第十四話
蓮太郎の叙勲式が行われてから一ヶ月あまりすぎた後、凛は実家に顔を出していた。
「ふーむ……。こりゃあ随分と痛んできちまったねぇ」
断風家の母屋の時江の部屋で彼女は凛が持ってきた冥光の刃を難しげな表情で眺めていた。
一見特に何の問題もなくいつもの黒い輝きを放っている冥光であるが、凛は蛭子影胤との戦闘のあと、冥光に違和感を覚え、今日時江の下へ持ってきたのだ。
「やっぱり?」
「ああ。パッと見は普段と変らないが、僅かに光の反射の仕方が違う。恐らく刀身自体が歪みはじめちまってるんだろうねぇ」
窓から差し込む太陽光を黒い刀身に当て、光の反射具合を見ている時江の表情は真剣そのものだ。
「しかしまぁ冥光が折れちまったらアンタの力に耐えられる刀なんてないからねぇ。劉蔵じいさんが生きとりゃあまだ何とかなったんだが……」
「僕も鍛冶技術を習っておくべきだったかな」
「そうさねぇ……だけど凛。アンタにそんな暇はなかっただろう? 十歳になるまでに断風と天童を行ったりきたり、毎日のように剣術の稽古だったし。その後も稽古は続いて結局民警をはじめちまったわけだし」
肩を竦め小さく笑う時江は冥光を鞘に収めながら凛に渡す。
凛もそれを受け取ると難しい表情をしながら冥光をどうするべきかと考える。すると、時江が何か思い出したのかポンと手を叩いた。
「なんなら司馬の嬢ちゃんに新しく作って貰えばいいじゃないか。データは渡したんだろう?」
「まぁね。だけど、未織ちゃんも『冥光を再現することは出来ない』って言ってたよ?」
「だったら冥光を溶かして新しい刀を作ってみたらどうかねぇ? 冥光も変え時だってことさね」
「変え時かぁ……」
その言葉に凛は感慨深げな表情をするが、それに気付いた時江が小さく溜息をつき、
「けどまぁ、私の見立てじゃまだ折れるとは思わんよ。……もし折れるとすりゃあ対戦車ライフルの弾丸を弾いたり斬ったりすりゃあ折れるかもしれないねぇ。ガストレアぐらいならまだ平気だろうさ」
「対戦車ライフルって……そんなのを相手にすることなんてないと思うけど……」
肩を竦め立ち上がった凛は冥光を腰に差し踵を返した。
「ありがと、ばあちゃん。また来るよ」
「あいよ。凛、あまり無理はしなさんな」
凛はそれに頷くと部屋を出て実家を後にした。
実家を後にした凛は、そのまま会社へ戻ろうとしていた。しかし、会社に辿り着いたところで見覚えのある黒髪の少女が会社の前で行き倒れていた。
着ている制服や、流れるような黒髪から推測されるのは簡単であったため、凛は彼女に声をかけた。
「木更ちゃん? なんでうちの会社の前で行き倒れてるの?」
「……にい……さま。……お腹……へって……て……ガクッ……」
「えー……」
言葉の途中で気を失ってしまったのか、木更はそのまま動かなくなってしまった。凛はそれに呆れた様子で溜息をつくと、木更を背負い事務所への階段を上がっていった。
「事務所に何か食べるものあったかな」
階段を上がり事務所の扉を開けるといつも零子がいるはずの椅子に零子の姿がなく、彼女の隣に新たに置かれた机の椅子に夏世が座り、書類に目を通していた。
杏夏も同様であり資料を見比べながら電卓を叩いていた。すると、扉が開けられた音に反応してか二人はほぼ同時に顔を上げた。
「あ、凛先輩。用事は済んだんですか……っておぶってるその人は?」
「あぁ、僕の知り合い。ホラ前の事件の時にゾディアックを倒した蓮太郎くんいたでしょ? その子の事務所の社長で、天童木更ちゃん。僕の妹分てきな子」
「はぁ……」
凛の説明を聞くもいまだに状況が飲み込めていない様子の杏夏であるが、そこへ夏世がやってきた。
「それで、何故天童社長が気を失った状態で凛さんにおぶられているんですか? ……まさか拉致」
「凛先輩……」
「えっ!! なにその軽蔑のまなざしは!? ちがうよ!? 決して疚しいことがあったわけじゃないよ。ただ、木更ちゃんが事務所の前で倒れてたからさ。そのままにもしておけないでしょ」
凛は木更をソファに寝かせながら二人に弁解する。すると、夏世がコクンと頷き視線をそらした。
「まぁ誰かが事務所の前に倒れているのは私も知っていましたが」
「助けてあげて!? 知ってるとか知らないとかどっちでもいいから助けてあげようよ!!」
「すいません、将監さんと組んでいた時の癖で面倒ごとには首を突っ込みたくない性質でして」
「此処で将監くんの名前を引き合いに出してくるのはずるいと思うんだけど!?」
夏世の平坦な口調に対し、凛は若干焦った表情をみせていたが、夏世はそれに小さく笑うと彼に告げた。
「冗談ですよ。本当は助けに行こうと席を立つはずだったんですが、ちょうど凛さんが天童社長をおぶっていたところだったので行きませんでした」
「なるほどね……まぁその辺は聞かないでおこう……杏夏ちゃん、冷蔵庫に何か食べるものあったっけ?」
「え? あ、はい。コンビニで買ってきたおにぎりとサンドイッチがあるんで持ってきますね」
杏夏は給湯室にある冷蔵庫から食事を取り出すため駆けて行った。
「まさか行き倒れですか?」
「みたいだね、お腹減ってたみたいだし」
「天童といえばお金持ちのイメージがあるんですが……」
夏世の素朴な疑問に対し、凛は苦笑すると彼女の頭をポンポンと軽くたたきながら告げた。
「木更ちゃんは結構特殊だからね。今度暇があったら話すよ」
夏世はそれに首をかしげていたものの、給湯室からコンビニの袋を持ちながら杏夏がやってきた。
「お待たせしましたー」
「うん、ありがと。……さて」
凛は袋から適当にサンドイッチを出すと封を開ける。それを片手に持ったまま木更の顔に近づける。それに呼応するように木更の鼻がヒクヒクと動き、次の瞬間、彼女の目が見開かれ凛が持っていたサンドイッチに齧り付いた。
木更はそのまま目にも止まらぬ速さでサンドイッチを平らげると、思い出したように顔を真っ赤に染め凛達のほうを見た。
「み、見ました?」
「そりゃあもうばっちりと」
凛が答えると、後ろにいる杏夏と夏世もコクンと頷いた。木更はそれに対し真っ赤だった顔をもっと真っ赤に染め手で顔を覆いながら顔を伏せる。
それを苦笑いのまま見つめていた凛だが、残りの食材が入った袋をテーブルに置くと木更は顔を伏せつつもパクパクと平らげていた。
……本当にお腹へってたんだなぁ。
次々に食事を平らげていく木更を生暖かい目で見守りつつ、凛は小さく息をついた。
それから数分後、全てを平らげた木更は軽く咳払いをしつつソファに座りなおし三人に向き直った。
「御見苦しい所を見せてすいませんでした」
「いいっていいって。それだけお腹が減っていたわけなんだし」
「本当に凄い勢いで食べていましたね。掃除機か何かかと思いましたよ」
凛がフォローするものの、夏世は驚嘆の声を上げるものの、その言葉が木更のプライドを抉ったようで彼女は悔しげな表情をしていた。
「……夏世ちゃん! 木更ちゃんにそういうこと言っちゃダメだから……!」
「……はぁ。なるほど」
夏世に耳打ちすると、彼女は頷いた。すると、話題を空気を変えるように杏夏が木更に問うた。
「え、えーっと、天童社長は何故に行き倒れられてたんですか?」
「それは……うちの唯一の社員である里見くんが甲斐性なしだからです」
「あれ? でもこのまえの叙勲式で報酬とかもらったんじゃ?」
「ええ。もらったはいいんですけど……あの事件の最中に恥ずかしながら来年の学費分のお金を支払ってしまって、それをもらった報酬で補ったんです」
「ミワ女はお嬢様学校だからねぇ……けどそれでもまだ余るくらいあるでしょ?」
首をかしげながら聞いた凛であるが、木更はそれにまたしても恥かしげに俯くと、いじいじと指をいじりながら語りだした。
「そ、それが……その後色々と身辺整理とかしたらもらったお金が一気になくなっちゃいまして……。結果今に至るといった感じです」
「うわぁ……」
非常に不幸なものを見る目で夏世がドン引きしているが、凛と杏夏は苦笑いを浮かべていた。
四人の間になんともいえない沈黙がはびこるが、それを打ち砕くように快活な声が聞こえ事務所の扉が勢いよく開け放たれた。
「たっだいまー!!」
「ただいま戻りましたわ」
扉から入ってきたのは勉強を終えた摩那と美冬だった。どうやら今日の勉強はお昼ぐらいまでだったようだ。
「おかえり、今日は随分早かったね」
「まぁねー。それに今日は社長に送ってもらったし……ってお客さんじゃん!」
摩那はそのまま木更の下に駆け寄ると彼女に頭を下げた。美冬も同じく頭を下げると、木更はかなり頬を緩ませていた。
……そういえば子供好きだったっけ。
木更が子供好きであったことを凛が思い出していると、またしても扉が開かれ二人を送ってきた零子がやってきた。
「ただいまっと……あら? 天童社長?」
事務所に入ってすぐにソファに木更が座っていることに気が付いた零子はいつもの外で使う声音になった。木更も立ち上がると、零子に対し頭を下げた。
「お邪魔しています黒崎社長」
「いえいえ、こんなところにようこそ。……それにちょうどよかった。凛くん、貴方に新しい指令が出たわ」
「指令?」
聞き返すと、零子は木更の隣に腰掛けビジネスバックからノートパソコンを取り出し皆に見えるように画面を表示させた。
皆がそれを覗き込むと木更と凛が驚いた表情を浮かべた。すると、夏世が皆を代表して表示されている文章を読み上げる。
「『依頼内容、護衛任務。概要、今回依頼する任務は聖天子様の護衛。なお、これは聖天子様からの勅命であり、拒否することはできない。また、今回の任務は天童民間警備会社所属、里見蓮太郎・藍原延珠ペアと、黒崎民間警備会社所属、断風凛・天寺摩那ペアとの合同任務とする』……これって」
「うん、夏世ちゃんが読んだとおり、今回の任務はここにいる天童社長の部下の蓮太郎君と、私の部下である凛くんが行う任務って事。今日はこれを聞くために聖居に行っていたのよ」
パソコンを閉じながら零子は隣にいる木更の肩を軽く叩く。
「というわけで……今回もお願いします天童社長」
「はい。こちらこそ」
二人は軽く握手を交わし、木更はそのまま携帯で蓮太郎に連絡をとった。そのときの彼女の顔は明らかに喜びに満ちていた。恐らく聖天子の護衛任務の報酬が高かったことに喜んでいるのだろう。
それを横目で見ながらクスッと笑った零子は木更の電話が終わったと同時にその場にいる全員に高らかに告げた。
「よし、じゃあ今日は合同任務のための親睦を深めるということで焼肉にでも行きましょうか」
「一ヶ月くらい前行ったじゃないですか」
凛が呆れた表情でやれやれと首を振ると、零子はムッとした顔になり皆のほうをぐるりと見回した。
「それとこれとは話が別よ。じゃあ多数決取るわよー、焼肉行きたい人ー」
「「「「「はーい」」」」」
杏夏に美冬、摩那、夏世がそれに手を挙げ、なぜか木更までも手を上げていた。凛はそれに微妙な目線を送るが、木更は先程とはまた別に目を輝かせていた。
「焼肉……じゅるり……」
「木更ちゃん……」
……食べ物の魔力恐るべし……。
内心でなんともいえない感情に襲われつつも、凛も渋々零子の提案に同意し、焼肉に行くことが決定した。
その日の夜。
零子達、黒崎民間警備会社の行きつけの焼肉店でテーブルを囲んでいた。既にテーブルの上には多くの肉が並べられており、皆ギラギラとした目つきでそれらを見据えていた。
「では、我等、黒崎民間警備会社と天童民間警備会社の親睦会を始めます。今日は私の奢りよ皆、気にせずじゃんじゃん食べなさい」
零子の号令に皆が頷くと、箸を持って皆自由に肉を焼き始めた。同時に肉の焼ける香ばしい香りが皆の鼻腔をくすぐるが、その中で零子が一人浮かない顔をしている蓮太郎を見つけた。
「どうかしたかしら蓮太郎くん。不幸そうな顔が更に不幸そうになってるわよ?」
「俺、そんなに不幸そうな顔してるのか?」
「ええ。もう不幸が顔全体に滲み出ているというか、オーラが不幸と言うか」
「……もういい、聞いてるほうがつらい」
「まぁいいけど。で? なんでそんなに俯いちゃってるわけ? 何か気に喰わないことでもあった?」
零子が再度問うと、蓮太郎は箸をおいて話し始めた。
「……ここは、大丈夫なのかなって思ったんです。延珠達みたいな存在がこんな人の集まるところに来て」
その言葉から察するに、蓮太郎は延珠や摩那のようなイニシエーター、『呪われた子供たち』がこのような公衆が集まる飲食店に来て差別や迫害の言葉をかけられないか心配しているのだろう。
しかし、蓮太郎の心配も他所に肩を竦めると彼に告げた。
「安心しなさいな。ここはそんな連中が集まれないようになってるから」
「え?」
「表の看板見なかった? 看板には『呪われた子供たちに差別意識のない方だけご来店ください。差別意識のある方は回れ右して帰れバーカ』って書いてあるのよ?」
「……マジッすか?」
蓮太郎は驚愕に顔を染めるが、零子はいたって冷静だ。更に彼女は蓮太郎に「見ろ」と言うように顎で見せのカウンターを指した。
蓮太郎がそこに目を向けると天童民間警備会社の事務所がある雑居ビルの、四階に構えている闇金の連中よりも更に強面で筋骨隆々な男達が数人控えていた。
思わず同じ日本人かと疑ってしまいたくなるような体躯に蓮太郎は引いてしまったが、零子はそれを面白がるように彼等に声をかけた。
「おーい! 生ビール追加ー!」
「ヘイ、少々お待ちください零子の姐さん!!」
男の一人が零子に深々と頭を下げビールを注ぎに行くのをポカンとしたした表情で見ていた蓮太郎に零子が更に続けた。
「ほらね? なんともなかったでしょ。それに、もしこの店でこの子達みたいな子の事を差別するような言葉を使ったら彼等につまみ出されるしね」
「じゃあ、今いるお客は全員延珠たちみたいな存在を否定していないってことなのか?」
「ええ。東京にはこんなところもあるのよ。これで少しは楽しんでお肉が食べれそうかしら?」
零子が首を傾げると、蓮太郎は今までよせていた眉間の皺を解き箸を持って網に置いてある自らの肉を食べようとした。
しかし、蓮太郎が取ろうとした瞬間その肉がとんでもない速さで掠め取られてしまった。
「あっ!?」
「フフン。よそ見してるからいけないんだよ蓮太郎!」
「摩那、テメェ!! それ俺の育てた肉だぞ返せ!!」
「やーだもん! 取ったもん勝ちだもーん!」
蓮太郎が抗議するが、摩那はそれをモシャモシャと咀嚼した。蓮太郎はそれに拳を握り締めるが、木更が頭を軽く叩いた。
「コラ、摩那ちゃんを睨まない! それに摩那ちゃんの言うとおりよ。さっさと食べない里見くんが悪いわ」
「俺だって色々考え事してたんだよ! つーか、木更さんは食いすぎだろ!? 頬パンパンに膨れてハムスターみたいになってんじゃねーか!」
「何を言うのよ。こんな機会私達にはめったにないのよ!? 食べられる時に食べないとそんでしょう!」
木更はそういうとメニューを持ちながら店員に追加で注文した。その姿に苦笑いしつつ、蓮太郎は隣に座る延珠の姿を見る。
彼女は向かいに座っている摩那とアニメの話をとても楽しげに話している。その姿はとても嬉しげだった。
それに満足げな表情をしている蓮太郎であるが、蓮太郎の斜め前、零子と凛の間に座っている少女、千寿夏世が蓮太郎を一瞥すると凛の袖をクイッと引き彼に問うた。
「凛さん……あの人もしかしてロリコンですか……?」
「ブッ!?」
その単語に蓮太郎は思わず口に含んだウーロン茶を噴いてしまった。
「か、夏世ちゃん!? 何を言い出してんの!? 蓮太郎君はそういうんじゃないと思うよ……たぶん」
「えー……だってさっきから延珠さんの顔を見ながらニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていましたし……」
それを聞いた瞬間、周りの空気が一瞬にして凍りついたのを蓮太郎は感じた。
「……蓮太郎さん……さすがにそれは……」
「見てはいけませんわ杏夏。心が汚れてしまいますわ」
杏夏は信じられないような者を見る目で蓮太郎を軽蔑のまなざしで見ており、相棒の美冬は完全に蓮太郎を敵視していた。
「里見くん……前々からそんな気があるんではないかとは思っていたけどまさか本当に……?」
木更でさえ携帯に手をかけており、画面には110の数字が見えた気がするが、蓮太郎はそれを見たくはなかった。
「あーららぁ? 蓮太郎くんはそっち系なのかしらぁ?」
「えー、蓮太郎マジで? 蓮太郎のことは確かに嫌いじゃないけども……流石にないわー」
「零子さん! それに摩那も! 失礼だって!」
すっかり酒が入って顔が赤くなり始めた零子に、蓮太郎を小ばかにしたようにケラケラと笑う摩那。その二人を凛が注意するが、二人はかなり楽しげに笑っていた。
「大丈夫だぞ蓮太郎! 妾は蓮太郎がその気になればいつでも体を差し出してやるぞ! なんなら今日帰ったら早速するか!?」
延珠のその発言がさらに場の空気を凍りつかせ、軽蔑の眼差しが更に強くなった。凛もさすがにフォローが出来なくなったのか、蓮太郎に対し顔を伏せると。
「……ごめん、蓮太郎くん。流石にもうどうしようもないかな……」
「ふ、ふふ、ふざけんなぁあああああああ!! 俺はロリコンじゃねえええええええ!!!!」
蓮太郎の大絶叫は店を飛び越え通りの方まで響いていた。
そして親睦会が終わった後皆それぞれ帰路についた。
凛と摩那も家路についていたが、凛は店で起こったことに溜息をついていた。
「まったく……ふざけ過ぎだよ摩那」
「えー、そう? だって面白かったし」
「面白いって言ってもさぁ……」
肩竦め先を歩く摩那としゃべる凛だが、ふと路地から出てきた少女とぶつかりそうになってしまった。
「おっとと、ごめん。君怪我はない?」
「はい。大丈夫です。こちらこそすいませんでした前を見ていなかったもので」
少女は恐らく色に例えればプラチナブロンドと言った感じの髪色をしており、肌も日本人とは全く違った白人種のそれだった。年は摩那と同じくらいだろうか。
彼女はそのままぺこりと頭を下げそのまま凛が来た道を歩いていき、最終的には夜の闇の中へ消えていった。
そんな彼女が気になったのか、凛は少女の姿が見えなくなるまで彼女の後ろ姿を見つめいていた。
「凛ー? なにしてんのー? 早く帰ろうよー」
「あぁうん。今行くよ」
凛と摩那はそのまま家路に戻った。
『どうした?』
「いえ、なんでもありませんマスター。一般人とぶつかりそうになっただけです」
『そうか、まぁいい。だがあまり目立つなよ。名前も極力偽名を使って自分の情報は絶対に流出させるな』
少女は携帯越しに聞こえる男性の声に頷いた。
『では、もう一度確認するぞ。――ティナ・スプラウト、お前の任務はなんだ? 私に聞かせて送れ』
ティナと呼ばれた少女はその可愛らしい口からは到底飛び出さないような言葉を発した。
「ご安心くださいマスター。――聖天子抹殺は必ずや成功させて見せます」
言い切ると、彼女の目が赤く染まった。
今回から『VS神算鬼謀の狙撃兵』の開始でございます。
聖天子様は凛と蓮太郎二人の合同任務と言う形にしました。
そして今回は少々蓮太郎君をいじりすぎた感じもしますが……w
というか、黒崎民間警備会社の周辺に『呪われた子供たち』差別の人物がいなさすぎぃ!!w
なんだ今日出てきた焼肉店は! よくやっていけるな!! 明らかに経営ギリギリだろ!w
……なぁんてことを書いているうちに考えてしまいましたw
では、感想などあればお願い致します。