エタらないよう頑張りますので・・・どうか温かい目で見守ってください。
「この吉良吉影が・・・何故このような目に会わなければならないんだ・・・」
森の中を走りながら、わたしはそう呟いていた。
ここに入って10分ほどがたっただろうか?いまだシアーハートアタックが戻ってくる気配はない。
つまりはまだ、始末しきれていない・・・ということだろう。
シアーハートアタックに弱点はない・・・わたしは自信を持ってそう言えるが、しかしだ、広瀬康一と言う前例もある。
油断は出来ない。
それに今、わたしは追われている。
わたしのことを探っていたあの女だ・・・あいつがわたしを追ってこの森へと入ってきたのだ。
この地形が幸いして、何とかまくことは出来たがそれも、いつまでもつか・・・
「なッ・・・!」
ズシンッ!と、不意に自分の左手が重くなった。
「こ・・・これはッ・・・!?」
あの時と同じだ・・・ッ!
広瀬康一のスタンド・・・エコーズact3の攻撃を受けたときと・・・
しかしその重みもすぐになくなった。
(・・・つまり影斗にとっても今の攻撃は不本意だったということか・・・?
・・・となるとあの3人のいずれかの能力というわけだ・・・)
しかしその後、わたしは再び左手に奇妙な感覚が襲った。
冷たい・・・異常に冷たいのだ・・・
「クソッ!これではシアーハートアタックが・・・」
そう、無効化されてしまったのだ。
今、わたしの左手が冷たくなるようなことは起きていない。つまりシアーハートアタックが攻撃されたというわけだ。
シアーハートアタックは温度が体温ほどまで上がると爆発する自動追尾型のスタンドだ。逆に言えば体温まで上がらなければ決して爆発はしない。
この冷たさなら決して爆発することはないだろう。
(・・・クソッ、このままではつかまってしまうッ!)
ズザッ
不意に・・・わたしの目の前に何かが出現した。
木々の合間を縫って現れたそいつは、わたしを優に超すほどの巨体、わたしは気圧されてしまった。
「アデ・・・?
何でゴンナトコに人間ガイルンダ~~??」
そいつは明らかに人間ではない。
腐ったドブのような色の巨体に汚らしい毛を生やし、濁った眼でこちらを見てくる。
・・・力は大きそうだが、見た目の通り頭は弱そうだ。
「そーイエバ・・・サっキ、鴉デングが人間ヲ探しテタァ・・・
そっが、オメーがそれガ・・・」
その弱そうな頭をフルに使い、目の前のこいつはそう結論付けた。
「ウレジイナァ・・・久し振リノ人間だァ・・・」
やはりか・・・、こーいうアホがとる行動なぞすぐわかる・・・
しかし今はこんな奴に構ってるヒマはない。
「・・・そこをどいてくれ、わたしは今君なんかに構ってるヒマはないんだ。」
「イタダキマーズ・・・」
わたしの言葉に耳を貸さず、目の前のそいつはそんなことをのたまった。
(・・・キラークイーン。)
話が無駄だと言うことがわかると、わたしはすぐに思考を切り替えた。
いかにこいつを撒くか・・・と言う思考から、いかに邪魔者を始末するか・・・と言う思考に・・・
(・・・爆音は最小限に、威力は最大・・・ッ!)
伸ばしてくる腕に、キラークイーンがそっと触れる。
ドゴォン
その瞬間、今まで目の前に存在していたそいつはこの世のどこからも消えた。
(・・・いかに音を最小限に抑えても、この静かな森の中ではイヤがおうにも響いてしまう・・・)
「一刻も早くこの場所を離れなければ・・・」
わたしは無意識のうちに爪を噛んでいた。
「さっき話すと言ったな・・・」
シアーハートアタックを氷漬けにした影斗は咲夜たちと共に森を目指していた。
「わたしは先ほど交戦していた、相手は吉良吉影わたしと同じ外来人・・・そしてスタンド使いだ。
今、里を騒がせている行方不明事件の犯人も彼だ・・・」
3人の返事を待たずに、影斗は話を続けた。
「なるほど・・・それならあのおもちゃの戦車も納得できるわ・・・」
「それにしても外来人のスタンド使いか・・・」
「あれ?でもそれでしたら、あのおもちゃと左手がつながってる理由が・・・?」
「厄介なのは彼のスタンドなんだ・・・名前を・・・『キラークイーン』、わたしのスタンドと同一のスタンドだ・・・」
「「「ッ!」」」
その言葉を聞いた3人に衝撃が走るッ!
「どういう原理か知らないが・・・わたしと吉良はリンクしてしまってる。
彼がケガをしてしまえばわたしも同じ個所をケガをするし、彼が死ねばわたしも死ぬ・・・
まったく、困ったものだ・・・」
そう話してるうちに、影斗たちは森の前へとたどり着いた。
「さて・・・これから森へと入るが、とりあえず2組に別れよう。」
「ならわたしは魔理沙といくわ。」
「そうか、だったらわたしは咲夜と行こう、異論はないかね?」
影斗の言葉に魔理沙と咲夜がうなずく。
「そうか、だったらさっさと早く行こう、文も心配だしね・・・
・・・くれぐれも吉良を発見したからと言って、攻撃はしないでくれよ。」
あれからどれくらい経っただろうか?
吉良を追いかけながら、文はそんなことを考えていた。
あれは危険な男だ、放ってはおけない・・・ッ!
すでに一時間は優に経っているだろう、先ほどから爆音は聞こえるが、肝心の吉良はいまだ発見できていない。
(・・・それにしても、さっきの影斗さんのセリフはどういう意図だったのでしょうか?)
思い出されるのはあの言葉、影斗が吉良と対峙した時に発した言葉だ。
『わたしも争いと言うものは嫌いなんだ、だから1つ相談だ、わたしたちはもう2度と君のすることの邪魔はしないし、このことは誰にも言わない。
・・・だから見逃してはくれないかい?』
(別に変な正義感を振りかざすわけじゃあないですが・・・あんなに薄情な人だとは思ってませんでした。
もしかしたらわたしも・・・)
自分も切られるんじゃないか・・・
思考がネガティブな方向へと向かってしまう。
ドグオォォォン
「また・・・ッ!」
そんな思いを胸に、文は音のする方へと向かった。
「クソッ!またかッ!」
襲ってきた妖怪を爆破し、わたしはそう言った。
いったい何回襲ってきたら気が済むんだと声を大にして言いたい。
この森の妖怪も、めったに人間など食せないのだろう、だからご馳走である人間のわたしを狙っているのだ。
「しかし・・・このままだとジリ貧だ・・・」
何度もこんなことを繰り返していればバレてしまう。
そしてつかまってしまえば、二度と平穏には暮らせなくなるのだ・・・ッ!
檻の中で臭い飯を食うなど・・・この吉良吉影の人生にあってはならないんだッ!
しかし・・・手がないのも事実・・・、シアーハートアタックは無力化されキラークイーンで一人一人始末するには数が多すぎる・・・。
打つ手が・・・ないのか・・・。
ガリッ
無意識のうちに、爪を噛んだ。
ガリガリガリガリガリガリッ
「いいや、違うッ!わたしはこの物事(トラブル)を乗り越えなくてはならないんだッ!」
再び成功するのかは分からない・・・、だがッ!試す価値はあるッ!
わたしは手ごろな石を、音をたてて爆破した。
「ついに見つけましたよッ!吉良吉影ッ!」
「君・・・か・・・?」
今日、何度目になるだろうか?
爆破音がするたび、その音のする方へと向かう・・・気の遠くなる作業だ。
だがッ!その苦労もやっと実った。ついに吉良吉影を追い詰めることが出来たのだッ!
そんな思いを胸に、文は吉良にそういう、さっきまでの不安などどこかに吹っ飛んだかのように・・・
対する吉良は、まるで見つかると想定していたかのように文に言った。
「それで・・・君ひとりでわたしを捕まえられるのかな?
わたしが死ねば、影斗・・・彼も死ぬんだぞ?」
「うっ・・・」
言われてみればそうだ、たった一人で飛び出してきたはいいが、自分一人でこの男を捕まえるのは実質不可能だ。影斗さんのために、この男を攻撃は出来ない、だがこいつにはわたしを殺す理由と方法がある・・・。
文はそう考えた。
「だが・・・仲間を呼ばれてしまえば・・・わたしはなすすべもなく捕まってしまうだろう・・・。
わたしの名は吉良吉影ッ!貴様だけだッ!わたしの正体を知る者は貴様だけになるッ!
―――――――バイツァ・ダストッ!―――――――」
カチッ
「あれ・・・?わたし・・・こんなところでどうしてたんだっけ?」
森の中、文は1人立っていた。
時間は巻き戻った。