ブラック・ブレット『漆黒の剣』   作:炎狼

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第十七話

 聖天子暗殺事件から一週間が過ぎたとき、凛は会社に顔を出しパソコンを操作していた零子にあるものを見せた。

 

「零子さん。この弾丸の種類って分かりますか?」

 

 そう言って凛がデスクの上に出したのは、先日の聖天子襲撃の際凛が両断した弾丸だった。

 

 出来れば延珠が蹴り、地面へめり込んだ銃弾の方がよかったのだがあの後保脇達が証拠ということで持って行ってしまったので、摩那が回収しておいてくれた弾丸を持ってきたのだ。

 

「ふむ……」

 

 コーヒーを飲んでいた零子であったが弾丸の形状に興味が湧いたのか、両断された弾丸をくっつけて眺めていた。

 

 隣にいた夏世も興味を持ったのか興味深げにじっくりと見つめていた。

 

 数秒それを眺めていた彼女は一度頷くと、凛を見ながら説明を始める。

 

「恐らくだが、これは12.7×99mm NATO弾だな」

 

「なんですかそれ?」

 

「君は銃にはからっきしだからなぁ、知らないのも無理はないか。いいだろう、教えてやる。着いてこい。夏世ちゃんもな」

 

 零子は立ち上がると給湯室の床板を一枚はがした。そこには一階へ通じる梯子があった。零子はなれた様子で下がっていく、凛と夏世は若干驚いていたが彼女に続いて一階へ降りた。

 

 一階には零子の愛車であるアヴェンタドールが停めてあったが、彼女が目指したのは車の後ろの扉だった。

 

 零子は扉の近くまで行くと壁に設置されている指紋静脈認証装置と扉を開けるための数字を打ち込んでいく。

 

 数秒の後、鍵が開いたような音が聞こえると同時に零子は扉を開け二人を中に招いた。

 

 中に入ると真っ暗だったが、すぐさま零子が明りをつけ部屋全体が照らし出される。いきなり点いた照明に二人は一瞬目をくらましたが、やがて光に目が馴染んできて部屋の様子を確認する。

 

 そして、部屋の中を見た瞬間二人が息を呑んだ。

 

 室内の壁一面には騒がしいほど銃火器が設置されていたのだ。また、真ん中に設置してある机にも多くの銃が置かれており、それらの弾丸も箱に入れられていた。

 

「二人を入れるのは初めてだったな。私のコレクションであり、武器だ」

 

 零子は悠然といった様子で壁に掛けられている銃の中から自分が探しているものを確認しに行った。

 

「うわぁお……」

 

「すごいですね。一面銃だらけ……銃に圧迫されている気分になりそうです」

 

 ただ驚嘆の声を上げる凛とは裏腹に夏世は一定の声で言っていたが、内心ではかなり驚いていることだろう。

 

 すると、奥のほうに行っていた零子が「あったあった」といいながら一丁の銃を持ってきた。かなりの大きさの銃だ。

 

「あの弾丸を撃つ銃はこの銃以外ありえない」

 

 机の上に銃を置くと、椅子を引っ張ってきて三人は机を囲むように座る。

 

「これは……対戦車ライフルですか?」

 

「そう、察しがいいな夏世ちゃん。最近では対物ライフル、アンチマテリアルライフルとも言うのさ」

 

「対戦車ライフル……」

 

 凛が口元に手を当てながらその銃をまじまじと見つめる。

 

 ……すごい大きな銃、それだけ反動も大きいはずだよね。でも、こんなものを普通の人間が連続で四発も撃てるのかな?

 

 疑問を思い浮かべていると、零子が銃身をなぞりながら銃の名称を二人に教えた。

 

「この銃の名前は『M82』と言う。メーカーは――」

 

「アメリカの『バレット・ファイアーアームズ』。これは主力商品だだったものです。ほかにもバリエーションは幾つかあれど、これが大体基本形となっていて、高い破壊能力と射程距離がアメリカ軍の目に留まり、湾岸戦争から投入されていたらしいですね」

 

「――そう。よく勉強しているね夏世ちゃん」

 

 零子は割って入った夏世をとがめることはせず笑顔で頷いた。

 

「いま夏世ちゃんが言ったとおり、『M82』はかなりの殺傷能力を誇る。そしてこれだけ大きな銃だ、反動も相当ある。スコープをつけていれば二キロの射程距離があるらしい。……しかし、問題なのはそこじゃあない。凛くん、狙撃ポイントであるビルはどれくらい離れていた?」

 

「目算でですけど、大体一キロは離れていたと思います」

 

「さらにそれに付け加えて、夜間、ビル風による強風、さらには雨だ。これだけ狙撃に向いていない状況で至近弾ではなく、一キロも離れたポイントから狙い打つなど、普通の人間にはまず出来ない」

 

 零子は机に両肘を乗せて手を組むと真剣な面持ちのまま続ける。

 

「……夏世ちゃんがいる前で話すべきようなことではないが、恐らく犯人はイニシエーターである可能性が高い」

 

「どうしてイニシエーターの子だと?」

 

「あくまで可能性の話だが、先ほどあげた要素を踏まえても普通の人間があそこまでは出来ん」

 

「だけど仮にイニシエーターの子だとしてもどうしてその子が聖天子様を殺す必要が? むしろ彼女はイニシエーターの子達を擁護する存在なのに……」

 

 凛が言葉に詰まるが、そこで夏世が口を開いた。彼女は珍しく難しそうな表情をしていた。

 

「プロモーターの人に命じられたからではないでしょうか」

 

「……確かに、そちらの方が可能性としては高いかもしれないな。考えてみれば彼女らはまだ十歳ほどの少女だ。そんな子達が自ら率先して聖天子様を暗殺するはずはない、か……」

 

「確かに夏世ちゃんの言うとおりかもしれませんね。ですが、もしプロモーターが真の犯人だとしても、どうして聖天子様を殺すようなまねをするんですかね」

 

「さぁなそこまではわからん。しかしよくよく考えるとまた新たな疑問が生まれてしまった」

 

 零子は大きなため息をつくと眉間に皺を寄せた。

 

「イニシエーターだったとして……その子だけの能力であそこまで精密な狙撃が出来るか?」

 

「というと?」

 

「……まさか、里見さんやあの蛭子影胤のような機械化兵士だとでも?」

 

 夏世が悟った風に言うと、零子はそれに指を差した後立ち上がりながら二人に告げた。

 

「可能性はある。例えイニシエーターと言えどすべてが完璧に出来るわけじゃない。風の流れを読み、目がよく、夜目が利くなど完璧すぎる。何か別の力が備わっていると考えていいかもしれないな」

 

「だけど、彼女達には蓮太郎くんや影胤さんのようなバラニウムの義肢は合わないはずです。そんなことをすれば再生能力が著しく低迷して……」

 

 凛はその後の言葉を発せずに悔しげに歯を軋ませた。零子も同じで沈痛な面持ちでいるが、夏世だけがいつもの調子で言い放った。

 

「確実に死に至りますね。しかし、その手術を受けて生き残った子供達は普通の子供達以上の力を手にする可能性があります……」

 

「なんともやるせないな……これから先は菫と話してみよう。凛くんは引き続き聖天子様の護衛につくように」

 

 凛はそれに深く頷く。零子はそれを確認すると凛の隣で伏し目がちに下を見ている夏世の頭を軽く撫でる。

 

「君が深く考えすぎることじゃない。もっと気持ちを楽に持っていい」

 

「……はい」

 

 少々楽になったのか夏世はわずかに頬を緩ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 昼下がり。

 

 凛は零子に「今日は早く帰れ」と言われたのでいつもよりかなり早く会社を後にした。

 

 ……それにしても、機械化兵士の力を持ったイニシエーターの子か……。

 

 口元に手を当てながら眉間に皺を寄せて悩みながら歩いている凛は、あの狙撃の精密さを思い返していた。

 

 そして、あの時蓮太郎も聞いた虫の羽音のような音のことも。

 

 ……夜なんだから本当に虫がいるわけじゃないし。それに雨が降ってた。だけどあの音何か機械的な感じが……。

 

 記憶の中に残る情報をフル活用して事件の状況を思い出していた凛だが、不意に彼の腹がなった。

 

「う……そういえば朝から何も食べてなかったっけ……」

 

 凛は思考をいったん中断し周囲を見回し何か食べるものはないかと探す。すると、凛の目に公園の一角にあるたこ焼き屋がとまった。

 

「たこ焼きか……久々に食べてみようかな」

 

 財布の中を確認した凛はそのままたこ焼き屋へと向かった。

 

 

 

 数分後、たこ焼きを買った凛は公園内のベンチを探す。

 

「えーっと……ベンチは何処にって……うん?」

 

 ふと凛は視界の端に見知った人物がいるのに気がついた。

 

「あれは……蓮太郎くんかな? だけど隣にいるのは……」

 

 凛の視線を追うと、ベンチに腰掛けている蓮太郎と彼の隣に座るプラチナブロンドの髪色をした少女がたこ焼きを食べていた。

 

 いや、食べていたと言うより蓮太郎に食べさせられていたと言う方が妥当だろうか。

 

「あの子どっかで……」

 

 気になった凛は二人の方に歩み寄った。

 

「やぁ蓮太郎くん、延珠ちゃんに隠れて浮気かい?」

 

「ちげぇわ!! って、凛さんかよ……アンタも段々俺の扱いがひどくなって来たな」

 

「いやーだってこんな可愛い女の子と戯れているしさー。それにたこ焼きで餌付けでもしてるの?」

 

「だから違うって……」

 

 蓮太郎はだらりとベンチの背もたれに背中を預けながら「やってられるか」と言うような表情で虚空を見上げていた。

 

 凛はそれに小さく笑うものの、蓮太郎の隣で口の中に入れてもらったたこ焼きを咀嚼しながら自身のほうを見上げる少女を視線を交わした。

 

「やっぱり君だったね。僕のこと覚えてる?」

 

「はい。先日私が夜道を歩いていたところぶつかりそうになってしまった方ですよね。あの時は申し訳ありませんでした」

 

「あぁ謝らないで、あれは僕も前を見ていなかったからさ。自己紹介がまだだったね。僕は断風凛、よろしくね。えっと……」

 

「ティナです。ティナ・スプラウト。よろしくお願いします断風さん」

 

「うん、よろしくねティナちゃん」

 

 凛は彼女に手を差し出し握手を求める。ティナもそれに僅かに笑みを浮かべると凛と握手を交わした。

 

 握手を終えると、ティナの視線が凛の持っているたこ焼きに注がれていることに凛は気がついた。

 

「食べる?」

 

 凛の申し出にティナは無言でコクコクと頷いた。

 

 その行動が可愛らしかったからか凛は一瞬頬を綻ばせるが、楊枝で刺したたこ焼きをティナの口に一個放った。

 

 ティナはそれを見事に口でキャッチしパクパクと平らげていく。

 

 まるでハムスターなどの小動物が一生懸命食べているような姿が面白かったのか、結局凛は先ほど蓮太郎がしたように、自分のたこ焼きをすべて与えてしまった。

 

「ほひほうひゃふぁれひは」

 

 口の中がいっぱいなのか舌っ足らずな言葉でお礼を言うティナに凛は小さく笑みを浮かべた。

 

「そういえば凛さん今日はどうかしたのか?」

 

「ちょっと会社までね。社長に聞きたいことがあったからさ」

 

「ふーん」

 

 蓮太郎と会話をしていると、ティナの携帯が鳴った。彼女は送信者画面を見た瞬間顔を強張らせると、スクッと立ち上がった。

 

「すみません里見さん、断風さん。私もう行かないと」

 

「お、おい。どうしたんだ急に」

 

 蓮太郎は彼女を呼び止めるが、ティナはもう一度振り返り二人に深々と頭を下げた後公園から出て行ってしまった。

 

 その後姿を見送りながら蓮太郎は大きなため息をついた。

 

「結局聞きそびれちまったなぁ……」

 

「蓮太郎くんはティナちゃんとはいつ知り合ったんだい?」

 

「知り合ったのは聖居に言った日の夕方でさ。あいつがパジャマで自転車に乗ってて、チンピラの足を引いちまって、それで絡まれてるところを助けたのが始まりだな」

 

「それ以降も結構会ってた感じ?」

 

「ああ。今日で四回目だ。前は遊園地に連れてってくれって言われて一緒に行って、その前は外周区を見たいって言ったから延珠の故郷を見せた。けど、条件があってな」

 

「条件?」

 

 凛は疑問を投げかけながらベンチに腰を下ろした。

 

「なんか『私と会っていることは誰にも言わないでください』ってやつでさ。まぁ別にそのときはあんま気にしてなかったんだけど、よくよく考えてみればたまーにもらしてる自分の過去みたいな話が結構きつめな話っぽいんだ」

 

「なるほどねぇ。何か隠している節はありそうだね」

 

「ああ。そういえば凛さん、さっき会社に行ってたって言ってたけど、何か分かったのか?」

 

 蓮太郎は凛を見ながら問うと、凛はポケットから両断された弾丸を取り出し蓮太郎に渡した。

 

「これを撃った銃の正体がわかったんだ。銃の種類は対戦車ライフル。恐らくバレット社製の『M82』じゃないかって社長は言ってたよ」

 

「『M82』か……。かなりヤバイなそれ、普通対人用に使うもんじゃねぇ。腕とかの末端あたりに当たれば千切れ飛ぶし、体に当たっても大穴が開く、頭に当たれば頭が吹っ飛んじまう」

 

「かなりの破壊力らしいもんね」

 

「……まぁそのかなりの破壊力がある銃の弾丸を跳んでぶった切った化けもんが俺の目の前にいるけどな」

 

 蓮太郎は苦笑いを浮かべながら凛のほうをジト目で見ており、凛は彼から視線を逸らした。

 

 すると先ほどのティナと同じように蓮太郎の携帯が鳴った。どうやらメールのようだ。

 

「……わりぃ凛さん。ちょっと用事ができた」

 

「うん、じゃあまたね」

 

「ああ」

 

 蓮太郎は携帯を閉じると小走りで公園から出て行った。凛はその姿が見えなくなると自らも公園から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 公園を出た凛はまっすぐに自宅へ向かっていた。しかし、その途中人ごみが出来ているのを凛は見つけた。

 

 同時にそこから聞こえてくる人の体を殴るような音。そして、小さな少女が咳ごむ声。

 

 凛はそれらの情報ですべてを悟ったのか、その人ごみに近づき人を掻き分けていく。

 

 人ごみの中心にいたのは四、五人の男と彼らに囲まれ鉄パイプや金属バットで殴られている少女だった。少女の目は赤く一目で彼女がどのような存在なのか把握できた。

 

「この害虫が!!」

 

「テメェみてーなのが人間がいるところをうろつくんじゃねぇよ化け物め!!」

 

 男達は怨嗟の声を上げながら少女を殴り続けている。少女の方はもはや抵抗する気も起きないのかやられるがままになっている。

 

 これが『呪われた子供たち』迫害の実態だ。

 

 いくら聖天子や時江や珠のような慈善活動家がいようとも、このような非人道的な行いは一向に減ることはない。

 

 ……彼女が何をしたって言うんだ。

 

 凛はギリッと歯をかみ締めると、近くにいた男性の肩をたたき状況の説明を請うた。

 

「どうして彼女はあんな風に殴られているんですか?」

 

「はぁ? アンタなに言ってんだ? そんなもんあそこにいるからに決まってんだろ。あいつらは存在そのものが邪魔なんだよ」

 

 その心無い言葉を聞いた瞬間、凛の中で何かが切れた。

 

 ……存在そのものが邪魔? 何だそれは。彼女は人を傷つけてすらいないのに何の理由もなく殴られるのか?

 

「……ゴミが」

 

「あぁそうゴミ……っておいあんちゃん何してんだ!?」

 

 男の制止を聞かずに凛はゆらゆらとした足取りで少女を殴り続ける男達に歩み寄る。

 

 新たな乱入者に周りの人々はどよめくが、凛はそんなことは聞こえていないのか男の近くまで行くと声をかけた。

 

「……僕にも参加させてくださいよ」

 

「お? お前もやるか? さぁやれ東京にいるゴミを俺たちで処分するんだ!」

 

 男は何の気なしに凛に道を明けると、凛も僅かに笑みを浮かべる。

 

「……そうですね。ゴミは処分しなくちゃ……」

 

「そうだろそうだろ! さぁ!!」

 

 そこまで言ったところで男が持っていた金属バットがほぼ根元から切られた。

 

「え?」

 

 男が驚愕の声を上げながら斬られた金属バットを見るが、次の瞬間、男の鳩尾に冥光の柄尻が叩き込まれ男は人ごみ向かって吹き飛んだ。

 

 場が騒然とする中、凛は鞘に収めたままの冥光を握り締めながら言い放った。

 

「貴方達のような……人間の風上にも置けないようなゴミを!!!!」

 

 普段の落ち着いた凛とは比べ物にならないほどの怒りをあらわにした凛は、少女を殴っていた男達に掴みかかると、最初に掴んだ男の鼻先に拳を叩き込んだ。

 

「うげっ!?」

 

 鼻血を噴出させながら男は吹っ飛び、先ほどの男と同じように人ごみ近くまで転がった。

 

「……二個目」

 

 凛が言うと、残った二人が凛を囲み罵声を浴びせてきた。

 

「何だテメェ! 俺たちは東京を汚すゴミを処理しようと!!」

 

「そうだ! こんなやつ生きてたって何の価値もねぇ!!」

 

「黙れ!!!!」

 

 その一喝で男達はもちろん、周りで騒いでいた人々も一気に黙ってしまった。

 

「何の価値もない? ふざけるのも大概にしてくださいよゴミ。貴方達がこの東京エリアでのうのうと日々平和に生きていられるのは誰のおかげですか!? 民警ですか? 違います! 彼女達が死力を尽くして戦っているからだ!! 

 それを貴方達は何の役にも立たない!? だったら貴方達のほうこそ生きる価値がない!! 彼女が貴方達に何をしましたか!? 誰かを傷つけましたか!? 誰かを殺しましたか!?」

 

「そ、それは……」

 

「理由もなくこの子を傷つけるなど貴方達の方こそガストレアと同類だ!! このゴミ虫共!!」

 

 凛は肩で息をしながらその場にいる全員を憤怒の眼光で睨む。その瞳に場にいた全員が萎縮した。

 

 それを確認もせずに、凛は倒れこんでいた少女を抱き上げた。少女は凛を弱弱しい目で見つめていた。

 

 少女を抱き上げた凛はそのまま人ごみの中を進んでいく。人々はそれを避けるように凛に道を開ける。

 

 結局誰一人として凛を呼び止めることはなく、彼はそのまま実家へ向かった。

 

 少女の傷跡は既に回復が始まっているが、彼女の心のダメージは計り知れないことだろう。すると抱き上げられた少女が凛を見上げながら舌足らずな言葉で聞いた。

 

「おにいさんは『みんけい』さんですか?」

 

「……うん、僕は民警だよ」

 

「じゃあいいひと?」

 

「……」

 

 『いいひと』と聞かれ、凛は無言だった。しかし、目じりには涙が溜まっていた。

 

「おにいさん?」

 

「……ごめん、なんでもないんだ。本当にごめん……」

 

 その『ごめん』という言葉は問いに答えらなかったことに対する謝罪ではないように聞こえた。




はい、前回の投稿から少々時間が空いてしまいましたね。

ティナの使ってる銃が『M82』というのは私の勝手な想像ですので本当はどうか分かりません。バレット社といっていたので多分これかなーって感じですw

後半凛君ブチギレです。
まぁこういうことをやるとは以前から決めていましたがやっぱりつらいですね……

では感想などあればよろしくお願いいたします。

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