あずさから連絡があった翌日、今度はあずさから合コンの日程が記されたメールが送られてきた。
日程は三日後の土曜日の夜七時で、二次会をするかどうかはその場で決めるそうだ。人数は男が凛を含めて四人で、女性の方もあずさを含めて四人の計八人で行うらしい。
しかし、凛には人数や一次会や二次会よりも心配なことが一つあった。
「……合コンって、なにを話せばいいんだろう?」
口元に手を当てて首をかしげながらじっくりと悩んだ末、凛は一度小さく息をつくとスマホの電話帳を開いてある人物と連絡を取った。
数十分後、凛の姿は東京エリアの一角にある隠れ家的な喫茶店にあった。
凛はぼんやりと外を行き交う人々を眺めながらコーヒーを飲んでいた。すると、カランという鈴の音が喫茶店の入り口から聞こえた。
ちらりと凛がそちらに目をやると、そこには凛と同い年くらいの長身で筋肉質な青年と、細身で若干赤みがかった髪の女性がキョロキョロと誰かを探していた。
その様子に凛が軽く手をふると、二人は凛に気付いたようだ。だが、彼等は一瞬何か驚いたような表情をしていた。
そして二人がやってくると、凛は薄く笑みを作りながら二人に声をかけた。
「久しぶりだね。
「まったくだぜ、ここ最近全然連絡しやがらねぇから危うく死んだかと思ったぜ」
色黒の肌に黒のタンクトップとダメージジーンズを着込んだ、がっしりとした体型の青年、
「本当よ。幼馴染なんだからもうちょっと連絡ぐらいしてくれてもいいと思うんだけど? 凛」
こちらでもため息をつくのは、赤みがかった髪をショートにし快活そうな雰囲気を発している、白のチノパンと薄ピンク色の半袖のシャツを着込んだ女性、
この二人は凛の幼少時代からの友人であり、小学校から中学校、さらには高校まで同じと言う組み合わせだ。しかも、席替えを行えば確実に三人は近い位置にいるという、ある意味運命的なものが関係しているのではないかと言うほどだ。
だが、今は凛は民警になり、二人はそれぞれ大学で学業に励んでいる。
「それはごめんね。最近いろいろ忙しくてさ」
「まぁ関東会戦やらいろいろ大変だったみてぇだしな。それよりも、お前こんなところで油売ってていいのか? 民警の仕事は?」
「連絡は入れてあるから大丈夫。それに、今はいつ何処で民警に出動要請がかかるかわからないからね」
「確かにな。ニュースやら新聞やらでその話は聞いてるぜ」
雅武は肩をすくめて言うが、そこで鮮巳が二人の中に割って入った。
「はいはい、とりあえずその話は後にして適当に飲み物でも注文しましょうよ。外暑かったから喉渇いちゃって」
「あぁ、それもそうだな」
鮮巳の言葉に雅武は頷くと、ウェイトレスを呼んで雅武はアイスコーヒー、鮮巳はレモネードを注文した。
数分後、トレイにアイスコーヒーとレモネードをのせたウェイトレスがやってきて二人の前に品を置くと、鮮巳がレモネードをかき混ぜながら問う。
「それで? アタシ達に用ってどんなこと?」
「うん……実はさ――」
凛が指を組みながら言い始めると、二人はそれに耳を傾ける。瞳は真剣そのものだった。
「――合コンに行くことになったんだけど、一体なにを話せばいいのかわからないんだよね」
「「……は?」」
凛の言葉を聞いた瞬間、二人はポカンと口をあけたままになってしまったが、鮮巳が雅武よりも速く回復し、眉間に皺を寄せながら凛に問いを投げかける。
「えっとさ……なんていったの今? 私には合コンに行くことになったけど、話題がわからないっていう感じに聞こえたんだけど?」
「うん、そのとおりで合ってるよ。僕もそういうイベントは初めてだからさ、二人なら参加したことぐらい――」
瞬間、凛の鼻先を鮮巳の細い指が掠めた。
「うぉわッ!? あ、危ないな鮮巳!!」
「うっさいわね! なに真剣な顔して相談してくんのかと思ったら合コンの話題についてですってぇ!? アンタは本当にまったく……まぁいいわ。とりあえず一発思いっきり殴らせなさい」
「なんでさ!?」
「そりゃそうでしょうよ! そんなくだらないことで呼び出して、もう!」
「まぁまぁ落ち着けよ、鮮巳。他の客に見られてっから」
いつの間にか回復していた雅武がどうどうと鮮巳を嗜める。確かに彼のいうとおり、店にいた数人のお客が凛達のほうを眺めていた。
鮮巳もそれを見て大きくため息をついたあと席に座りなおしてムスッとした顔で凛を見据える。
その威圧感はなかなかのものがあり、凛は背筋に冷や汗が流れるのを感じた。
「……すみません」
「わかればよろしい」
「おい、鮮巳。あんまり言ってやるなよ」
「アンタは凛に甘すぎんのよ。珍しく凛が相談なんてするから何事かと思ったら合コンって……」
「まぁなぁ……そんでよ、凛。なんでそういうことになったわけだ? まさかお前が進んで合コンに出たいって言ったわけでもねぇだろ?」
雅武は促すように凛に手のひらを向ける。凛もそれに頷くとことのいきさつを二人に説明した。
話を聞き終えると、二人は大きくため息をついた。
「な、なにさ」
「いや、なんつーかよ……なぁ?」
「そうねぇ……アンタって本当にお人よしよねーって思ってさ。ついつい呆れちゃったわけ」
二人はそういうものの、その顔は不快感は出ておらず、小さく笑みを浮かべていた。
「んじゃあ、いきさつも聞いたわけだし……どれ、合コン百戦錬磨の俺様が凛にご教授してやるか」
雅武は誇らしげに胸を張るが、横槍を入れるように鮮巳が言った。
「アンタが合コンで成功したとこなんて見たことないんだけど?」
「……言うなよ」
そういいながら窓の外に見える夏の青空を仰いだ雅武の目尻には輝くものがあった。
「とりあえず、このバカは放っておいて。合コンのやり方だっけ?」
「うん、自己紹介とかその辺はやるとはわかってるんだけどさ。問題は話題だよね」
「話題ねぇ……。普通に趣味や特技とか最近見た映画とかでいいんじゃない? あとはまぁテレビ番組とか?」
指を立てながら凛に言う鮮巳だが、凛は顎に手を当てながら考える。
「映画は最近見てないから無理だとして……。趣味は……料理とか読書? 特技はガストレア狩りあとはテレビ番組だと天誅ガールズくらいかなぁ」
「うん、とりあえず料理と読書以外はしゃべんな。でもさすがに料理だけじゃなんとも……って一番話題性があるのがアンタにはあるじゃないの」
「それって、もしかして……」
「そう、第三次関東会戦のことでも話してあげればいじゃない。一番皆が聞きたいことじゃないの? 普通民警の話なんて簡単に聞けないわけだし」
鮮巳はレモネードを一口飲んで喉を潤す。しかし、凛はどうにも腑に落ちないようで渋い顔をしていた。
鮮巳もそれをみると「なによ」と言う風なジト目を凛に送る。すると、その二人の中に割って入るように再び回復した雅武が言った。
「さすがに合コンの席で戦争の話しちゃダメだろうよ。皆聞きたいだろうが、そういうのはもうちょっと違う場で話した方がいいな。まっ基本的に仕切りのヤツがいるだろうから、そいつに任せとけば大丈夫だろ。あんま深く考えすぎんな。
楽しませようとか、変な気が回っちまうと失敗するしな」
「それはアンタが経験してきたってわけね」
「おうよ! ……ほんと、あの空気は耐えられねぇからな……」
雅武は頭をガクッと下げてうなだれるが、それを見ていた鮮巳も顎に手を当てて考え込む。
「まぁ確かにそうよね、ごめん凛。さっきのはなしにして、あまり自分から行かずに聞かれたら答える感じでいいんじゃないかしら。というか、アンタの場合普通に笑ってるだけでもその辺の女子なら釣れるわよ」
「釣れるって……鮮巳」
「本当のことでしょうよ。小さいころからアンタと一緒だったけど、言い寄ってくる女子なんて数知れず……女子の中じゃ難攻不落って言われてたわよ?」
「初耳なんだけど……」
「言ってないからね」
あっけらかんとした様子で言ってのける鮮巳に苦笑しながらも、凛は静かに頷いた。
「ようは、普通にいれば大丈夫ってことだね」
「そういうこと。まっ、特に気にしないで平気でしょ。ねぇ雅武」
「ん、おう。気にすることもねぇだろうさ」
雅武の言葉に凛が頷いた。その後、三人は思い出話に花を咲かせた。
「それじゃあ摩那、翠ちゃん、ちょっと行って来るから戸締りしっかりしててね。先に寝ていいからね」
「りょーかい。いってらっさーい」
「いってらっしゃいです」
二人に見送られ、凛はマンションから出ると合コン会場となっている居酒屋近くの駐車場までバイクを走らせた。
凛の装いは至ってシンプルであり、黒のジーンズに黒のベスト、そしてシンプルなデザインの半袖のTシャツを来た装いだった。また、腕には珍しく腕時計もつけている。
近場の駐車場にバイクを停めると、凛は指定された居酒屋を探す。すると、前の方で自分を呼ぶ声が聞こえた。
「断風さん! こっちです!」
案の定、呼んでいたのはあずさだった。凛は小さく頷くとあずさの下まで駆けて行く。
「すみません、お待たせしました」
「あ、いえいえ! 全然大丈夫です!」
「他の皆さんはもう中に?」
「はい。……けど、断風さん本当に大丈夫でしたか?」
あずさは申し訳なさそうに俯きながら言うが、凛は小さく笑みを浮かべながら頷いた。
「大丈夫ですよ。それに言ったでしょう? 夜は基本的には暇なんです」
「そう、ですか……。じゃ、じゃあ中に入りましょう。皆待ってることですし」
あずさが店の扉を開け、凛もそれに続く。
店の中には会社帰りのサラリーマンやOL。大学生くらいの青年や女性が酒やら焼き鳥やらを堪能していた。
そんな彼等から更に奥に行った所に障子で仕切られた席があり、あずさは「あそこです」と告げた。
そのままあずさに続き、彼女が障子を開けると凛が続こうとするが、そこであずさが恐らく友人と思われる女性に声をかけられた。
「お、あずさ。呼んだ人来てくれたの?」
「うん。断風さん、どうぞ」
あずさに促され、凛も中に入る。
「遅れて申し訳ありません。皆さん」
凛は柔和な笑みを浮かべながらその場にいた皆に軽く会釈をする。そして、凛が顔を上げた瞬間、女性陣は顔をぽかんとしていた。
「え、えっと皆? どうしたの?」
あずさもそれを不審に思ったのか皆に問う。そして、それから一秒ほど経ったところで一人の女性がポツリと呟いた。
「……超イケメン」
同時に、あずさを抜いた女性陣二人も静かに頷いた。
「それでは、今から始めたいと思います! はい、皆拍手!」
恐らくこの合コンの主催者であろう女性がそういうと、皆一様に軽く拍手をした。
「じゃあ、まずは乾杯と行きましょうか。それじゃあ皆グラスを持って、はいカンパーイ!」
「「「「「「「カンパーイ!」」」」」」」
女性の音頭と共に、皆がそれぞれグラスを当てる。カランという小気味いい音がして少しだけ水滴がはじけた。
因みに、凛が注文したのはもちろん酒ではなくウーロン茶だ。
一通り皆が自分の飲み物に口をつけると、先ほど音頭をとった女性の前にいた金髪の青年が「よし」と言って皆に言った。
「んじゃ、ここは王道的に男の俺等から自己紹介するな。いいよな?」
青年の言葉に凛を含め、男性陣が頷くと金髪の青年が自己紹介を始める。
「俺は
「カラオケのハイスコアってどれくらいなの?」
「そうだなぁ……ものによるけど、最高だと98くらい行った事あるぜ!」
女性の対応も欠かさずに潤哉が言うと、彼は「ほい、次」と促すと彼の隣に座っていた茶髪の青年が頷いて彼と同じように自己紹介を始めた。
「オレは
そのことに女性陣から少々笑いがこぼれた。だが、和斗は気にせずに続ける。
「えっと、趣味は自転車です。ロードバイクとかで走るの大好きなんスよ。今日はよろしくお願いしまっす!」
和斗が言うと、先ほどと同じ女性が声を質問を投げかける。
「ロードバイクってあのタイヤの細いヤツだよね? 怖くないの?」
「最初は確かに怖いってこともあるかもしんないっスけど、なれればどうってことないっすよ」
快活に笑みを浮かべながら答えると、皆それに感心したように頷く。そして今度は黒縁眼鏡をかけたいかにも真面目そうな青年が軽く会釈をして自己紹介に入った。
「自分は
「じゃあさ、修一郎くんの中で一番得意なスポーツって何なの?」
「そうですね……強いてあげるならテニスなど得意ですよ。大会では上位に入ったこともあります」
そういうものの、彼の言葉には嫌味などはなく、単に質問に答えただけと言う雰囲気が見て取れた。
修一郎はそのまま凛に「どうぞ」と促す。同時に、女性陣の視線が先程よりも集中する。いや、女性達だけではなく男性達も僅かながら凛が気になるようだ。
「僕の名前は断風凛です。趣味は料理とか読書とかですね。あとは……あ、仕事は民間警備会社に勤めてます」
「「「「「「民警!?」」」」」」
民間警備会社という単語を聞いた瞬間、皆が一様に驚いた表情を浮かべて凛に聞き返した。
「ちょ、ちょっとまてよ、凛くんよぉ!? 君俺等より年下だよな!? 酒飲めないって言ってたし!」
「はい、歳は十九です」
「民警ってそんな歳からなれるもんなの!?」
「なれますよ。僕の知り合いには十六歳の子達もいますから。まぁ僕の事は置いておいて、女性達の自己紹介がまだですから。まずはお互いの名前を知っておかないと」
凛が言うと、皆落ち着きを取り戻したようで先ほど音頭を取った女性が、頷いて皆に言った。
「私の名前は
和斗よりも少し色素の薄い茶髪の瑞祈が言うと、それに続いて次の黒髪の女性が口を開いた。
「
落ち着いた様子で自己紹介を終了させた悠だが、そのあとに弾かれたように隣の短髪の女性が自己紹介を始める。
「うしッ! そんじゃあアタシだな、アタシは
「あぁ、渉子は腕力が半端ないからメスゴリラって言われてるわ」
「誰がメスゴリラだゴラァ!!」
瑞祈がさらりと言うも、渉子は鋭い眼光で彼女を睨む。しかし、既にいつものことなのか慣れっこなのか、誰も動じた風はなく、自己紹介はあずさの番になった。
「え、えと……湊瀬あずさです! 趣味はお裁縫と断風さんと同じでお料理を少々……。き、今日はよろしくお願いしまひゅ!?」
……あ、噛んだ。
……噛んだッスねぇ。
……噛みましたね。
……噛んじゃいましたねぇ。
……噛んだわね。
……まぁいつものとおりですね。
……あー、肉食いてぇ。
六人プラスαがそんなことを思っていると、あずさは恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めたあと頭を下げた。
「さて、それじゃあ自己紹介も終わったことだし、本格的に始めましょう」
瑞祈が言うと、それとほぼ同時に男性陣、女性陣の視線が凛に集中する。
「断風くんは民警だって言ってたけど、やっぱりこの前の関東会戦にも出ていたの?」
「もちろん、出ていましたよ」
「けどさ、ガストレアはかなりいたんだろ? 怖くなかったん?」
首をかしげながら問うのは和斗だった。凛は彼の問いに薄く笑みを浮かべると、小さく頷いて質問に答える。
「そうですね、確かに怖いか怖くないかって言われたら多少は怖さもありましたよ。だけど、ガストレアを倒してエリアを守ることを承知で僕は民警になったんです。それなのに怖いから逃げる……っていう考えは僕にはありませんでしたよ」
「はぁ~……なんか、オレ等より年下なのに人間が出来てるっスねぇ。オレはちょっと真似できないっすわ」
「つーか、真似したくてもできねーよ」
感心した様子で息をついた和斗に潤哉は肩を竦める。すると、渉子が凛の身体を見ながら彼に問うた。
「気になったんだけどよ、凛くんもしかして刀とか使って戦ってんのか?」
「はい。さすが、剣道をやっておられるだけはありますね」
「ああ、筋肉のつき具合が剣術とかやってる人と同じ感じだったからな。そっかぁ刀使ってんのか……今度暇とかあったら一戦やってくれないか?」
「お? 渉子ちゃんグイグイいくねぇ」
渉子の誘いに潤哉が茶化すが、凛は彼女がそんなやましい気持ちで誘っているのではないとわかっているため、静かに頷いてそれを了承した。
「いいのか!?」
「ええ、暇なときがあればお相手しますよ」
「おー、凛くんが乗り気でよかったわねぇ渉子。でもアンタ、力入れすぎて怪我なんてさせんじゃないわよ?」
「わーってるっての! いやぁ、今から楽しみだ!」
渉子は心底嬉しげに笑みを浮かべる。凛もそれに笑みを浮かべていると、ビールの入ったグラスを片手に瑞祈が凛の隣までやって来ると、彼に軽く耳打ちをした。
「ごめんね、あの子思い至ったら真っ直ぐだから」
「いえ、とても明るくて魅力的な女性だと思いますよ。もちろん貴女もですよ瑞祈さん」
凛は心からの笑みを瑞祈に向ける。すると、瑞祈はまるで何かに撃たれたかのようなリアクションを取った。
「……な、なんて破壊力……ッ! 年下恐るべし……ッ!!」
「?」
そんな彼女の行動に凛は小首を傾げるが、次に悠が静かに手を挙げて凛に問いを投げかけた。
「凛くん、民警ってことは貴方はイニシエーター……つまり『呪われた子供たち』と一緒に行動をしているわけだけど、貴方は彼女達のことをどう思っているの?」
その問いを聞いた瞬間、場の空気が一瞬だけ凍ったようになってしまった。あずさを見ると、彼女は少し焦った様子でいた。しかし、凛は実に落ち着き払った様子で対処する。
「彼女達については……そうですね、かけがえのない親友や相棒っていうイメージが強いですね。戦場で彼女達に何度も助けられましたし、それに一度彼女達と接してみると普通の人間と何ら変わらないって皆さん感じると思いますよ。
だけれど、まだ世の中はそこまで認めてくれないのが難点ですけどね。っと、暗い話になってしまいましたね。僕ばかりに質問ではなく、もっと他の方に質問なさってください。例えば、ジュンさんとか」
「おっ! わかってるな、凛くん! そう、俺も速く質問して欲しくてうずうずしてたとこなんだ!! さぁ何でも聞いてくれ!!」
凛の振りに動じることなく、潤哉は皆に言う。すると、渉子が答えるように彼に問う。
「さっきカラオケが趣味って言ってたけど、どんな歌とかすきなんだ?」
「そうだなぁ……やっぱロックだな! シュウイッチはカラオケとかしねーの?」
「シュウイッチ!? それ、もしかして自分のあだ名ですか!?」
「そりゃそうだろ! どー考えてもお前しかいねぇって。それに、ずーっと黙ったまんまだったからよ、もっと話しに混ざろうぜ!!」
潤哉はキランッと白い歯を輝かせるが、当の修一郎はやれやれと言った様子だった。
そのあと、先ほど流れていた一瞬の暗い空気は何処かに行ってしまったかのように、合コンは続いた。
凛も話しに混ざり、面白おかしく過ごしていたが、ふとあずさが話についてこれていないことを察した彼は彼女の隣に座って話を始める。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。……ちょっとみんなの雰囲気に圧されちゃって……断風さんはすごいですね。本当に何でもそつなくこなせて」
「僕もいっぱいいっぱいですけどね。けど、確かに湊瀬さんはこういうの苦手っぽいですから、無理はしなくてもいいと思いますよ」
凛は彼女に微笑みかけると、思い出したように指を立てた。
「そうだ、今思ってみれば湊瀬さん僕のこと苗字で呼んでますよね? まずはそのあたりから変えてみませんか?」
「それって、名前で呼ぶってことでいいんですか?」
「はい。瑞祈さんや渉子さん、悠さんは普通に名前で呼んでましたし、湊瀬さんもそうしてみたらすこし慣れるかもしれませんよ?」
「そう……ですね。で、では」
あずさはそういうと深く深呼吸をした後、ごくりと生唾を飲み込んで凛のほうを見る。
「り、り……り、凛さん……」
「はい、あずささん」
「え、今私の名前……」
「あぁすみません、あずささんが名前で呼んでくれるのに僕だけ苗字呼びなのはどうなのかと思ってしまいまして。嫌でしたら変えますよ?」
「あ! い、いいんです! 変えなくていいです! 名前で呼んでください!!」
あずさは顔を真っ赤に染めながら手をブンブンと振って言うが、すぐに俯いてしまった。
すると、そんな二人の様子を見ていた皆がニヨニヨとした視線を送っている。
「いやー……凛くん、ホント天然ジゴロの素質あるわぁ……」
「はい?」
瑞祈の言葉に凛は小首を傾げるが、彼女の言葉に同意するように潤哉たちが「ウンウン」と頷いていた。
合コンの一次会も佳境に入り、皆それなりに酒が回ってきたころ潤哉がほろ酔いながら皆に宣言した。
「よーっし! んじゃあ二次会行こうぜ! もちカラオケでな!」
「お、いいっすねぇ! 女の子達もいくっスよね?」
「そうね。皆は大丈夫?」
瑞祈の問いにあずさを含めた三人が頷くと、今度は修一郎が凛を見る。
「凛くんは大丈夫ですか? 無理なのであれば帰っても大丈夫ですよ?」
「あぁ大丈夫ですよ。明日は仕事がありませんからっと……失礼」
凛が修一郎の問いに答えているなか、彼のスマホが鳴動した。凛はスマホをポケットから出すとメール画面を確認する。
瞬間、彼の表情が一気に険しくなった。
「どうかしましたか?」
修一郎の問いに凛は静かに頷くと、二次会のカラオケを何処でやるか話し合っている潤哉達に声をかけた。
「ジュンさん、瑞祈さん。二次会はやめておいた方がいいかもしれません。いいえ、やめてください」
「えぇ? どうしたってんだよ凛くんよ。まだ九時じゃねぇの、まだまだ夜はこれからだぜ!」
「何かまずいことでも起きたの?」
瑞祈が問いを投げかけると、凛は真剣な面持ちのまま今度は皆に聞こえるように静かに告げた。
「この近くにガストレアの目撃情報が入りました。じきに警察が避難誘導を始めます。それまでここで待機してください」
そういう彼は皆に見えるようにスマホの画面を見せる。
画面に書かれていたのは民警の出動要請だった。
はい、なんか物騒な感じで終わりましたねw
せっかくの合コンだったのに!!
……まぁその辺は置いときまして、次回は摩那の出生を明らかにしてみようかなんて思ってます。
凛は多分ガストレアと戦ってます。
というか一話で新キャラ増えすぎィッ!!
八人も増えてしまった……orz
幼馴染二人はまぁ原作でも蓮太郎の前に突然水原が出てきたからいっかなーって感じで出してみました。
殺さないよ!?
次回に摩那の出生とガストレアをぶち倒して……
その後の話は翠と組むオリキャラちゃんをすこし出しましょうかね。
では、感想などありましたらよろしくお願いします。