まだサイトの機能面に不慣れな面が多いです~;;
これ便利だよ~!とかあったら教えて下さると嬉しいです!
それでは、どうぞごゆっくりお楽しみ下さいませ。
彼女――白墨(しらずみ) つづら――はこれからの進退について悩んでいた。
彼女は訳あって追われていた。
今回はどこから嗅ぎ付けたのかいつもより早く見つかってしまった。
前回はなんとか撒いたが今回もうまく逃げれるとは限らない・・・
昨夜入ってきたばかりでまだこの街の地理に疎すぎる。
上手くやり過ごすにはまず協力者なり情報を手に入れる術をつくるべきだ。
どうすべきか悩んでいるとふと――
「…A…」
と声が聞こえた。
伊達にコソコソと生きてきた訳ではない。
一般人は気にも留めないであろうそのワードは
間違いなく自分に対して発せられたものだと彼女は感じた。
それと同時につい反射的に睨み付けてしまった。
すると呆けた顔の少年が二人。
しまったと思った時にはもう遅い。
今の立場的に余計な騒ぎを起こすのは気がひけたのでこの街に入ってからは人と目を合わさないようにしていたのだが…
どうも彼女の目つきは相手にあまりよろしい印象を与えないらしい。
それだけならまだしも目が合うと大抵息をするように口から悪態が零れるのだ。
今も覚えてないが口が勝手に動いた。多分それらしい事を言ったんだろう。
故に大体目が合うとあわててそらされて周りが微妙な雰囲気に包まれるか、路地裏デートのお誘いを受けるかの2パターンだった。
幸いにも目の前の学生達は温厚そうなので後者ということはないだろう。悪目立ちしないうちにさっさと離れるかと踵を反そうとした時だった。
「-(マイナー)…」
聞き間違いだろうか?聞こえてはいけない単語が付随した気がしてつい動きを止めた。
「え・・・なんて・・・?」
咄嗟に聞き返しそうになったが隣の少年が先に聞き返してくれた。
すると聞かれた少年は大きくはないが確実にさっきよりもはっきりとした声量で
「…A-(エーマイナー)っ!」
聞こえた。はっきりと。それも自分に向けて。
それは恐らく現状彼女が最も向けられてはならないワードだった。
なるほど、最近の刺客はわざわざ正面まで来て「私は追っ手です。あなたを殺しに来ました。」と宣言してくれるのか。
アホか。
「ほう・・・?」と自分でも何が可笑しいのか口から出た言葉と表情は現状を笑うものだった。
ただ、表情とは裏腹に彼女の中では焦りが思考の8割を埋め尽くしていた。
だから思考しながら跳んだ。右目が示す最も近い
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
やばい…怒らせた。笑っているけど多分怒っている。
(てゆうか目が笑ってない…)
これが普通の女の子ならなにも口に出したりはしなかっただろう。
だが彼はどうしても我慢できなかった。悔しかった。
全てが完全に調和し合い見るもの全てを魅了する彫刻なのに、
眼の部分だけそこら辺から拾ってきた傷だらけのビー玉を適当にぶち込んであるような…
このなんとも言葉にしがたい勿体無いさが悔しかった。
黙っていれば、よそを向いていれば完全だったのに、と。
だが、だからといって初対面の相手を卑下していい理由にはならない。
どうあやまったものかとユキが考えはじめた時だった。
彼女が跳んだ。
そこからは一瞬だった。
まず、彼女はユキではなく何故か栄太に向かって跳んだ。
そのまま突き出した右手で何かをした。背中越しだったから分からなかった。
栄太が後ろに倒れた、どつかれたのかとかまともに考える間なく彼女の顔が眼前いっぱいに広がった。
ドキッとした。
次いで状況を把握しようと周りを見渡す。
ヒヤッとした。
何故か首元にナイフのような何かがあてられている。
近すぎてよくは見えないが赤黒く、チリチリと肌を刺すような感覚。どー考えても凶器です。ありがとうございました。
とりあえずあの速度で接近されて、今状況をなんとなく理解する暇があるという事
はすぐには殺されないらしい。
「こっち来い」
カツアゲかな?いやいや。
そのままズルズルと路地裏まで引きずり込まれる。
ここでバラされてもまぁ当分見つからないだろうなというほどに人気がない所まで連行された。
彼女が囁く
「どうして私のコードを知っている…?周りにあと何人いる?」
「コー…ど…?何人って何が・・・」
死にたくないので全力で思考を働かせる。
(コード? さっきの発言から…あ、A-をギターコードかなんかと勘違いしたのかな?
私のコード…?Amが得意なのかな?)
だめだった。頭は働いてくれないようだ。考えるほど現状とは外れたマヌケな結論になってしまう。
間違ってもこんなふざけた返しをするわけにはいかないと、ユキがオロオロしていると彼女が独り言を言い始めた。
「いや…やはりおかしい。今まで生身の人間だけで追ってきた事なんてないし、わざわざ目の前に出てくるのもヘンだ…」
この距離なので流石に聞こえない事は無いが、予備知識が全くないので聞こえないに等しい。
(追ってきた…?誰かに追われてるのかな・・・?)
理解できる部分だけで推察して現状を好転しようと試みる。
「あの…誰かと勘違いしてるのでは…ぐぇっ!」
襟を締め上げられ首が絞まる。
「誰が喋っていいとか言った?ん?」
悪化したようだ。そして何故少し楽しそうなのだろう。
「まぁ…確かに刺客の類では無いみたいだな…なら何故A-と言った?」
納得するなら締め上げないでほしかったなと思いながら彼は答える。
「えっと…君の…ランク…です。」
「は?」
「いや、Aが最高ランクで、B,C,D,と続いて…」
持ち前の異性に対するコミュ障っぷりのせいか、現状のせいなのかは分からないが的を得ない説明を始めた。
「…なるほど大体分かった。何かの基準に基づいて見ず知らずの女性を差別するノミ屑以下のゴミカス野郎なわけだな、オマエ。」
「ぐっ……はぃ…」
予想以上に罵倒されたため少し心に亀裂が入りながらもなんとか答える。
すると関心がなくなったのか彼女は踵を反して去ろうとした。
「もういい。私も冷静じゃなかった。こんな
なんとか助かったらしい、ユキはヘナヘナと座り込んで辺りを見渡した。大分時間が経っていたようだ。
ふと気付けば日は完全に落ちて辺りは闇に包まれていた。
「……おい」
「あ、ハイ?」
「なんでついてくる。まさか大概キマッてるランク差別だけじゃ飽き足らず遂に変態鬼畜なストーカー野郎にランクアップしやがりましたか?」
あんまりだ。ここは一本道で帰り道はそっちだから必然的に後を追う形になってるだけである。
色々あり過ぎてこの仕打ち…少し泣きそうになっているユキを尻目に彼女は楽しそうにまくしたてる。
「あ、そーいえばオマエさっき私に対してランクAつけたよな?そのランクってやっぱり容姿基準なワケ?」
「えっと…一概にそれだけじゃねーけど…まぁ、キミの場合はそれ以外に評価要素無かったし・・・」
A-だけどね?と内心思ったが言うと噛み付かれる事必至なので黙っておく。
「ほ~う」といいおもちゃをみつけましたと言わんばかりに笑みを浮かべる彼女。
何故関わるのか、もう放っておいてくれと懇願したい気持ちでいっぱいの彼にとどめの一言
「ロリコン。」
とても刺さる。他の言動が冗談かと思うくらいの盛りまくり暴言大セールだっただけに一言だけというのは…
ガチで言われてるようで刺さる。というかガチで言っているのだろう。
(…A-だけどね?)
釈明の余地がないので心の中でささやかな反抗を試みる。
虚しくなるだけだった。
少し開けた場所に出た。もうこんな歩くトラウマ製造機とお関わり合いになるのはご遠慮したいと本気で思い始め、
少し遠回りしてでも別の道から考えようとここ最近で一番とも思える英断をユキが決意したその時だった。
キィインと、硬質な金属同士が弾き合ったような、普通に生活していればそう聴くことはないであろう音が響いた。
反射的に振り向くと何かがこちらに向かって飛んできた。
それに対してユキが何か認識するよりも速く、目の前の少女が腕を振り下ろした。
反撃を受けその『何か』は金属音を響かせた後、一度距離をおいた。
それは、『犬』だった。
ただ普通の犬と一言で片付けるには少々無理があった。まずデカイ。ドーベルマン顔負けのスケールに思わず足がすくむ。
次に要所を甲冑…のようなもので覆っている。これを飼い主がお洋服感覚で着せているなら実に悪趣味だ。
最後に顔。犬歯を剥き出しにして夜なのに眼は爛々と光っているようにすら見える。どちらかといえば狼といわれた方が納得できるがいくら郊外とはいえここは街中だ。
近くに野生動物が
そこまでなんとかユキが考えた段階で彼女が叫んだ。
「クッソ!結局見つかったのかよ!!!」
悠長に話を聞く間もなく再び彼女に対してまた『犬』が飛びついた。
それを彼女は左手に持つナイフ―先程ユキを脅した時に用いた物だろうか―のようなもので振り払う。
あのお世辞にも機動性に富んでいるとは言えない服からは考えられない速度で獲物を振るう。
だが犬の方も体をひねって器用に狙われている部分に甲冑をあてがい刃を弾く。
「無駄に丈夫に作りやがって・・・ッ!」
彼女がなかなか斬撃が通らない事に悪態をつく。そうして何度か攻防が繰り返されたときだった。
言葉に詰まる
彼の眼前に形を持った死が迫る。犬は一匹ではなかったらしい。
犬が最後の一歩を詰めるために跳躍した。なにも考えることはできなかった。
が、それをお前も邪魔だと言わんばかりに遮る、朱。
耳をつんざくような金属音が響き彼女が犬を弾き返す。
「お前!そこいたら邪魔!!!」
…言われた。
よかった助かった、…いやナニコレ?と彼は死の恐怖で真っ白になった頭で必死に状況を理解しようと試みる。
…理解しようと試みるが現状があまりにも非現実的過ぎて頭が考えるのを勝手に止める。そしてまた理解しようと努める。
このループを3度は繰り返しただろうか、突如何かが弾ける音がした。
直後彼のすぐ側には折れたのであろう亀裂の入った赤黒い刃が突っ立っていた。
「…!!?」
言葉にならない悲鳴をあげる。死にかけたのだと脳が理解すると同時に恐怖で体がすくみ上がる。
「っくっそ!!!ホント使えない!このナマクラっ!」
酸素の足りない熱帯魚のように口をパクパクと動かすのがやっとの彼の元へ彼女が駆け寄ってくる。
突如彼女がユキの手を取った。実は彼にとって身内以外の女性と手をつなぐのは人生初体験だったが、
まだ目を白黒しているため気付く余裕などなかった。
「ほら!オマエの使うぞ!」
「ぇへ…?」
彼が声を発し終わらない内に彼女は彼の胸に拳を突き立てる。
彼は咄嗟に次に胸にくるであろう衝撃に備えて目を瞑った
…が、こない。
「なに・・・これ・・・?」
恐る恐る目を開くと目の前には驚愕した彼女の表情があった。
何を驚いているのだと目線を自分の胸元に向けると…
入っている。手が。
いや、刺さっているといった方が正しいのだろうか、
とにかく彼女の手首から先が自分の胸に突っ込まれている。
「は…はは…」
彼は本日何度目かわからない情けない声を出した。
(あぁ納得納得。いやそりゃ驚くよね?自分の手が他人の胸ぶち抜いたら。世紀末覇者かな?
なにこれとも言いたくなりますよハイ。いや俺が言いたいもん。ナぁニコレ?)
なんて呆けていると彼女はまたキツい表情に戻り、
「使えりゃなんでもいいわよっ!」
赤白い光と共に『何か』を彼の胸から引き抜いた。それと同時に彼も意識を手放した。
手放したハズがすぐさま蹴り起こされた。
どうやら彼女にさわやかなモーニングコールを求めるのは、天地がひっくり返っても難しそうだった。起きたらすべて終わってましたというご都合主義も無いらしい。
「普段なら抜きとり後の気絶万々歳だけど、今はぐーすか
あんまボーっとしてるならあいつらへの撒き餌として使うぞ!!!」
それは困るとユキが飛び起きた時、彼女が携えていたのは先程のナイフではなかった。
あれは…ボウガンだろうか?俗に言うクロスボウというやつかもしれない。本体はあのナイフと同じく赤黒く鈍い光を放っている。
話終わるや否や犬共に向けてトリガーを引く。
――ズドンと重い音が響いた。
音源は間違いなく真横のクロスボウなのだが、本当にこれから放たれたものかと疑問を抱いた瞬間。
犬が爆ぜた。 跡形もなく。
それもまとめて二匹とも。
これには先程ユキを締め上げていた時は飄々としていた彼女も目を丸くした。
「嘘…でしょ…?いくらナマクラだったとはいえ、他の汲血器では傷一つ付かなかったのに…」
しかしそれも一瞬。すぐに表情を戻した彼女はすぐさまユキに駆け寄り言った。
「今のうちに行くぞ!あいつらまともに相手してもウジ虫みたく無尽蔵に沸くからキリがない!走れ!」
「わ、わかった!」
それからどのくらい走ったか分からない。走っていた時間が長かったのか、交戦時間に時間をとられたのかは定かでないが気付けば日が昇っていた。
彼女は言った。
「よーし…結構明るくなって人も大分増えたからとりあえずは安全だろう。」
「なにそれ…あいつらゾンビか吸血鬼かなんかかよ…」
「似たようなもんだろう。まぁ理由は追々話すよ。それよりとりあえず落ち着ける場所どっかないか?」
「えっ、そうだなー…ファミレスとかはまだあいてないし・・・俺ん家なら・・・」
「じゃあそこ行くか。」
「そうだね…ん?」 まてまて何かがおかしい。
「どしたん?」「い、いやどしたんじゃねーよ、なんでナチュラルに家来る経緯になってるんですか!?」
勘弁してほしい。ユキの素敵なプランニング通りに進んだなら今頃、家で安らかな惰眠を貪っているハズだった。
それがどこをどう間違えたのか、このびっくりトラブルトラウマメーカーと仲良く朝帰り?冗談ではない。
某青狸型ロボがいたならタイムマシンで今すぐにでも自分の家なんてほざいた5秒前の自分の元へ行ってぶん殴りたい。
とりあず家は却下しようとユキが振りかえると彼女が言った。
「なんだ?早く行くぞ?」
「いや…それが…」
「…何だ?まさか今更やっぱダメでしたとか言わないだろうな?」
「え…えっと・・・」
「あーつかれたなーっはやくやすみたいなーっはやくやすめないと悲鳴あげちゃうかもなーーーーっ」
「あー!もうわかりました!」
こんな時間に年下の少女(あくまで見た目だが)と一緒にいて悲鳴なんてあげられた日には社会的に殺される。
なかなか自分の武器を生かした
勘弁してほしい。
「ほら、どーぞ。」
「お邪魔しマース!」
邪魔です。はよどっかいってください。
「うわ、せまッ!なんもなっ!日当たり悪っ!」
予想道理の反応だった。そして最悪だった。
「しょうがないだろ…安い一人暮らし用の賃貸なんだから…」
「?お前制服着てたって事は高校生だろ?なんで一人なんだ?」
「実家があんま広い家じゃなくてな…姉と部屋一緒にはできんから俺だけここに住んでんの。」
「ふーん。ま、騒ぎ大きくならずに好都合そうだらかいいけど。」
他にも色々あったがまたいじる種を与えるのが嫌だったので適当に濁しておく。本題に入るついでに話を逸らす。
「さて、じゃあ色々聞きたい事あるけどまずは…何から聞いたらいいんだろう…」
ユキの理解できる領域を裕に超えた範囲で物事が連続して起こったために質問するにしても戸惑う。すると彼女が見かねて助け舟を出した。
「お互いの名前もしらん状態だと話もしにくかろう。
本来なら貴様のようなミジンコ以下の非知的生命体(ロリコン)にプロフィールを明かすなど夜な夜なストーカーの影に怯える事になりそうで日本列島が沈没してもご免だが…まぁしょうがない。」
誰も言えとは一言も言っていない。理不尽さをグっと堪えてユキは話に耳を傾ける。
「私は白墨(しらずみ) つづら と言う。さっきの通り訳あって熱狂的なストーカーから追われている。以後宜しくしなくて結構。」
「…俺は 曇 友希(あずも ゆき)言ってた通り高校2年。まぁ…とりあえずよろしく。」
「なるほど。んでその
なんださくたろうって。とっとこ走り出しそうな響きだ。
一々マトモに取り合っていては話が進まないためツッコミは心までに留めておく。
「今はそれどころじゃないだろ…じゃあ改めてこっちからも質問。なんで追われてる訳?あとあのボウガン…?みたいなの何?」
質問するとつづらは神妙な顔つきになり、少し間を置いて呟いた。
「…そうだな。お前には言っておくべきだろう。」
「何から話そうか…よし、まず私の血液型はA型だ。」
(自己紹介の続きか?)
「お前、血液型に関する『抗原』と『抗体』って分かるか?」
「何となくなら、確かそれがあるから別の血液型の血液を輸血できないとかじゃなかったっけ?」
「そう。ABO型の血液型の分類は基本的にこの『抗原』ってのでされる訳だが、具体的に言うと赤血球の表面上にA抗原があればA型、B抗原があればB型、どちらもあればAB型、逆になければO型に分類される。」
「それと同時に人は自分が持っていない抗原に対する抗体ってのを血漿中に持っていて、
赤血球上にA抗原を持つ人間なら血漿中にB抗原に対する抗体『β』が、
B抗原を持つならA抗原に対する抗体『α』が形成される。
AB型にはどちらもなく、O型はどちらも持っている。」
「んでこの対しあう抗原と抗体が一緒になると凝集っていう反応が起きて最悪死に至る。これのせいで型違い輸血ができないってワケだ。」
「抗体に関する話は一時保留だ。問題は抗原の方。
私は赤血球上に A抗原を持たない。 」
ユキはその言葉の意味が分からなくてつい口を挟んだ。
「?それはA型じゃなくてB型かO型なんじゃ・・・」
「いや、A型で間違いない。私はB抗原も持っていないしO型でもない。
『A抗原を持たないA型』 なんだ。」
ユキはやはりうまく理解できなかった。つづらの話だとその場合はやはりBかO型のハズだった。ユキもとある事情により血液型については少し調べたことがあった。
確かに世の中には稀に『亜血』といって特殊な、それこそA抗原を殆ど持っていないAend等があるのは知っている。だが、A抗原が『全くない』A型など聞いたことがなかった。
ユキが悩んでいるとつづらが続けた。
「厳密に言うとA型ではないのかもしれない。が、私の中には A抗原の代わりとなる特殊な抗原 が存在する。」
「特殊な・・・抗原・・・?」
「基本的な部分はA抗原とほぼ変わらない。血液型もA型として検出される。勿論B抗原はもっていないため私の血漿中には『β』抗体が存在する。」
「が、この抗原、時間が経つにつれ何故かB抗原と同じように
『抗体『β』が反応を起こす性質に変化するんだ。』」
抗体『β』と反応する、つまりは凝集が起こる。
それが意味するものは・・・・・・
「まー、簡単に言うと放置すると『死ぬ』。」
ユキに先程襲われた時とは別の衝撃が走った。
つづらの言い分が本当なら、彼女はこんな所をふらふら出歩いていい体調ではないのだろうか?
それにこの症状がいつからのものなのかは分からないが、先天性のものだとするともうあまり猶予が無いのだろうか?
ユキが勝手に色々考えているとつづらがユキの頭をはたいた。
「いたッ!なにすんだよ!?」
「何をアルミ缶がトラクターに轢かれた後のようなひしゃげた顔をしてるんだ、アホ。」
気付かないうちにユキはあまりいい表情をしていなかったらしい。
にしても心配しての表情だったのにはたいた挙句、その言われは酷い。
「いやだってお前…」
「心配するな。延命というかこれを一時的に回復する方法もあるんだよ。」
すると彼女はおもむろにユキの手を握る。
「っえッ!?な、なに!???」
心拍数が一気に跳ね上がる。突然の事態に声が裏返りながら困惑するユキを尻目につづらは彼の胸に右手を伸ばす。
「次は気絶するなよ?」
そう一言告げるとつづらは手をそのままユキの胸に『沈めた』。
あの時と同じだった。襲われた時、気絶する直前にみたあの光景と。
朱光を輝かせながら沈むつづらの右腕。
一度見たからだろうか、今度はなんとか意識を保てた。
腕を突っ込んだままという何も知らない一般人が見ると気絶必至な状態のまま彼女が告げる。
「これが『鹵獲反応』。対象の肌に直接触れた状態で右腕で胸部に手を向けるとそのまま手が体内に沈む。
沈めると対象がA抗原を有している場合、その一部を私の抗原が取り込む。」
「分かりやすく言うと私の抗原が常にA抗原を消費している。それを補給しているといった感じかな。」
(なるほど、その補給を怠ると抗体βと反応しちゃうって訳か。)
ユキが納得する。それを待っていたようにつづらが話を続けた。
「そしてこの鹵獲反応にはもう一つ特徴が、これは恐らく副産物なのだが…」
そう言いながらつづらはユキの胸から
それはあの戦闘中に見せたクロスボウだった。
「対象の血液が膜を張るように凝固し、形成する。あいつらはこれを『
「ダム…ピール…」
血 を
なるほど、らしい名前だなとユキは思った。
ならば最初に使っていたナイフも恐らく栄太から取り出した汲血器なのだろう。あの犬の形相をした化け物を弾いていたあたり硬度はかなりのもののようだ。
でも何故形が違うのだろうとユキが問おうとした時、心を読んだようにつづらが説明した。
「汲血器は抜き取った人物によって形、性質、硬度が違う。これらはどうもその人物の血中の遺伝子に残る情報…先祖の最も強い感情を基に形成されるみたいなんだ。
遺伝子に残る強い記憶ともなると大概死の記憶みたいで誰から出してもほぼ全部武器の類しか出てこないんだけどな。」
苦笑いをこめてつづらが話す。
「この話しはどうもまだ公けにはされてないみたいでな。この鹵獲反応の性質が欲しいらしくあいつら…
全く笑えなかった。あんな場面を見るまでは、ハイハイ厨二病ご苦労様ですで流せたのかもしれない。
だが実際に見てしまった今、かなりマズい事に足を突っ込んでしまったのではという焦りと、彼女に対する心配とが混ざって気分は最悪だった。
そんなユキにかまう事なく無慈悲に話しは進む。
そしてあいつらはこの抗原にA抗原の欠落した、
A抗原を喰う抗原…『 A - (エーマイナー) 抗 原 』と命名した。
故に、私の追跡名称は…
―――彼女は告げた。彼と彼女の関わった淵源を。―――
Code【A:minor】。
執筆遅れてしまい申し訳ないです><
多忙+普段あまり文字をうたないもので…
こんな更新でも楽しんで頂ければ嬉しいです^^
如何でしたでか?
それではまた次回の更新でお会いしましょう^^ノシ