東方殺女王   作:ダイナマイト

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リアルがきついっす


射命丸文は恋をするその1

幽香をベッドに寝かした後、わたしは再び博麗神社を訪れた。

いつまでもフラフラしていてはいけないからな・・・

とりあえずは・・・自分が住めるようなところが欲しい。

 

「人里ですか?」

 

とりあえず文に聞いてみることにした。(霊夢に聞いた話によると、わたしがあそこにいたのは文が原因らしい。)

 

「良いですよ、わたしが案内してあげましょう!」

 

その負い目かは知らないが、文は快く引き受けてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういう訳でやってまいりました!人里ッ!

影斗さんが戻ってきたときは、また説教が始まるんじゃないかと肝を冷やしたものですが、なんの心配もありませんでした!

えっ?テンションが高いって?・・・こうでもしないと顔の紅潮が誤魔化せないんです、察してください、今だってまともに顔も見れてませんし・・・

あの顔と声で『可愛い』なんて・・・、反則ッ!反則ですッあんなのッ!

フ~~~、とりあえず落ち着きはしました。

どうやら彼は自分の家が欲しいそうなので、人里の守護者と言われる方のところに言ってみようと考えています。

彼女なら空き家がないか知っていそうですしね。

 

「少し・・・腹が減ったな・・・」

 

里を歩いていると、影斗さんが唐突にそういった。そういえば、影斗さんは帰ってきてからまだ何も口にしていない。すでに太陽は頭の真上まで来ている。

でしたらお腹が減るのも当然でしょうね。

 

「でしたら・・・どこかで食事でもしましょうか?」

 

「・・・しかし金がない。」

 

「じゃあわたしのオゴリでいいですよ。」

 

「・・・しかし女性におごらせるわけには・・・」

 

「良いですよ、貴方には色々(・・・)もらいましたから、そのお礼とでも思ってください。」

 

「・・・?

・・・まあ、背に腹は変えられないし・・・よろしく頼むよ。」

 

「ええ、任せてください。」

 

・・・なんだかデートみたいですね・・・

わたしはまた、顔が赤くなっているのがばれないように下を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、蕎麦屋でいいですか?」

 

「ああ、構わないよ。」

 

影斗さんがそう言ってくれたので、わたしたちは近くにあった蕎麦屋に入った。

時間が時間だったからか、中は結構な人たちでにぎわっていた。

 

「じゃあ、わたしはかけそばを・・・影斗さんはどうします?」

 

「わたしも同じものでいいよ。」

 

「かしこまりました、かけそばを2つ・・・以上でよろしかったですか?」

 

店員を呼び、そばを頼む。

 

「おい、あれってどこぞの天狗じゃないか?」

 

「ったく、人間様の里にくるんじゃねーよ。それもメシ屋に・・・気持ちわり―なぁ、食えたもんじゃねー。」

 

「ハハッ、ちがいねーや。」

 

そんな声が聞こえてくる、わざと聞こえるように言っているのだろう、隠すつもりなどないようだ。

そのように言われると、こう・・・なにか心に来るものがある。

天狗と言うのは態度とか、そういうもので基本的に人間からは好かれてはいない。

里に最も近い天狗と言われるわたしだが、それでも嫌われてるんだな・・・少し悲しい。

 

「文・・・」

 

影斗さんが心配そうな目でこちらを見ていた。当然ともいえるがあの話は彼にも聞こえていたらしい。

 

「大丈夫ですよ・・・天狗があまり好かれてないことは知っていますから・・・

でも・・・・・悲しくないと言ったら嘘になりますけど・・・」

 

わたしがそういうと影斗さんは何かを決心したように立ち上がり、話している2人のほうに歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君たち・・・今なんの話をしていたんだい?」

 

影斗は目の前の2人にそう問った。

 

「んあ?なんだてめーは?」

 

影斗がそう質問すると、その内の一人が返した。

 

「質問を質問で返すなあ──っ!疑問文には疑問文で答えろと貴様は教わっていたのか──ッ!」

 

「ひっ、何なんだてめーは!」

 

「てめーの連れの悪口を言ってただけだっ、なんか文句あんのかこらっ!」

 

影斗がそういうと2人は少し萎縮したが、それでもそのちっぽけなプライドを守るために声を荒らげた。

 

「影斗さんッ!

・・・いいんですよ、わたし・・・気にしてませんから。」

 

文はそんなことを言う。・・・がッ!今の影斗はそんな言葉では止まりはしないッ!

 

「わたしは『闘い』というものが嫌いだ。

『闘争』はわたしが目指す『平穏な生活』とは相反しているから嫌いだ・・・トラブルが嫌いだ・・・

『植物のような平穏な人生』こそがわたしの幸福だと理解している。」

「だが・・・ッ!わたしは・・・大切な友人が馬鹿にされて・・・それを黙っていられるほど腐っちゃあいないッ!

それがわたしの目指す『平穏な人生』と相反していよーとッ!」

 

バギっ!

 

「「ゲバァ!」」

 

目の前の男たちを、影斗は殴った。きっと非難されるだろう、もしかしたらこの里にこれなくなるかもしれない。

だが構わない、それほどまでに影斗は怒りに震えていた。

 

(普段ならきっと責めるだろうその行為、でも・・・わたしは影斗さんのこの行動を・・・・・!

わたしのために、自らの理想を曲げてまで行ったその行動を・・・なんて素敵なんだろう)

と文は思った。

 

「いってぇぇよおぉぉぉぉっ」

 

「うぎぎぎぎ・・・お、おい、おまえ鼻が・・・」

 

「うう・・・そ、そういうお前こそ・・・」

 

鼻血をぶちまけながら二人は飛んで行った。

しかし彼らが立ち上がった時、もう血は出ていなかった、治っていた・・・いや治る、と言うのとはまた違うだろう。砕けた鼻骨が違った形でくっついているのだ。

 

それを見た2人は、ひぃ~、とマヌケな声を上げながら店を出て行った。

 

「騒がせてすまなかった。」

 

「良いってことよ!あーゆー奴らより、あんたみたいな奴のほうが見ていて気持ちがいい!

ほら、さっさと俺の蕎麦を食いな!冷めちまう前に。」

 

影斗がそういうと、店の奥から蕎麦をもった男が現れた、おそらくはこの店の店主だろう。

影斗はその言葉に甘え蕎麦を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「空き家か・・・今、この里にそういったものはないな。」

 

「そうか・・・残念だ・・・」

 

わたしは文の紹介してもらった人物と話している。彼女は上白沢 慧音(かみしらさわ けいね)というらしい。

慧音は所謂、半妖というやつで、里の寺子屋で歴史を教える一方、里を他の妖怪から守るということもしているらしい。

そんな彼女だからこそ、里のことには詳しいらしく、文はわたしに紹介してくれたのだろう。(文は仕事があるということで、彼女を紹介してすぐどこかに飛んでった。)

 

「いや・・・あるにはあるんだが・・・」

 

「・・・何ィ?」

 

「里からはなれていて、少し危険なんだ・・・夜になれば妖怪もでる・・・わたしも君を守れないだろう。

人間の君をあそこにやるのは気が引ける。」

 

おそらく慧音はわたしのことを心配してくれているのだろう。

あって数分のわたしをここまで気にかけてくれるとは・・・彼女はきっと優しいのだろう。

 

「いや・・・そこでいい。心配しなくても大丈夫だ、こう見えてわたしは強いんでね。

・・・最初は確かに面倒だが、宿無しの職無しよりはましだ。」

 

「・・・家が建つまで、わたしが面倒を見てもいいんだぞ?」

 

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいっ

流石にいま顔を会わせたばかりの君にそんなことを頼めるはずがないだろう?

それにわたしは男で、君は女だ・・・何か間違いが起こらないとは言いきれない。」

 

「・・・そこまで言うなら仕方がないな・・・

なるべくわたしも気をかけるが、いつも見てはいられないぞ。」

 

「ああ、それで構わないよ。」

 

「・・・そうか、じゃあ案内しようか・・・」

 

こうしてわたしは幻想郷で帰る場所を持ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 




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