ブラック・ブレット『漆黒の剣』   作:炎狼

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第四十九話

 木更たちを自分達の事務所に連れてきてから数分後、大手ジャンクフード店の袋を持った零子と夏世が帰ってきた。

 

 二人はそのままジャンクフードの袋をガラステーブルの上に置くと、中から小袋をだして、それを持ったまま自分のデスクについた。

 

「すみません、零子さん。三人を独断で保護しました」

 

「構わないわ、君があの子達を大切にしているのはわかっているから。ハンバーガーも一応ここにいる全員に渡るように買って来たから、まずは腹ごしらえでもしてて」

 

 彼女は全員に指示したが、全体的にイライラしているようだった。けれど凛はあえてそれには触れずに袋を開けて皆にハンバーガーとポテト、そして飲み物を配った。

 

 しかし、蓮太郎のことが心配なのか三人は喜んで食べているという雰囲気ではない。

 

「三人とも食べにくいのはわかるけれど、多少はお腹に入れておかないといざって時に動けないから」

 

 凛が言うと、三人は俯いたまま少しずつ食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事が終わって三十分ほどしたとき、不意に零子が皆に漏らした。

 

「さっきとある情報口から今回の事件と関係のありそうな情報をもらったわ」

 

 その話に一番反応を示したのは木更達三人だった。零子はそれを確認すると、そのまま皆に説明を始めた。

 

「情報は二つ、一つはさっき凛くんたちに話した『新世界創造計画』。そしてもう一つは『ブラックスワン・プロジェクト』。二つ目に関してはまだ情報が少なすぎるけど、蓮太郎くんが逮捕されたことに少なからず関係はしているでしょうね」

 

「その根拠は?」

 

「簡単よ、蓮太郎くんから直接聞いた人からの情報だから」

 

「里見くんから!?」

 

 零子の言葉に木更がソファから立ち上がって聞くと、彼女はそれに静かに頷いた。

 

 凛もまたそれを見ると、内心で小さく笑みを零す。

 

 ……金本警部か。あの人も無理をしなければいいけれど。

 

 するとそこで事務所の前で車が止まる音が聞こえた。零子がそちらに目を落とすと、彼女は軽く舌打ちをした。

 

「こういうときだけ動きが早いわね。夏世ちゃん、延珠ちゃんとティナちゃんを連れて一階の隠し通路に隠れてなさい」

 

「警察ですか?」

 

「そうね、まったく嫌になるわ」

 

 凛の問いに零子は頷きながらうんざりしたように溜息をついた。その間に夏世はソファに腰掛けていた二人に声をかけ、給湯室の奥にある梯子から一階へ降りるように促した。

 

 二人を半ば押し込む形で一階に降ろした夏世は床下収納の蓋を閉めながら零子に静かに告げた。

 

「では隠れていますので」

 

「静かにね」

 

 夏世はそれに静かに頷くとそのままスッと階下へ消えた。

 

 彼女等を見送ったあと、まだ警察が踏み込んでくるまで時間があるので凛はお茶の準備をして、さも木更だけをもてなしているように見せる。

 

 一方杏夏と焔も協力して先ほどまで二人がいたところを入念に拭き取った。

 

 それらが完了した瞬間、事務所のドアノブが回され、数人の警察官が入ってきた。

 

「全員その場を動くな!」

 

 鋭い一喝は誰もが震え上がるものだったのかも知れないが、黒崎民間警備会社の面々はそんなもの何処噴く風だ。

 

「あらあらあら、警察の方々が一体何の御用でしょうか?」

 

 零子は落ち着き払った様子で凛がいれたコーヒーを飲みながら問うた。彼女の軽い受け答えに、警察官は拍子抜けしたように事務所内を見回すが、どうやら目当ての人物はいなかったようだ。

 

 すると警察官数人を割るように、高身長で精悍な顔立ちの眼鏡をかけた青年が現れた。

 

「昨日捕縛された里見蓮太郎のイニシエーター、藍原延珠と、別の事件での重要参考人とされるティナ・スプラウトがここに入るのを目撃したと言う情報が入ったので捜査に来たんですよ。黒崎零子社長」

 

「へぇ、そうなの。でもおかしいわねぇ、そんなの下っ端に任せておけばいいのになんで貴方のような人が出てくるのかしら? 櫃間篤郎警視」

 

 肩を竦めながら零子が問うと、櫃間も薄く笑みを浮かべて彼女に説明した。

 

「私とて時には現場に出ることもあります。しかし、今回は私の婚約者である天童さんが絡んでいるので――」

 

「――婚約者じゃなくて、“元”婚約者でしょう? 先日お見合いをした程度でもう昔に戻った気でいるとは恐れ入りますね」

 

 櫃間の言葉の途中で割って入ったのはコーヒーを片手に椅子の背もたれに寄りかかっていた凛だった。

 

 彼の発言に警察官の数人は苛立たしげな表情を浮かべ、木更は少しだけ心配そうな視線を送る。

 

「確かに断風くんの言うとおり気が早すぎたようですね。申し訳ない、ではティナ・スプラウトと藍原延珠を渡してもらえますか?」

 

「渡してもらえますかと言われても彼女達はここにはいないのよねぇ。どうしてもここにいるといいたいのであればどうぞ好きにお調べになってくれて構いませんわ」

 

 零子は人のよさげな笑みを浮かべたまま彼等を促すと、櫃間は静かに礼をしたあと警察官達に探すように命令を下した。

 

 しかし、探せど探せど櫃間らの目当てである二人は一向に見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警察官達が必死で延珠とティナを探している中、当の二人は夏世に連れられて一階の奥にある、零子の銃器が置いてある部屋の壁の中で息を潜めていた。

 

「天童社長達、大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫ですよ。あの方達は何もならないでしょう」

 

 壁に背を預けてティナの問いに答えた夏世は懐中電灯の電源を入れた。

 

 真っ暗だった空間に薄オレンジ色の光りが行き渡り、二人は少しだけホッとした様子だった。

 

「でもすぐにばれてしまうのではないか?」

 

「ここは外から見ると隙間すらなくて風も通りません。それに壁を叩いて音の変化を感じようとしても、この壁自体衝撃を吸収してしまいますから他の壁と何ら変わりませんよ」

 

 体育座りをしながら微笑んだ夏世の説明に延珠とティナはそれぞれ感心したように頷いたが、そこでティナがすこし俯きながら呟いた。

 

「でも、どうして私達が隠れることになったんでしょうか……」

 

「それも……そうだな。なぁ夏世? おぬしは何か知っておるのか?」

 

「はい、知っていますが……ここだと入り口に近すぎますからもう少し奥に行ってから話しますね」

 

 夏世は立ち上がると二人を連れて通路の更に置くに進み、少し言ったところで二人を座らせ、自分も座って話を始めた。

 

「ではまず最初にティナさんが警察から狙われる理由をお話します。先日東京エリアの新幹線に乗っていた海老原義一という男性が狙撃されて殺害されました」

 

「走行中の新幹線に乗っていた被害者を狙撃!?」

 

「はい、そしてその事件とティナさんが狙われる因果関係は唯一つです。貴女は以前、聖天子様暗殺未遂という罪を犯しています。現在は聖天子様の計らいで何とかなっていますが、警察からすれば今回殺人の容疑がかけられている里見さんの仲間である貴女ならやりかねないと思っているのでしょう。

 もし、貴女が警察に捕まれば恐らく出てくる事は難しいでしょう。そして最悪の場合死刑もありえます」

 

 残酷な発言だったが、夏世は予測されることの全てを話した。半端な希望を持たせるよりは全てを話し予測される状況を教えたほうがいいと思ったからだ。

 

 しかし、ティナは泣き出すこともなく夏世の言ったことを受け止めて静かに頷いた。

 

「それじゃあ、私がお兄さんや天童社長や延珠さんとこれからも一緒にいる為には、逃げ切るしかないと言うことですね」

 

「はい。では、次に延珠さんですが貴女は警察に狙われているのではなく、むしろIISOに狙われている可能性が高いです」

 

「どういうことだ? 妾には蓮太郎がおるからIISOがなにかしてくることなどほとんどないぞ?」

 

 延珠は小首を傾げた。それもそうだ、IISOが関与してくるなど普通に民警をしていれば殆どないことだからだ。

 

 だが今回は状況が状況だ。夏世はまたしても最悪の場合を彼女に話す。

 

「いいですか? 確かに今の状態であれば貴女には里見さんがいて、同じアパートで暮らせていますが、これは里見さんの持つ民警ライセンスのおかげです。このまま里見さんが被疑者のままでいて無事に無罪が獲得できれば何事もなく再会出来るでしょう。

 ですが、もし里見さんが被告人になって有罪になったとき、彼の民警ライセンスは剥奪されてしまいます。この意味がわかりますか?」

 

「蓮太郎と……離れ離れになってしまう?」

 

「そうです。そして貴女はIISOに身柄を拘束されまったく別のプロモーターと組まされるでしょう」

 

「い、いやだ! それは絶対にいやだぞ!!」

 

 延珠は目尻に僅かながら涙を溜めていったが、そのとき夏世が彼女の口を塞いで懐中電灯のスイッチを切った。

 

 数人の人物の話し声が聞こえたからだ。

 

 ……声からして人数は四人。

 

 壁に耳を当てながら状況を確認した夏世は、延珠の口から手を離して懐中電灯の光りを最小にして、二人に見えるように唇の前で人差し指を立てた。所謂「シーッ」の合図だ。

 

 二人もそれを確認できたのか声を潜める。

 

 狭い通路内に三人のかすかな呼吸音だけが聞こえる。そのまま数分が経過し、やっと声が聞こえなくなり、扉が閉まる音が聞こえた。

 

「……行ったみたいですね……」

 

 ティナが言ったが、夏世は懐中電灯をつけながら小さく言った。

 

「……もう少しここにいましょう。零子さんから連絡がくるまではいた方がいいです……」

 

 彼女の言葉に二人は静かに頷き、三人は壁に背を預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ティナと延珠の捜索が始まってから二時間。結局二人がここにいると言う証拠も発見できないまま、櫃間と数人の警官達は事務所のある二階にいた。

 

「だから言ったじゃないですか。二人は最初からいないって。私達は蓮太郎くんが逮捕されたって言うから木更ちゃんが不安だと思ってここに招いただけなんですよ」

 

 零子は警察官達と櫃間を若干挑発するように言うと、彼等に対して手で合図した。

 

「どうぞお引取りくださいな。お出口はそちらですから」

 

 その声に警察官達はぐっと手を握り締めていたが、櫃間は静かに礼をして告げた。

 

「お騒がせして申し訳ありませんでした。では」

 

 櫃間の言葉と共に警察官達も出口から出て行くが、最後の一人となった櫃間は木更のほうに振り向いて少しだけ悲しそうな顔を見せながら言った。

 

「天童さん、私も今回の事件には心を痛めています。彼が殺人をしたとは私も思っていません。しかし、これは仕事なので仕方のないことなのです」

 

「はい……わかっています」

 

 木更がそう答えると、櫃間は思い出したように告げた。

 

「あともう一つ、このままご自宅の事務所まで戻られるのはいささか心配なので私が送って――」

 

「――結構です」

 

 答えたのは凛だった。木更はそれに驚いたような表情を浮かべたが、彼は間髪入れずに櫃間を突き放した。

 

「彼女は兄貴分である僕が責任を持って送ります。櫃間さんはお忙しいのですからご無理はなさらずにお仕事に専念なさってください。

 あぁでもせっかくですからお土産の一つでもお渡しいたしますよ。焔ちゃん」

 

「はい、兄さん」

 

 凛が言うと焔が缶でできた紅茶のパッケージを持ってきた。

 

「櫃間さんにお似合いの上質な紅茶です。お仕事のリラックスのときなどに使ってください」

 

 とても人のよさげな笑みを浮かべて凛が言うと、櫃間は小さく「……ありがとうございます」とだけ告げて事務所を後にした。

 

 そして事務所の前から彼等の車両が完全になくなると同時に零子が大きな笑いを漏らした。

 

「ハハハハッ!! 凛くん、アレはやりすぎよ。あの男相当プライドを傷つけられていたわよ?」

 

「そうですかね? 僕はいたって普通の対応をしただけなんですが」

 

「いやいやいや、凛先輩あの人に対して「早く帰れ」感すごかったですよ!?」

 

「でもそこが兄さんの素晴しいところ……さすがです兄さん!」

 

 口々に言う中、凛は肩を竦めていたが木更は口を半開きにしたまま固まっていた。けれどすぐに我に返ったのか軽く頭を振ると彼に詰め寄った。

 

「り、凛兄様!! なんで櫃間さんを挑発するんですか!?」

 

「うーん……なんというかねぇ。僕、あの人ことちょっと信用できないんだよね」

 

「信用できない……?」

 

 木更が小首を傾げると、凛は静かに頷いてソファに腰掛けた。

 

「そう、だって変じゃない? 五年もたってるのにいきなりお見合いとかさ」

 

「それは……そうですけど……」

 

 やはり木更もそれになりに思うことがあるのか顔を俯かせるが、そこで給湯室の床が開いて三人が顔をだした。

 

「ただいま戻りました」

 

「ん、お疲れ様問題はなかったかしら?」

 

「はい。お二人にも事情をお話しました」

 

 夏世が言うと延珠とティナが少々落ち込んだ様子でやってきた。しかし、すぐに摩那達が駆け寄り二人を励ます。

 

 すると、二人は摩那達にまかせたほうが良いと踏んだのか、零子は凛達を手招きで呼び出し静かに告げた。

 

「それじゃあこれからの方針を決めようかしらね」

 

 ニヤリと笑みを浮かべた彼女の顔はサディストのそれだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒崎民間警備会社から戻った櫃間は先に同行した警官達を戻らせて自分は適当な地下駐車場に停めた車の中にいた。

 

 そして、彼は左手を思い切り助手席にたたきつけた。

 

「クソッ!! あのガキ……断風ぇ……!! 行く先々で私の邪魔をしやがって……クソクソクソ!!」

 

 普段の彼からは想像もつかないほど汚い言葉を吐き散らしながら櫃間は血が滲むほど拳を握り締めた。

 

 すると彼の視線に先ほど凛からもらった紅茶が見えた。彼はそれをこの場で捨ててしまおうかと思ったが、窓を開けた瞬間やめた。

 

「……いいや、計画が完了した瞬間、勝利を味わうために取っておくのもいいじゃないか」

 

 口元を吊り上げた彼は窓を閉めて紅茶を助手席に戻した。

 

 するとそこで彼のスマホが鳴る。

 

「私だ」

 

『どうも、こちら「ネスト」です』

 

「そんなことはわかっている。それよりもなんだ?」

 

『はい、そろそろリジェネレーターが必要な頃合かと思いまして』

 

「フン、ヤツはまだ温存しておけ。来るべき時までな」

 

『ほう。早々に『断風凛』を片付けておいた方がいいとおもいますがね。計画は多少ずれてきていますよ?』

 

 ネストが言うが、櫃間はそれも鼻で笑って言いのけた。

 

「まだ大したことではないだろう。天童木更を篭絡するなどいつでもできるし、私の権限を持ってすれば里見蓮太郎を被告人に仕立て上げることなど造作もない」

 

『……そうですか、ではそうしましょう。この計画自体はあなた方が権限を持っていることですし』

 

 それだけ言い残すとネストのほうから通話を切った。櫃間はそれに大した反応も見せずに形態をしまうと車のエンジンをかけて警察署に向かった。

 

「クク……今に見ていろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕刻、凛は木更達を連れて自宅へ戻っていた。

 

「とりあえず今日は早く寝ようか。三人は僕の部屋使っていいから」

 

「えぇ!?」

 

 驚いた声を上げたのは木更ではなく焔だった。

 

「どうかした?」

 

「あ、いえいえなんでもないです! そ、それよりも兄さん、明日調べものがあるので出てきますね」

 

 焔は最初こそ笑みを浮かべていたが、最後の方は真剣な顔をしていた。凛も彼女がやろうとしていることが理解できたのか小さく頷く。すると、そのやり取りを眺めていた摩那が溜息混じりに言った。

 

「というかさー、さっさとお風呂はいろーよ。今日も暑かったし」

 

「そうだね、それじゃあお風呂先に入ってていいよ。僕は夕食の準備をしちゃうから」

 

「はーい、んじゃ延珠、ティナ、翠。行こ」

 

「う、うむ」

 

 摩那に誘われ、延珠達はバスルームへと向かった。

 

「子供達が入った後は二人が入っていいからね」

 

「はい、……凛兄様、本当にいろいろとありがとうございます」

 

「気にしないで、君は家族も同然だからね」

 

 凛が微笑むと、木更も微笑み返した。しかし、そんな二人を見つめる焔は何か気にくわなそうな表情を浮かべると凛に詰め寄った。

 

「兄さん! 私も家族ですよね! ねっ!?」

 

「もちろん、焔ちゃんも僕の大切な家族だ」

 

 大分迫力のあるつめより方だったが、凛は特に気にした風もなく彼女の頭を撫でる。

 

 それを見ていた木更はどこか胸の奥で何かがチクリとさすようなものを感じた。

 

 ……アレ? なんで私……。

 

 木更は少しだけ疑問に思ったがすぐにそれを振り払い、凛に告げた。

 

「それじゃあ今日は私がお料理を」

 

「それはやめて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆で夕食を済ませた後、凛と摩那、焔と翠はリビングに集まっていた。

 

 木更達は気疲れがたまっていたのか今はぐっすりと眠ってしまっている。

 

「これからどうするんですか、兄さん」

 

「とりあえずは蓮太郎くんを釈放してあげたいけれど……」

 

「それは難しいよねぇ」

 

「確かに。今のままでは里見さんを助ける事は無理かもしれません」

 

 凛の言葉に摩那と翠も静かに頷いた。凛もそれはわかっているのかそれに同意するように頷くと「まぁそれは後から考えるとして」と言ったあと、焔に問うた。

 

「焔ちゃん、昼間に櫃間さんに持たせた紅茶の中にはちゃんと仕込んである?」

 

「もちろんです。缶の中にはばれないようにしっかり仕込みましたよ」

 

 凛の問いに焔はまるで小悪魔のような悪戯っぽい笑みを浮かべた。それを聞いていた翠たちは何のことなのかわかっていないのか首をかしげていた。

 

「さて、それじゃあ明日僕と摩那は蓮太郎くんのところに行くから、焔ちゃんは調べ物の方よろしくね」

 

「任せてください!」

 

「調べものってなんですか?」

 

 二人の会話を聞いていた翠が焔に問うた。すると、焔は翠の頭を撫でながら告げる。

 

「それはお部屋で話そうか。それじゃあ兄さん、お先に」

 

「うん、おやすみ」

 

 凛が言うと、焔も軽く会釈をしたあと自室に戻っていった。彼女等が消えると、凛の服の袖を摩那が引っ張りながら問う。

 

「で、凛? 私は今日何処で寝る感じ?」

 

「ここだね。ソファがあるし」

 

「なるほどねぇ、まぁ、たまにはいいかも。ベッドじゃなくてソファもね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻った焔と翠はベッドに向かい合いながら座っていた。

 

「それじゃあさっきの質問の答えだけど。翠、私の一族がどんな一族かは兄さんから聞いてる?」

 

「はい、大まかな事は聞きました。確か元忍者の一族でしたよね?」

 

「そう。私達露木一族は古来から断風家に使える忍の一族。昔は暗殺やらそういうのもやってたけど、今はそういうのはないけどね。

 だけど、そんな一族の中でも脈々と現代まで受け継がれてきたのが『露木隠密術』っていってね。簡単に言えば敵の情報を掴んだり、潜入したりそういうのをするんだよ」

 

 焔の真面目な声音に翠も思わず背筋が伸びて、彼女の話を聞く。

 

「それでね、今回兄さんからある二人の人物を調べて欲しいって言われているの。調べものっていうのはそのこと」

 

「危険なことなんですか?」

 

「だろうね、かなり危険だと思う。だけどね、翠私はやらなくちゃいけないんだよ、そのあたりを理解してくれるかな?」

 

「はい……理解はできます。けど、一つだけいいですか? その調べもの私も連れて行ってください」

 

「へ?」

 

 翠から出た思わぬ言葉に焔は素っ頓狂な声を上げてしまったが、彼女の目尻に少しだけ涙が浮かんでいるのを見た。

 

 同時に、焔は理解することができた。彼女がどうして一緒に連れて行って欲しいのかを。

 

「もう、パートナーがどこか知らないところでいなくなってしまうのは嫌なんです……! 足手まといには絶対になりませんからお願いです焔さん、私も連れて行ってください!」

 

 彼女の力強い宣言に焔は微笑むと、両手を広げて彼女を招いた。

 

「おいで、翠」

 

 翠はそれに答えるように彼女の胸に収まった。そして焔は翠を静かに抱きしめる。

 

「わかった……翠も連れて行く。でも、危なくなったらすぐに逃げるんだよ?」

 

「はい……」

 

 抱きしめられながら翠は頷いた。そして、翠は焔の“匂い”を嗅いでみた。

 

 ……あぁ、この匂いなら大丈夫。

 

 自身の持つ特技、「匂い占い」で占ってみた結果、焔からはとても優しくて暖かい匂いがした。




あー
話が全く進まない……
しかし、とりあえずこれで次ぐらいで蓮太郎に会って色々できるかな

というか凛さんが櫃間挑発しすぎてワロリンヌw
おそらく保脇と似たものを感じたんでしょうな!

後半では翠と焔が共に行動する感じですしこれぞ隠密って感じを出して行きたいですね。
そして一向に現れない火垂……この調子だといつになるやら……
リジェネレーターとの戦闘だっていつになるかわかんねぇよ……w

では変な風に愚痴ってしまいましたが、これからも頑張ります。

感想などありましたらよろしくお願いします。

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