大阪エリア某所。
瓦屋根の塀に囲まれた純和風建築の日本家屋の庭に二人の女性の人影があった。
一人は昨日に凛と連絡を取っていた露木凍という女性であり彼女は以前と同じように長い髪をポニーテールに結わいていた。
そして彼女の前にいるのはシャギーの入った肩まである赤みがかった髪をしている少女だった。
どうやら二人は組み手をしているようで、お互いに蹴りや拳での殴打を放っていた。
すると少女の方が態勢を低くし凍の懐に潜り込んだ。
「ハッ!!」
短い気合の声と共に炸裂したのは凍の顎を狙ったハイキックだ。しかし、凍はそれを造作もないように回避すると、少女の足首を引っ掴んで逆方向に放り投げた。
放り投げられた少女は一瞬悔しげな顔をするが、すぐにハッとし凍を見やった。
しかし、既に先ほどの場所に凍の姿はなくその代わりと言うように頭上から彼女の声が聞こえた。
「追撃がくるかもしれないと予測するのはいいが、もう少し早く反応しておくべきだな」
その声に反応した少女が上を向くと、頭上にはいつでも攻撃を放てる態勢の凍がいた。
少女は突発的に防御態勢を取る。瞬間、防御のために身体の前で組んだ腕に衝撃が走り、彼女はそのまま地面に急降下した。
だが、地面に叩きつけられる寸前に何とか身体を反転させた彼女はすぐさま次の攻撃に備えるが立ち上がった瞬間首筋につめたい感触が押し当てられた。
少しだけ頭を動かしてそちらを見ると、首筋にはバラニウム製のクナイが押し当てられていた。
「う……」
「終了だな。とりあえず一時休憩にしよう」
凍は静かに告げるとクナイを胴着の袖に戻した。凍がクナイを収めたのを確認すると、少女は緊張していた身体をほぐすように大きく息をついた。
「はぁ~……。凍姉ぇ相変わらず強すぎ」
「姉が妹に負けるわけには行かないからな。それよりも焔、桜がお茶を淹れてくれた様だから行こう」
彼女が言うとおり、家の縁側の方で桜色の髪をした童女がグラスに麦茶を淹れているところだった。
焔もそれに頷くと凍と共に縁側の方まで駆けて行った。
「お疲れ様でした。凍様、焔様」
桜色の髪をストレートにした童女、桜は小さく一礼したあと二人に麦茶の入ったグラスを手渡した。
「ああ、ありがとう桜」
「ありがとー。ふぅ、生き返るー」
焔は受け取った麦茶を一気に飲み干すと、桜が持ってきたタオルで汗を拭った。
三人は縁側で他愛のない話をしていたが、しばらくすると凍が静かに切り出した。
「焔。昨日凛にお前が了承したことを伝えておいた。土曜の夜の便で東京に行け。チケットは既に予約してある。友人達には別れを済ませて置けよ」
「了解! 友達と別れるのは少し寂しいけど……兄さんと一緒にお仕事できるのはすごく嬉しい!
あぁ……早く会いたいなぁ……愛しの兄さん……」
後半のほうから段々怪しい声を漏らし始めた焔に凍が苦笑いを浮かべていると、凍の傍らに控えていた桜が彼女に耳打ちした。
「凍様、その凛様と言うのはどなたなんですか?」
「ん? あぁ、そういえば桜には言っていなかったか凛は私達露木家が古来より仕えてきた断風家の現当主だ。まぁオレの曾爺さんの代まで主従関係ということで露木の者は断風家の当主を『御館様』と言っていたんだがな、爺さんの代に変わってからそういうのはなくなったんだ。まぁ親戚みたいな関係になったんだ。
だけど焔は小さいころから凛のことが大好きでな。それはもう猟奇的なまでに。焔が抱いて寝てる人形あるだろ? アレは凛のことが好き過ぎて作った『りんぐるみ』なんだよ」
「なるほどそういうことだったのですか。ですが、なぜ今回焔様が凛様に呼ばれたのですか?」
桜が首をかしげながら聞くと、凍は静かに頷いたあと説明を始めた。
「実は凛のところに一人プロモーターをなくしたイニシエーターの少女がいるらしくてな。このままだといずれIISOに引き取られてしまうことから、何とかしてやりたいんだとさ。
それで焔に白羽の矢が立ったわけだ。焔は最近民警ライセンスをとったわけだしな。それに焔にはまだ、オレで言うお前のようなイニシエーターはいないわけだ。ちょうどいいと思ってな。まぁ凛のところにいる子もいい子だそうだから問題はないだろう」
肩を竦めつつ凍が言うものの、彼女の隣では夢心地のような焔がポワポワとした空気を醸し出していた。
……大丈夫なんでしょうか。
焔の姿を見ながら桜は少々心配になった。
「ヘックシ!!」
事務所でいつものように仕事をしていた凛が唐突にくしゃみをした。
「風邪ですか?」
「ううん、違うと思う」
隣に座っている杏夏の問いを否定しながら言う凛だが、そこで窓際でパソコンをいじっていた零子が聞いた。
「そういえば凛くん、翠ちゃんの新しいプロモーターだが見つかったのか?」
「はい。昨日その子のお姉さんからメールをもらって、その子も了承してくれたみたいです」
「ほう。それで翠ちゃんの新しいプロモーターになる人物はどんな子なんだ?」
零子が真剣な眼差しで問うと、凛はそれに対し静かに頷いて杏夏にも説明するように告げた。
「名前は露木焔。民警にはつい先日なったばかりですが、戦闘技術やその他の技術が秀でていたため序列は九千六百三十位。年齢は蓮太郎君たちと同じ十六歳です」
「焔ってことは女の子ですよね?」
「そうだね。性格はいたって優しい子です。翠ちゃんとも仲良くなれるでしょうし、何より彼女のお姉さんも民警ですから。イニシエーターの子とも過ごしています」
「なるほどな。しかし、今お姉さんも民警と言ったがかなりの使い手なのか?」
零子が問うと凛は頷き、そのまま説明を再開する。
「彼女の名前は露木凍、序列は百六十三位。これは僕の独自の解釈ですが単純な戦闘能力で言えばあの影胤さんよりも上だと思っています。戦闘は蓮太郎くんのような拳や足を使った体術で『露木体術』とよばれる体術の皆伝者です。
因みに蓮太郎くんには悪いですが今の彼では凍姉さんには勝てないでしょう」
「そこまでか……。ではもう一つ、君はどうしてそんな人物と面識を持っているんだ?」
「それはですね、断風家と露木家は昔は主従の関係だったんです。ですが、今はそれが解消されて親戚同士という付き合いと言う感じです。しかし元々露木は大阪に家があるので、最近はあまり会っていなかったんですけどね。でも、時折連絡は取ってました」
凛が説明を終えると零子と杏夏はそれぞれ深く頷いていたが、そこで杏夏が問いをなげかけた。
「お姉さんが免許皆伝者って言う事は妹さんもそうなんですか?」
「うん、焔ちゃんも免許は皆伝。だけど、凍姉さんからするとまだまだみたいだけどね」
「ふむ、それでその事は翠ちゃんには話したのか?」
「ええ、今日の朝話しました」
「反応は?」
「そこまで戸惑ってはいませんでした。後は本人達が会ってみてって感じですね」
凛の言葉に零子も納得したようだった。
彼女からしてみても、プロモーターを失った翠の精神面が心配なところではあるのだろう。
そして零子が新しいタバコに火をつけようとしたとき、事務所の扉が勢いよく開け放たれた。
三人は瞬間的にそちらに振り向く。すると、そこにはピクピクと身体を小刻みに震わせている木更がいた。
「あれ? なんでしょう私デジャヴが……」
「これはまた……」
凛と杏夏がなんとも微妙な表情をしていると、そこで零子が凛に命じた。
「凛くん。君、今日はもう帰っていいぞ。帰ってそこで伸びてる木更ちゃんを看病でもしてやれ」
「え? でもまだ仕事がおわってないで――」
「社長命令」
零子は腕を組みながら鋭い眼光で彼を威圧した。それに対し、凛は小さくため息をつくと木更をおんぶした。
「それじゃあお疲れ様でした。零子さん……ありがとうございます」
凛は一礼しながら事務所から出て行くが、零子は軽く手を上げただけであった。
彼がビルから出て行ったのを確認した零子は「やれやれ」と言いながらタバコに火をつけた。
「あの様子からするとまだギクシャクしてたみたいだな」
「え?」
「なんだ、杏夏ちゃんは気がついていなかったのか? ホラ、以前凛くんが木更ちゃんや蓮太郎くんと出かけたことがあっただろう? あの次の日から凛くんの様子がおかしかったんだよ。まぁ大方木更ちゃん絡みなんだろうとは踏んでいたがね」
「それでそれを解消させるために看病をって感じですか」
「ああ。さて、私達も残ってる仕事はちゃっちゃと終わりにするか」
零子の言葉に杏夏は頷くと残った仕事を片付けるためにデスクに向かった。
木更は鼻腔をくすぐる匂いと共に目を覚ました。
そして自分がソファの上に寝かされているのだと気がつくと彼女はボーっとする頭を振りながら匂いのする方に視線を向けた。
視線の先にはエプロンを付けてキッチンに立つ人影が見えた。木更は最初それが誰かわからなかった。しかし、その人物が振り向いた瞬間木更はその人物が自分のは母の姿と重なった。
『よく眠っていたわね、木更』
そんな風に声をかけられた気がした。
「お母……様?」
彼女の目尻から涙が一滴こぼれる。しかし、同時にそれによって彼女は現実に引き戻されることとなった。
「木更ちゃん?」
聞き覚えのある青年の声に木更はハッとして目を擦った。
「凛……兄様。あれ、私……」
「ウチの事務所に倒れこみながら入ってきたんだよ。またお腹減らしてたみたいだね」
凛は言いながら小さい土鍋をトレイにのせながらソファの前のテーブルに運んだ。
鍋に入っていたのは卵粥だった。
「こんな暑い日にお粥もどうかって思ったんだけど、空腹の時に消化の悪いもの食べさせちゃうとお腹がビックリしちゃうからね。熱いけど冷ましながら食べて」
「ありがとうございます……」
「ううん、気にしないで。あぁそうだティナちゃんや蓮太郎くんには連絡しておいたからそのうち迎えに来ると思うよ」
凛はエプロンを取りながら彼女の隣に腰掛けると静かに告げた。
「この前は君を試すようなことを言ってごめんね」
「いえ、気にしないでください。私も……少し気が高ぶってしまっていましたから」
木更はあの時と言うのが自分が和光を殺したときだとすぐにわかった。
あの後、一人で帰った木更は母と父に敵の一人を殺したことを報告した。そして、同時に凛の言っていた自分が絶対悪を演じていると言われたこともずっと考えていた。
「あの、凛兄様。聞きたんですけど、もし私が刃を復讐以外に向けたら私を殺すって言ってましたけど……本気ですか?」
「うん、本気だよ。けどね、僕は君ならそうならないと思ってる。というか、僕も蓮太郎くんも君をそうさせないようにするけどね。君を殺すって言うのは本当にどうしようもなくなったとき。君が止められない復讐鬼に堕ちてしまった時だよ」
凛の瞳は真剣そのものであり、それが冗談でもないことをはっきりと物語っていた。
木更はそれに対し少しだけ俯いてしまったが、ふと彼女は頭を撫でられたのを感じた。
「大丈夫、君をただの殺戮者には絶対にしない。これは僕が約束するよ。けど、これだけは覚えておいてね。その刀を向ける相手を違わない様にね。
さて、辛気臭い話はここまで。お粥食べちゃって、あと今日は皆で夕食会をするから蓮太郎君たちが来たら買出しに行こう」
凛は優しい笑みを浮かべるとソファから腰を上げるとスマホを取り出した。どうやら零子たちにメールを送信しているようだ。
そして、木更が凛の作ったお粥を完食した後ちょうど蓮太郎達と摩那と翠が帰ってきてそのまま全員で夕食の買出しをすることとなった。
夕食の買出しから戻って凛と蓮太郎が台所に立っているとインターホンが鳴らされ、玄関から杏夏と美冬、夏世、更に未織の声が聞こえてきた。
「こんばんはー、いやぁまた呼んでくれてありがとうなぁ凛さん」
未織は扇子を口元にあてがいながら柔和な笑みを見せた。凛もそれに答えるが、ちょうどトイレから戻ってきた木更は未織がいることに顔をゆがめた。
「げっ未織」
「あらぁ、おったん木更? 相変わらずデカイのぶら下げとんなぁ。動きにくいんやないの?」
「お生憎様、これでも十分動けるんで。それにアンタの『貧相』な胸よりもあったほうがましよ」
「あーやだやだ、胸が大きくなると寛容な心がなくなるんやねー。というか、男はウチぐらいの慎ましい胸のほうが好きなんよ。ねぇ凛さん、里見ちゃん?」
未織が威圧感たっぷりの視線を凛と蓮太郎に送り、木更もまたそれに続いた。因みに、杏夏は早々に退散したようで摩那達の面倒を見ていた。
しかし、二人の視線を送られている蓮太郎はこの場をどう切り抜けるかで頭がいっぱいだった。だが、そこで隣で御浸し様のきゅうりを切っていた凛が小さく笑みを浮かべて二人に告げた。
「僕は胸の大きさよりも、笑顔が素敵な人が好きかな」
「「おぉ……」」
凛の答えを聞いた瞬間、木更と未織はなにかに気おされてしまったようだが、凛は何故か背景にキラキラとしたものが浮き上がりそうな笑顔を浮かべたまま静かにいった。
「やっぱりどっちかを選んだ方がよかったかな?」
「い、いや。大丈夫や、そのまま料理続けてくれてかまへんから」
未織はそそくさとソファに座る。木更も恥ずかしさから若干頬を赤らめつつ、ソファにゆっくりと腰を下ろした。
するとそれを確認した蓮太郎がフライパンに油を引きながらため息混じりに言った。
「凛さん、ああいうのなんか上手いよな」
「どっちかを選んでどっちかに角が立っちゃう場合には、第三の選択肢を出すことも大切だよ」
「そりゃあアンタだからいいものの、俺が言ったら確実に凄まじい制裁が待ってる気がして言えねぇよ。そんで今日は他に誰がくるんだ?」
「あとは玉樹くんと弓月ちゃん、それと零子さんが菫先生も連れてくるってさ」
「先生もかよ……つか、あの人地下室から出てくんのか?」
「どうだろうねぇ、まぁ零子さんが何とかしてくれるって。それよりもホラ、僕らは料理を作らないと」
凛が言うと蓮太郎も頷き、二人は料理を続ける。
それから数十分後、買い物袋を引っさげたパンクファッションの兄妹、玉樹と弓月がやってきて二人が料理をしているのを見た玉樹が料理を手伝い始めた。
さらに彼等から送れること数分、零子とじゃっかんぬぼーっとした感じの菫までやってきて全員が集合となった。
だが、全員が揃ったところで菫がポツリと呟いた。
「それにしてもこれだけ女子が揃っていると言うのにキッチンに立っているのは男子三人とはねぇ」
「それはしょうがないでしょ。料理は凛くんが格段に上手いわけだし」
「せやねぇ。ウチも作れん事はないけど凛さんや里見ちゃんに任せといた方が美味いし」
「まぁ普通なら逆なんだろうけどね……。あ、そうだ! 凛先輩! デザートは私達が作りますよ!」
杏夏が挙手しながら言うものの凛は申し訳なさそうな顔をした後軽く頭を下げた。
「ごめん、今ケーキ作ってる最中なんだ」
……女子力高!!
凛の言葉に女性達の心がまとまった瞬間であった。
そんな彼女等と凛達を見ていた延珠が呟きを漏らす。
「凛は本当に何でもできるのだな」
「まぁ大体の事は出来てるよねぇ。この前もプリン作ってたし」
「あれは美味しかったです」
摩那の言葉に翠がその時のことを思い出していたのかほわーんとしていた。するとティナが小首を傾げながら疑問を浮かべた。
「断風さんの苦手なことってなんなんでしょうね?」
「虫が苦手とか?」
「いやいやいや、さすがにそれはないっしょ。ガストレアと戦ってんのに虫とか嫌いじゃ無理でしょうよ」
夏世が挙げた候補を弓月が否定すると美冬が髪の毛をいじりながら告げた。
「そんなに気になるのでしたら凛さんに直接聞いてみてはいいんじゃないですの」
「それもそうだね。ねぇ凛ー! 凛の苦手なものってなにー?」
美冬の言葉に頷いた摩那はキッチンにいる凛に聞こえるような声で問うた。
「苦手なもの? うーん……強いて言うならヌメッとしたものとか嫌いだね」
「ヌメ?」
「うん、ナメクジとかカタツムリとかあとはカエルとかかな。ガストレアなら平気なんだけどどうにもあっち系の虫は苦手かな」
「まぁ確かにアレを好き好んで触るやつはいないよな」
隣でひき肉をこねていた玉樹も肩を竦めながら言うと、今の話を聞いていた女性達もそれぞれの苦手なものを語り始めた。
その後、男子連中による料理が完成し総勢十五人での夕食会が行われた。夕食会は深夜まで続いたが、最終的には前回のように誰かが泊まる事はなかった。
「いやー、凛くんの料理は本当に美味いんだなぁ。アレならいつでも婿にいける。顔もいいし性格も大して問題じゃあない、まったく蓮太郎くんとは大違いだね」
帰りがけ、零子の車の助手席で菫はそんな言葉を漏らした。
「というか零子。杏夏ちゃんは凛くんのことが好きだろう?」
「やっぱり気がついた?」
「そりゃ気付くさ。しかし、凛くんは何で答えてやらないんだ?」
菫が腕を組みながらため息混じりに言うと、零子が小さく息をついてその疑問に答えた。
「以前彼に恋愛はしないのかって聞いたことがあるんだけどね。彼自身、恋愛に興味がないわけではないらしいわ」
「ふむ、となると何かが彼の恋愛を邪魔しているってわけか。それも聞いたのか?」
「ええ、彼はこう言ってたわ。『もし僕が任務中に死んでしまったらお付き合いしている子にとんでもない悲しみを与えてしまいます。だから、まだ恋愛をする気はありません』ってね」
「なるほどね……彼はとことん周りを悲しませたくないわけだ。しかし、それじゃあいつになったら恋愛するんだろうな」
「さぁね。それは私達が口を出すことじゃないわ」
「それもそうか」
二人は互いに肩を竦めながら笑い合った。
某エリア某所。
「では東京エリアに潜入するメンバーは『ネスト』『ダークストーカー』『ハミングバード』『ソードテール』の四人。あとは現地構成員として櫃間親子でいいですかな?」
真っ暗な部屋の中で男の声が響いた。しかし、別人の男の声が聞こえた。
「いや、もう一人連れて行くべきだ。それだけではあの『断風』に勝てん。『リジェネレーター』を提案する」
「そうですな。ヤツがいれば計画もより一掃楽になる」
男の声にまた別の男が同意した。すると、それに納得がいったのか最初の男が了承の声を発した。
「では先のメンバーの中に『リジェネレーター』を追加ということでよろしいですかな?」
その言葉に今度こそ誰も反論をすることがなかったのか真っ暗な部屋は静寂に包まれた。
「では、メンバーに伝えておきましょう。では……」
男が言うと同時に、彼等の足元から五芒星とその頂点から複雑な意匠をなされた五枚の羽根が青い光となって浮き上がった。そして、彼等はただ一言。
「五翔会に栄光あれ」
うぇーい!
とりあずこれで閑話は終了となります。
次からはいよいよ逃亡犯編でございます。
そして、最後に出てきた『リジェネレーター』はオリジナルの五翔会構成員です。
果たしてどんな能力を有しているのか、そして凛が五翔会相手にどう立ち回るのか……ご期待ください。
最初に出てきた焔が翠のプロモーターとなる子です。彼女の能力にもご注目を。
ではでは感想などございましたらよろしくお願いします。