東方殺女王   作:ダイナマイト

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わたしは基本的に、歴代ボスが好きなんですが・・・
何故かプッチはそこまでなんですよね。なんでだろう?

あ、六部だとリキエルが好きです。


君がためのレクイエム

今日の服、ディアボロの服

 

7:39:37

 

何をしているのだろう?

射命丸文は、影斗を見てそう思った。

ポケットから何かを取り出し、それを自分に・・・自分のスタンドに刺した。

それが何を意味するのかは、文にはわからない。

だが、その一方、文は安心していた。影斗の覚悟を決めた表情・・・何とかなる・・・そう思った。

 

次の瞬間、影斗とキラークイーンからドクンドクンと・・・何かが生まれるような音がした。

その何かが穿たれた箇所から、キラークイーンにひびが入り、ボロボロと崩れ落ちる。

そしてその何かは、そのままキラークイーンの中へと侵入していく。

 

7:39:48

 

キラークイーンを覆っていたショッキングピンクの体が、すべて崩れ落ちると、そこにいたのは今までのキラークイーンとは全く別の存在だった。

 

今までのショッキングピンクではなく、闇に覆われたその体、闇と言うよりは『影』と表現した方がいいかもしれないが・・・

猫耳・・・と言っていいのかは知らないが、とにかく頭から伸びたそれは、前よりも伸び、そして尖っている。

それが以前よりも、キラークイーンの凶悪さを際立させていた。

その胸には、先ほどキラークイーンの中へと侵入していったものがあった。

それは『矢』だった。

 

7:40:00

 

ついにその時間が来た。

 

「へ・・・」

 

文は素っ頓狂な声を上げる。

いきなりその身が裂けたのだ、仕方のないことだろう。

 

[文・・・わたしは君を救ってみせるぞッ!]

 

不意に先ほどの言葉が思い出される。

ああ、影斗さんはこのことを言っていたのか・・・

漠然と・・・文はそう思った。

 

何故、彼が未来のことを知っているのかは知らないが、文はひどく安心していた。

 

(あの影斗さんが・・・救ってみせると言ったんです。

だったら信用しましょう。)

 

そのまま文の意識は闇へと閉ざされた。

 

 

 

 

 

ここで時間は少し巻き戻る。

 

7:10

 

「どうしたの?こんなところに来て?時間がなかったんじゃなかったかしら?」

 

自分の前を飛ぶ影斗に、幽香は話しかけた。

そこは影斗が向かうと言っていた妖怪の山とは少し外れた方向で、幽香にとってもなじみ深い場所だった。

影斗の家の方向だった。

 

「ああ、分かっている・・・だが、これしか方法が見つからなかったんだ。」

 

「方法・・・?

さっきから思っていたけど、貴方、何をそんなに焦っているの?」

 

「・・・わたしは未来から戻ってきた、わたしの能力はそれが出来る。」

 

「・・・つまり?」

 

「・・・最悪の『運命』だった・・・。それを変えるためには・・・これしかないッ!」

 

そう言って、影斗はそのまま自宅へと入っていく。

 

次に出てきたとき、影斗の手には一枚のディスクと一本の矢を持っていた。

 

「・・・・・」

 

幽香は何も言わなかった。あれを何に使うのかは分からないが・・・、彼にも考えがあるのだろう、そう思った。

 

「行こう。」

 

「ええ。」

 

だから幽香は、飛び立つ影斗の背中を何も言わずに追いかけた。

 

 

 

 

 

7:40:05

 

「キラークイーン・レクイエム・・・ッ!」

 

自分の腕の中で、鮮血をまき散らしながら力を失う文を見ながら、影斗はそう呟いた。

 

その瞬間、文の傷が何事もなかったかのようになくなった。そして目を覚ます。

影斗の能力とはまた違う。一瞬・・・ほんの瞬きをする間に文の傷はなくなっていたのだ。

そもそも影斗の能力では、文の死は回避できないのだ。『運命』はそう決定されている。

しかし、そうはならなかった。文は意識を取り戻し、生きている。

まるで『文が死ぬ』と言う運命が・・・元々なかったかのように・・・

 

影斗は、目を覚まさない・・・しかししっかりと呼吸をし、『生きている』文を地面に寝かせ、スクッと立ち上がった。

そして闘っている死津藻と幽香のほうを見る。

 

「フハハハハ、やっぱり貴様は我にとって・・・最も大きな障害だったなァッ!

だから今すぐ葬ってやる・・・ッ!」

 

「あら・・・人間程度に負けた貴方に・・・わたしが倒せるとは思えないけど?」

 

そんなことを言い合っている。

あの幽香と・・・まともに殴りあって・・・対等でいられるとは、本体は強いんだな・・・

影斗はそう思った。

2人とも肉が裂け、腕があらぬ方向に曲がり・・・それでも殴りあっている。

大したものだ・・・

そう思う。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「幽香・・・もういい・・・。」

 

影斗は怒りに満ちた表情で・・・静かにそういった。

形容するなら、まさにッ!灼熱の氷ッ、氷点下のマグマッ!

冷たく凍えるような怒りと、それを包む燃え盛るような激情ッ!

それほどまでに・・・影斗は怒りに震えていたッ!

 

「あら?そう・・・」

 

そう言って幽香は殴りあうことをやめ、影斗のほうによって来る。

影斗はそんな幽香に触れ、傷を治した。

 

「ン?もう終わりか・・・風見幽香よ・・・」

 

「違うわ・・・あなたを倒すのは、この人間よ。」

 

「ククク、冗談ならもっとマシなことを言え。たかが、我の力の1割にも満たぬ分身を倒しただけの人間に何が出来るというのだ?」

 

「だったらやってみるといいわ。」

 

そう言って、幽香は影斗の背中を押し、後ろに下がる。

そして影斗は死津藻へと近づき、死津藻の傷も治した。

 

「・・・何の真似だ・・・」

 

死津藻は影斗に向かって冷ややかにそういった。

 

「・・・万全の貴様をこの手で倒し、貴様のプライドをたたっ壊さなければ・・・わたしの気が済まんッ!」

 

影斗は死津藻の顔を見ずに答える。見てしまえば・・・怒りに身をまかせ殴りそうになってしまうからだ。

 

「フン!生意気な・・・すぐに後悔させてやるぞッ!」

 

その言葉を聞きながら、影斗は死津藻を指さしながら言う。

 

プッツ───z___ン

 

 

 

今だけは・・・

 

 

 

「貴様だけは・・・」

 

 

 

今この一瞬だけは、誰の言葉も借りず・・・

 

 

 

「このわたしが・・・」

 

 

 

決して自分を飾ったりはせず・・・

 

 

 

「テメ~だけは・・・」

 

 

 

ありのままの自分が・・・

 

 

 

「このオレが・・・ッ!」

 

 

 

お前を殺すのだ・・・ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「喰らえィッ!」

 

死津藻が影斗に向かって、攻撃を仕掛けてきた。

だが影斗は、それを避けようとはしなかった。

 

そのまま、幽香と殴りあえるような拳を受ける、当然その拳は、影斗の体を貫通した。

 

「フン、やはり口ほどでもないわ・・・。」

 

死津藻がそういった瞬間ッ!レクイエムが発動するッ!

死津藻の体は攻撃する前へと戻る。影斗の体は無傷のままだ。

 

「なッ!これは・・・何が起こっているんだッ!」

 

死津藻がそう叫ぶ。

影斗の傍らには姿を変えたキラークイーン・・・キラークイーン・レクイエムが立っていた。

 

「コレガ『レクイエム』ダ・・・」

 

「なっ・・・」

 

不意に、キラークイーン・レクイエムが口を開いた。

 

「貴様ガ、イマ体験シタコトハ、確カニ『起コッタ』事ダ・・・

ダガ・・・ソノ出来事ハ、ドコニモ『記憶』サレナイ・・・・・

世界ハ『我ガ主ガ攻撃された』ト言ウコトヲ記憶シナイッ!

コレガ『キラークイーン・レクイエム』ダッ!」

 

「ハッ・・・」

 

その言葉を聞きながらも、死津藻はいつの間にか立ち上がっている影斗を見た。

 

「キラークイーン・レクイエムの中では・・・何ものもその行動を、認識し、記憶することはできないッ!

もっとも・・・テメ~には聞こえていないがなッ!」

 

そう、影斗の言うとおり、死津藻は影斗を見たまま立ち呆けている。

そいつの前に立つモノは、何も考えられない、何も認識できない、何も記憶できない・・・それが『キラークイーン・レクイエム』ッ!

そして影斗は死津藻へと近づく・・・

 

「貴様ッ何時の間にッ!」

 

そういう死津藻はかなり滑稽に見えた。

そんな死津藻を、影斗はキラークイーン・レクイエムに殴らせるッ!

 

そしてそのまま死津藻は後ろに飛んで行った。

 

(駄目だ・・・勝てんッ!この能力には・・・どんな奴だろうと勝てるはずがないッ!)

 

何百年と生きているはずの死津藻がそう言った。

 

(逃げるんだ・・・逃げて・・・こいつは人間だ、寿命がある・・・いつかこいつが死んだときに・・・ここを支配するのは、その後からでも遅くはないッ!)

 

ずるずると体を引きずりながら逃げる死津藻に、もうプライドはなかった。

 

「キラークイーン・レクイエム・・・」

 

「ハッ!」

 

影斗がそう呟いた後、死津藻の姿は影斗の前へと移動していた。

 

「オレがテメ~を逃がすとでも思ったか・・・

テメ~がオレに殴られ吹っ飛んだということは・・・『世界』に『記憶』されないッ!」

 

そう言って影斗は、死津藻へとにじり寄る。

 

「う、うわ──────ッ」

 

そんなみっともない悲鳴を上げる死津藻は影斗の前で拳を構えた。

 

 

 

主人公が・・・悪を打ち砕くときはこういうんだ・・・とでも言わんばかりに、影斗は拳を叩き込みながら叫ぶッ!

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアァ──ッ!」

 

キラークイーン・レクイエムの拳によって、死津藻の体は、砕け、ちぎれ、吹っ飛んでいく。

だが、地面に落ちる直前、死津藻の姿は掻き消えた。

 

「てめ~の敗因は・・・たった1つだぜ・・・死津藻・・・

たった1つのシンプルな答えだ・・・・・

『てめーはオレを怒らせた』」

 

影斗は死津藻が消えていった場所を見つめながら、静かにそう呟いた。

 

「あいつは・・・何処にいったのかしら?」

 

それまで、静かに見守っていた幽香が口を開いた。

 

「強いて言うなら・・・『何もないところ』だ・・・、あいつのすべてはこの世界に『記憶』されない・・・

死も存在も・・・何もかも・・・」

 

その時の影斗は、先ほどまでの怒りに満ちた姿ではなかった。

落ち着いてそう言った。

 

「終わったのね?」

 

「ああ・・・」

 

風が吹く。

・・・花粉の霧は・・・・・すでに晴れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・どこだ・・・?」

 

なにもない真っ暗な空間で、死津藻はそう呟いた。

いや本当に呟いたかどうかは分からない、そこには何もないのだから。

光も音も時間も・・・何もかもが存在しない。

 

死湯藻は走った。

いや、それは分からない。そこには何もないのだから。

 

 

 

 

──死津藻は──

そこから出ることは叶わなかった・・・。

いくら走っても、いくら飛んでも、いくら死のうと思っても出来ないので・・・

──そのうち死津藻は考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、博麗神社にて

 

今日の服、吉良のスーツ

 

「この幻想郷の危機を・・・救ってくれて・・・感謝するわ、影斗・・・」

 

神社の境内で、今、宴会が開かれている。異変解決のモノだ。

あれから3日、花粉を吸ってしまった者の体調が、やっと回復したその日、宴会が開かれた。

 

「あれはほとんど自分のためにやったようなものだ。だからそんな言葉はいらない。」

 

紫のその言葉に、わたしはそう答える。

この幻想郷の管理者である紫も、その例外ではなく、気づいた時には花粉を吸っていてしまい、動くことは出来なかったらしい。

 

「そう言ってくれるとありがたいわ・・・」

 

「まあいいじゃあないか?

今は楽しい宴会の席、重い話はこれで終わりだ。」

 

そう言って、パンパンと砂を払いながら、わたしは立ち上がる。

 

「・・・あの能力・・・」

 

「・・・分かっているさ、あれは危険すぎるからな。

この幻想郷が、再び危機にふんしたときにしか使わない。」

 

「それならいいわ。」

 

紫の言葉を背に、わたしは幽香たちのところへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、元気そうね、影斗。」

 

幽香がそういう。

そこには文と幽香がいた。

咲夜たちも誘ったのだが、レミリアが

 

『フン、何もできずに簡単にやられてしまったんだ。恥ずかしくて行けたものか!』

 

といい、咲夜もそれに付きあってこないらしい。

 

「まあな、ところで文、体のほうはどうだ?

レクイエムなら大丈夫だと思うが・・・それでも確かめたい。」

 

「ええ、大丈夫ですよ。

でも驚きました。時を巻き戻せるなんて・・・」

 

そう、わたしは文に、時の巻き戻しやその前の時間で何が起こったかを話している。

いきなりあんなことになったんだ。わけを説明しておく必要がある。

 

「そんな便利なモノじゃあないんだがね・・・

安心したよ、君が無事で本当に良かった。

 

そう言って、わたしは文に笑いかける。

 

「う・・・ありがとうございます・・・」

 

そう言って、文はなぜか俯いた。

 

「ねえ、影斗・・・」

 

「ん?どうしたんだ?幽香?」

 

不意に幽香が話しかけてきた。

 

「この前の時の礼よ、いま思いついたわ。」

 

「ああ、そうだったな。

それで・・・わたしは何をすればいい?」

 

幽香は何も言わず立ち上がった。

そしてわたしに にじり寄ってくる。

 

「初めての相手は文ではないッ!この幽香だッ!」

 

ズキュウゥゥゥゥン

 

「ムグ・・・」

 

「あっ・・・」

 

次の瞬間、わたしの唇はやわらかい何かに塞がれた。

視界に入るのは、幽香の翠色の髪の毛と、真っ赤な瞳だった。

あまりの一瞬のことで、わたしは何も考えることは出来なかった。

そしてそのまま口の中に、何かが侵入してきた。

 

そのままピチャピチャと卑猥な音が響く。

わたしはそれを、他人事のように聞いていた。

 

それが数秒、もしかしたら数分かもしれないが、とにかくしばらくして、幽香の唇が離れていった。

 

「ふう・・・」

 

唇に艶めく唾液を拭いながら、幽香が色っぽく息を吐いた。

 

「な、なにを・・・」

 

わたしはその行動に、やっと反応することが出来た。

 

「うるさいわよ・・・、このニブチン。」

 

若干顔を赤くした幽香は、そう言って飛び立っていった。

 

「・・・なっ!何をするだァ─────ッ許さんッ!」

 

あまりの光景に、言葉を失っていたであろう文が、どこぞの田舎紳士のようなことを言う。

 

「フフフ、そうですか、幽香さん・・・

これはわたしに対する宣戦布告と受け取りました・・・。」

 

なにやら、俯き、暗い笑顔を浮かべながらそう言う文・・・正直言って背筋にゾッと来るものがある。

 

「・・・・・・・」

 

無言のまま、フラフラと近寄ってくる文。

わたしはずるずると這いながら、文から逃げようとする。

 

「フフフフフフフフフ。」

 

はっきり言って、泣きたくなるほど怖い。

そしてわたしとの距離が1メートルほどになった時、文が飛びかかってきた。

 

「オ・・・、オレのそばに近寄るなああ───────ッ」

 

それから起こったことは簡単だ、そのままわたしは、文に『ズキュウゥゥゥゥン』され、何をとちくるったか、それが終わると同時に、顔を赤くした文に殴られて・・・

わたしはそのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、このことを咲夜に話したら、時を止められ、同じことをされた。

 

 

 

 

 

 




はい、と言うことでオリジナル話、最終話でした。
いかがだったでしょうか?

キラークイーン・レクイエムの能力は、元々の持ち主である吉良のことを考えて作りました。
吉良が求める平穏とは何なんだろう?
と思って考えてみた結果、誰の記憶にも残らないことではないか?
と思った次第です。

万が一目立ったことをしても、誰の記憶にも残らなければ、妬まれることもありません。
『彼女』のことを覚えている奴がいなければ、安心して暮らせるのではないか?
そう思いました。

影斗が記憶喪失と言うことも、この能力に関係しているのかもしれません。

というわけで、キラークイーン・レクイエムの容姿です。
↓下手ですね、分かります。

【挿絵表示】


次回からは・・・幕間?すいむそう?
ご感想待ってます。

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