東方殺女王   作:ダイナマイト

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はい、今回からオリジナル話となっております。

そーゆーの苦手な方もいらっしゃるとは思いますが、私自身、この話だけはやっておきたいと思っていたのでお許しください。
今後もこういった話が増えると思いますが・・・応援よろしくお願いします。


春風潮流 裏
射命丸文は恋をするその2


君がため───

────わたしは地獄を受け入れよう───

 

 

東方殺女王 第二部 春風潮流 裏

 

────開幕────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が昇り始めるころ、薄暗い森の中で・・・その生物は目を覚ました。

 

(むう・・・我は・・・なぜこんなところに・・・)

 

その生物は・・・人の形をとってはいたが・・・人間とは到底言えないような容姿をしている。

腕、足・・・その体のあちこちは植物で出来ていた。

そう・・・彼は人間ではない、妖怪だ・・・それもこの幻想郷でも最高位に存在するであろう大妖怪・・・名を死津藻(しづも)と言う。

 

(我は・・・あのにっくき退魔士どもに退治されたのではなかったのか・・・?)

 

いかに大妖怪と言われようと・・・いずれは人間の・・・知恵と勇気によって倒されてしまう。

そう・・・悪名高い金毛白面九尾も酒呑童子も、それによって倒されてしまっている。

彼もその一人だ。

 

(まあいい、我が生きているというのなら・・・再びこの世を恐怖のどん底に叩き落としてくれよう。)

 

妖怪としての本能・・・人間どもの恐怖を自らの糧としようとする本能が・・・彼は他の妖怪とは比べようもないほど強かった。

 

何の因果か・・・その危険な妖怪は、幻想郷に姿を現した。

 

かくして・・・幻想郷を我が物としようとする大妖怪と・・・神によって転生されたスタンド使いの数奇な物語が幕を開けたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ン・・・、もう朝か・・・」

 

死津藻が現れたと同時刻・・・影斗は目を覚ました。

寝ぼけ眼をこすりながら、彼は身を起こす。

 

「・・・つッ・・・!」

 

その刹那、影斗の胸にジクジクとした痛みが走ったッ!

その痛みは、直にスーっと引いていった。

 

「・・・なんだか嫌な予感がする・・・」

 

その痛みによって、影斗の視界は次第に開けていく。

その影斗の目の前には、何やら霧がかった世界が広がっていた。

 

「な・・・何が起こっているんだ・・・ッ!」

 

自宅の・・・部屋の中だというのに、影斗の部屋は・・・窓の外の世界とそう変わらず曇っている。

注意深く観察してみると、自分の周りが何やら空気の膜でおおわれているのに気付いた。

 

「フミャ~ン。」

 

「猫草(ストレイキャット)・・・守ってくれていたのか・・・ッ!」

 

それに気づいた影斗は、スクッと立ち上がり、保管してあった一枚のDISCを自らの頭に挿入する。

 

「ゴールド・エクスペリエンス・・・!」

 

影斗がそういうと、ぼうっと影斗の後ろから人間とは言えないビジョンが出てくる。

DIOの息子、ジョジョの奇妙な冒険の第5部主人公、ジョルノ・ジョバーナのスタンドだ・・・

 

「もしかしたら・・・この霧は毒性を帯びているのかもしれない・・・」

 

出なければ、わざわざ猫草が守ってくれる理由が思いつかない。

 

そう思って影斗は、ゴールド・エクスペリエンスで手ごろな石ころに触れる・・・

これは、もしものために用意していた、キラークイーンで爆弾に変えるための石だ。

それに生命を吹き込む。

 

「産まれろ・・・生命よ・・・産まれろ、新しい命よ・・・」

 

影斗がそう言うと、石ころは見る見るうちに姿を変えていった。

やがて小石は、一匹の虫へと変貌を遂げる。

 

影斗はそれを『血清』として、自らの体に取り込むと

 

「もういい、ストレイキャット・・・ありがとう・・・」

 

影斗がそういうと、猫草は、フミャン、と一鳴きし、空気の膜を解いた。

そんな猫草を、影斗は一撫でし、キラークイーンの腹に収納した。

 

「さて・・・この『霧』の影響はどこまで出ているのか・・・

・・・とりあえず、ここから近い人里に行ってみるか・・・」

 

影斗は服をディアボロのモノに着替え、ゴールド・EのDISCを取り出し、誰だってそーするようにケ―スにしまった。

 

そうして影斗は、人里を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・これは・・・ッ!」

 

人里についた影斗の目の前に広がっていたのは、この世の地獄とでもいうような、見るも無残な光景だった。

そこには地に倒れ伏した、人間、人間、人間、人間・・・

彼らはピクリとも動かない。

影斗はその内の一人に近寄って、脈を図る。

 

「死んではいないようだ・・・かすかだが脈も呼吸もある・・・」

 

やはり・・・何かしらの毒があったか・・・、血清を打っておいて正解だった・・・。

 

「ほう・・・、人間が我の『花粉』を吸って動けるとは・・・、分身を送っておいて正解だったな・・・。」

 

影斗の背後からそんな声が聞こえる。

影斗はその声のする方へ、ゆっくりと振り返る。

 

「・・・この惨状は・・・君の仕業か・・・?」

 

もはや分かり切ったことだったが、影斗はそう問う。

 

(・・・あの蔓や葉のような手足・・・、それに『花粉』といったな・・・

植物かなんかの妖怪か・・・)

 

今まで出会った妖怪は、みな一様に人・・・それも女性の姿をしていたから・・・ここではそんなモノだと思っていたが・・・男の格好をした者もいるんだな。

・・・と影斗は場違いながらに思った。

 

「ああ、我の・・・我の『本体』の仕業だな。」

 

「『本体』?じゃあ君は何なんだい?」

 

「我は、我の本体の子供のようなものだ。本体の一部を株分けし・・・その一部を成長させたもの・・・」

 

「ほう・・・、それでだ・・・。

・・・・・貴様の目的は何だ・・・ッ!」

 

影斗は続ける。

 

「まさかこんなことをしでかして・・・何も考えていませんでした。

・・・とでもいう訳じゃあないよな?」

 

「・・・貴様は何か好きなことはあるか?」

 

ン?脈絡のない答えだな?質問を質問で返す・・・無益なことだ。

 

「・・・読書や散歩・・・人を殺すことでもなんでもいい、そういった趣味か何かはあるかと聞いているんだ。」

 

「・・・しいて言うなら読書かな?

いったいそれがどうしたというんだ?」

 

「じゃあ貴様は何故そんなことをする?本などを読んだところで・・・何も得ることはない、時間が無駄に過ぎるだけだ・・・。」

 

「貴様ッ!何が言いたいッ!」

 

「好きだから(・・・・・)だよなァ~?それ以外に理由なんてないだろう?

我はそれが好きなんだ、自分以外の存在を踏みにじるということが・・・。」

 

もしかしたら・・・話し合いで解決できるかもと少しでも思ったわたしが馬鹿だった・・・

 

「・・・吐き気を催す邪悪とはッ!何も知らぬ無知なるものを利用することだ・・・、自分の利益のためだけに利用することだ・・・ッ!

なんの力も持たぬ一般人をッ!てめーだけの都合でッ!」

 

「演説は終わったか?貴様の命も・・・我の力をもってして踏みにじってやろう。」

 

「キラークイーンッ!」

 

影斗の声にこたえ、ショッキングピンクのビジョンが姿を現す。

 

「ほう・・・、我の花粉に耐えるから・・・普通の人間ではないだろうとは思っていたが・・・

式神を使うのか?これは面妖な姿をしている・・・。」

 

死津藻がそう言っている間にも、影斗はキラークイーンで死津藻を殴らせるッ!

 

「ぐおっ・・・、これはなかなか・・・」

 

死津藻はそれを受け止めようとしたが、腕ははじかれてしまった。

 

「しかし・・・問題はない。」

 

意外ッ!それは蔓ッ!

死津藻がそういうと、キラークイーンの肉体に幾重にも蔓が絡まった。

死津藻の足から伸びたそれは、キラークイーンの動きを一切奪うッ!それによって影斗も身動きが取れなくなってしまった。

 

「ン?さっきは式神と言ったが・・・違ったな、感覚を共有する分身のようなものか?」

 

そう言いながら、死津藻は意地の悪い笑顔を浮かべる。

 

「どうだァ~?身動きが取れない気分と言うのは?無抵抗のまま殺される気分と言うのは?」

 

「殺される?馬鹿なことを言うんじゃあないぞッ!」

 

フンッ

 

と鼻息を吐きながら力を入れる。

するとブチブチブチッ、と音をたてながら蔓がちぎれた。

 

「んなっ!」

 

死津藻もこれには驚くッ!まさか人間程度に破られるとは思っていなかったからだ。

 

影斗はそのまま驚いている死津藻の顔面を、キラークイーンで殴りぬけるッ!

 

「うげぇェェッ!」

 

死津藻はそのままぶっ飛ばされる。

 

「ストレイキャットッ!」

 

影斗はそのまま追い打ちをかけるように、猫草に空気弾を発射させた、もちろんキラークイーンで触れることは忘れない。

 

「グォッ・・・、ぬかったわッ!」

 

そんなことを知る由もない死津藻は、そんなことを言いながら起き上がる。

 

「なんだこれは・・・?」

 

死津藻の目の前の空気が・・・こぶし大に歪んだ。もちろんこれは空気弾なのだが、死津藻は知らない。

 

「よし!着弾・・・・・」

 

「点火!」

 

カチッ!

 

ドバオォンッ

 

影斗がキラークイーンのスイッチを押すと、その空気の塊は音をたてながら爆ぜる。

 

「ぬおっ・・・」

 

死津藻の分身はそう言い残し、塵も残さずこの世から消滅した。

 

「フ~、言うほど大したことはなかったが・・・本体もこうとは限らんしな・・・気を付けておこう。」

 

「しかし・・・この人数の血清を作るのは・・・ちと骨が折れるぞ・・・」

 

だったら元凶をたたくか・・・。

影斗はそう言った。

 

「しかし・・・あいつのことを、わたしは全然知らんなァ。」

 

「あいつは植物の妖怪・・・、幽香なら・・・何か知っているかもしれない・・・行ってみるか・・・。」

 

そう言って、影斗は太陽の畑にある、幽香の自宅に向かった。

 

 

 

 

 

 

「・・・むぅ、分身が消えた・・・まさかあれほどの人間がまだいたとは・・・。」

 

時同じくして・・・山の中腹、森の中、死津藻の本体はそこにいた。

 

「なあ?どう思うよ?鴉天狗・・・」

 

「・・・さあ?あなたが弱かったってことじゃないですか?」

 

体中あちこちから血があふれ、息も絶え絶えなのに・・・射命丸 文は気丈にそう言う。

 

「・・・フン、減らず口を・・・。

まあいい、もっと我を楽しませてくれよ?」

 

 

 

 

 

 

 




はい、というわけでオリジナル第一話どうだったでしょうか?

今回登場した妖怪(死津藻)は、わたし自身が考えたもので、原作には登場しておりません。
お気付きの方もいらっしゃるとは思いますが『死津藻』のアイディアはとある漫画から拝借しております。
だからと言って、その漫画を読んでいなければわからないような話にはしないつもりですが、
もしわからないところがあったらバンバン質問しちゃってください。

ご感想のほうお待ちしております。

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