東方殺女王   作:ダイナマイト

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今回で妖々夢は完結です。


蒼々影斗は静かに暮らせない

 

今日の服、DIOの服

 

「フ~、とりあえず幽々子の言う方向に来てみたが・・・ホントにこっちでいいのかな?」

 

橙を放って、先に進んだわたしはそう呟いた。

 

「おおう、こんなところに人間が?」

 

そんなわたしの前に1人の女性が姿を現した。

なんというか・・・今までで一番わかりやすいかもしれない。

そいつの後ろには金色に輝く9対のしっぽが見えた。

 

(金毛白面九尾か?大昔、インドや中国、日本で暴れまわったとされる。)

 

ここまで有名な妖怪に会うというのは・・・正直言ってけっこーワクワクする。

でもまあ、今日の目的はあくまで別だからな・・・いろいろと聞くのは、また別の機会にしよう。

 

「もしかして・・・君が『八雲紫』か・・・?」

 

「・・・いや、違うが・・・」

 

「わたしは蒼々影斗と言う、それじゃあ君の名を聞かせてもらえないか?」

 

「・・・ッ!お前がッ!」

 

ン?さっきの答え方と言い、今の反応と言い・・・もしかして『八雲紫』の関係者か?

 

「・・・ああ、わたしはご主人様の式の『八雲 藍』と言う・・・

だがご主人様は・・・いま冬眠の真っ最中だ、来るなら、今度・・・夜にしてくれ。」

 

「冬眠?なんだ、なんだ?猫に狐と続いて・・・今度は熊かなんかの妖怪なのかァ?

まったく・・・わざわざ君の主人の友人のお願いを聞いてきたという、このわたしに帰れとでもいうつもりかァ?」

 

「ああ、そのつもりだ。もし断るというのなら・・・わたしが相手になる!

わたしも負ける気はないが・・・万が一勝てたとしても、寝起きの主人は機嫌が悪いぞ!」

 

「・・・つまり、ここでおとなしく帰らないと、わたしのもっとも嫌う『闘争』がついてくるということだな?」

 

「ああ、だからおとなしく帰った方がいい。」

 

「だが断る この蒼々影斗が最も好きなことの1つは・・・自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやることだ・・・」

 

「・・・ならば、あきらめてもらうぞッ!」

 

「フン、無駄無駄ァ・・・」

 

そう言ってわたしはキラークイーンを出しながら構える。

 

「あら、わたしなら起きてるわよ?」

 

だがその時、何処からともなく声が聞こえてきた。どこか聞き覚えのある声だ・・・

そうッ!これはあの不気味な桜の元で聞いた声ッ!

 

そう考えていると、藍のすぐ隣の空間に亀裂が走るッ!そこから一人の女性が現れた。

見た目は・・・わたしの少し上くらいだろうか、藍やわたしと同じ金髪をしている。

日傘を差し、何かを含ませたような表情でたたずむ彼女は・・・なんというか胡散臭い。

そして何より・・・強者としての風格が滲み出ている。そう幽香にも感じたあれだ。

 

「ゆ、紫様っ!?どうしてここにッ!?」

 

「わたしの客が来たって聞いたからよ・・・わたしも彼に会ってみたかったし・・・」

 

そういって彼女はくるりと振り返り、こちらを向いた。

 

「あなたは・・・蒼々影斗ね?」

 

「そういう君は・・・八雲紫。」

 

だが、彼女が強者だからと言ってこちらが有利と言うのは変わらない・・・

それほどまでに『見えない』というアドバンテージは大きいのだ、それに・・・もしものためにディスクはすべて持ってきている。

まあ、戦わないというのが一番なのだがね・・・

 

「冥界の件ね、分かったわ。明日には直しておく。」

 

「そうか・・・それならいいんだが・・・

ところで・・・わたしに会ってみたかったと言っていたと聞いたが・・・何か用か?」

 

「そうそう・・・わたしは『境界を操る程度の能力』をもっているのだけどね・・・

それでたまに外の世界の人や物をもってくるんだけど・・・あなたが現れた理由が分からないのよ。

結界に歪みも無かったし、あなたの力はこの世界でも・・・あまりに(異質)だわ・・・。

それを見極めようと思って・・・」

 

そう言って紫は、一歩一歩近づいてくる。

 

「見極める・・・?それは・・・」

 

「そう・・・『闘う』のが一番手っ取り早いわね・・・」

 

ああ・・・そうか、また今日も平穏には暮らせないのか・・・

そう言って、わたしはため息を吐きながら構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有無を言わせず先手必勝だッ!」

 

そう言って影斗はキラークイーンに紫を殴らせるッ!

 

(あの時とは違い、体調は万全だ・・・、このヘビーなトラブルを乗り越えてッ、わたしは幸福に生きてみせるぞッ!)

 

ズガンッ

 

と・・・紫はまるでその一撃が見えている(・・・)かのように、傘で受け止めた・・・

 

「へえ~、これがスタンドの攻撃ね、1つ・・・勉強になったわ。」

 

人体をも貫通させるキラークイーンの一撃を、彼女は軽々と受け止めた。

 

「あれが・・・紫様がおっしゃっていた・・・『スタンド』・・・」

 

「ン~、なかなか不気味な姿をしているのね・・・『スタンド』って、それともあなたのモノだけなのかしら。」

 

「な・・・何故だッ!何故スタンドが見えているッ!?」

 

そう・・・彼女にはスタンドが見えているッ(・・・)、いや、彼女だけではないッ!近くにいる藍までもスタンドが見えているッ!本来なら同じスタンド使いにしか見ることのできないスタンドをッ!

 

「『不可視』と『可視』の境界を弄ったわ・・・『スタンド』はもう誰にでも見えるのよ。」

 

そしてもちろん・・・

 

と言って、紫はキラークイーンに向かって拳を振るうッ!

 

ドグシャァッ!

 

紫の拳がキラークイーンの顔面にめり込むッ!そのフィードバックで影斗はぶっ飛ばされるッ!

ズザザザザ・・・と地面をずって、影斗は倒れた。

 

「そしてもちろん・・・触れるようにも弄らせてもらったわ。」

 

「ぐ、ぐぅ・・・」

 

影斗は顔から血を流しながら、呻いている。

 

「・・・確かに見えてなかったときや触れなかったときに比べて・・・ずいぶん弱くなったわね・・・

この程度なら・・・問題はないわね。」

 

吹っ飛んだ影斗に向かって、紫は一歩一歩、歩み寄る。

 

「まあ、これで安心ね、ちょっと不安だったけど・・・、おめでとう、幻想郷はあなたを改めて受け入れるわ。」

 

そう言って、紫は傘を振りかぶる。

それを見た影斗はフラフラと上半身を起こしてこう言った。

 

「・・・つ、次に君は『しばらく眠っていなさい。それじゃあ、おやすみ・・・』と言うッ!」

 

「しばらく眠っていなさい。それじゃあ、おやすみ・・・ハッ!」

 

彼女はそのまま傘を振り下ろそうとした動きを止めた。

影斗は力尽きたように地面に倒れる。

 

「最後の最後に・・・一矢報いようとしたのね・・・大した精神力よ・・・ホントに。

なんだかちょっとした敗北感さえ感じるわ、大したやつよ、貴方は・・・」

 

そういうと紫は傘を振り下ろした。影斗が笑っていたのに気付かずに・・・

 

 

 

「なっ、き・・・消えたッ!?」

 

紫の攻撃が当たった瞬間ッ、影斗は姿を消した・・・

紫は思わずその場から飛び退くッ!

 

「藍ッ!貴方は戻ってなさい!」

 

「ですがッ!?」

 

「いいからっ!」

 

「・・・かしこまりました。」

 

そう言って藍はここから去って行った。

 

「どこっ!?何処に行ったの!?」

 

それを見送った紫は、あたりを見渡すが、影斗の姿はどこにもない。

 

「な・・・ッ!」

 

紫の体がぐらりと崩れる。影斗が地面と紫の狭間から姿を現すッ!

そしてそのまま倒れた紫に、影斗は自分のマントをかぶせた。

 

「光栄に思うがいいッ!」

 

そう言って影斗は上着を自身にかぶせ、この世界から姿を消した。

 

 

 

「この隣の場所に自由に入ってこれるのは・・・このわたしの能力だけだ・・・ッ!」

 

上着に挟まれた影斗が姿を現したのは、元の世界ではない・・・D4Cの能力によって隣に存在された平行世界だ・・・。

影斗が先に送っておいた紫がいた。いや・・・それ以外にもまだいる。

この世界の紫と影斗だ。

そして世界は『同一の存在が同じ世界に同時に存在すること』を認識したッ!

 

「なっ・・・」

 

それと同時に2人の紫の体が、ゆっくりと立方体状に崩壊していくッ!

 

「ゆっくり味わえ・・・」

 

影斗は内心怒りに震えていた・・・

お願いと言うから、いやいやながらも来てやったのに、いきなり闘うことになり、そして何より自身が弱体化されたことに腹がたつ。

中途半端に弱体化され、(かといって思いっきり弱くされたいわけではなかったが・・・)これでは反って危険になってしまったではないか。

そう思う影斗の瞳には漆黒の意思が宿るッ!

 

(この蒼々影斗の『平穏』を脅かして・・・無事眠れると思うなよ・・・ッ!)

 

影斗がそう考える一方、紫も考えていた。

 

(まずいわッ、この状況ッ!)

 

(この現象がなんなのか・・・考えるのよッ!

隣の場所・・・そしてもう一人の自分・・・ここは自分たちの世界ではないッ!)

 

(ここに来る前に・・・わたしは彼のマントと地面に『挟まれた』・・・

そして彼が消えたとき・・・やはり地面とわたしの傘に挟まれていた・・・ッ!)

 

わずか数秒の間にここまで考えられるのは・・・彼女が『妖怪の賢者』と呼ばれる所以だろう。

 

「Dirty Deeds Done Dirt Cheap(いともたやすく行われるえげつない行為)。」

 

影斗は両手を広げながら、紫を見下ろす。傷はもう治っている。

 

(さっきのスタンドとは別に・・・違うやつも見える・・・。これがあれの能力・・・)

 

(これは・・・かけ(・・・)よ・・・、これが失敗すればわたしは終わるッ!)

 

思考を打ち切った紫は、手に持った傘を広げ、自分にかぶせた。

 

「チッ・・・」

 

もう紫の姿は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ・・・ふ~。」

 

(崩壊していた部分が直っている!?・・・そういうルールなのね・・・)

 

荒い息遣いを整えながら、紫はあくまで冷静にそう考える・・・

 

(してやられたわね・・・、あれは確実に殺しに来ていた・・・ッ

まったく・・・ままならないわね・・・)

 

すべてはこの幻想郷のためにやっているというのに・・・紫はそう思った。

 

(まあ、了承も得ずにやってしまったのだから仕方ないのかもしれないけどね・・・)

 

それでもやってられないと思うのは仕方のないことだろう。

 

「どジャアァぁぁぁ~~~~~ン。」

 

その声が聞こえ、紫は振り向く。上着の下から影斗が現れた。

 

現れた影斗は何か考えるような仕草をとったあと、口を開いた。

 

「なあ、紫・・・わたしもさっきはカッとなってしまったが、わたしはもともと争い事が嫌いなんだ。

わたしはスタンドをもとに戻してくれればそれでいい。・・・もう終わりにしないか?」

 

「駄目よ・・・それだけは・・・。」

 

「何故?」

 

「この幻想郷のパワーバランスを保つには・・・そうするしかないのよ。

わたしの行動は『私利私欲』でやったことはないわ・・・すべてはこの『幻想郷』のため・・・」

 

「・・・君はその行動が正しいと思うか?そもそも争いを好まないわたしの力を奪って・・・」

 

「ええ、私の行動と心に一点の曇りなし・・・すべてが正義よ。」

 

「・・・わかった、信じよう。君が正しいというのなら・・・」

 

そう言って影斗は自宅へと帰って行った。

 

 

 

 

 




次回からはオリジナル展開になると思います。

そのような展開が苦手な人はすいません。

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