そんな結末認めない。   作:にいるあらと

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誰得かわからないいちゃいちゃ、その二。



2014.7.25
本文の数箇所を訂正しました。


元ジュエルシード 現アクセサリー

 なのはの意識がしっかりしてから手分けしてジュエルシード探索に従事する。

 

ちなみになのははレイハのスタングレネードじみた光と音のせいで昏倒状態に陥り、俺とレイハの会話内容を一切聞いていなかったようだった

 

戦いで使えるレベル、もはや技である。

 

 目を皿にしながら錆びついたコンテナが左右両側に積み上がっている道を歩く。

 

積荷と積荷の隙間や、貨物の積み卸しを行うためのレール上を移動可能な門の形をした大型クレーン(ガントリークレーン)の足元などを隈なく探すのだが見つからない。

 

 それもそうだ。

 

いくらおおよその位置がわかっていても、目当てのものは宝石のような小さい石。

 

目につかない程に小さくないとはいえ、アクセサリー程度のその石を広い範囲の中から足を使って根気強く探すというのは思う以上に疲労する。

 

危険性に目を瞑って街中で魔力をぶつけ、ジュエルシードを強制発動させたフェイトの気持ちが少しわかった。

 

これは見つかる気がしない。

 

「ん? アクセサリー?」

 

 心の中で考えて、実際に発声して、ふと思い出す。

 

元ジュエルシード、現アクセサリーになっている代物が今まさに俺の服の内側胸元にいるではないか。

 

 首にかかる銀のチェーンを手繰(たぐ)って青い宝石を(てのひら)に乗せる。

 

「…………」

 

 まぁ……だからなに? って話なんだが。

 

うん、いるよ? 俺の掌の上に横たわってるよ、元ジュエルシード……いや、今も本質は変わることなくジュエルシードなのだが。

 

銀白色の台座にくっついた青白い宝石はかすかながらもたしかな重みを俺に与えている。

 

だからってこいつから足が生えて仲間のもとに走っていって、俺に場所を教えてくれるわけじゃない。

 

 なにか手掛かりになるのではないかという考えに到った数秒前の自分の頭を()(さば)きたい気分だ。

 

いったいなぜそんな答えに辿り着いたのか。

 

「……試すか」

 

 だが、今のままでは暗中模索もいいところ、というのもまた事実。

 

なんらかの糸口になるのかもしれないのなら挑戦してみるのもまた一つの手だ。

 

失敗したら爆発してしまうなどののリスクがあるわけじゃないのだから、試すだけの価値はある。

 

 左手で台座を持ち、右手の指先で優しく宝石部分をつまんでゆるやかに力を込めていきながら左右に引っ張る。

 

引っかかりのような感触の後、かちり、という音とともに台座からジュエルシードが外れた。

 

 また掌の上に戻してじっと見つめる。

 

菱形でありながら先端部分に尖りはない。

 

外側は青みが強く、内側に至るほど白さを増していく。

 

心なし透明感があり中心部には藍色の核のようなものが見えた。

 

 この子は自分から台座にくっついてくれることもそうだし、バスケットコートで会話のようなものが成立したことからも言葉が通じているような気配はあるのだ。

 

ダメでもともと、一度頼んでみて損はないだろう。

 

「お前の仲間を探しているんだ。協力してくれないか?」

 

 真面目くさった顔をして石に話しかける男子高校生。

 

他人に見られでもしたらだいぶ怪しまれる光景だ。

 

黄色い救急車待ったなしの状況だが、幸いなことに俺の周囲には誰もいなかった。

 

 俺の言葉に元ジュエルシード現アクセサリーのジュエリーシード(区別するため改名)が反応を見せる。

 

強く光り、弱く光り、光が消える……これを何度か繰り返した。

 

「……なるほど」

 

 さっぱりわからない。

 

なにが『なるほど』だ、なにに合点がいったのだ。

 

 俺の言葉をこいつが理解できたところで、こいつの意思表示を俺が汲み取れないんじゃ意味ないじゃねぇか。

 

ただ……なんとなく、とてもあやふやで自分でもとても不思議に思うのだが、あまり乗り気じゃなさそうな印象を受けた。

 

なぜそう思ったのか論理的に説明しろ、と言われてしまうと閉口せざるをえないが、なぜかそう感じたのだ。

 

自分の手足をどうやって動かしているのか説明できないのと同じようなものだと想像してもらえれば、おそらくそれが感覚的には一番近い。

 

 さぁ、ここからどうするか考えよう。

 

 俺の第六感を当てにするのなら、こいつはお仲間を売る気はないようだ。

 

しかし俺には他に足掛かりとなるような情報の持ちあわせはない。

 

 それなら答えは一つ。

 

俺のほうは完全に手詰まりなのだから、掌に横たわる宝石(ジュエリー)にやる気になってもらう他に(すべ)はない。

 

 そこで必要になるのがやる気にさせる方法だ。

 

意欲的でない人に手伝ってもらう方法は大別して二つある。

 

弱味を握り、断るという選択肢を排除して無理矢理働かせるか、誠心誠意頼み込んで相手の良心につけ込むかの二つだ。

 

 どっちを選ぶかは俺の采配次第だが、前者の無理矢理働かせるという強行手段は看過できない懸念を孕んでいる。

 

俺が不在の時にまた暴走状態や励起状態になったら一大事なので、家には保管せずに、このエリー(ジュエリー略してエリー)は常日頃から持ち歩いていて学校にも身につけて登校している。

 

ここで強制労働させて機嫌を損ねてしまうと、学校や登校時など一般人が多くいる場所で憂さ晴らしにぴかぴかと青白い光を放つかもしれない。

 

そうなってしまえば事だ、隠しようがない。

 

 よって、弱みを握るという手段は不安要素がありすぎるため却下。

 

もとからこいつの弱みなんてわからないし見当もつかないが。

 

 二つの作戦の内、片一方が潰れたのだから消去法で残ったもう一つの方策、誠実なところを見せて自主的に動いてもらうという方法しかなくなる。

 

この手を使うとなれば腹芸などが介在する余地はない。

 

ただただ、頼むほかないのだ。

 

「お願いだ、手伝ってくれないか」

 

 俺は再度語りかける。

 

 エリー(愛称決定)は強めに数回、ぱぱぱっ、と瞬いたが、また徐々に光を弱めて消えてしまった。

 

これもおそらくだが、否定……拒否するという意味だろう。

 

案外この子頑固だな……そう簡単に自分の意見は曲げない(たち)のようだ。

 

 こいつにもなにか譲れない部分があるのかもしれないが、こちらとしても八方塞がりの現状を抜け出す唯一の突破口を見逃すわけにはいかない。

 

もうあたりは夕暮れなのだ。

 

前みたいに高町家の人たちに心労を負わせるわけにはいかないので、遅くならないうちになのはは家に帰しておかねばならない。

 

そうなれば俺一人で(もしかしたらユーノは残ってくれるかもしれないが)捜索することになる。

 

こんな辺鄙(へんぴ)な場所で、フィラメントが切れているのか電気が通っていないのか知らないが、日が暮れ始めても明かりを灯さない役立たずの電灯の下、いつ見つかるともわからぬ小さい石ころを月明かりと星明りしか頼りにできない夜にたった一人で探してなんていられない。

 

海が近くにあり風も強く吹くし、足元は舗装もされていない地面だ。

 

闇夜の中、塩気まじりの春の夜風に吹かれて身体を冷やしながら、土埃をかぶって探すとか耐えられない。

 

絶対心が折れる、もしくは泣く。

 

 明日も学校があるし、放課後には買い出しに行かねばならないという用事もある。

 

早くジュエルシードを見つけて家に帰り、あったかい風呂に入ってさっさと寝たいのだ。

 

 だからといって後のことを考えると無理強いすることもできない。

 

俺にできることは平身低頭真摯に頼み込むほかにないのだ。

 

 俺の――あるかどうかわからない――実直さが伝わるよう、掌の上のエリーをまるで女の子の髪を指で梳くように、親指の腹で優しく撫でながら、再三語りかける。

 

「なぁ……頼むよ……」

 

 ぱぱぱぁっ、と強く明滅して光り輝いたかと思えば少しだけ光量を落とした。

 

すると今度はさっきまでの反応とは明らかに異なり、木の葉のカーテン越しに降り注ぐ春の陽光のような温もりを伴って、淡く柔らかく安らぎを与えるかのように穏やかに煌めいた。

 

 三顧の礼ではないが、どうやら俺の気持ちは彼女――かどうかはわからないが――に届いたようだ。

 

 掌に鎮座するエリーが対角線の長いほうを縦として、すくっ、と起き上がった。

 

手にはほんのわずかにエリーの下端が触れている感触があるが、さきほどまであった重みはほとんど感じない。

 

浮遊しているようだ。

 

 周辺をオレンジ色に染め上げる黄昏時を切り裂くように、エリーから青く細い一本の線が空間に照射された。

 

その線の先に目を向けると、もとは何色だったのか想像できないほどに錆びついたドラム缶が三つ立っている。

 

青白色に輝く線は三つのうちの真ん中のドラム缶を指していた。

 

 足早に近づいて塗装の剥げたドラム缶の後ろを確認すると、あった。

 

発動前のジュエルシード。

 

たった一つでも莫大な力を秘めるロストロギアが、錆だらけのドラム缶の陰に隠れてぽつねんと寝転がっていた。

 

「おぉ……。まさかマジで見つかるとは……」

 

 ドラム缶の背中に隠れていたジュエルシードも大変驚いたと思うが、一番驚いたのは俺である。

 

藁にも縋る思いで、と言ってしまっては大げさだが、物は試しにとやってみた試みでまさかこうまでうまくいくとはな。

 

すべては俺の手の中で優しく光るエリーのお陰だ。

 

名前までつけてしまってさらに愛着が湧いてしまった。

 

 本日のMVPであるエリーに、ありがとう、と言って軽く感謝の口づけをする。

 

するとエリーは、ふわふわぽやぽやとした光と表現すべきなのかどうか判断しかねる曖昧な青白いなにかを空気中に漂わせた。

 

なんとも言い難いエリーのリアクションだが、嫌がっている様子はないので大丈夫だろう。

 

「助かったよ、ありがとな」

 

 最後にもう一度礼を言ってからネックレスの台座を近づけてくっついてもらい、服の内側にしまいこんだ。

 

服の内側でエリーがぷるぷるぷると携帯のバイブレーション機能のように振動してこそばゆい。

 

 ふと、自分のしたことを思い出して自責に駆られる。

 

ほんのついさっきレイハにしこたま叱られたのに、次はエリーに同じことをしてしまった。

 

そういえば一年ほど前に『お前は気障な言動が多すぎる』と恭也にも注意された気がする。

 

 赤ちゃんを寝かしつけるように、服越しにエリーをぽんぽんと軽くたたいて落ち着かせながら、でも仕方ないよなぁ、と言い訳を考える。

 

『気障な言動』と恭也は言い表したが、俺はそれができる限りの『最善の行動』だと思ったからこそ動いただけなのだ。

 

 今回のエリーにだってそうである。

 

危険な物体であるジュエルシードを無血で回収できたことへの感謝の念を表現したかったが、人間ではないエリーには取れる感謝の示し方が限られている。

 

だから幼い子どもの額に口づけするように軽くちゅっとしたのだ。

 

ひたすら純粋に、ありがとうを伝えるためだけの他意のない行為であった。

 

 俺も一応、改善したほうがいいとは思うのだが習い性ゆえに改めるのも難しい。

 

直るのを気長に待ってくださいとしか言いようがない、というのが現状だ。

 

 誰に言うわけでもないのに自分の中で言い逃れじみた釈明文を組み立てながら、ジュエルシードの封印を始めた。

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

 

 違う場所を探しているなのはやユーノに合流しようと工場内を探索する。

 

どうせ近くにいるのだろうし、念話を送る必要もないか。

 

 とぼとぼとなのはたちを探しながら辺りを観察する。

 

やはりこの施設(運送業と思われる)は閉鎖されて相当時間が経っているようだ。

 

 倉庫のひさしの下には使われなくなって数年は経ってそうなフォークリフトが荷役作業に使う爪のような部分(フォーク)にぼろぼろになったパレットを乗せたまま放置されていた。

 

タイヤも前輪後輪ともにパンクしている。

 

切られたような裂け目も見当たらないので劣化破損したようだ。

 

運転者の頭上にある屋根のような部分(ヘッドガード)も割れていた。

 

あの部分が壊れるなんてあるのか、たしか落下物から運転者を守るという役割を持って取りつけられていたから、かなりの強度を有しているはずなのだが。

 

 倉庫と少し離れたところには『有り合わせの材料で作りました』と言わんばかりの簡素なワイヤーロープ置き場があった。

 

表面を赤茶色に変色させたワイヤーロープがいくつか置かれている。

 

なにかの作業で余った鉄板を粗雑に溶接して繋ぎ合わせたのが見て取れた。

 

大きさや厚みがそれぞれ違うし、何枚かは大きすぎたのか溶断した形跡も残っている。

 

クレーンで使うワイヤーロープを雨風にさらされる室外で保管するわけがないので、折れ曲がって元の形状に戻らない(キンクした)ものや素線切れしたもの、摩耗や捻じれなどが生じて使えなくなったものを置いているのだろう。

 

要するにゴミ置き場のようだ。

 

「あ、なのはいた。んむ……フェイトも一緒?」

 

 倉庫があった道を曲がると開けた場所に出た。

 

下ろしたコンテナを一時的に置いておくための空間だな。

 

〈ここに物を置かないように〉と文字が掠れた看板が地面に刺さっている。

 

 フェイトがここにいるということは彼女たちもジュエルシードの反応を拾ってここにきたのか。

 

 なにか話しているようだが、お互い獲物(デバイス)を携えながらという物騒な状況なので、可愛い女子小学生二人のガールズトークというわけではなさそうだ。

 

話しているというよりなのはが話しかけている、といったほうが正確かもしれない。

 

「…………」

 

 べつに後ろめたいことをしているわけではないが、音を立てないよう壁に背をつけて身体が見えないぎりぎりまで近づいて聞き耳を立てる。

 

盗み聞きだった。

 

百パーセント後ろめたいことだった。

 

 耳を澄ませて、聴覚が捉える潮風などのノイズを取り除き、話の内容を聞き取る。

 

「……フェイト。フェイト・テスタロッサ」

 

「わたしは……フェイトちゃんとお話をしたいだけなの」

 

「……前も言った。話して何かが変わるわけじゃない。ジュエルシードは譲れない」

 

「わたしも譲れないよ。ジュエルシードが危険なものだから街を守るためっていうのもあるけど、それ以上に理由を訊きたいから。なんでフェイトちゃんがそんなに辛そうな目をしてまでジュエルシードを集めているのか」

 

「……っ」

 

「私が勝ったら、その理由……訊かせてくれる?」

 

 会話の途中で聞き始めたせいで話の内容が掴めない。

 

 しばし流れる沈黙。

 

その静寂を破ったのはフェイトだった。

 

 小さな両手で握るバルディッシュを構え直し、身を包んでいた黒の衣装からバリアジャケット姿に変身する。

 

表が黒、裏が赤色のコートを羽織り、レオタードのような身体のシルエットがわかりやすいぴっちりとしたインナーに、なぜか側面ではなく前方にスリットが入った丈の短いスカート。

 

高機動が信条の戦い方をするためとはいえ、肌見せすぎだ。

 

年若い娘がそんなに素肌を晒すものではない。

 

 フェイトが戦闘モードに移行したのを見て、なのはもバリアジャケットを纏う。

 

白を基調にした映える色使いといい、足首ほどまであるロングスカートといい、緻密で意匠を凝らしたデザインといい、なのはの通う聖祥大附属小学校の制服を彷彿とさせる。

 

 二人は見合い、足元を確認するようにざざっ、とかすかに地面を擦った次の瞬間、同時に飛び掛かり戦闘が始まった。

 

互いのデバイスで一合打ち合い火花を散らし、着地する。

 

ちょうど二人の立ち位置を交換したような形だ。

 

 赤い球体の部分が一度輝いてカノンモードになったレイハに、なのはが驚いたような表情を向けた。

 

ここからでは距離があって聞こえないが、レイハがなのはになにか言ったようだ。

 

 なのはのおよそ十メートル前方に立つフェイトがバルディッシュをサイズフォーム(大鎌)に変形させた。

 

自分の得意分野である近距離戦に持っていこうという算段だろう。

 

 地を駆け接近するフェイトに、なのはは音叉状のレイハを突きつけた。

 

 なにか作戦はあるのか? フェイト相手に急拵(きゅうごしら)えの射撃魔法じゃ、いくら出が早いとはいえ障壁で防がれるか躱すかされて鎌による手痛い反撃を貰いそうなものだが……。

 

ひやひやしながら見ていたが、どうやら俺の心配は杞憂だったようだ。

 

 杖には四つの魔法帯が取り巻き、音叉の先端には桜色をした球状の魔力の塊。

 

なのはの十八番、生半な障壁なんぞ容易く食い破る殺人砲撃(ディバインバスター)そのものだった。

 

「なっ、ディバインバスター?! チャージはどこに置いてきた!? あれは溜めの時間を短縮してブチかますこともできたのか?!」

 

 隠れていた壁から身を乗り出してよく観察するが、普段のディバインバスターと遜色ないエネルギー量を秘めている。

 

「さっき俺に撃とうとしたものと同じくらいの魔力量……ってまさか、俺の時の魔法か?」

 

 俺を恐喝していた時に展開させていた魔法をなんらかの手法を用いてそのまま待機させ続け、フェイトが油断して突っ込んできたタイミングで再起動させたのか。

 

 これは……正々堂々とはほど遠い戦法だな。

 

戦闘開始前に魔法の準備をしていたのだから完全にフライングだ。

 

卑怯と非難されても仕方ない戦法だが、実戦であればとても効果的である。

 

 なのはと何度か戦い、なのはの魔法の内情を多少知っているフェイトであれば砲撃は絶対に注意していただろう。

 

『あの砲撃魔法は脅威だ、しかし強力ゆえにチャージするのに時間がかかる。だから溜め始めたら回避に専念しよう』と、そう考えていたのかもしれない。

 

まさかほぼ溜めなしで撃たれるというのは予想していなかっただろうな。

 

 今回のようなタイマンでは多少ずるっこい気もするが、とても俺好みの戦術だ。

 

また今度術式に転用できないかレイハと話してみよう。

 

「うぉっ、フェイトすごい。あれを避けた」

 

 フェイトは目前に迫った砲撃にすんでのところで障壁を挿しこみ、桜色の魔力の奔流が障壁を食い破っている間に地面を蹴って空中に退避した。

 

その場しのぎに一枚二枚の半端な障壁を張るだけではとても(しの)ぎきれない、さりとて空に逃げるだけでは間に合わずに直撃を受ける、と冷静に判断したんだ。

 

さすがに余裕はなかったようでフェイトの顔色は真っ青だが。

 

 だがフェイト……それだけじゃないんだ、砲撃だけではすまないんだ。

 

あの悪辣な赤球デバイス(用意周到なレイハ)は俺にディバインバスターともう一つ、別の魔法も用意していた。

 

それは誘導性能を持つ射撃魔法、ディバインシューター。

 

 レイハは自分のマスターに話を通していなかったようで、戸惑うままのなのはから射出された弾数は三つ。

 

畳みかけるような連撃に焦ったのか、フェイトは腹部に一発被弾して苦痛に顔を歪めるが、すぐ落ち着きを取り戻し、続く二発目を大鎌の魔力刃で切り落として持ち前の飛行速度で三発目を振り切るようにさらに高空へと退いた。

 

 独断で魔法を仕込んでいたらしいレイハをなのはがこつんと叩いて注意しながら、フェイトを追うように地面をぴょんと跳ねて飛行魔法を展開する。

 

 少女二人は空へと戦いの舞台を移した。




優秀なインテリジェントデバイスであるレイハさんが演算処理のリソースを魔法の維持に割り振っていたため待機させ続けることができた、という妄想。
これ以降はレイハさんもなのはさんも使う予定はありません。
ですのでこの件については目を瞑っていただけるとありがたいです。

あと次の更新はすこし間が空くかもです。

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