わたしがカードを手にしたまま構えると、霊夢は弾幕をばらまきながら、わたしと距離をとるように後ろに飛んだ。
もちろん自分も弾幕で迎え撃つ、数こそ少ないが、密度はなかなかの物だろう。
「キング・クリムゾンッ!」
わたしは彼女のそれを、時間を消し飛ばすことで回避する。わたしの弾幕も、彼女に当たることはなかった。後ろの本棚には当たるが、それが壊れることはなかった。
(なかなか頑丈だな・・・これも魔法というやつか?)
「・・・?
どうやって避けたのかしら?全然気づかなかったわ・・・」
わたしがそんなことを考えていると、霊夢は呟くようにそう言った。
「悪いが企業秘密だ、教えるわけにはいかないね。」
「別にいいわよ、元々こっちも教えてくれるなんて思っちゃいないし。」
「そうか・・・助かるよ。
・・・では、そろそろペースを上げさせてもらうッ!」
絶頂『キング・クリムゾン』
さっきは避けるための能力だったが、今回は違うッ!当てるための能力だ。
時間が消し飛んでいる最中は、わたしを除いて、何ものも思考することは出来ない。つまり時間が消し飛ぶその時まで、しようとしていた行動をとるのだ。
そこで、弾幕を出した瞬間に時間を消し飛ばせば必ず当たるというわけだ。弾幕を見た瞬間なんて『見極めよう』としか考えないだろうしな。
わたしはいくつか弾幕を出す、その瞬間霊夢何かを感じ取ったように右に飛んだ。
な、何ィッ!まさか分かったとでも言うのかッ!
そう思ったがもう遅い、わたしはすでにキラークイーンのスイッチを押している。時間が消し飛んでいるッ!
・・・わたしの弾幕が霊夢に当たることはなかった。
「ふう・・・スペルブレイクってとこかしら?
後ろを見る限り避けてて正解だったみたいね・・・」
「・・・なぜわかったんだ?」
「ん?ああ、あれ?
あんなのただの感よ。」
「・・・それは何とも恐ろしいな・・・
まあいい、2枚目だ・・・次は避けきれるかァ──ッ!」
支配『ザ・ワールド』
時を止める。そして弾幕をばらまいた。弾幕は霊夢のすぐ前で停止する。
「先ほどよりも避けにくいものだ、君はこれを避けれるかァ───ッ!」
「そして時は動きだす。」
「なっ、くっ・・・」
霊符『夢想封印』
霊夢がスペルカードを発動させると、当たる寸前だった弾幕は霊夢の弾幕により霧散させられてしまった。
彼女な弾幕は、その勢いを失わずわたしに向かって追尾してくる。
ドガッ!
「グハッ・・・!」
(くそッ!自動追尾の弾幕か・・・ッ!)
少量の血を吐きながら、わたしの体は背後に吹っ飛んで行った。
ドグシャァァァンッ!
扉のほうへ吹き飛んだせいか、魔法で守られた本棚はなく、壁が壊れる。
「・・・もう!血が付いちゃったじゃない・・・それで、その傷でまだ続ける気かしら?」
霊夢がこちらへ歩いてきながらそう行った
「何故・・・わたしが今の攻撃を避けなかったか・・・わかるか・・・?グフッ!」
わたしは血を吐きながらそう言った。
「・・・なにが言いたいの?」
「避けようと思えば、避けられた・・・だがッ!わたしはあえてそうしなかった(・・・・・)それが何故かわかるか・・・?」
『クレイジー・ダイヤモンドは砕けない』
わたしはそう言ってスペルカードを宣言する。
「・・・固まった血は・・・すでにわたしの一部ではない・・・ただの物体だ・・・」
そう言いながら、わたしは散らばった瓦礫を握り、その中に固まった血を閉じ込める。
「わたしの自動追尾弾だ・・・ッ!」
「ぐッ・・・!」
瓦礫は、わたしの血が付着した霊夢の服めがけて一直線に飛んでいった。
それは彼女の肩をえぐって行く。肩からはかなりの量の血が噴き出した。
「次に君は『これも計算のうちなのッ!?影斗ッ!』というッ!」
「これも計算のうちなのッ!?影斗ッ!・・・ハッ!」
「この蒼々 影斗・・・なにからなにまで計算づくよッ!壁に吹き飛ばされることもッ!君の弾幕を避けなかったこともッ!
・・・瓦礫はまだまだあるぞ・・・ッ!」
そう言ってわたしはいくつかの瓦礫にわたしの血を閉じ込める。
「・・・自分が怪我することまで利用して攻撃してくるなんて・・・大した精神力ね・・・
でもね・・・しょせん瓦礫なんて粉々に砕けばそれまでよ。」
霊符『夢想封印』
先ほどと同じ弾幕がわたしに襲いかかってくるッ!
「ク・・・ッ!
わたしは手元の瓦礫を投げつける。しかし、霊夢の弾幕に当たるとそれは粉々に砕け散った。
「・・・直して戻せるぞッ!」
瞬時に壊れた壁を直し、彼女の弾幕を避ける。
「フフフ、やはり敵わないか・・・完敗だ。」
全てのスペルカードを使い果たし、わたしの負けが決定した。
「・・・まあ、初めてでわたしに弾幕を当てられたんだから誇っていいわよ。」
彼女はそういうが、・・・少し悔しいものがある。だから争いは嫌いなんだ。
・・・じゃあなんで霊夢に弾幕ごっこを挑んだか疑問に思うだろう、カン(・・・)だ、あくまでカンだが、スペルカードルールの練習をしておいた方がいいと、わたしのカンがそういっているのだ。
「そうそう、多分今日宴会を開くから、神社に来なさい。」
「ああ、了解した。」
そういって彼女はさらに奥へと飛んで行った。
「なかなか賑やかだな・・・」
夜、わたしは咲夜とレミリアと共に(他の人はお留守番)博麗神社へ来ていた。
あれからレミリアも咲夜も、それぞれ霊夢と魔理沙に負けたらしい。
「そうですね、何人か見たこと無い人もいますが・・・」
「そんなこと別にいいじゃない♪楽しみましょう!」
「あ、お嬢様お待ちくださ・・・」
咲夜の声にも耳を傾けず、レミリアはさっさと神社に入っていった。
「・・・なんで彼女はあんなにもテンションが高いんだ?どこかに頭でも打ったか?」
「い、いえ、強い人間に出会ったのが嬉しかったようで・・・」
咲夜が頬を引くつかせながら言った。
「影斗さん・・・なかなか辛辣ですね・・・」
「まあ事実だからな。」
「ではわたしはお嬢様のところへ行きますので、影斗さんはご自由にどうぞ。」
そう言って咲夜はレミリアが去って行った方へ走って行った。
神社の鳥居の下、1人なってやっと周りを見る、境内ではすでに飲み始めている者もいる。
(しかし・・・ほとんど女しかいないのか・・・)
少し前に追い払った妖怪の少女と氷の妖精が飲んでいたり、魔理沙と見知らぬ金髪の少女が飲んでいたり、これまた文と見知らぬ少女が飲んでいる。他にもちらほらいるが見知った顔はここまでだ。みな楽しそうに飲んでいる。
「・・・とりあえず文のところへ行ってみるか・・・」
「文、しばらくぶりだな。」
そう言って栗色の髪をした少女と飲む文に話しかけた。
その少女はわたしを見た瞬間顔を青ざめた。なぜだろう、初めて会ったはずなのにその視線には身に覚えがある。
「え、影斗さん・・・」
文は引き攣った笑みを浮かべながらこちらを向いた。
ン?何故そんな表情をするんだ?霊夢の話なら嬉しいことに心配してくれていたらしい、霊夢にわたしの無事を聞いたのだろうか・・・?
いや、それにしてもこの表情はおかしいだろう。
ここでわたしはふと朝の出来事を思い出す。・・・少しカマをかけてみるか・・・
「そういえば・・・朝、奇妙なことがあったんだ・・・」
わたしがそういうと二人は体をビクッと震わせた。怪しい・・・と言うかこれは確定だろう。
「誰かに見られたような感じがしてね・・・あれは何だったんだろうなァ?文ァ?」
わたしがそういうと二人は互いを見てうなずき、意を決したようにこう言った。
「「すいませんでした────!」」と・・・
「それでどういうことなんだ・・・」
わたしが言うと文と姫海棠はたてなる少女(文に教えてもらった)は罰の悪そうな顔を浮かべた。
とりあえず二人には正座させた。
「あれのせいでわたしは咲夜とレミリアに白い眼で見られたんだぞッ!」
「すいません・・・」
「返す言葉もないわ・・・」
2人は顔を俯かせながら言った。
「でもなんでわかったのよ、わたしの能力は感じ取れるような類の物じゃないわよ?」
「そんなことを言われても視線を感じたんだ、仕方ないだろう。」
というかDIOに続いてジョセフもか・・・いったいどうなってるんだ?
わたしがそんなことを考えていると後ろから二人分の足音が聞こえてきた。
「話は聞いていたぞ、影斗、許してやったらどうだ。」
「・・・レミリアか、しかしだなぁ・・・」
「大丈夫ですよ、わたしは信じてました。」
「ええいッ!咲夜ァッ!嘘をつくんじゃあないッ!あれはマジな眼だったぞッ!」
「誤解も解けたのだしいいだろう、それとも楽しい宴会の席を台無しにするつもりか?」
「・・・ッ!
・・・それもそうだな、次からは遠慮してくれよ?」
「分かりました・・・」
「分かったわ。」
「とりあえず酒は持ってきた、一緒に飲もう。」
「ああ、そうだな。」
わたしは文とはたてに加え、レミリアと咲夜と共に飲み始めた。
「・・・これが今回の結末だ。」
あれから一時間ほどたった。わたしたちは、レミリアからの今回の異変についての話(わたしは一切外へ出ていないのでよくわからない)や、わたしのことの話を肴に飲んでいる。
自分のことについて話されるのは少々気恥ずかしいものがある。
しかしそうなると当然疑問を抱かれるだろう。
「スタンドってなんですか?」
と・・・
はぁ・・・と溜め息を吐かずにはいられない。しかもそれを聞いたレミリアたちから・・・
「そういえば詳しく聞いてなかったな。」
「わたしも聞きたいです。」
「わたしも。」
「・・・そんなことを言われても、説明した通りだ。
スタンドとは精神のエネルギーがヴィジョン化したもので、私以外には見えない不可視の存在だ、もしかしたら同じようにスタンドを持つものだったら見えるかもしれないがね。」
そう言ってわたしはキラークイーンを出す。
「私以外は触ることもできない、もちろんスタンドは他の物質にも干渉できるがね。」
キラークイーンにその辺の小石を拾わせる。
「このとおりだ、そしてわたしのスタンド・・・わたしはこれをキラークイーンと呼んでいるが・・・
これにはいくつか特殊能力があってね、それは・・・」
小石を上方に弾き、そしてスイッチを押す。
ドグオォォォォォンッ!
「触れたものなんでも爆弾にするというものだ。爆破の規模はいくらでも調整できる。
・・・これくらいだな。」
わたしが説明を終えると4人は唖然とした表情を浮かべていた。
「不可視・・・攻撃無効・・・そして触られたら終わりというのは・・・かなりやばくないか・・・」
「それに加えて私と同じように・・・(時を止められる・・・)」
「話には聞いてたけど・・・それが見えないなんて・・・」
「・・・ちょっと整理させて・・・」
まあ、この反応は当然だろう。自分でもチート過ぎかな?と思うくらいだ。
「そうだ、これはマジにヤバいと思う。だけどわたしは静かに暮らしたい・・・
強すぎる力は疎まれるか利用されるだけだからね・・・咲夜・・・君なら分かるんじゃあないか?君の能力もなかなかの物だろう?」
「そう・・・ですね・・・わたしもお嬢様に会うまではそんな感じでしたから・・・」
「だろうな・・・だからわたしはレミリア・・・君のところへ行ったんだ。君と友好があると広まれば、誰もわたしを襲おうとか利用しようとか考えないだろうからね。
勘違いしないでくれよ?君とも本当に仲良くしたいと思っている。」
「そうか・・・まあいいだろう、わたしは寛大だからな!」
「・・・さっきから思っていたがその口調はなんだ?レミリア、はっきり言っちゃあなんだが似合ってないぞ?」
「な、なんてことを言うのよッ!台無しじゃないッ!」
「ククッ、そうは言ってもだな、フフ、今までどれだけ我慢していたと思っているんだ、ハハハッ!」
とりあえずこれで話を逸らせただろう、これ以上はボロが出そうで怖いからな・・・
咲夜はわたしのほうをジト目で見ているし、それ以外も慌てるレミリアを見て苦笑している。
「そ、そうだ!影斗!あなたまだそんなに飲んでいないじゃないッ!」
そうなるとレミリアも話をそらそうと、こうなった原因である影斗にそう言った。
「いや、わたしは酒はたしなむ程度にしか飲まなくてね、これでいい。」
「楽しい宴会の席で何言ってんのよ!ほら、これを一気に!」
そう言ってレミリアは一升瓶片手にこちらに飛びかかってきた。
「おいッ!やめろッ!わたしは酔うと性格が変わると言われていたんだッ!」
「大丈夫よ、気にしないわ。」
「オ・・・オレのそばに近寄るなあぁ──────ッ!」
抵抗も虚しく、一升瓶を咥えさせられ半分ほど飲み干した所で、わたしの意識は闇に閉ざされたのだった。
「あらあら、こんなんでへこたれるなんて影斗も大したことないわね。」
影斗が顔を真っ赤にして倒れているのを見て、レミリアはそんな風に言った。
「あやや・・・影斗さーん、大丈夫ですか?」
目を回している影斗の頬をつつく文。
「タオルお持ちしましたー。」
いつの間にか時間を止めてタオルと水の入った桶を持ってきた咲夜。
「・・・はぁ。」
あまりの展開についていけてないはたての姿があった。
「あ、咲夜さん、わたしも手伝いますよ。」
咲夜が影斗を介抱しているのを見た文がそう言った。
「あ、それじゃあ、タオルを絞っていただけますか?」
「はい、任せてください。」
「・・・あれは新婚か何かかしら?」
「そうね・・・妻が2人いることを除けばね・・・
確かに顔はいいけど・・・あそこまで熱くなるものなのかしら?」
介抱する2人を見て、レミリアとはたてはそう言った。
確かにはたての言うように、影斗の容姿はかなり整っているだろう。一切の曇りのない月のような金髪に、キリッと整った紅色の瞳、妖しい色気を放つ唇、ガッシリ引き締まった肉体がそれらを一層際立たせる。
「しかも、それに気づいていないんだから救いようがないわね。」
「文も気づいてないのよね・・・」
「うちの咲夜もよ・・・」
「「はぁ・・・」」
彼女らの受難はいつまで続くのか・・・それは神のみぞ知ると言ったところだろう。
溜め息を漏らす彼女らをよそに、2人の甲斐甲斐しい介抱のおかげか影斗が目を覚ました。
「・・・ン、オレは・・・どうしたんだ?」
賢明なる読者の皆様ならもうお気付きだろうッ!影斗の一人称が変わっていることをッ!
最初はまだ安定していなかったから・・・次は唯一の記憶であるジョジョに引っ張られて・・・ッ!
・・・そして今回は酒に酔って口調が変わったのだッ!だから作者のミスなどでは決してないのであるッ!
「そうだそうだ、どこぞのお嬢様に無理やり酒をのまされたんだったのよネン。」
3人に衝撃が走るッ!今までの落ち着いた雰囲気は欠片もなく、どこかおちゃらけた雰囲気さえ感じさせられるッ!
そんな彼女らをよそに影斗はなおも続ける。
「いいんだレミリア、オレはそんなこと別に気にしてないしぃ~、やめろって言ったのに無理やり飲まされたことなんて全然気にしてないもんネ────ッ!」
「それにしてもここには女の子しかいないのかッ!?それにみんな可愛いしィ~~、僕ちんテンション上がっちゃう♪ルンルン。」
「咲夜も文も介抱ありがとネン!可愛い2人に介抱されてうれピーってね。」
すぐに2人の顔が紅く染まる、そして決心したようにゆらゆらと影斗のほうに歩いて行った。
「お、おい・・・、どうした、そんなゾンビみたいに来られたら不気味でしょうがないぜ・・・ッ!」
咲夜が時を止めて後ろに回りこむッ!影斗は酔っぱらっているせいか動くことはできないッ!
ガシッ!
「今ですッ!文さん!
「ナイスです、咲夜さんッ!」
「て、てめーら何するつもりだ・・・ッ!
さ、咲夜ッ!早く離さねーと、シタ入れてキスするぞッ!」
女性に対して、無理やり振りほどくことはできない(背中に当たる感覚も心地いいし)。
(し、舌いれて・・・キスッ/////!)
影斗にそんなことを言われて、咲夜は思わず力を緩めてしまう。
(しめたッ!)
力が緩んだことをいいことに、影斗は咲夜の腕から脱出した
「もう遅いですッ!」
「へ・・・」
文の風をまとった蹴りが影斗に当たるッ!
バキッ!
「ヤッダーバァァァッ!」
影斗は風になった──
レミリアとはたてが無意識のうちにとっていたのは
『2度見』の姿であった───────────
笑いは見せなかったが
無言の呆れの詩があった───
奇妙な静寂があった─────
「影斗にお酒を飲ませるのは止めた方がいいかもしれないわね・・・」
「でも・・・面白かったわよ。」
ご感想をお待ちしますッ!