テイマー姉妹のもふもふ配信   作:龍翠

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配信二回目

 

『お、はじまた』

『れんちゃーん! ……あれ?』

『誰もいないぞ?』

『なんだ、設定ミスか?』

『いやまて、映像動いてる』

『てことは見えないだけで、ミレイはいると』

『れんちゃんいた! かわええ!』

『おお、草原のど真ん中でブラシで撫で回すとか、かわいすぎかよ』

『初期装備じゃない! なんか、ふりふりしてるぞ!』

『おお!』

 

 さてさてそんなわけで配信のお時間です。今日はちょっと趣向を変えてれんちゃんスタート。ラッキーが仰向けに寝ていて、れんちゃんがそのお腹をブラッシングしてる。うんうん。

 

「私の妹がかわいすぎる……!」

 

『ミレイwww』

『いつも通りで安心するわw』

『さすがミレイさん、そこにしびれないし憧れない!』

 

「うるさいよ!」

 

 まったく、君らこそいつも通りだねほんとに。

 光球の前に立って、ぺこりと頭を下げる。今日の私は昨日とはひと味違うのだ!

 

『初期装備じゃない! 買ってきたの?』

『かわいい。てかこれ、もしかしなくても、れんちゃんとお揃い?』

 

「おお、察しがいいですねえ。その通り、れんちゃんとお揃いです。なんか、奇妙な縁に恵まれたというかなんというか……。れんちゃんが夢中で使ってるブラシを買ったら、店主さんに服をもらいました」

 

『どういうことなの』

『まるで意味がわからんぞ』

 

「大丈夫だ、私も分からない」

 

 いやはや、自分で言って改めて思う。脈絡も何もないな、と。でも本当に、そうとしか言えないのだ。それに、きっとこれはとってもいい出会いだったと思う。

 

「でもちょっと変態さんだったかもしれない……」

 

『ミレイからそんな言葉を聞くとは』

『ミレイが言うってよっぽどじゃないかw』

『れんちゃんは! れんちゃんは無事ですか!』

 

「君らは私をなんだと思ってるのかな?」

 

 ほんっとうに失礼だなこいつら!

 

「ともかく、どうかなこれ。れんちゃんはすごく気に入ったっぽかったんだけど」

 

 そう言って、くるりと一回転してみた。

 青いワンピースに白いエプロンドレスに赤いリボン。スカートには白いフリルつき。シンプルだけど、ちょっとファンシーかなと私も思った。

 

「多分、イメージとしては不思議の国のアリスなんじゃないかなと思う。私にはちょっとファンシーすぎるかな?」

 

『大丈夫。かわいい』

『似合ってる似合ってる』

 

「そ、そう? ありがとう」

 

『れんちゃんも見てみたいなあ!』

 

「はいはい、仕方ないなあ」

 

 れんちゃんを呼ぶ。聞こえなかったのか無視された。もう一度呼ぶ。やっぱり反応なし。嫌われてるのかなと思っちゃう。単純に気付いてないだけって知ってるんだけどさ。

 今度は近づいて、れんちゃんのほっぺたをつつく。ぷにぷに。

 

「んむ……。なあに、おねえちゃん」

「配信中だぜぃ」

「え!?」

 

 ぐるんと振り返って私を見て、光球を見て、慌てて立ち上がった。

 

「あ、えと、こんにちは!」

 

『こんにちは』

『挨拶できてえらい』

『どこかの無言開始の誰かさんとは全然違う』

 

 うるさいよ。

 

『れんちゃんれんちゃん。服見せて』

『是非! お願い!』

 

「あ、うん。えっと、こう、かな?」

 

 くるん、とれんちゃんが一回転。れんちゃんの服も私と同じだ。少しファンシーなこの衣装も、れんちゃんだととても似合ってる。とってもかわいい。さすが私の妹。天使。

 

「ふへへ」

 

『れんちゃんとってもかわいいけど、隣の姉のだらしない緩み顔が全てをもってくw』

『ちょっとは隠せよw』

『れんちゃん逃げて!』

 

 こてん、と首を傾げるれんちゃん。意味が分からないよね。それでいいんだよれんちゃん。うん。

 

『それにしても、不思議の国のアリスね。なんか、AWOにいるアリスも作りそうだよな。あの人、こういうの好きそうだし』

 

「ああ、うん。知ってるの? そうだよ、この服、アリスにもらったの」

 

『   』

『   』

『   』

 

「な、なに!?」

 

 急に無言投稿を大量に送りつけてくるのやめてほしいんだけど! 怖い!

 

『ああ、そっか、そう言えばアリスってテイムも少しやってたな……』

『戦闘メインのプレイヤーには有名だけど、それ以外だとそんなに知られてないのか……』

『商人ロールとかやってたら噂ぐらい聞くだろうけど、ファトスではまず聞かない名前だろうしなあ』

 

 あれ、やっぱりアリスって結構有名人? なんとなーく、少しだけ聞き覚えがあるような気がしたけど、気のせいじゃなかったのかな。

 

「アリスさんはね、面白いおねえちゃんだったよ!」

 

『照れる』

『本人いるのかよ!?』

 

「でもちょっと怖い人でもあったよ」

 

『へこむ……』

『草』

 

 まあ、すごい勢いだったからね。正直私ですら若干引いちゃったぐらいには。でもまあ、悪い子ではないっていうのは、今なら私も何となく分かるけど。

 

「アリスって有名なの?」

 

『少なくとも戦闘メインの攻略プレイヤーなら誰でも知ってる』

『鍛冶と裁縫スキルをカンストさせた頭のおかしい生産者』

『どっちか一つだけならそれなりにいるけど、両方カンストはアリスが唯一』

 

「え、うそ、本当にすごい……」

 

 戦闘スキルに関しては制限がかかっていて途中までしか上げられないんだけど、生産スキルは全て上げることができるのだ。ランクの上げ方は決められたクエストを達成して、レベルアップでもらえるポイントを振ることで上げることができる。

 このクエストが問題で、途中までは簡単なんだけど、最後の方がかなり鬼畜な内容だともっぱらの噂。あまりに鬼畜すぎて、諦めて他のスキルを上げ始めたり、カンストさせたはいいけど他のものを上げる気が失せたりと、なかなかすごい話も聞いてる。

 そんな生産スキルを二つも上げるなんて、アリス……!

 

「すごい変態……!」

 

『ミレイちゃん!?』

『草』

『よく考えなくてもマゾにしか思えないからなwww』

 

 スキルレベルが高いほど色々とできるようになるらしいから、高ければ高いほどいいっていうのは分かるけど……分かるけど……!

 

「れんちゃんれんちゃん。アリスは変態さんだからね、気をつけるんだよ」

 

『ちょお!? 何吹き込んでるの!?』

 

 きょとり、と首を傾げて。

 

「つまりおねえちゃんと同じってこと?」

「え、はい? ええ!?」

 

『あっはっは! ざまあ!』

『なんだこの低レベルな争いw』

『もうめちゃくちゃだよw』

 

 うん。よし。これ以上は私にもダメージ来そうだからやめよう。れんちゃんの私に対する評価をこれ以上聞くと、いろいろと取り返しがつかない気がする……!

 

「アリス。仲直りしよう」

 

『そうだねミレイちゃん。私たちは親友だよ……!』

『なんだこの、なんだこの……茶番……』

『俺たちは一体何を見せられているんだ……?』

 

「んん! ともかく、アリスが有名ってことは分かった。ありがたやありがたや……。ところでアリスの服ってまともに買うとどれぐらい?」

 

『ピンキリだけど、平均百万こえるはず』

 

「うへあ」

 

 なんか、すごい桁違いのお金が……! てことはこの服も、実はすごく高いものだったりするのかな。着るのが怖くなる! 所詮はデータと言われたらそれまでだけど!

 

『それにしても羨ましい。依頼を引き受けることすら稀だって聞くのに、どうしてまた』

『いや、だって君らの依頼、男物とかごつい装備とか実用一辺倒でしょ。私はかわいい子にかわいい服を作りたいの。れんちゃんに作ってあげたいの』

『あ、はい……』

『ぐうの音も出ない……。すんません……』

 

 依頼してた人もいるのか。あれ、ということは、そんな人たちもこの配信を見てくれてるってことかな。攻略情報なんて何もないけど、いいのかな……?

 

「おわりー!」

「ん?」

 

 いつの間にか、れんちゃんはラッキーのブラッシングを再開していた。ラッキー、とってもご満悦。なんだこのかわいい生き物。好き。

 そして次にれんちゃんはディアの方へと駆けていく。主役はれんちゃんだし、私も追いかけよう。

 

「あ、そうそう。アリス。ブラシありがとう。れんちゃんすごく気に入って、今日放牧地に行く予定だったのに、ブラッシングで一日終わりそうだよ」

 

『気に入ってくれて私も嬉しいよ!』

『そんな!? そろそろ来るんじゃないかと、ファトスの放牧地で待機してたのに!』

『草。大きいウルフの隣に立つと、本当に不思議の国というかなんというか……。せめて、ウサギなら……!』

 

「それは私も思った」

 

 もちろんウルフたちもかわいいんだけどね。もうほとんど犬みたいなものだし。草原ウルフたちがブラッシングの順番待ちをしているのを見ると、なんかもうすっごくほっこりしちゃう。

 いや、ちょっと待って。ねえ待って。草原ウルフの中に見慣れた白いウルフがまじっているんですが。どう見ても私の相棒なのですが。ええ……。

 

「私のテイムモンスターが、順番待ちにまざってる……」

 

『誰だってかわいい幼女の方がいいからね、仕方ないね』

『テイムモンスターに裏切られるテイマーがいるってマ?』

 

「うるさいよ」

 

 ちょっぴり寂しいけど、まあ、いいか。れんちゃんもシロのことは気に入ってるみたいだしね。

 

「ディアー。背中ブラッシングするよ! のせてー!」

 

 丸まっていたディアが欠伸をして、尻尾でれんちゃんを絡め取った。きゃー、と楽しそうな声を上げるれんちゃんを持ち上げて、器用に背中にのせる。すごい、あんなことできたのか。

 そのままれんちゃんはブラッシングを再開したみたいだけど、ここからじゃよく見えない。

 

「ふむ。れんちゃんが見えなくなったし、配信はここまでかな」

 

『そんな!?』

『もっと! もっと癒やしをください! ラッキー見たい!』

 

 ラッキーか。周囲を見回して探してみると、ブラッシングしていた場所でまだ横になっていた。仰向けになったまま、どうやら眠っているらしい。

 

「ちょっと、つつきたくなっちゃう……」

 

『分かる』

『やめてやれw』

『もふもふだあ……』

 

 これだけでもいいみたいなので、とりあえず今日はラッキーで終わることにした。うーん、撫でたいなあ……。

 




壁|w・)ちょっと短かったので、2時間後に掲示板回も予約しておきます。

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