薄暗い森の中、文は1人佇んでいた。
大丈夫・・・影斗さんに言われた通りやれば・・・きっと大丈夫、吉良に勝てる・・・
そう自分に言い聞かせながら、文は時が来るのを待っていた。
―――怪しまれないように演技をしてくれ、吉良には今までの記憶はない、一番最初に会った時のように行動すれば怪しまれない。絶対に吉良に悟られてはならないよ、そして何とか吉良をおびき出してくれ・・・そうすればわたしが何とかしてみせる。
バグオォォォン
いつものような爆発音が聞こえる、そこに向かえば吉良がいた。
その事実に頬が緩みそうになるが文はそれを何とかこらえた。
―――バイツァ・ダストは仕掛けられた人間から第3者が仕掛けた人間のことを聞いたり話したりすると発動する時間をも吹き飛ばす爆弾だ・・・
「久しぶりだね・・・射命丸文ァ。」
―――吉良に1泡吹かせてやろうじゃあないか・・・
「き・・・吉良吉影ッ!」
影斗が話していたことを頭の中で反復しながら、文は吉良の言葉にこたえる。
そしてさっきと同じように飛びかかろうとする。
「おおっと、わたしが傷つけば影斗も傷つくんだぞ?
それに君ひとりでわたしを捕えられるかい?」
「・・・ッ!」
驚いたふりをしながら、空中でブレーキを掛ける。大丈夫・・・今のところは台本通りだ・・・
「ン~、ところで、蒼々影斗はどーなった?」
「・・・今・・・聞きましたね?」
「・・・なに?」
「今・・・聞きましたねッ!影斗さんのことをッ!」
ニヤリと笑って吉良を睨めつける文、その肩にはキラークイーンが悠然と立っている。
「ま・・・まさか・・・影斗もバイツァ・ダストを作動させたのか・・・ッ!」
キラークイーンを見た吉良は、焦ったように言葉を発す。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「ああ・・・そうだぜ、貴様がわたしを絶望に追い込んでくれたから・・・わたしはバイツァ・ダストを作動することが出来た・・・」
木の陰から影斗が姿を現す。
「蒼々・・・影斗・・・」
ドドドドドドドドドドド
「約1時間ぶりの再会・・・久し振りだな・・・やっとお前を追い詰められたぞ、吉良吉影・・・」
2人は睨みあいながら言う。
「戻れ、キラークイーン。」
影斗がそう言うと、先ほどまで文の肩にいたキラークイーンが消え、影斗の隣へと姿を現した。
「・・・わたしの世界は小さいんだ、文がいて、咲夜がいて、幽香がいて、霊夢たちと酒を飲みながらしゃべって、ちょっとした厄介事に巻き込まれながらでも知り合いと楽しく暮らしていく・・・。
それだけの世界なんだ・・・。」
影斗は静かに・・・そして吐露するように・・・言葉を紡いだ。
その言葉に、文はひどく安心した。影斗は自分のことを大事に思ってくれている・・・とても嬉しかった。
「今からお前を殴る・・・当然私もケガをするが・・・それはわたしの能力で治す、お前も一緒に治ってしまうだろう・・・だが関係ない、もう一度貴様を殴る、そして治す、それを繰り返す・・・。
100回でも・・・1000回でも・・・。
さて・・・どっちの心が先に壊れるかな?精神力の・・・我慢比べってやつだぜ。」
影斗は悠然と吉良を見下ろしながらそう宣言した。
その言葉に、吉良は一層焦りを覚えた。
(こいつの目・・・『決意』めいた眼だ・・・あの忌々しい広瀬康一とかくそったれの仗助とか早人とかと同じ『目』だ・・・
やるといったらやる・・・そんな目をしている・・・ッ!)
「戻れッ!キラークイーンッ!」
その言葉が聞こえた瞬間、吉良の横にキラークイーンが姿を現した。
それと同時に吉良を追っていた他の3人も姿を現した。
「ハァハァ・・・影斗さん・・・いきなり走り出してどうしたんですか・・・?」
「そうだぜ、お前の速さに追いつくのはけっこー大変なんだからな・・・」
「・・・でも、収穫はあったみたいね。」
咲夜、魔理沙、霊夢がそれぞれ言う。
5対1・・・絶望的な状況に追い込まれてしまった吉良。
「やった、運命に勝った。」
そんな吉良には、その文の言葉がやけに苛立たしく聞こえた。
「これは・・・夢だ。このわたしが追い詰められてしまうなんて・・・きっと・・・これは夢なんだ・・・」
「いいやッ!違うねッ!これは確かな現実だッ!
観念するんだな・・・吉良吉影ッ!」
そう言って、影斗はキラークイーンで吉良を殴らせる。
「ハッ!」
それに気づいた吉良はキラークイーンでガードしようとするが間に合わずそのまま殴られた。
その衝撃で吉良はうしろに吹っ飛ばされた。
その時だった。
吹っ飛ばされた吉良のすぐ後ろの空間が裂けたのだ。
「・・・あれは?」
八雲紫の『スキマ』だ・・・
それに気づいた影斗は考える。
なぜ今、八雲紫が姿を現したのか・・・、まさか吉良を排除するためか?
(・・・乱暴な手段に出るなら止めるしかないな。)
影斗も自分の身はカワイイ、だから影斗はそう結論づけた。
そう影斗が考えているうちに紫はスキマから体を出していた。
・・・いや、紫だけではない、その後ろには幽々子もいた。
(幽々子だと・・・ッ!)
幽々子を見つけた瞬間、吉良の顔に笑みがこぼれる。
「最近・・・『爪』が異常にのびるこの時期・・・いいことがないと思っていたが・・・
どうやらようやくわたしにも・・・ツキが回ってきているらしい。」
そう言いながら吉良は幽々子に淡々と言葉を紡ぐ。
「幽々子・・・君の手・・・すごくきれいな手をしているね・・・
わたしは今まで50人以上の手の綺麗な女性を殺してきました・・・君の手も・・・わたしのモノしたい・・・」
「不味いッ!バイツァ・ダストが再び作動するぞ―――――ッ!」
吉良の行動の意図が読めた影斗はそれを止めようと走るが、如何せん距離が遠すぎる・・・。
時を止めようと思ったその時・・・影斗の視界にあるものが入ってきた。
そのせいで影斗は足を止めてしまう。
「フフフ、やはりッ!最後に勝つのはわたしだったのだッ!
――――負けて死・・・」
すでに影斗のほうを見ていた吉良は、影斗のその異変に気付いた。
影斗は自分の後ろの虚空を見つめていたのだ。
影斗が何を見ているのが何か気になった吉良は・・・
―――――振り向いた。
「な・・・何故・・・ここにこれがいるんだァ――――ッ!」
影斗と吉良の目に入ったもの・・・それは杜王町の振り向いてはいけない小道の亡者たちだった。
こいつらは・・・振り向いた者をどこかへと連れて行く・・・。
「影斗の依頼で・・・一度杜王町に行ったのよ、そこで見つけたの。面白いでしょう?」
亡者たちにつかまれ、身を引きちぎられ、吉良は姿を消した。
薄暗い森の中を、風が虚しく吹いていた。
さあ、それでは皆さんご唱和ください。
あーん!キラ様が死んだ!
うっうっう・・・ひどいよお・・・ふえーん
この間「今、時代は吉良吉影だ!」の葉書きを出してからまだ二週間じゃないですか!
どーして、どーして!?
あれでおわり!?嘘でしょ!?
信じられないよお あんな
EITOごときにやられるなんてっ!!
フランと差がありすぎるわっ!
生き還りますよね?ね?ね?・・・泣いてやるぅ
私はあのおそろしく鈍い彼が(例え日本の片田舎出身でもさ!ヘン!)
大好きだったんですよおっ!
キラさまあっ!死んじゃ嫌だああああああっ!!!
ダイナマイトのクソカス タンカス ゲロ以下プンプン丸っ!!!
え~ん