたが?」

 

 怪訝な表情を浮かべるリアだが、凛はそれに被りを振る。

 

「僕も君達と同じ民警でね。せっかくだから名乗っておいたほうがいいと思っただけさ。……IP序列十三位、断風凛。またの名を『刀神(エスパーダ)』。よろしく」

 

 瞬間、凛は一呼吸の後にリアに向けて鋭角的な殺気を放つ。すると、リアもそれを感じ取ったのか、大きく後退しこちらを睨んできた。

 

 睨む双眸は真っ赤に赤熱しており、力を解放しているのがわかったが、頬には汗が伝っている。

 

「……冗談では、ないようですね」

 

「序列を隠したり、適当な数字をいったりはしないよ。まぁちょっと前までは仮の序列だったけどね。それでどうする? やるかい?」

 

「当然です。たとえ十三位と言えど、私は負けるわけにはいかないんです。私の存在を表す為にッ!」

 

 言いながらリアはこちらに突貫してきた。その速さは摩那や延珠には及ばないものの、凄まじい速さだ。野生のサイは時速五十キロ近くで走るというが、彼女にはパワー以外にもその速さも備わっているのだろう。

 

「君が戦う理由は存在を証明するためか……。だったら、こっちもしっかりと答えないといけないね」

 

 告げてナイフを構え、目を閉じ再度開いた凛の瞳には本気の炎が見えた。

 

 

 

 

 

 

 凛とリアが戦闘に入ったころ、レオは薫と正面から対峙していた。

 

「アタシ本当はリンちゃんとやり合いたかったんだけどねェ」

 

「残念だったな。郷九薫……貴様、なぜお嬢様を攫った」

 

「そんなのイイトコのお嬢様だからにきまってんでしょーが。お嬢様を誘拐すればがっぽり身代金がもらえるしネ」

 

「そのようなことだけに、お嬢様を危険に晒したというのかッ!?」

 

 凄まじい剣幕で問い詰めるが、薫は耳を塞いで肩を竦めた。

 

「うっさいわねェ。別に死んだわけじゃないんだからそんなに怒る必要ないじゃないの」

 

「貴様、あのお方がどれ程の方かわかっての言葉か……。お嬢様はこれからの兵器開発に必要不可欠な存在なのだぞ!?」

 

「だぁからあんだってぇのよ。何不自由なく暮らしてきたんだから人生で一回くらいこんな感じの不幸を味わっておいた方がいいってェの。……アタシはね、あのガキみたいに何の苦労もしてこなかったヤツが大嫌いなのよ」

 

 薫の目には憎悪というよりも憤怒の色が見えた。しかし、レオはその瞳の色にどこか見覚えがあった。

 

 しかし考えるよりも早く、自身の足元に発砲され、小さな火花が股の間で跳ねる。

 

「なに呆けてんだか。戦うんでしょ? だったらさっさとしなさいよ」

 

 その声と同時に薫が持っていた二丁の拳銃から火焔が吐き出された。レオもすぐさまそれに反応すると、近場の建設用の材料の山の裏に身を隠す。

 

 そして銃撃がやむと同時に、こちらも応戦しマグナム拳銃を発砲する。

 

 しかし、銃撃戦の最中、レオの脳裏には先ほど薫が見せた瞳が写っていた。

 

 ……あの目は、オレと同じ……。

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちが交戦している最中、鉄筋に縛り付けられている琉璃はなにやらもぞもぞと動いていた。彼女の手元を見ると小さなカッターの刃のようなものが握られており、彼女はそれで縄を切ろうとしていたのだ。

 

 しばらく動いていた彼女だが、やがて縄を切ることに成功したのかその場に立ち上がり、手首に巻きついていた縄をほどく。

 

「ふむ……もうちょっと時間がかかるものかと思っていましたが、存外そうでもないみたいですわね。殺す気がないというのは本当だったのかしら」

 

 手首を曲げて特に異常がないことを確かめていると、不意にヘリコプターのプロペラが風を切る音が聞こえた。そちらを見上げると、司馬重工のエンブレムがはいったヘリがこちらに向けてライトを照らしている。

 

 眩しさに若干顔をしかめていると、低空で滞空していたヘリのスライドドアが開き着物姿の美少女、未織が降り立った。彼女が降りると同時にヘリはどこかへいってしまったが、琉璃は未織に視線を向ける。

 

「なんや元気そーやなぁ。もうちょっとボコられてるかと思うたで」

 

「お生憎様ですわ。わたくしとて宝城グループの次期社長、修羅場の一つや二つくぐって来ています」

 

「あっそ。まぁそんなことはええわ、凛やレオがこっちに来たけど気づいたかえ?」

 

「ええ。先ほどわたくしを誘拐した二人が下に降りて行きましたわ。それに今も銃撃や剣戟の音が聞こえますし」

 

 琉璃の言うとおり、下の階では戦闘の音が聞こえていた。未織もそれを聞いて頷いていたが、琉璃が未織に告げる。

 

「未織。わたくしを誘拐したのは郷九薫というオカマでしたわ。立ち振る舞いは奇抜でしたが、恐らく彼は民軽ですわ。だから、名前に覚えとかありません? 司馬重工には確か民警部門がありましたでしょう?」

 

 彼女に言われ、未織は顎に手を当てて考え込む。

 

「郷九……郷九……あッ!」

 

 数秒間考え込んだ後、彼女はパチンと指を鳴らす。

 

「確かIISOに申請しに行ったとき、なんか手配書みたいな形で張り出されてたなぁ。ギザギザの歯しとったからよう覚えとるわ。確か殺しはやってへんらしくて、いずれも身代金を取ったら人質は即時解放って手口やったらしいけど」

 

「やはり彼等は民警でしたか……しかし、手配書が回っているということはもっと簡単に捕まえられそうなものですが……」

 

「変装の達人らしいから、切り抜けたんとちゃう? まぁそんなことはええわ、そろそろ戦いにも決着が――」

 

 そう未織が行った時、彼女のスマホが鳴動する。

 

「はいなー。……うん、うん……わかった、今上の階やから向かうわ。ほなな」

 

 なにやらやり取りをしている未織を、琉璃が首を傾げて眺めていると彼女はスマホをしまいこみながら告げてきた。

 

「凛とレオが二人を拘束したらしいから、いこか」

 

「早いですわね。レオなら当たり前ですが、まさかあのイニシエーターの少女までもここまで早く拘束できるとは……やはり、あの男、断風凛は相当の手馴れのようですわね」

 

「まぁそうやね。というか、今は凛の話の前にさっさと下いって状況確認が先や」

 

 未織はそれだけ言うと先に歩き出し、琉璃もそれに続いて下の階へ降りていった。

 

 

 

 

 

 

 一階へ降りた琉璃と未織の前に広がったのは、所々穴が開いた壁と、陥没した地面に空薬莢が転がっている光景だった。

 

 ちょうど部屋の中心にはロープでグルグル巻きにされたリアと、何故か亀甲縛りの薫がいた。薫は殴られたのか、所々が腫れ上がっていたが、リアは特に外傷はなく小さな寝息を立てている。まぁイニシエーターであるのだから多少の傷ならばすぐさま回復してしまうので、傷がないのも頷けるのだが。

 

「お嬢様っ! ご無事ですか!?」

 

 焦った様子のレオが駆け寄ってくるが、琉璃は小さく頷いて返す。しかし、彼は拳をきつく握り締めて頭を下げた。

 

「申し訳ありません! 私がついていながらお嬢様を危険な目に晒すなど……弁解のしようもありませんッ!! かくなる上はこの命をもってしてッ!」

 

「やめなさい、レオ。もう過ぎたことです。それにアナタとて人間でしょう? ミスくらいはあります。そのミスを次までに改善してくれれば何も言いませんわ」

 

 微笑を浮かべて対応すると、レオは再度深々と頭を下げた。その目尻にはかすかに涙も見える。

 

 するとそれを見ていた薫が縛られているにも関わらず高笑いした。

 

「なに綺麗事ほざいてんだか。そんなこと言ってもハラの底では「この役立たず」とか思ってんでショ? お嬢様」

 

 その声にその場にいた全員が言い返すことはなかったが、レオが薫の前に立って彼を思い切り殴りつけた。

 

 重い音と共に殴られた薫の頬は赤く腫れ、口の端からは血がこぼれ始めた。口の中を切ったのだろう。

 

「これで気が済んだ? ホラ、さっさとブタ箱にでもその辺のドブ川にでも捨てなさいよ」

 

 嘲笑を浮かべながらいう薫だが、そんな彼にレオの怒号が飛んだ。

 

「貴様はいつまでそんな不良じみたことを続けているつもりだ、郷九薫ッ!!」

 

「レオ……」

 

 琉璃が声をかけたが、レオはこちらを一瞥した後更に続ける。

 

「郷九、貴様もオレと同じだ」

 

「同じ? ハッ! 何が同じだってェのよ! イイトコのお嬢様の執事やってるボンボンがザケタこと抜かすんじゃないわ!!」

 

 レオの言葉に薫も激昂して声を荒げるが、レオは悲しげな表情で問う。

 

「……郷九、貴様はガストレア大戦の生き残りの兵士なのだろう?」

 

「ッ!? アンタ、どうしてそれを……」

 

「目を見ればわかる。貴様の目は一昔前のオレと同じだった。軍からほんの一握りの褒章だけをもらい、捨てられ、路頭に迷い、いつしか社会そのものを恨むようになった者の目だ。オレもそんな目をしていたころにお嬢様に拾われた」

 

 思い出すように言うレオに対し、薫も悔しげな顔を浮かべてポツリと呟く。

 

「……ええ、そうよ。アタシはもと自衛隊の特殊部隊に所属していたわ。もちろん功績だって挙げてたわ。でも、ガストレア大戦の終結の折、厄介払いをするように自衛隊を退役させられ、そのまま路頭に迷った。

 そこからは簡単だった。まるで坂道をすっころがるように転落に告ぐ転落……。まさに人生の終わりだったわね。けれど、そんなときにこの子と出会った」

 

 薫は目だけを隣で寝息を立てるリアに向ける。

 

「この子もアタシと同じだった。親に捨てられ、国に捨てられ、流れ着いた時にはもうボロボロ。それでも、不思議とアタシとこの子は気が合って、一緒に過ごしたわ。リアと一緒に居るときは、少しだけど幸せも感じられた」

 

「ではなぜ犯罪に手を伸ばした? それになぜ民警に」

 

「行ったでショ。アタシはあんた等みたいな上位層の人間が大嫌いだって。だから復讐がてらってわけよ。民警になったのだってそれに便利だったから」

 

 鼻で笑いながら言う薫だが、今まで黙っていた凛がそこで口を開いた。

 

「民警になったのは、それだけが理由ではないでしょう。リアちゃんに侵食抑制剤を注射するためではないですか?」

 

「……参ったわねェ。なんでそうも察しがいいのかしらリンちゃん」

 

 苦笑気味に答える薫だが、恐らく第一の目的はリアの侵食率を上げないためだったのだろう。イニシエーターは一日に一回ガストレアウイルスの侵食を留めるための注射が義務付けられている。それを怠れば常人よりは遅いペースではあるものの、すぐに限界に達してしまう。

 

「それほどこの子を思えるのになぜ犯罪など……」

 

「だから言ってんでショ? 全てはアタシらを見捨てた社会に対する報復のためよ。ホラ、これで満足した? したならもう好きにしなさいよ」

 

 あきらめた様子で天井を仰ぐ薫だが、そこで琉璃が告げた。

 

「そこまで社会に不満があるのなら、わたくしの元に来たらどうです?」

 

「は?」

 

 キョトンとする薫だが、彼女はロールがかかった金髪をサラっとなでながら告げる。

 

「ですから、わたくしの下で働きなさいと言っているのです。アナタの実力は素晴しいものですし、ちょうどウチも司馬重工と同じく民警部門を作ろうと思っていたところです。なので郷九薫、わたくしの軍門にくだりなさい」

 

「ハッ、アタシに仲間になれって? まったく、冗談も休み休みいいなさい――」

 

「冗談ではありませんわ。アナタの力をここで捨て置くにはもったいないと思っただけです。無論、ただでとはいいませんわ。入った暁には今まで奪った身代金を全額返却していただきます。待遇はそれなりに良くしますわ。IISOにも話を取り付けましょう。さぁ、どうします?」

 

 怪しい笑みを浮かべながら言う琉璃だが、薫は隣のリアを一瞥した後こちらに問うてきた。

 

「この子の安全も保障してくれるんでしょうね」

 

「もちろん。それは保障いたしましょう」

 

「……わかったわ、アタシの負けよ。アンタの軍門に下るわ。でも、果たしてアンタの下で働いて世界が少しでも変わって見えるのかしら?」

 

「ええ、わたくしが見せて差し上げます。この世界にはまだまだ面白いことがたくさんあると」

 

 そういった琉璃の笑顔は何よりも明るく、そして優しかった。

 

 

 

 

 彼女らのやり取りを見ていた未織が凛に声をかける。

 

「なんやウチら、かなり蚊帳の外やなぁ」

 

「まぁあちらの問題ですからね」

 

 答える彼の頬や袖には所々切った跡が残っており、薄く血が滲んでいた。

 

「なんや凛も大分怪我しとるなぁ」

 

「リアちゃんがなかなかに強かったんですよ。メリケンサックにはちょっと刃がついてましたし」

 

 肩を竦めて答えた凛に、未織は「ふーん」と答えたあと彼の背中をポンと叩いた。

 

「まぁ今夜はお疲れさんやった。もうパーティはどーでもええから帰ろか」

 

「パーティは本当によろしいのですか?」

 

「もともとあんまし出る意味もなかったからなぁ。ホラ、あそこの四人のせてさっさと帰るでー」

 

 未織はヒラヒラと手を振りながら先にビルから出て行ってしまった。凛もそれい方を竦めると、琉璃達を呼び六人はパーティ会場へ戻り、薫とリアは一度宝城グループのスタッフに引き渡され、琉璃とレオも泊まっているホテルに戻っていった。

 

 宝城グループの令嬢誘拐事件は、結局多くの被害を出さぬまま終わりとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして事件から二日が経ち、いよいよ凛が執事を辞める日がやってきた。司馬邸の執事も皆回復し、今日の昼には戻ってこれるらしい。

 

 凛と未織の姿は司馬邸の玄関にあり、凛は執事服から普段着に戻っている。 

 

「二週間お疲れさんやったなぁ。凛さん。まったく、最後の最後で琉璃が突っかかって来るとは思わへんかったわー」

 

「フフ、そうだね。でも僕も面白い体験をさせてもらって楽しかったよ。まぁ途中の格ゲー三昧は流石に疲れたけど……」

 

「結局勝てへんかったから、また後で勝負を挑みにいくでー」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべる未織に凛は肩を竦めたが、時計に目をやってから彼女に告げる。

 

「それじゃあそろそろ事務所に戻ろうかな」

 

「ん、もうそんな時間か。なんやいつでも会えんのに寂しいもんやなぁ」

 

「そうだね、僕ももうちょっとぐらいはしても良かったけど、これ以上やると杏夏ちゃんたちにも迷惑がかかるからね」

 

 言いつつ凛はバイクに跨り、ヘルメットを被ろうとした。しかし、そこで何かを思い出したように、未織をチョイチョイと誘う。

 

 彼女はそれに首をかしげつつも、こちらにやってきた。すると、凛はおもむろに未織の頭を軽くつかんで自身に引き寄せると、彼女の耳元で囁いた。

 

「……またいつでもお誘いください。ご主人様(マイロード)

 

 その声は優しさと、キザッぽさ、そして凄まじいまでの色気が含まれていた。すると、それを聞いた未織は顔を真っ赤にさせてしまった。

 

「それじゃあね、未織ちゃん」

 

「あ、ちょッ!!」

 

 声をかけられたが、凛は振り返らずにバイクを発進させて司馬邸を後にする。だが、すぐに未織の大きな声が聞こえた。

 

「絶対にまた呼んで今度はもっと迷惑かけるから覚えときや、凛ーーーッ!!!!」

 

 その声に軽く手を挙げて答え、凛はバイクを加速させた。

 

 

 

 

 事務所に戻る途中で、凛は空を見上げた。

 

 突き抜けるような青空はとても清清しく、時折肌を撫でる風は秋を感じさせる。

 

「もう秋かぁ……。出来れば何事もなく終わってほしいものだけどねぇ……」

 

 などと苦笑しながら凛は視線を前に戻してバイクを走らせた。

 

 こうして、凛の二週間限定の司馬家の執事としての仕事は幕を下ろした。未織のわがままにつきあったり、パーティに出席したり、ライバル会社の令嬢が誘拐されたり、オカマに気に入られたり……思い返せば多くのことがあったと思いながら、凛は皆が待つ事務所へと戻っていった。

 

 しかし、事務所に戻ってから早々、飛び掛ってきた焔に危うくひん剥かれそうになったのは内緒の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京エリア第三十二区洋上特別犯罪者収容刑務所――。

 

 その中にある檻では一人の男が月明かりに照らされたパイプ椅子に座り、キリル文字が入ったハードカバーの本を読んでいる。

 

 黒い囚人服を着込んだその男の特徴は、日本人離れした彫りの深い顔に、割れた顎。月光に照らされる金髪はどこか幻想的な雰囲気を醸し出す。髭も生えているものの、不衛生さは感じられない。

 

「……そろそろか」

 

 テノールの声が独房に響いたが、誰もそれには答えない。しかし、彼は不適な笑みを浮かべていた。




はい、これにて執事編終了です。
戦闘回かと思った? 残念お話回でした!!

……はい、まぁそんな感じです。
戦闘メインにしても良かったんですが、勝ちは見えていたし、そんなに痛めつけてもしょうがないですからね。
薫さん、割と簡単に仲間になってくれます。まぁその辺は琉璃さんのカリスマでしょうなぁ。
最後の方は若干凛の色気を出してみました(何言ってんだコイツ……)
そして一番最後は七巻で登場するリトヴィンツェフさんです。……名前が打ちづらいことこの上ないッ!!

そして、とりあえず今日でアンケートは閉め切ります。いつまでもだらだらやってても仕方ないですからね。とりあえず集計すると、2の杏夏の話ですね。皆様しばしお待ちください。
次回は真面目に七巻の前日談でもしますかね。

ではでは、感想などありましたらよろしくお願いいたします。

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