東方殺女王   作:ダイナマイト

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グダグダ感は否めないですが、一応このはなしには最低限必要な話です。




反撃の狼煙

 

 

 

「うっ・・・ぼ、僕は・・・?」

 

ドッピオは、そううめき声を上げながら目覚めた。

 

「え・・・影斗さんは・・・ッ!?」

 

まだおぼろげな頭を振り払うように、ドッピオはこの家の主人の現在を心配した。

すくっと立ち上がり、先ほどまで影斗がいた場所に向かって駈け出した。

 

バタバタバタバタッガチャ

 

慌てて扉を開くが、そこには影斗の姿はない。残されていたのはわずかな血痕だけだった。

 

ドッピオはすぐさま部屋の時計を確認する、あいつが来てからそんなに時間は経ってない、どうやら気絶していた時間は短かったらしい。

 

「影斗さんは・・・何処にさらわれたんだ?」

 

(彼は・・・行き場のない僕を此処においてくれている、それにボスの恩人だ、このまま彼を無事に返すことができなければ・・・僕はボスの右腕失格だッ!)

 

彼が覚悟を決めている時、不意にチャイムが鳴り響く。

 

ピンポ~ン

 

その音を聞き、ドッピオはより警戒を強めた。

もしかしたらさっきの奴が戻ってきたのかもしれない・・・そう思ったのだ。

 

「影斗君・・・いるか?」

 

その声を聞いてドッピオは幾分かの警戒を解いた、どうやらさっきの女ではないらしい、この声は男の声だ。

そう思ってドッピオは扉を開いた。

 

「おや?君は・・・?」

 

扉を開いた先にいたのは、金髪のスーツ姿の男だった、もちろん影斗ではない。

 

「・・・僕は影斗さんの家で厄介になってる者です。」

 

ドッピオは男の質問に短くそう答えた。

 

「なに?彼は居候が二人もいるなんて言ってなかったが・・・?」

 

男はその言葉に疑問を覚えたようで、首をかしげる。

 

「・・・とにかく、貴方は一体何の用ですか?それに貴方は?」

 

ドッピオは男の疑問を切り捨てるように自分の抱いた疑問をぶつける。

 

「ああ、わたしの名前は吉良吉影、ここには友人である蒼々影斗君を探しに来たのだが・・・

・・・やはりいないようだ。」

 

あの胡散臭いスキマ妖怪の言うとおりだったか・・・

 

吉良は独り言のように呟く。

 

「あんたッ!いまなんて・・・」

 

吉良の言葉に違和感を覚えたドッピオは、それを問いただそうと声を荒らげる、だがその言葉は最後まで紡がれることはなかった。

猛スピードで飛来する何かが、ドッピオ達めがけて飛んできたのだ。

 

その何かが叫んだ。

 

「影斗さんは無事ですかッ!?」

 

何かは砂煙をあげながら急停止する、その何かは文だった。

 

「なっ・・・文さんッ!いきなりどーしたんですかッ!?」

 

文の行動もそうだが、それよりも文の言葉に驚いた。なぜこうもみんな影斗の身に何かがあった事を知っているのかと・・・

 

「あ、ドッピオさんと・・・ゲッ!!」

 

吉良の顔を見て、文は物凄く嫌そうな顔をする、記憶を失っているのは分かっているが、以前の嫌な事件を思い出しているのだろう。

 

「人の顔を見てそんな反応をするとは・・・君、少し失礼なんじゃないかね?」

 

「もーそれはいいから、なんでお二人は影斗さんに何かあったことをご存じなんですかァ────ッ!?」

 

「八雲紫という胡散臭い妖怪から聞いたんだ。」

 

「影斗さんのスタンドから直接聞きました。」

 

ドッピオの疑問に2人はそう答える。

 

「・・・すたんど?」

 

吉良は文の言葉に何か心当たりがあるかのように、だがそれが分からないようで唸っている。

 

「スキマ妖怪が・・・?」

 

文も吉良の言葉に疑問を覚えたようで、ぶつぶつと独り言を漏らしながら考え事に熱中する。

 

そして3人中2人が何か独り言を言っている何とも嫌な空気が出来上がった。

 

「分かったから、今から説明しますから・・・少し黙ってくれよォ──ッ!」

 

その空気に耐えられなかったドッピオは、その空気を打ち払う為に大声で叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

「やはりというかなんというか・・・そんなことになっていたのか。」

 

それからしばらく経って、ドッピオの説明を受けた吉良は独り言のように呟く。

 

「それなら早く行かなくては・・・・」

 

文は焦ったように言う。

 

「でも影斗さんが何処にいるか分からない・・・」

 

「それなら大丈夫です。」

 

文は不敵な笑みを浮かべながら答えた。

 

「これを見て下さい、友人に頼んで念写してもらったものです。」

 

そう言って文が見せた数枚の写真には、竹林の中ポツリと佇む小屋、暗闇で椅子に縛られてる影斗の姿が写っていた。

 

「ここの近くだと思うんです、何処かご存知ですか?」

 

「ここならすぐ裏じゃなかったか?以前此処に来る途中に見たことがある。」

 

文の質問に吉良が答えた、どうやらすぐ近くの様だ。

 

「拉致したくせに・・・まさかこんな近くに居やがったとは・・・ッ!クソッ!」

 

「それじゃあ早く行きましょう。」

 

「・・・まぁ行くしかないのかね・・・」

 

それに引っかかるものもあるしな・・・

吉良はその言葉を飲みこみ、そして駆けだした。文もそれに続く。

 

「とおうるるるるるるるるん。」

 

文と吉良が少し離れた後、ドッピオはそんな言葉を口にした。

 

「プツ、もしもし、ボス、ドッピオです。少々まずいことになりました・・・。」

 

『ああ・・・分かっている、ドッピオよ。わたしもすぐに向かう・・・それまで持ちこたえるんだ。』

 

「ドッピオさん・・・急いで!!」

 

「プツッ・・・分かりました、今行きます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「影斗さん、ごきげんはいかがですか?」

 

「咲夜・・・それは冗談かなにかか?」

 

朦朧とする意識と暗がりの中、咲夜が私にそう問った。

クッ・・・思考が定まらない、今自分が何て言ったかさえ曖昧だ・・・。

まさか咲夜まで肉の芽を植え付けられてたとは・・・わたしのミスだ、もっと早く気付いていれば・・・

 

「あなたに邪魔をされるとDIO様も困りますからね、しばらくの間ここで眠ってもらいます。」

 

咲夜はそういうと2本の注射器と符を数枚取り出した。

 

「これは睡眠薬とあなたの能力を封じるための薬です。二つともこの竹林の奥の永遠亭印です。これで貴方はしばらくの間、けがを治すことは出来なくなる。帰りに丁度いい小屋を見つけられたのも幸運でした・」

 

咲夜はそういうと、おもむろに取り出したナイフでわたしの足を切りつけた。

 

「グァッ・・・・!!」

 

そして息をつく暇もなく、注射の針を刺された。

血がダクダクと流れている、一向に治る気配はない。

 

「万が一ここを抜け出されても迷惑ですからね、すべてが終わるまでここでおとなしくしてなさい。」

 

そして残った睡眠薬の方をわたしに刺すと、咲夜はわたしを囲うように符で結界を作った。

 

「それではごきげんよう・・・」

 

その言葉を聞きながら、わたしの意識は闇へと閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここですか・・・。」

 

文が手中の写真と目の前の小屋を交互に見ながら呟いた。

 

「・・・ああ、間違いないだろう。」

 

吉良は扉の前で聞き耳を立てている。

 

ドギャァァァンッ

 

不意に・・・ほんの瞬きもする時間もないほど短い時間、吉良の目の前の扉は開かれ、三人の前にナイフの大群が現れる。

 

「ぐっ・・・」

 

「きゃっ・・・」

 

吉良と文はそのナイフの束から避けられず、ナイフが服に刺さりそのまま壁に縫いとめられた、2人は身動きが取れなくなってしまう。

 

「・・・あっけないモノね、影斗さんを助けるつもりはあったのかしら?」

 

小屋の屋根に立ち、冷めた目で見降ろしながら、咲夜が口を開いた。

 

「・・・ところで貴方はどうやって避けたのかしら?」

 

ドドドドドドドドドドドドドド

 

「・・・・・・」

 

咲夜が目を向けた先、自分の後ろ、同じ屋根の上にそいつは立っていた。

一言も言葉を発さず、ただ普通の人間がそいつの前に立ったなら、思わずブルっちまってションベンを垂れ流してしまいそうになるほどの殺気を発しながら立っていた。

 

「えっと・・・ディアボロさん・・・だったかしら?」

 

「・・・過去というものは綺麗にふき取らねばならない・・・」

 

咲夜の問いに、その男はようやく重い口を開いた。

 

「・・・自らが引き起こした汚点は・・・自分で拭うべきものだとは思わないか?・・・えぇ?十六夜咲夜。」

 

上に着ていたセーターを脱ぎながら男は続ける。

 

「これは試練だ・・・過去に打ち勝てという試練と・・・オレは受け取った・・・オレが『生きる』ためには・・・この未熟な過去に打ち勝つことだとな・・・」

 

「・・・会話が成り立たない人ね、もういい、死になさい。」

 

咲夜はつまらなそうな顔を浮かべ、ナイフを構えた。

 

「させるものかッ!!キング・クリムゾンッ!!」

 

「な・・・スタンドッ!!」

 

咲夜が時間を止めるよりも早く、ディアボロはスタンドを出し、時を吹き飛ばした。

 

瞬間、世界は色を失い、ゆっくりと流れていく。

その中でディアボロは、不意に現れたナイフをたやすく避け、下に降りた。

 

「・・・時は再始動する。」

 

そうディアボロがポツリとつぶやいた瞬間、世界は再び色を取り戻した。

ディアボロは咲夜が自分を見失っている隙に、文と吉良に近づき、ナイフをとる。

 

「・・・スタンド・・・スタンド・・・?」

 

(そういえばこいつにスタンドを見せるなと言われていたか・・・、緊急事態だ、やむを得まい。)

 

「そこにいましたか・・・」

 

文のナイフに手をかけようとしたとき、咲夜がディアボロに気付いた。

 

「フン・・・」

 

ディアボロはその声を聞き振り向く。

 

瞬間、咲夜の姿が消える、そして同時に後ろからすさまじい速度の蹴りが飛んできた。

 

「そんな攻撃、十数秒前から知っていたァッ!」

 

ディアボロはその方向を振り向きもせず、キング・クリムゾンで的確に咲夜を殴り飛ばす。

 

ガッシャァ───z___ッ!!

 

その衝撃で、咲夜は再び小屋の中に押しこめれた。

 

「ぐうぅ・・・」

 

(・・・しまった、あいつがここまで強いなんて計算外よ・・・、しかも・・・能力の相称は最悪ッ!どうすれば・・・?)

 

ざくざくと、ディアボロの近づいてくる音が聞こえる。

 

「そ・・・そうだッ!」

 

咲夜は何か思いついたようで、すぐに立ち上がる。

 

「さてと・・・もう勝負はついたようなものだが・・・?つづけるか?」

 

ディアボロは咲夜を指差しながら言った。

 

「それはこっちのセリフです。」

 

しかし咲夜が返した言葉は、さっきまで自分が負けそうになっていた人間の言葉ではなかった。

 

「なに・・・?」

 

暗い部屋の中、ディアボロが目を凝らすと、そこには椅子に縛られた影斗の姿と影斗の首にナイフを突きつけた咲夜の姿があった。

 

「あなたの能力・・・『時を吹き飛ばす能力』ですね?だったら貴方は・・・わたしが影斗さんの息の根を止めるのを防ぐことができないッ!」

 

「グッ・・・」

 

咲夜の言うとおりだった、ディアボロは自分の能力に気づいた咲夜に感心すると同時に、このままでは影斗が殺される、という恐れを抱いた。

 

「そしてもちろん・・・」

 

ズバァ

 

咲夜はナイフで背後を切りつける。

 

「ぐっ・・・」

 

そこにいたのは吉良だった。

 

「不意打ちをしようとしたって無駄よ、無駄無駄ァ。」

 

そしてそのまま吉良に足払いを仕掛ける。

すると吉良は何の抵抗もなく尻もちをついた。

 

両手にナイフを持ち、突きつける咲夜。その顔は勝利を確信したかのような顔だ。

 

「効くでしょう?銀のナイフ。幽霊にも人間にも等しく貫く優れモノよ。」

 

「なァ・・・十六夜咲夜。」

 

不意に吉良が口を開く。

 

勝利の余韻に浸っていた咲夜は上機嫌に吉良に言葉を返す。

 

「あら?どうかしたかしら?」

 

「・・・忘れているんじゃないか?」

 

「・・・なんのことよ・・・」

 

要領を得ない吉良の言葉に、咲夜はだんだんいらだち始める。

 

「きっと影斗に説明されていたはずだと思うが・・・本当に忘れたのか?」

 

「・・・だからなんのことよッ!」

 

痺れを切らした咲夜は、怒鳴るように口を開く。

 

「だから・・・」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「わたしへのダメージは全て影斗に返ることだよ。」

 

「ハッ!」

 

急に背後に現れた気配に、咲夜は思わず振り向いた。

 

「・・・おそい。」

 

だがその前に、咲夜は首筋への衝撃を受けて、意識が闇へと閉ざされた。

 

「やぁ、蒼々影斗、おはよう、気分はどうだ?」

 

「・・・最悪に決まっているだろう・・・」

 

吉良の問いに、影斗は力なく答えた。

 

 

 

「そんな事より助けてくれ、足が動かないんだ。」

 

しばらくして、咲夜の肉の芽をとった影斗が呟いた。

 

「それならオレが肩をかそう。」

 

その言葉にディアボロが返す、影斗の前で屈み、肩を抱きやすい形になった。

 

「それじゃあ咲夜さんはわたしが・・・」

 

すでにナイフによる拘束から脱出した文が咲夜に近寄りながら言った。

 

 

 

「それで・・・これからどーするんだ?」

 

ディアボロは横にいる影斗に尋ねる。

何故いきなりそんなことを聞いたか?それは今横にいる男が、このままで終わるはずがないからだ。

 

「まず・・・家に行ってくれ。」

 

そして・・・

 

影斗は続ける。

 

「・・・・・反撃の開始だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




DIO「まるで『世界』のバーゲンセールだな・・・」承太郎、咲夜、影斗を見ながら

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