Angel Beats! 「死後の世界のあり方」   作:Chelia

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Rewrite組、死後の世界へ本格参戦です!


開戦のクロスオーバー! 瑚太郎VSゆり

☆校長室☆

 

突然出てきた新制生徒会とかいうわけのわからん集団。

何故か直井も混じっているし、これだけ大組織となった戦線メンバーがここまでの大敗北をするなど今までになかったことだ。

現状、自分たちの置かれている状況、戻ってきていないメンバーの安否など、ただでさえ考えなければいけないことが多すぎる中で、ここまで厄介事を増やされてしまっては苛立ちを隠すなというのが無理な話である。

ガルデモメンバー及び陽動部隊は、なんとか全員無事に戻ってきたとはいえ、遊佐は戻らず、死んだ世界戦線リーダーこと仲村ゆりはかなり苛立っていた。

 

「くそっ・・・!」

 

とても女の子とは思えないキック力で、乱暴に視界に入った椅子を蹴り上げる。

アホが大多数を占める戦線メンバー幹部も、この状況下で余計なことを言おうというメンバーは誰もいなかった。

いつもは賑やかな校長室も、人数はいるにも関わらず沈黙が続いている。

 

数十分後、その沈黙を破ったのは、以外にも外からだった。

 

「神も仏も天使も無し・・・」

 

そんな懐かしい合言葉を言い現れたのは、ゆりが見捨て今回の作戦失敗で最も心を痛める原因となった少女・遊佐だった。

 

「申し訳ありませんゆりっぺさん・・・私のせいで敗北を・・・」

 

「遊佐さん!?・・・いいのよ、私こそ貴女を見捨てるような真似をしてごめんなさい・・・」

 

遊佐の体力は戻っており、特に目立った外傷もなかった。

前回の声を聞くからして、何かされていてもおかしくはない状況ではあったが、ゆりはそこに安堵する。

遊佐の後方には松下、高松、竹山がおり、それぞれの両手には大量の武器が抱えられていた。

 

「お待たせしました。メンバー全員の装備を用意しました。敵が発生しているため、車を用いての予備弾倉の搬入まではできませんでしたが。」

 

流石遊佐である。

自分たちが不利な状況に追い込まれていても、現状何が求められているかを冷静に判断し、必要物資を届けてみせた。

 

「ありがとう・・・本当に感謝するわ。」

 

「うわー、俺遊佐がこんな喋ってるの初めて見たかも。お前こんなキャラだったっけ?」

 

「日向さん、それは見かけの判断では?私は必要があればきちんと話しますし、現れます。そういうキャラです。」

 

「逆に、あんたは最古参の幹部なんだから、もう少し遊佐さんを見習ったほうがいいわね・・・」

 

「へいへいそうかよ・・・ んでもま、これで今いるメンバーは全員揃ったみたいだし、やっと今後の方針を練れそうだな。」

 

珍しく日向がまともなことを言った。

 

現在この場にいるのは、音無、直井、ユイ、チャーを除いた全ての幹部メンバーである。

ゆりは遊佐が無事帰還したことで少し冷静さを取り戻したのか、今現在までの出来事を日向、高松にそれぞれ報告させる。

まず日向たち、こちらはガルデモとともに入江の楽器を搬送しつつ逃走。

ゆりたちが正面からやりあってくれていたお陰で特に実害はなく校長室にたどり着けたようだった。

高松たちの方は、ギルドで生産された武器や弾倉の搬入が最優先とされるため、それを目標としてひたすら行動を続けていた。

必要数の管理は竹山、搬入は高松と松下が担当し、武器の搬入へ。

こちらも特に敵と遭遇することなくたどり着けたが、今到着したことからわかるようにその用意ができたのが今現在というわけだ。

一通りのベースが整ったため、今後はもっと早急な調達が可能となるが、それらが全てなかった状態、つまり土塊から銃などを作り直すにはチャーの技術が不可欠であり、1回目である今回に限り、相当な時間がかかってしまったというわけ。

遊佐の方は、ギルドを担当しているメンバーに指示を出しつつ、逃走班の方が狙撃手に狙われているところを発見。

妨害しようと試みるが、新制生徒会の1人に対して1人ではどうすることもできず、失敗に終わる。

だが、結果的にガルデモが無傷で校長室に帰れたというのであれば、その功績は100%の失敗ではないとも言えた。

遊佐がどうやって駆の前からここまで戻ってこれたのか、それを遊佐は語らなかった。

 

「なるほど、各員の状況はそんなところか・・・大体決めたわ。」

 

報告を聞き終え、完全に戦線リーダーの顔に戻ったゆりに安心するメンバーや、次のオペレーションに対してわくわくを隠せないメンバーがその視線をゆりへと向ける。

 

「大掛かりなオペレーションはまだ無理ね、まずは新制生徒会について各員に調べてもらう。行動方針、敵戦力などどんな情報でもいいから拾ってきなさい。ただし、戦闘は禁止、向こうから仕掛けられそうになっても1対1で戦うな。必ず2人以上で行動し、非戦闘員だけでパーティを組まないこと。また、調査の合間を縫って音無くんとユイの捜索を続けること。その作戦指揮は日向くんに預けるわ・・・報告は高松くんがするように。以上よ。」

 

「俺か?ゆりっぺはどうすんだよ。」

 

「私たちが死んでいないのにも関わらず、なぜこの世界に再び戻ってしまったのか、また私たちはこの世界で何をしなければならないのか。ただこちらでのほほんと生活するためだとは私は思っていないの。だから私は独自にこの世界についての調査をするわ。遊佐さん、ついてきてくれるわね?」

 

「仰せのままに・・・」

 

というわけで、ゆり、遊佐は死後の世界についての調査、それ以外の日向たちは新制生徒会の調査と音無、ユイの捜索を行うことなった。

世界の調査といっても、調べなければいけないことなんて無限にあるが、それは前回この世界にいたときから何も変わってはいない。

前回の経験を活かしつつ、1つずつ潰していくしかないだろう。

また、校長室がリセットされていたにも関わらず、強引に奪取したことは当然生徒会にも知れ渡っているため、危険なのではという声もあがったが、新制生徒会の行動範囲がどの程度なのかまだ不明なため、野田お手製ハンマーのトラップを再び張り、とりあえず様子見ということになった。

拠点についての判断は日向たちの調査結果に委ねられることになる。

こうして、次の方針を決めたSSSメンバーはそれぞれの行動に出ることとなった。

 

☆校庭☆

 

性格にはグラウンドのど真ん中ではなく、そこから少し離れた校舎前のコンクリートの部分。

以前音無が最初に目覚めた場所とでも言えば分かりやすいだろうか。

その場所である男が目を覚ます。

 

「・・・はっ!?」

 

見慣れない空、見慣れない学校、見慣れない制服、そして見慣れない世界・・・

周りの風景を見渡しただけで、自分が風祭市ではない『何処か』に転移させられたのだと、その男、天王寺瑚太郎は直感で理解した。

 

「なるほど、前回篝が言っていた死後の世界ってやつはここのことか・・・本当に死なないやつばっかがいるのか?」

 

そう当然の疑問を思わず口にするが、時刻は夕刻。

学校であるなら当然行われているであろう部活動がグラウンドでは行われており、見た目の判断だけでは普通の学校にしか見えない。

現状、これだけの視覚情報だけでは得られるものには限度があった。

瑚太郎は、この世界に来る前、篝に呼び出されてした会話を思い出すことにした。

悪しき記憶・・・それが生まれてしまえば、地球は滅びてしまう。

思い返せば、情報はたったのそれだけだった。

無理ゲーの極みである。

 

「そういえば、呼び出された場所、いつものヒナギクの丘じゃなかったな。」

 

それにも何か理由があるのだろうか。

まさか、篝の偽物が話をしてきたなんてオチはないだろう。

・・・きっとないはずだ。

そのあたりは追々考えるとして、瑚太郎はもう1つの会話を思い出す。

 

「仲間・・・みんなも来てるはずなのに!?」

 

篝は約束を破ることはない。

それにも関わらず、瑚太郎が目覚めた周りには誰もいなかった。

単純に目覚めるタイミングが別だったり、場所が違うなどの話なら問題はないのだが、この世界がどういう世界か分からない以上、敵に狙われる可能性も十分に考えられるし、他のみんなは何の説明も受けていない。

突然この場所に転生なんてさせられれば驚いてしまうのは当然だ。

いずれにせよ、今の瑚太郎にとって仲間との合流が最優先だと考えられた。

 

「こうしちゃいられない・・・まずは、校舎内でも当たってみるか・・・」

 

若干早足で瑚太郎は校内に足を踏み入れるのであった。

 

☆本庁舎1F 廊下☆

 

でかい。

校舎に入って第一に思ったことはそれだった。

瑚太郎たちが通っている学院、風祭学院も相当な広さであり、しかも6階建てという巨大校舎であるが、このマンモス校は下手したらそれ以上かもしれない。

廊下の端から端が見えないほどの広さなら、探すのにも苦労しそうなものだ。

 

「というか、周りの連中と違って俺だけ風祭の制服じゃ目立つなんてレベルじゃないぞ・・・ その辺は気が利かないのな、篝・・・」

 

瑚太郎の嫌な予感はすぐに的中することとなった。

 

☆本庁舎1F 廊下☆

 

同刻、同所において視点は瑚太郎からゆりへ

先程決めた手はず通り、ゆりはこの世界の秘密を探るべく単独行動をしていた。

遊佐とはいつでも連絡を取ることができるため、一旦別行動をしようという話になったのである。

まずは何から調べればいいのか、そんな事を考えていると、ゆりの視界に見慣れない制服を着た男が立っていることに気づいた。

それを見て咄嗟に日中の戦闘のことがフラッシュバックする。

圧倒的力の前に手も足も出すことができなかった新たな敵・新制生徒会。

それに対抗するには、現在のメンバーだけでは戦力が足りないことは明らかだった。

目の前の男はどうみてもNPCではないし、初心に返って勧誘をしてみようと考えたのである。

 

★Side 瑚太郎★

 

仲間がいるとしたらどこだろうか?

みんながいそうな場所を考えようとすると、ふと目の前の少女に声をかけられた。

その少女は、今まで自分が見てきた女子の制服とは違う制服を着ている。

今まで数々の修羅場をくぐってきた瑚太郎にとって、その違いだけでも何かあると疑ってかかってしまうのは当然。

そして、その少女から発された言葉によって、その疑いは確信へと変わる。

 

「唐突だけど、貴方入隊してくれないかしら?」

 

・・・は?

入隊ってなんだ。

学校なのに軍隊とかか?

考えても仕方がないのですぐに言葉を返す。

 

「何のことだ。俺はこんな場所知らない・・・さっき目覚めたらいきなりこの場所にいたんだ。」

 

「ここは死後の世界。ここに来たってことは貴方、死んだのよ。」

 

真面目な目でそんなことを言ってくる少女。

なるほど、本当に初めて来た人が聞いたら訳の分からない世迷い言と切り捨てるような台詞だ。

だが、篝から事前に話を聞いていた瑚太郎にとって、その言葉はきちんと死語の世界への転生に成功したという裏付け情報以外の何物でもなかった。

自分たちが本当は死んでいないなどということを素直に話す必要はないため、ここは一度相手に話を合わせることにする。

 

「死んだ・・・か。で?入隊ってのは何だ?」

 

「死んだ世界戦線によ。私はそこのリーダーをしているの。生前をまともに過ごせなかった私たちにとって、そんな過酷な運命を与えた神様なんて許せないじゃない。

だから私たちは神を見つけ、神を殺すのよ。」

 

「なっ・・・!?」

 

神を殺す。

表現の仕方は人によって、世界とってそれぞれ違うだろう。

しかし、瑚太郎にとって神に等しい力を持つ者など、どう考えても1人しか思い浮かばなかった。

 

(篝を殺す集団・・・まるで自己の欲求を満たすためだけのガーディアンじゃないか・・・こんな自分勝手な奴等が鍵を殺そうとしているだと?)

 

それは即ち、篝の言う『悪しき記憶』に直結する解となるのではないか?

 

「俺はお前らの仲間にはならない。・・・そして、お前らは恐らく、俺の敵となる。」

 

そう言い放ち、ゆりを睨む瑚太郎。

 

「死んでなお、神を擁護するというの?いいえ、違うわね。通常の死者なら模範生の制服を着ているはず。貴方何かおかしいわ、何者なの?」

 

ゆりの方も瑚太郎の違和感に気づいたようだ。

自分が死んだことを受け入れられなかったり、こんなありえない話を信じることはできないのが通常であるのに対し、目の前の男は冷静に神を擁護し、ゆりを敵だと言い放った。

神を守るということは神の使い。

立華かなでではない本物の天使という可能性がある。

一方瑚太郎にとっては、己の大切な存在、篝の命を奪う可能性のある人間が、向こうから勝手にやってきた状況だ。

瑚太郎にとってもゆりにとっても引き金を引く理由は十分すぎるほどあった。

 

「天使!!」

 

最初に行動に出たのはゆり。

目にも止まらぬ早抜きで懐からハンドガンを取り出すと、それを瑚太郎の頭目掛けて的確に撃ち放つ。

NPCか死者ならそれで死亡し、数十分後に保健室で生き返って終わり。

・・・それだけのはずだが

 

「・・・!!」

 

瑚太郎は3本に分かれたオーロラブレードを右手から展開し、その銃弾を叩き落として見せた。

瑚太郎にとってはいつもの戦い方なのだが、ゆりにとっては以前自分が天使だと思いこんでいたかなでが使用していた技・ハンドソニックにしか見えない。

そして、今のやり取り1つで互いの推察が互いの確信へと変わった。

そう、瑚太郎はゆりを悪しき記憶の原因だと判断し、ゆりは瑚太郎を憎き神の使い・天使だと判断したのだ。

 

「あなたのその武器・・・確信したわ。あなた、やっぱりこの世界のこと、何か知っているわね?全て話してもらうわよ。」

 

「どうしてそういう結論になる。お前も見ていたとおり、俺はたった今この世界で目覚めたばかりの人間だ。お前のいう神とか天使がどういう存在なのかは知らないが、そう結びつけるのには無理があるんじゃないか?」

 

「なら、なぜ私のことを敵と言い放ったのかしら?」

 

「神を殺すとかいう宗教信者が聞いたら発狂しそうな台詞が、俺には合わなかっただけだ。」

 

「武器については?」

 

「俺のこの力、説明したところで理解できるものじゃないさ。」

 

互いに武装を解かないまま、言葉での牽制が始まる。

しかし、会話については平行線のまま。

たった今、たった一度の交戦で瑚太郎とゆりは互いの力は拮抗していると判断した。

また、他にどんな能力、どんな隠し玉を持っているか分からない以上、会話で少しでも引き出したいと考えたのである。

ゆりは戦線を率いるリーダー、そして瑚太郎もまた対立する組織のメンバー同士を繋ぎ止めた、いわばリーダーのような存在である。

似たような立場であるが故なのか、考えることもある程度似ているのだろうか?

 

「ちょうどいいや・・・」

 

「・・・?」

 

今度は先に話を切り出したのは瑚太郎の方だった。

 

「さっきも言ったが、俺は今この場所に来たばかりでこの世界のことはよく知らない。ただ、物騒な話を聞いたし、目の前のお前は武装をしている以上、戦闘が必要になることだけは理解した。なら、俺達の力がこの世界でどの程度通用するのか、それを知るのはいい機会だってことだよ。」

 

右手から伸びているオーロラブレードを振り上げ、とても常人では不可能な速攻でジャンプ斬りを仕掛ける瑚太郎。

ゆりは銃弾を放つも弾かれたため、後退して攻撃を躱す。

そこから先は攻守の嵐が続いた。

接近を許した以上、銃器は不利と判断しナイフへと切り替えオーロラと斬り合う。

2,3回斬り合えば互いに後退し、今度は銃での攻撃。

 

「行け・・・!」

 

瑚太郎はオーロラの形状を変更。

今まで3本で形成した鉤爪のような形状だったオーロラは形を変え、今は獣の頭のような形状に変化している。

それが本人の意思で操っているのか手元を離れ、飛び道具のような勢いで襲い掛かってくる。

獣の頭はその鋭い牙で銃弾を噛み砕き、そのままゆりへと襲いかかった。

 

「なんなのよ、それ!!」

 

後退し獣から逃げるゆり。

過去何十年とこの校舎に居続けたゆりにとって、ここは庭のようなもの。

新参者の瑚太郎と比べれば圧倒的に地の利はこちらにある。

廊下から教室に入り、ドアや机など、あらゆる障害物を駆使して追尾して追ってくる獣を躱しつつ、手榴弾でそいつごと破壊した。

 

「これも躱すのか・・・どうやら、相当戦闘には慣れているようだな。何か鍛えていたのか?それとも、生前にある組織に入っていたのか・・・ どっちだ?」

 

「私は一般人よ、神の使いである貴方と違って、戦う力はこの世界に来てから自力で身につけたわ!」

 

「あくまでそう決めつけてかかるか・・・そうかい・・・!」

 

瑚太郎はさらにオーロラの形状を変更。

獣から今度は大剣へ。

野田のハルバートよりも一回り大きいその武器を軽々と振り上げ、障害物もろとも真っ二つにしようと迫りくる。

いつの間にか、ゆりは既に教室の角へと追い込まれていた。

追尾攻撃を仕掛ける際、ここに誘導されるように仕掛けられたのであろう。

相手の武器のリーチを考えても、どう考えても次は避けられない。

いくら死なないと言っても、死と同じ痛みを受けることにはかわりはない。

仕方がないと諦め、痛みを少しでも耐えようと本能的に目を閉じるゆり。

戦闘はここで幕引きとなるはずであったが、大剣を振り下ろすその直前、教室の窓ガラスが割れた。


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