その夜。
こーこちゃんの部屋でお祝い用のビールを片手に今日の最終戦について語らっていると、視界の片隅に放置されていた携帯電話が微かに震えた。
ディスプレイに浮かんでいる名前は、須賀京太郎。
ここには居ない、けれど紛れもなく本日の主役であろう彼のものだった。
何度か震えてすぐに収まったということは、メールか何かだろうか?
「どったのすこやん?」
「ん。京太郎君からメールみたい」
「ほほう。どれどれ」
「ちょっ、覗き込んでくるのはマナー違反だよ!?」
「まーまー」
「まーまーじゃなくてっ! もう……ちょっとあっち行って見てくるから」
「ちっ」
ヒラヒラと手を振っている辺り本気じゃないとは分かるけどさ。そこで舌打ちってどうなんだろう?
リビングの隣にあるキッチンにやってきて、件のメールを開いてみる。
件名の『夜分遅くにすみません』というのを見るに、緊急の用事か何かだろうか?
嫌な予感というほどではないにしろ、胸にざわめきを覚えつつ開いた本文にはたったの一文。
――今から会えませんか?
それだけが書かれていた。
「……? 祝勝会終わったのかな」
気になって携帯で時間を見てみれば、現在時刻は夜の八時をちょっと過ぎたあたりである。
たしかに高校生が、しかも明日以降に女子個人戦を控えている子が阿知賀側も含めれば合計五人もいる状況で、この時間以降まで馬鹿騒ぎすることはないか。
本格的な祝勝会はおそらく個人戦で宮永さんが勝った後にもやることになるんだろうし。
なんてことを思いつつ、現実逃避をしていても仕方が無い。
これって、呼び出し……だよね?
そう理解して鼓動が高鳴ってしまった時点で、行かないという選択肢は既に私の中には存在していなかった。
「あれ? すこやんどこかに出かけるの?」
「うん、ちょっと。あ、こーこちゃんは飲んでていいよ。ただ帰ってきた時に私に絡むのは止めてね?」
「それはちょっと約束できかねますね~、うへへへへ」
「うわぁ、既に出来上がってたよ……」
果たしてこの状態のこーこちゃんを置いたまま出かけてしまっていいものだろうか?
――ってここ彼女の家なんだから酔いつぶれて眠ってしまったところで別に構わないか。締め出されても最悪ホテルに戻ればいいんだし。
酔いのせいかは知らないが、終始ニヤニヤと笑っている家主に見送られつつ、部屋を出た。
そういえばお酒を飲んでいたのは私も同じ。未成年を前にして酒臭いのはさすがに不味い。
途中で目に付いたコンビニに寄りブレスケア用のタブレットを買ってから、彼が待っているだろう場所へと向かう。
マンションからは少し離れた場所にあるそこには、ここ数週間の間だけで何度も足を運んだ記憶があった。
全国高等学校総合体育大会、麻雀の部。
連日行われている熱戦の舞台となっているその建物の前に。来るべき待ち人を望みながら佇む一つの影がそこにはあった。
「……お待たせ。ちょっと遅くなっちゃったね」
「いえ、そんなに待ってはいないんで」
いつかとは逆。
待たせる側と、待たされる側。あるいは呼び出した側と、呼び出された側と。
かける言葉もかけられる言葉も、ほとんど同じ。けれど発する側は正反対で。
一歩ずつ、彼へと近づいて行く。
街灯の光だけでは二人の姿を映し出すには少しだけ心許ないが、個人的にはそれくらいでちょうどいいかな、と思わなくも無い。
駆けてきたことによる二次的な意味合いでのものではない、頬を赤く染めている感情を覆い隠してくれる為にはきっとそれくらいが適任というものだろうから。
「それよりすみません、こんな時間に呼び出してしまって……」
「ううん、構わないよ。それより、まだきちんと言ってなかったよね」
本題に入る前に、言っておこうと思った。
そうしなければ、この後の展開がどうであれ、もう言えなくなるような気がしていたから。
「個人戦、優勝おめでとう。すごく感動した」
「ありがとうございます。師匠の……健夜さんのお陰ですよ」
「カメラの前でもそう言ってくれてたね。素直に受け取りたい気持ちももちろんあるんだけど、それでもやっぱり、今回の勝利は京太郎君ただ一人のものだと思うんだ」
「そんなことは!」
「ううん。去年の時も思ったけど、私はやっぱり、人を教えることには向いてないんじゃないか、って。口にはもちろん出せなかったけど、でも……ずっと、思ってたんだ……」
思わず声が震えて、尻すぼみに小さくなってしまう。
麻雀が強くなったのは私のお陰なんだ、なんて。そんなおこがましいことを言える程、私は自身のやってきたことに自信を持てる訳じゃない。
こと麻雀という競技の上において私は強者であると同時に、欠落を抱えた存在でもあるのだから。
それは、負ける側の気持ちを理解できないという、教えを授ける師としてはあるまじき欠陥。敗戦のたびに無神経な態度や言葉で彼を傷つけてきたはずだ。
「でも、京太郎君はそんな私についてきてくれた。私はね、それがなによりも嬉しいの。だから私のほうからこそ言いたいんだ。ありがとう――って」
「健夜さん……」
それでも、彼は一途なまでに懸命な努力を重ね、そんな私についてきてくれたのだから。
目標に向けて頑張ってきた彼の姿は眩しすぎるくらいで――私の側からありがとうと感謝を述べることこそあれど、彼からそれを贈られるのは……なんていうか、申し訳ない気分にすらなってしまうから。
これはもう性分なんだろうと思う。
そして、だからこそ考えなければならない事があった。
いまの私の心の中に満ち溢れているのは、目標へと辿り着いたという充足感たりえるもの。それと同時に一抹の寂しさが混在している状態だった。
京太郎君を全国の舞台で戦えるまでに成長させることこそが師としての私に課せられていた課題であり、契約だった。それをクリアした今――もしかすると私は、この人の師匠であるための理由を喪失してしまったのではないか?
心の内に巣食っている、そんな疑問。
無論、心情の大半ではそんなことはないと信じたいし、信じているつもり。でも……肝心の京太郎君に、そう思われているのだとしたら。正直言って今の私では耐えられそうにない。
これから先、これまでと同じ関係でいるためにも、きちんと彼の気持ちを聞いておかなければならない。師と、弟子としての関係を続けるためには――避けては通れないことだから。
「あのね、もしも……だよ? もしも京太郎君が私との師弟関係をここで終わりにしたいって、そう言うんなら、私……」
「えっ!? ち、ちょっと待ってくださいっ! どうしてそういうことになるんスか!?」
「だって、私たちが師弟になるきっかけだった目標は今日達成できたんだし、もう京太郎君は私がいなくても立派に一人でやっていけるくらい強くなって――」
「――っふざけたことを言わないでください!」
「――!?」
滅多に聞いた事のなかった京太郎君の怒鳴り声に言葉を遮られてしまい、つい呆然としてしまう私。
あれ、なんで京太郎君はそんなに怒っているんだろう? という疑問が頭の中に過っていき、今までの自分の発言を鑑みて見た結果――。
あ、これもしかして私が師弟関係を解消したがっているように思われてる?
慌てて訂正をしようとするものの、動転しているせいかまともに口が回ってくれない。続きの言葉まできちんと聞いてもらわないことには、私の真意が一切伝わらないというのに。
「あ、ち、違――」
「さっきから黙って聞いてれば……いいですか!? 俺が緑一色和了って今日優勝できたのは全部ぜんぶぜ~んぶ、健夜さんのお陰なんだよ!」
「――へっ?」
「あの時俺、躊躇した! 發が当たるだろうって確信はあったけど、だからってここでせっかくの勝ちの芽を捨ててしまってもいいのか、って本気で悩んだんだ」
「――……」
そういえば、で思い出す。あの時確かに、京太郎君は躊躇していた。
それでもきちんと正しい方向を選び取れたのは、偏に彼の慧眼によるもので――私は一切関係なくない?
「あの時もし、相手の当たり牌が發じゃなくて別の牌だったら、勝負に行ってその時点で俺は振り込んで負けてましたよ。対面のヤツの待ちが發だったから……あの時ツモってきた牌が發だったからこそ、俺は勝者になれたんだ」
「……え? ど、どうして?」
「忘れたんですか? 俺が前に宮守でトシさんに能力を見てもらった時のこと。俺、あの時教えてもらいましたよね? 健夜さんの能力が何にカテゴライズされているのかって」
「……あ」
呆れたような表情の京太郎君に言われて思い出す。
てことはもしかして、あの時京太郎君が發を取り込んで緑一色に切り替えた原因って――私を象徴とする牌だった、から?
真意を伺うように彼の瞳を覗き込んでみる。
ふいっと逸らされた視線と僅かに赤くなった頬が、その推測が正しいんだということを教えてくれていた。
頬に集まる熱が増し、再び心臓がバクバクと音を鳴らし始める。ああもうこの大事な時に五月蝿いな、いっそのこと止まってくれてもいいんだぞ私の心臓。
――あ、ごめんやっぱダメ。今この時に死んでしまうのは流石に困る。
そんな場違いなことをパニクった頭でぐるぐると考えていると。
真剣な表情を携えた彼が、その視線を私のほうへと向けてきた。
「俺にとって健夜さんは師匠であって、それ以上に大切な人だったから。だからあの時、どうしても切れなかった――いや、切りたくなかった。俺を勝たせてくれる存在がもしいるとしたら、健夜さん以外に居ないって分かってたから」
「京太郎、くん」
「その気持ちは優勝できた今でも変わってません。それどころかもっと強くそう感じてるくらいなんですよ?
だから――そんな哀しくなることを言わないでください。俺にはまだ、貴方に教えてもらいたい事が山ほどあるんだ」
「……っ、うん」
思わず溢れ出す涙が、熱くなりすぎた頬を少しだけ冷ましてくれる。
そんな私を優しく抱きしめてくれる京太郎君。またあの時とは逆の構図になってしまった。
夜とはいえ真夏の今、大柄の男の人に包まれているというのは暑苦しい状況ではあるけれど。
急上昇して行く体温とは裏腹に、とても心地のいい気分に満たされている私が居て。離れたくない、と思ってしまった私は密かに背中に回した腕に力を込めた。
「今すぐは無理かもしれませんけど……俺、できれば将来はプロになりたいって思ってるんスよ。やっぱり麻雀好きだし、実力の片鱗くらいは今日示せたかな、って」
「京太郎君なら、なれるよ」
「師匠にそう言ってもらえるのは自信になりますね。今から楽しみになってきた」
「同じチームになれたらいいのに」
「つくばでチームメイトになるんですか。それもいいかな」
「そうなったらまた蓮根料理作ってあげる」
「今度はタコスに挟んであるのじゃない、正式なやつが食べてみたいです」
「遠征で色んな所に行けるかもしれないね」
「宮守に行った時みたいにっすか。今度は福与アナは留守番かもしれませんけど、それも楽しそうですね」
「それまでには白水さんたちとの決着も付けておかないと」
「龍門渕さんなら声をかければ文字通り飛んで来てくれると思いますよ。自家用ジェットで」
「ふふっ、そうだね――」
涙が止まるまでの間、色々な事を話したと思う。
今日までのこと、今日の試合の最中に考えていたこと。思い通りにいかない展開への不安だったり、逆に上手く嵌まった場面での自信からくる余裕だったり、教えてくれた話の中には色々な感情の彩が渦巻いていて、そのどれもが心の中に優しく響いて来るようだった。
二人で居られるからこその、至福の時。
そして、叶うならばこれから先もずっとこのままで――。
「……」
「……」
そう思ってしまったら、もう止まらなかった。
少しだけ緩んだ腕の中、濡れたままの顔を上げる。
瞳と瞳がぶつかって、言葉は自然と口から漏れて空へと刻まれた。
「――好き、なの」
何時からなのかは、もう分からない。でもずっとそうだったような気もする。
返事を聞くのが怖い。こんなにも心が躍り、こんなにも心が怖気づくことがあるなんて思いもしなかった。
見つめあう視線は、逸らさない。彼の瞳がずっと見続けてくれているから。
やがて、ゆっくりと京太郎君の唇が開かれて――。
「俺も。あなたのことが好きです」
その一文字一文字の意味を脳が理解して、驚愕に瞳が開かれていくのが自分で分かる。
師匠として慕われていたのは分かっていた。でも、女性としてどうなのか――といわれると、京太郎君にとっては範囲外だとずっと思っていたのに。
年齢にしてもそう。スタイルにしても、彼好みにはほど遠いものがあるし。
自分から告白しておきながら、信じられない風に彼の瞳を凝視し続けている私を見てか、京太郎君はさも可笑しそうに笑っだ。
「自分でもどうしてか分かんないんスけど、もう自分でもどうしようもないくらいこの手をずっと離したくない。それくらい貴女の事が好きなんです」
「私、もうおばさんだよ? いいの……?」
「姉さん女房は金の草鞋を履いてでも探せ、って昔の人は言ってましたね。正直もったいないくらいだと思います、俺なんかには」
「もう……なんか、なんて言わないで。私は君が――京太郎君だから、好きになったの。だから……」
「健夜さん」
「あ――」
言葉はもう必要ないと言わんばかりに、一層強く抱き寄せられる。
それがごく自然な行為だと理解して、少しだけ背伸びをしながら彼の求愛を受け入れた。
唇の触れ合うその感覚が、頭頂からつま先まで続く身体のすべてを宙に舞い上がらせるほどの衝撃を与え、頭の中を真っ白に塗り替えてしまう。
抱きしめられている腕から伝わる温もりと、少しだけ震える唇の感触と。
改めて、思う。
彼を好きになって良かった、って。
満月には未だ満たない上弦の月が見守る中で――二人の影はいつまでも、一つの線のまま重なり合って揺れていた。
-epilogue-
「さて、今年もやって参りましたインターハイ女子団体戦Bブロック準決勝! 解説はあの一躍大騒動を巻き起こした交際報道から早二年、半年前についに結婚して幸せ満載、小鍛治改め須賀健夜プロ、実況は福与恒子でお送りしますっ!」
「よ、よろしくお願いします」
いつもと同じハイテンションで、のっけから全開なこーこちゃんの声を聞きながら。
手元にある資料をパラパラとめくって対戦校四校について眺めていると、
「そういえば須賀プロ、なんでもこのたび第一子となるお子さんをご懐妊されたとか! いやぁ、おめでとうございます!」
「――ぶっ!?」
放送開始初っ端から盛大な爆弾を放り込んできた。
「ちょ――そ、それまだ内緒っ! っていうか京太郎君にもまだ言ってないのになんでこーこちゃんが知ってるの!?」
「えっ? 旦那さんにまだ言ってなかったの?」
「だって今ちょうどU-22世界選手権で海外に……って違うから! 誤魔化されたりしないよ!?」
「えへへ」
なにがえへへだなにが。いったいどこからそんなネタを――ハッ!?
「ま、まさか……お母さんから!? 直になの!?」
「さあそうこうしているうちに注目のBブロック準決勝先鋒戦、前半戦の開始ですっ! この対局での注目選手は数年ぶりに全国大会へやってきた島根県代表の――」
「ちょっと!? 勝手に爆弾放り込んどいて今度はスルー!?」
いつまで経っても変わらない日常というのは確かに存在していて。
私と彼女、旧姓小鍛治健夜と福与恒子はたしかにその象徴であったといえる。
私が須賀健夜となっても、お腹の中に赤ちゃんが宿ったとしても、たとえ出産した後でもきっと私たちの関係は変わることなく続いていくのだろう。
親友と呼べる存在がほとんどいない私にあって、彼女だけは、きっといつまで経ってもこんな感じで隣にいてくれるのだと。
そんな風に信じられる、素敵な関係。
そんな中でも、たしかに変化している関係というのがある。
私と彼、旧姓小鍛治健夜と須賀京太郎はその最たるものであったといえる。
出会った当初は取材対象。彼の苦悩を知ってからは麻雀の師として。
触れ合い刻んでいく時間の中で、いつしか私は、彼のことを好きになってしまっていた。それは彼も同じだったらしいけれど。
それまで異性に対する感情を募らせたことのない私にとって、それはまさしく初恋だった。
そんな私は今、長年慣れ親しんできた苗字を変えて、須賀健夜となって最愛の人の隣で幸せを享受していたり。
変わっていく関係――その象徴たる証の指輪を左手の薬指に嵌めたまま、私は今も変わらぬ日常の中で生きている。
-了-
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■余禄@如何にして彼は栄光を掴むに至ったか
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翌々日の女子個人戦の終了を以って、宮永咲は姉の成し得なかった夏の個人戦三連覇を達成した。
小鍛治健夜の再来で後継者とすら呼ばれるようになった彼女は、京太郎君の隣でぱちぱちと手を叩いている私を見て困ったような笑顔を見せていたのが印象的だった。
別にアラサーになるまで結婚できないって言われてるわけじゃないんだから、その目で見るのは止めて欲しい。
「それじゃ、グラス持ったわねー? 見事、清澄高校二連覇達成&須賀くんと咲の個人戦優勝おめでとうってことで、かんぱ~い!」
「「「「かんぱ~い!」」」」
グラスを片手に音頭を取るのは、開催期間中ずっと自腹で応援にやってきていたらしい長野在住の大学生、竹井久である。
他にも染谷さんとか阿知賀の関係者御一行様とか鶴賀の東横さんとその応援にやってきた旧鶴賀の面々とか、ほぼ無関係とはいえ色々と見覚えのある子たちが所狭しと並んでいたりするのだが。
インカレの開催と重なっているため、そっちで解説やっているはずの豊音ちゃんと、大会参加組の旧宮守の子達がこっちに来られないのが些か残念ではあるけれど、それを踏まえても大所帯なのは間違いない。
そんな中で、特別ゲストとして迎え入れられた私とこーこちゃんは、何故だかお互いが端っこと端っこに分けられて座らされていたりする。
私の隣には京太郎君、こーこちゃんの隣には竹井さん。あの二人、確実に何かを企んでいるだろうこの配置である。
それだけならまだしも。
「そうそう。例のアレさ、私も見てたよ? 小鍛治さんもけっこうやるもんだね」
「うっ……」
「いやぁ、あれは一人身には目に毒だったよね~。知らんけどさ~」
「ぐぬぬ」
テーブルを挟んで向こう側、目の前には赤土さんが、その隣には何故か咏ちゃんまでいる始末だ。しかも話題は間髪いれずに私の恥部を容赦なく攻め立ててくるものだし。正直泣きたい。
「時に京太郎少年や」
「は、はい。なんでしょう三尋木プロ」
「小鍛治プロの胸の感触はどうだった? この人こう見えて実はけっこう着痩せするタイプなんだよね~、しらんけど」
「ちょ、咏ちゃ――」
「すげー柔らかかったです!」
「きょ、京太郎くん!?」
「おお、素直でよろしい」
「よろしくないよ!? っていうかアルコール入るの早っ!」
ケラケラと笑っている咏ちゃんは、手にしていたビールの中ジョッキが既に空になりつつある。
未成年がほとんどなんだからちょっとペース考えようよ、大人たち。
「ったくもう……京太郎君も変なこと答えないのっ」
「す、すみません。つい素直な感想が口からポロッと」
「――っ、す、素直な感想ならしょうがないかな、うん。でもあんまりそういうのは人には言わないでね、恥ずかしいから……」
「小鍛治さん、もうすっかりやられちゃってるんだなぁ……なーんかイメージ違うけど、ま、こっちのほうがトラウマ出てこなくていいか」
「そんなこと言って、赤土さんとはリーグで何度もやりあってるじゃない。全部私が勝ってるけど」
「くっ……そりゃまぁそうなんだけどね。って灼、どうした?」
二人で話をしていると、咏ちゃんの向こう側から鷺森さんがやってきた。
赤土さんと会うの久しぶりなのかな?と思いつつその様子を眺めていると、鷺森さんは咏ちゃんの代わりに赤土さんの隣に座って、じっと京太郎君のほうを見た。
「鷺森さん? どうかしたんスか?」
「試合見たよ。あの緑一色、すごかった」
「あ、ありがとうございます! でもあれはさすがに出来すぎッスよね」
あははと照れ隠しに笑う彼を見ていたら何故だか胸がキュンとなった。
おかしいな。私ってこんなキャラじゃないはずなんだけど……。
もしかしたらお酒が回ってきたのだろうか。まだ半分しか飲んでないし、そんな訳は無いはず。うーん。
「正直な話、赤5索を切ったところで諦めたかなって思ったけど……それで、あの時のことで一つ聞きたいことがあって」
「聞きたいことですか?」
「ああ、それは私も。でもたぶん灼と同じことだろうから、任せようかな」
「ん。あのね――あの時發を切らなかった理由、教えてほし……」
ぴくっ。
私が一人で首を捻っている間に、鷺森さんと京太郎君との会話は核心部分へと進んでいたらしい。
それを問いかけられた京太郎君はというと。
何故だか落ち着きを無くした様にそわそわとし始め、そのせいか京太郎君より向こう側の清澄勢と阿知賀勢も何事かと耳をこちらに傾ける始末である。
しかも、話を聞き及んだと思わしきこーこちゃんがよりにもよって余計なことを言い始めた。
「あー、あれねー。私も実況してて避けたのはナイスだけど諦めたんかい!って思ってたんだけど、そうじゃなかったんだよね? すこやんもなんかそんな風なこと言ってたし」
「小鍛治プロが、ですか?」
話に食いついてきたのは原村さんだ。
「んー、なんかね。マイクが拾えないくらい小さな声で、あれなんつってたっけ……えーと」
「こっ、こーこちゃん? 思い出せないなら言わなくていいと思うよ?」
「――あっ、そうそう! 發は京太郎くんに勝利を手繰り寄せるための大切な一片だから手放しちゃダメ、とかなんとか」
「なんでそうはっきり覚えてるかな!?」
「勝利を手繰り寄せるための……」
「……大切な一欠?」
部屋中の視線が一気にこちらへと集中する。
京太郎君にはそのフレーズだけで先日の夜のことを思い出してしまったのだろう。頬が少し赤みを帯びてきているように見える。
なんて冷静に構えているフリをしている私も同じで。すぐにでも顔が真っ赤になりそうだったので、お酒を飲んで誤魔化すことにした。
「たしかに、結果的にあの対局は發が決め手になった訳ですけど……では、小鍛治プロはあのような展開になると、あの時点で気付いていたのでしょうか?」
「うっ、うん。まぁ、京太郎君が勝つにはそれしかないだろうな、とは思ってた、かな」
これは別に、暗喩が云々というのは別にした、理論的に根拠のある話である。
發を抱え込まなければ京太郎君の振り込みで負けが確定したあの場面。
生牌の三元牌をあのタイミングで引いてくる、というのはそれが即ち能力と不運のコンボによって取り込まれた相手の当たり牌だろうということは私たちの中では確信めいたものだった。
しかしあの時点で、京太郎君は逆転手となる倍満クラスの手を既に揃えていたわけで。
能力に関して詳しく知らない一般的な視点からすると、逆転優勝のためにはあえて勝負に出る必要のあった場面、ともいえる。
だけど、当たり牌と分かっているものをむざむざ捨てて負けるというのはアホのすることだ。いや、別に最後に振り込んだ彼のことを言っているのではなくてね。
となれば、勝つためには發をなんとか取り込んだ上で手を揃え直さないといけないし、そうなるとどうしてもこちらの聴牌を一度崩さなければならない。
トップの対面が聴牌している状況で、手をあえて遅くする。焦る気持ちをぐっと堪えてそれを選択する必要が、あの場面ではあったのだ。
もっとも、私から見えている限りでは対面の当たり牌は發一枚を除きすべて京太郎君が握りつぶしている状態。ここで發を出さないのであれば振り込む危険性はほぼなかったといえたけど。
さて、そこから手を作り直すとして、総合で一位を取るためには倍満以上の手が必要だった。
發を持ったままでは清一が混一にまで下がり、断ヤオも消える。あの時点で倍満以上に仕上げるために一番現実的で有用そうだったのは、どう考えても緑一色しか選択肢に浮かんでこない状況。
しかも聴牌に持っていく前に他家から最後の一枚が出てきた時点ですべてが終了という、非常にギャンブル性の高い状態で、だ。
だからこそ、上家から即座に索子の3が飛び出した時、京太郎君は確信を込めてこう思ったに違いない。
――やはりあれこそが、自分が勝つためには絶対に必要な一打だったのだ、と。
「發が超一級の危険牌ってことは引いた時点でもう分かってましたんで。どうしても切るわけには行かなかったっていうのがあったんですよね」
「ですが京太郎くん、あの場面で5索が完全な安牌というわけでもありませんでしたよね? 捨て牌からすると決して安牌というわけではなかったはずですが」
「あー、まぁ。たしかにそこだけ見れば和の言うとおりだけどさ。対面が聴牌したのは雰囲気で分かってたし、發が当たりってことなら俺のあの手牌で5索も相手の当たり牌なんて事はまずありえねーだろ。
つーか和、お前そこんとこちゃんと分かっててあえて言ってるな?」
「ふふっ、さすがは京太郎くんですね。ではマホちゃんは今の彼の見立てがどうしてそうなるのかがきちんと理解できていますか?」
「えっ? あ、えーと……」
静かに聞き入っていたはずなのに突然話題を振られ、目を丸くして視線を泳がせるその表情からは、素直に「分かりません」と読み取れた。
救いを求めて向けられたそれに、小さくため息を吐く私。
お酒でちょっと唇を湿らせてから、続きの解説を引き受ける。
数牌のみでの多面張というのは、待ちの形が複雑怪奇に絡み合うこともあってなかなか読み通りというわけにはいかないものだ。
ただ、この話の大前提として、字牌の發が当たり牌の一つであるということ。
雀頭の単騎待ちならば他の牌は全て安牌になるわけだし、仮に發が対子状態にある多面張での待ちというのであれば、5索を河に切る際に
{5}{5}{發}{發}
{2}{2}{2}{3}{4}{發}{發} or {6}{7}{8}{8}{8}{發}{發}
{3}{4}{5}{5}{5}{發}{發} or {5}{5}{5}{6}{7}{發}{發}
意外かも知れないけれど、この形に限られるのだ。
京太郎君の手牌には2索が2枚と5索が2枚、さらには8索が3枚あった。上の双ポン待ちはともかくとして、この時点で四つの三面張に関してはまず準備段階から成立が不可能であることが判るだろう。
そして、プレイヤーの京太郎君側からは直接見えていなかった情報ではあるけれど、下家の子の手牌の中には567索の順子が一つ存在していた。5索を一枚ここで消費している以上は、対面の手に5索の対子が存在しているはずが無い。
京太郎君はおそらくその事実を、それまでの下家の捨て牌、視点移動と理牌の癖なんかの情報からきちんと察していたのだろうと思われる。
故に彼の視点からいえば、5索はある意味で完全なる安牌だったというわけだ。
ちなみに、仮に聴牌していない状態の下家が動いたとしても、できることといえばせいぜい赤ドラ食い換えのチー止まりだっただろうし、それくらいなら別に問題無かったことも添えておこう。
「ふわぁ、あの一瞬の中でそんなことまで……京太郎先パイはやっぱりすごいです!」
「まあその辺の読み方ってのは師匠からも和からも散々っぱらに叩き込まれたからなぁ。でもあの場面でどっちかを絶対に切らなきゃいけないってんなら俺は迷わず5索を切ったと思うぜ?」
「確実に当たるものか、当たるかもしれないものか、選ぶなら当然そうなりますか……それだけ發が当たり牌だっていう強い確信があった、ということですね」
「まぁ確信そのものに関しては勘としか言い様が無いんだけど、そういうこったな。っていうような理由ですけど、鷺森さんは納得いきました?」
「ん。少しまだ気になるところはあるけど、だいたいは」
「ねえ京ちゃん、私からもいいかな? 赤じゃないほうの5索も持ってたのに、どうして赤から切ったの?」
「えーと……しいて言うならありゃ竹井先輩の真似、だな」
「ん? 私の真似ってどういうこと?」
「部長の好きな悪戯みたいなもんッスよ。他家を引っ掛けるための囮と言うか、撒き餌というか。あんだけ迷ったあとに赤5索を切ったとなれば、相手も油断するんじゃねーかなって」
「ああ、なるほど。わざと赤から切ることで他家……っていうか上家から索子を引き出しやすくしたってことね?」
「まんまと食いついてくれたんで正直助かりましたよ」
ニヤリ、と竹井さんに向けて笑う京太郎君。それ以上そっちに行ったらいけない、戻れなくなる。
「んでもさー、須賀くんあの時点で誰かから發が出てくるかもって思ってたの?」
と、今度は阿知賀勢からだ。もぐもぐとつくね串をほうばりつつ高鴨さんが問いかける。
「ま、普通は出てこないよな。山に残ってれば、って感じで待つくらいで」
「だよね? でも私には須賀くんは上家が發を出すって確信してたように見えてたんだけど――」
「うーん、確信してたってわけじゃないぞ? でも下家から出てきたら負けちまうし、どうせなら自摸るか上家から出てきて欲しかったってのはそうだけど」
「小鍛治プロはその点、どう考えてたんですか?」
「私? 私は京太郎君が鳴いた時点で上家から出てくるだろうとは思ってたよ」
「「「「「えっ?」」」」」
キョトンとした視線をほぼ全員から向けられる。そんな可笑しなことを言ったつもりはなかったんだけど。
「いやだって私はほら、上家が發を持ってたの見て知ってるから。京太郎君の能力が解除された時点で上家もすぐ大物手を聴牌するだろうな、とは思ってたし」
「え? どうしてですか?」
「それを話すとなると能力についてから話さないとダメなんだけど……聞きたい?
原村さんなんて二年近くかかっても京太郎君のオカルトを信じてくれなかったから答えなんて分かりきってる気がしなくもないけど」
「当然です。オカルトなんてありえません」
「うっわぁ、和ってまだそう言い切れるんだ。三年間ずっとあのオカルトの温床清澄で麻雀してたくせに……なんか一周回って尊敬しちゃうわね」
「何を言っているんですか。憧だってオカルトなんて信じていないでしょう?」
「え? いや、私はなんていうか……オカルトだらけでむしろ困ってるわよ。つか阿知賀だと黄金期のメンバー私以外全員そんな力持ってるしっ!
ドラばっか掻き集めたり赤い牌ばっか掻き集めたり筒子ばっかり掻き集めたり……しずに至っては深山幽谷の化身とかなんなんだっつーのよまったく」
「偶然です。全ては確率の偏りに過ぎないんですよ」
「宮永さんの嶺上開花での和了率を知っててそう言い切れる和の将来が心配だよ、私はさ」
呆れ顔でそう零すのはかつての師であった赤土さんだ。
私もここまで来ると君自身がもはやオカルト筆頭だよ、って言ってあげたくなってしまうけど……まぁそれはいい。
「コホン。話を元に戻してもいい?」
「あ、ごめんなさい。どうぞ」
「うん、ありがとう。原村さんは映画でも見てる気分で聞いてくれたらいいから。
えーと、阿知賀の子たちは京太郎君が門前だと全員自摸和了できなくなるってことは知ってる?」
「知ってます! 合宿とか遠征とかで何度も打ったことがありますから!」
「そっか、そうだよね。じゃ、鳴いたらどうなるか知ってる子は?」
「……自摸和了できるようになる、じゃないんですか?」
「半分正解だけど、それじゃ不完全なの。ええと、京太郎君が今まで堰き止めていたモノが一気に放出されちゃうって言うのかな。つまり相対的に相手側に有効牌が入りやすくなるってことだと思ってもらえると」
「え、でも下家も対面の人にもそんなことありませんでしたよ?」
「単純に考えると分かるけど、対面のあの子の場合は当たり牌も伸びシロ部分も両方既に握りつぶされてたから。下家の子の場合はオリに回ってて手遅れだったし、だから入り込む余地が残ってた親の子にいい流れが集中してるように見えたんだろうね」
「ああ、なるほど……」
堰き止められていた流れが急に解放されて、水位の低いほうにどっと流れ込んでくるイメージだろうか。
つまり、いい流れが集中すれば自然とツモも良くなってくる訳で。
上家の手がその勢いのままぐんぐんと伸びていき、結果的に大物手となりすぎて不要牌の發を手放さなければならなくなった。
以前、取材で訪れた際に行った宮守での対局でも、京太郎君が鳴いたことで同じような現象が起こったことがあるのを私は知っていて。
無論あの頃の彼にとって、それは単純にデメリットでしかなかったわけだけど。
しかし――今回はそれを逆手に取った形となった。
能力に拘りすぎて、それを捨てきれない打ち手は山ほど居る。それを適切な場面でひっくり返せるかどうか、それこそが真のオカルト雀士として上位に至れるかどうかの境界線だと私は思う。
そして、あの土壇場で京太郎君はその一歩を踏み出して見せた。
彼もまたそのことをきちんと理解していたからこそ、あの場面であえて防御の要であったはずの自身の能力を解除することを選択したのだろう。それは自分の能力の特性と、それが齎すメリットとデメリットをきちんと把握した上で、能力を自分の意思の中できちんと使いこなしたということでもある。
以前私が言った「能力に振り回される事の無い打ち手になって欲しい」という願いを、彼は忘れずに覚えておいてくれた。それだけでも師匠としては鼻が高い。
そして、だからこそ、京太郎君が倍満を捨てて緑一色を選んだあの時点で、おそらくいずれ上家が發を切ることになるだろうことが私には分かっていたのである。
「――とまぁ、そういった理由でね。なんとなく發が決め手になるだろうなって思ってたわけ」
「ほー……」
大半の子が尤もらしく説明したそれを素直に受け入れて感心してくれている中。
本来ならばいるはずのなかった合法ロリ……じゃない、咏ちゃんがぽそりと口を滑らせる。
「あー、そいえば小鍛治プロは能力發なんだっけ。なるほど~、そりゃ京太郎少年もあの場面で發は捨てらんないよね~」
ぎくっ。
大げさに肩を震わせるのは、私と京太郎君の二人である。
「……ん? どういうことですか三尋木プロ?」
「私も詳しいことはよくわっかんねーんだけどさぁ、なんでもその筋の関係者とかってオカルト能力者を選別するのに符号として字牌を使ってるらしいんだよね~。
ほれ、幼稚園でも花の種類とかで組み分けしたりしてるっしょ? なんかそういうの」
「あわわわわわ咏ちゃん、飲み物もうないよね!? ほらなにか注文しなきゃ!」
「おっとと、まぁまぁ小鍛治さん。いいからいいから。三尋木さん、それで?」
いつの間に背後に回っていたのか、ぐぐっと口ごと身体を押さえ込まれてしまう。
赤土さんはけっこう身長が高いので、ちみっちゃい私が多少抵抗してもそうそう抜け出せるものでは無い。
ああそこのこけし少女や、羨ましそうに見ているくらいならいっそ助けていただけないだろうか?
そんな無言の訴えも届くことはなく。お酒で口が滑らかになっていて、かつ得意気になった咏ちゃんはずんずんと秘密を漏らしていく。
「たいていの能力者は風牌で分けてるらしーんだけど、小鍛治プロとか私みたいになんかよくわっかんねー特別な能力だった場合には三元牌が使われるとか言ってたかな~。詳しいことは知らんけど」
「ふむ、つまりその符号というか、組み分けでいうところの發に小鍛治プロは分類されてるってことでいいんでしょうか?」
「ま、そーゆーこったね~」
「「「「「ほほー」」」」」
ギラリと輝く少女たちの瞳。光りすぎてて怖いよ君ら。
「なるほどなるほど、なるほど~。つまり須賀くんが發を切らないって言ってたのは――」
「小鍛治プロとの絆を信じた結果だった、ってわけだ」
「あったか~い」ポワポワ
今現在、物理的に暖かいのはむしろ赤土さんに抱きかかえられている上に頬が上気している私のほうなんですけども。
「ちょっと羨ましい話ではありますね。それだけ強い絆があるというのは」
「うん、そうだね。私が嶺上牌を信じてるみたいに、京ちゃんは小鍛治プロを信じてるんだね」
「咲ちゃん、それはちょっと違うと思うんだじぇ」
当の本人たちをそっちのけで盛り上がる女子高生及び女子大生たち。
やばい。いい感じでお酒が回ってきているせいか抑止力がまるで働いていない成人組には、もはやあのパワーを止められる程の常識は持ち得ないだろう。
せめて貝になろう。
貝のように噤んでいさえすれば、からかわれた挙句に余計なところまで探られるようなことになりはしまい。
――そんなふうに思っていた時期が、私にもありました。
打ち上げの名目が『清澄団体二連覇達成、須賀君宮永さん個人優勝おめでとう』というものから、『小鍛治プロ&須賀くん、祝!交際スタート』という、顔から火が出そうなほどこっ恥ずかしいものへと換えられるのは、そのしばらく後のことだった。
――というわけで。
これにて小鍛治健夜生誕記念特別恋愛成就編は終幕にございます。
最終話と銘打ってはいるものの、もちろんこれからも本編やら番外編は普通にまったりと続いていくわけですけども。
この『すこやかふくよかインハイティーヴィー』としての物語の終幕はここに向かうんだよ、という意味であえてそう付けさせて貰いました。すこやん末永くお幸せに!
さて。次回からはようやく本筋の白糸台編へと戻る予定です。
お待たせしてしまった皆様には申し訳ございませんが、今しばらくお待ちくださいませ。