ジンジンと肌に突き刺すような日差しが世界を包み込む、八月。
仲間と共に駆け抜けたあの夏の思い出たち、あれから幾度か目のそれが過ぎ去っていき、早いものでもう十二年もの歳月が流れようとしている。
明日から始まる男子団体戦を皮切りに、女子団体戦、男子個人戦、そして女子個人戦が行われることになる試合会場を前にして。
「ついに始まっちゃうのか。あの子にとって、最後の――」
――インターハイが。
そう呟いた私の囀りは、風に溶けて消えていく。
今年は女子部だけでなく、男子部の解説もやって欲しいと頼まれた。
私の相方となるのは毎度おなじみ福与恒子さんで、私たちのほかにも幾つかのプロとアナウンサーが組んでローテーションで実況解説を行うことになるそうだ。
私たちが解説することになるのは、まずは男子団体戦Bブロックの二回戦。次いで女子団体戦のAブロック準決勝、決勝。男女共に個人戦最終日本選の午後からの部を引き受けることになる。
わりと働きっぱなしになる気がしなくも無いが、この時期はもはやそういうものだと諦めるしかないだろう。
せめて男子個人の日だけでも休めないかと打診してはみたものの、どうしてもそこだけは引き受けて欲しいと編成部長さん直々に頭を下げられては断る術を私は持たなかった。
「ほい、コーヒー」
「ありがと」
こーこちゃんから差し出された紙カップのアイスコーヒーを受け取り、一口。
ほぅと思わず漏れたため息を見逃すような子ではない。
私が何故こんなにもアンニュイな気分に浸っているのか、その理由も当然気が付いているのだろう。肩を竦める彼女の表情は若干の呆れを伴っていた。
「ま、見守ってあげるなら観客席じゃなくてもいいんじゃない? むしろ特等席だと思うんだけどね」
「……あの中だと私、解説者じゃないといけないから」
「公私混同はしたくない?」
「そうじゃないと、また去年の二の舞になっちゃいそうで……」
去年、彼は県大会を総合三位で勝ち上がり、見事全国への切符を自らの手で手繰り寄せてみせた。
その時の嬉しそうな、はちきれんばかりの笑顔を私は今でも強く覚えている。
けれど――全国に至る過程で彼の指導者として私が付いているという事実が、とある週刊誌の記者によって白日の元に晒された。
別段隠していたわけでもなかったのに、いざ全国大会へというタイミングで齎されたその情報。
それだけならばまだそう大した問題にはならなかったかもしれないが、その内容が私と京太郎君の有りもしない恋愛事情……というか、下世話な部分の憶測記事にまで及んでいたおかげで騒動が三割り増し以上の勢いで周囲に拡大したのである。
意図的なのか、そうでは無いのか……今となっては真実は分からないけれど、結果としてそのことが彼の調子を狂わせてしまったのは紛れも無い事実だった。
連日のように宿まで押しかけてくる取材陣と、その対応に追われる清澄高校麻雀部員たちは、必要以上に疲弊した状態で大会へ臨むことになってしまったのだから。
それでも団体戦を優勝してみせた女子部の面々に関しては、流石に場慣れしているなと唸らされるものがあったけれど。ただでさえ初めての全国大会出場で浮き足立っていた彼にしてみれば、実力を出し切るために必要な精神力が保たれるわけもなく。
それなのに、本選まで勝ち抜ける事ができなかったのは、単純に自分の実力がまだ足りていないせいだった、なんて。
そんな風に言わせてしまったのは、報道陣から彼を護りきれなかった私の責任によるところが大きかったはずだと今でも悔やまずにはいられない。
とはいえそれからの一年間、それまでしていたのと同じように、長期の休暇があれば私が長野へと赴いてみたり、彼が土浦まで来てくれたりと、師弟関係は良好のまま続いてきた。
師匠としても、またちょっとばかり年上のお姉さんとしても、いつも傍でというわけにはいかなかったけれど、ずっと彼の成長を見守ってきたという自負がある。
どれだけの努力を積み上げて、再びこの地へとやってきたのか。挑戦権を得ることが出来たのか。その強い執念にも似たなにかを、私は直にこの目で見つめ続けてきたのだ。
だからこそこの大会期間中は何よりも優先して彼のことを護ってあげたいという思いがあった。
去年の二の舞にはしたくはない。だけど――私が近くにいることで、逆にまたあの五月蝿いハエのような連中が集ってくるかもしれないと思うと……近づくことすら憚られる。けれど近くで見守りたい。
そんな風にぐるぐる回る思考が行動を縛りつけ、動けないまま時間だけが過ぎていく。
ヤマアラシはいつもこんなジレンマを抱えたまま生活しているのだろうか?
だとしたら少しだけ尊敬し、過剰なほどに同情しよう。
「ね、すこやん。あの子の立場だって去年とはまるで違うよ。今さら小鍛治健夜の愛弟子だからって、特別騒がれたりもしないっしょ」
「分かってる。でも、また似たようなことが起こるかもしれないって、そう思うと……」
「だからこっち来てだいぶ経つのに京太郎くんとは会ってないって? すこやんさぁ、ちょっとナーバスすぎるんじゃない、それ」
「う……うるさいなぁ、もう。こーこちゃんには分かんないんだよ」
「そりゃわっかんねーってなもんですよ。アラサーを超えて三十路に片足突っ込んでるいいお年のくせにグジグジしてるすこやんの気持ちなんてさ」
「いま年齢は関係なくない!?」
「お、ちょっと復活した? ま、でも気持ちは分からなくはないけどね。同じマスメディアに関わる人間として、去年のあれは流石にムカついたから」
「そ、そうでしょ? だったら――」
この期間中私は近くに居ないほうがいいのかもしれない、とつい考えてしまうのだって分かってもらえるはずである。
くだらない――本当にくだらないゴシップなんかで最後のチャンスを潰すようなことだけは、絶対に避けなければならない。
近くで護るのか、遠くで見守るべきなのか。その答が出ない今は、いくら近くにいても顔をあわせることはできそうにないのだから。
「――でもさ。ね、小鍛治プロ。私はアナウンサーとしてでも友人としてでもなくて、貴方の一ファンとして、その弟子一号くんのことをちゃんと信頼してあげてるよ? それなのにあの子の師匠だなんてって言ってる貴方は、弟子のことを信頼してあげないの?」
「……え? ち、違――」
「違わないって。師匠って立場でずっと近くにいたから分からないのかもしんないけど、あの子だってもう自分の面倒くらい自分で見られる年齢なんだから。麻雀関係ならともかくさ、こと日常においてはすこやんと比べたら彼のほうがずっと頼りになるっての」
「う……」
それは……ちょっと悔しいけど、紛れも無い事実だ。
京太郎君と出会ってほぼ二年近く経過したけれど、その中でずいぶんと思い知らされた部分でもある。
「それにほら、この一年で彼、麻雀についても本当に強者の余裕みたいなものを感じるようになってきたからね!
……だからさ、会ってあげなよ。せめて大会始まる前くらいなら、面と向かって激励の言葉をかけてあげるくらい許されて然るべきなんじゃないかな? 面倒なもんは全部とっぱらっちゃって、したいようにしたらいいよ。私はいつでもどんな立場になったとしても、ずっとすこやんの味方だっ!」
「こーこちゃん……」
ニカッと笑うその表情が、いつものからかう時のそれとは違って真剣な印象を与えてくるからこそ。
私は膝に力を入れて、椅子から立ち上がることもできたのだろう。
「ん、ちょっと行って来る」
「おー、頑張ってね! ってところで清澄が宿泊してる宿の場所は知ってるの?」
「知らない。けど電話で呼び出すから平気」
「強気だねぇ。それでこそ永世七冠小鍛治健夜ってなもんよっ! いってらっしゃ~い! お土産話期待してるからね!」
「んもう、こーこちゃんは……」
行ってきます、と手を振って私は廊下を走り出した。
大会が行われる会場から五分ほど裏手に歩いた場所に、少し大きめの公園がある。
メールでやり取りをした結果、そこで待ち合わせようということになったので、今は一人で噴水の前に待ちぼうけの状態だ。
夕暮れに染まる空の色がとても綺麗で。
不意に目を瞑って空を仰ぐ私の耳に、砂が擦れて出す小さな音が聞こえてきた。
「すんません、遅くなりました」
「――大丈夫、そんなに待ってはいないから」
閉じていた目を開き、声のしたほうに向き直る。
咄嗟に視界が捉えたのは、風に棚引いて揺れる黄金色の草原で。金髪というのはやはりよく目立つんだな、と再認識させられた。
出遭った当初からただでさえ大きかった上背も、この二年で更に伸びたものである。
普通に向かい合っていると見上げなければならない分、ちょっと首が辛いんだけど、そう見せないのも大人の女性の嗜みだ。
「直に会うのは久しぶりだね」
「そうですね。ゴールデンウィークの時に師匠が家に泊まりに来た時以来でしたっけ」
「あの時は楽しかったよね。豊音ちゃんと照ちゃんに咏ちゃんまでなんでか一緒に集まって……騒ぎすぎて、お父様とお母様には御迷惑だったかもしれないけど」
「あはは。まぁアレはアレでけっこう楽しんでましたんで、あの人らのことは気にしなくて大丈夫ですよ」
思い出すのは、楽しかった日々の出来事だ。
恵比寿の宮永照、横浜の三尋木咏、つくばの私、最後に佐久の藤田靖子。この四人で卓を囲んだ佐久フェレッターズのホームで行われた一戦が終わった後のこと。
靖子ちゃんが自宅へ帰って行ったあとにチームメイトの豊音ちゃんを加えた残りのメンバーで須賀家へお邪魔した時の大騒動は、今でもはっきりと覚えている、小鍛治健夜暦の中でも大失態に数えられるものの一つである。
豊音ちゃんが初めてのお泊りに緊張しすぎて三つ指付いてご両親にご挨拶を始めてみたり。
咏ちゃんがペットのカピちゃんを大層気に入り、京太郎君ごと横浜に連れて帰ろうと画策したり。
また照ちゃんがお母様秘蔵の高級お菓子をほぼ一人で全部食べきってしまったり。
私が夜中に寝ぼけて京太郎君の布団に潜り込んだまま寝込んでしまって、朝方に起きて大パニックを引き起こしたりと。
他にも大小細々と色々なことがあったけれど……あれは今思い出しても酷い一日だった。猛省しよう。
「とりあえず、ちょっと歩こうか」
「うッス」
公園を並んで歩く。
話すべきことは沢山あれど、なんとなく、口を開くのは躊躇われるような空気が流れているせいか。
お互いに無言のまま、ただ歩いているだけで公園を抜けてしまった。
こういう間抜けなところがそっくりなのも、師弟だからといえるんだろうか?
「京太郎君、お腹空いてる?」
「実は結構。つーか聞いてくださいよ、今日は朝からずっと女子連中の最終調整の相手をさせられてて……おかげでまともに昼飯も食べてないんスよ」
「それじゃちょっと軽く食べていこうか? 晩御飯前だから軽くになっちゃうけど、いいお店知ってるんだ。ウェイトレスさんの制服も可愛いって評判なんだよね」
「そういうことならぜひお供させてください!」
こういう素直なところは本当に変わらないな、と小さく笑ってしまう私。
今となっては当然のように受け入れてしまっているけれど、ふとしたところで出てきてしまう思春期の男の子っぽい性質が昔は少し苦手だったりもしたものだ。
そういう意味では、私もだいぶ慣れてきたんだなぁと。同じ時間を歩み始めた年月の長さに、ちょっとだけ懐かしさを覚えてしまった。
「そういえば、宮永さんたちの二連覇がかかった団体戦が先に始まるんだっけ?」
「はい。いちおうシード校なんで、実際の試合はまだだいぶ先みたいですけどね。新人のマホ、覚えてます? あいつが去年の俺みたいな感じでガチガチになってて大変なんすよ」
「へぇ、中堅のあの子……夢乃さん、か」
聞き覚えのある名前に、ふと足を止める。
夢乃マホといえば――忘れるわけがないだろう。今はまだ開花するに至ってはいないものの、あれが私たちと同等の化け物になる可能性を秘めた器だと判明してからこっち、その動向に注意を払い続けてきた相手なのだから。
だけど、そうか。今年の清澄には白い悪魔とデジタルの化身、タコスの神に加えて彼女も居るのか。
もう一人の団体戦メンバーである室橋さんも、実力的には二年生時の染谷さんと同等程度には育ってきているらしいし。
ライバルの高鴨穏乃が所属する阿知賀女子学院が、松実玄と鷺森灼が抜けた今年は晩成に負けて団体では出場できなかったこともあり、そう考えると清澄の優勝は今年も磐石なのかもしれない。
あとは大星淡の白糸台がどこまで粘れるかと、千里山女子の隠し玉と噂される昨年度の全中王者が絶対王者相手にどの程度対抗しうるのか、というのも注目すべき点である。
――っと、いけない。ついつい思考がお仕事モードになってしまうあたり、私もだいぶ毒されてしまっているらしい。
「マホがどうかしましたか?」
「ううん、筋のいい子だから今後が楽しみだなってちょっと思っただけ。さ、行こう」
すっかりと日が暮れたところで、喫茶店を出た。
あれやこれやと他愛の無い話を続け、笑ったり呆れたり、自然と表情を崩すことが多い時間だったと思う。
京太郎君は紳士を目指しているらしいので、ホテルまで送ってくれるそうだ。こういったところはポイントが高いよね、君は。
もっとも、喫茶店の中ではその視線が定期的に横を通るウェイトレスさんの胸元へ注がれていたので総合的にはマイナスなんだけど。
「――京太郎君」
ホテルの全景が確認できるところまでやってきた時、立ち止まってその名を呼ぶ。
少しだけ先を歩いていた彼が振り返り、こちらを向いた。
「ついに開幕、だね」
「そうですね。正直、二年連続でインハイに出てる自分ってのに不思議な感じもしてますけど」
「……いろいろあったもんね」
「そう、でしたね」
去年の全国大会の時のような辛い出来事も、忘れられない思い出として残っている。
心の底から怒りを覚えたこともある。心底呆れ返ったことだってある。
けれど、それ以上に一緒にいる時間が楽しかったこともまた事実で。
「私は明日から、小鍛治プロにならなくちゃいけない。だから、面と向かって特定の子を応援したりは出来なくなる、と……思うの」
「……はい」
「でも、今日はまだ、ただの小鍛治健夜で……何より君の師匠だから」
ぐっと息を飲み込んで、視線を彼の瞳に定めて固定する。
薄暗いせいでこちらの頬の色までは確認できていないだろう。それがせめてもの救いだと思う。
「だから、今言っておくね。
――頑張って。今の君なら、きっと望んだ場所で戦えるはずだから。私はそれを――誰よりも信じてる」
「師匠……」
「そ、それだけ言いたかったのっ。あ、ここでいいから、送ってくれてありがとう。お休みなさいっ!」
言い終わると同時に駆け出してしまう。何故だろう? 自分でもよく理由が分からないまま、ただ足を動かしている自分が居て。
「師匠っ!」
少し遠目から聞こえたその呼びかけに、つい足を止めて立ち止まってしまった。
「――っ必ず!」
それは、とても短かったけれど。ともすれば聞き逃してしまいそうなほど、短かったけれど。
突き上げられた拳の力強さが、夜の闇を吹き飛ばしてその想いを私に伝えてくれていた。
それ以降、彼と顔を合わせて話をすることはなかった。
故意にというよりは、お互いの時間がすれ違い気味でその機会が無かったといったほうが正しい。
伝えるべきことはあの時きちんと伝えられたし、それでも構わないという思いが強く、連絡を取るようなこともしていない。
そんな中で私は一プロとして男子団体戦の解説を無難にこなし、翌週の女子団体戦においては清澄高校麻雀部の二連覇を見届けて。
ついに全国大会という名の元にて繰り広げられている闘いは、男子個人戦へと舞台を移す。
「……」
私の解説は明日に行われる本選の午後だけなので、予選が行われる日の午前中ともなれば、言ってみればただの暇人である。
とはいえ外に出てやるようなこともないわけで。
こーこちゃんとの打ち合わせを終えて、解説の女流プロ雀士用に宛がわれている控え室で休んでいた時のこと。
あらかじめ渡されていた個人戦出場者の名簿リストを無言のまま眺めていると、目の前に見慣れた扇子が差し込まれた。
「咏ちゃん?」
「必死すぎ。そんなじ~っと見てたら京太郎少年んとこだけ穴が開いて消えちまうんじゃね? 知らんけど」
「うっ……」
「心配なんは分かるけどさ~、あいつももうガキじゃないんだし。今回は大丈夫だと思うんだよねぃ」
「うん、そうだね」
そこにはきっぱりと頷いて見せる私。
すると咏ちゃんは、おや?という表情を覗かせた後で、何か得心がいったのかニヤリと笑った。
「そっかそっか~、いやいや。あの小鍛治プロがね~、ふ~ん」
「なんかその顔、馬鹿にされてるような気がするんだけど……?」
「知らぬは本人ばかりなり、ってか」
「――?」
まさかわっかんねーと知らんしが口癖の人にそんな諺を言われることになるとは露にも思っていなかった。
しかし、ぱたぱたと扇子を仰ぐ仕草を見せるということは暑いんだろうか?
たしかに冷房は効いているけど、設定温度が高めなためか、あるいは陽が昇って外気が上昇してきているためか、部屋の中は若干生温い状態だといえる。
着物なんて見るからに保温性が高そうだし、季節によっては色々と大変なんだろうな。
温度を少し下げようか、と言いつつキョロキョロとエアコンのリモコンを探していると、呆れ顔の咏ちゃんにそうじゃないと釘を刺されてしまった。
「ま、いいさ。私もアイツとカピちゃんのことは気に入ってるし、本選に残れるように特別に応援しといてやろっかね~」
「あれ? そういえば咏ちゃん午前中の解説担当じゃなかったっけ? なんでここにいるの?」
「いんや? 私の担当は小鍛治プロと一緒で本選のほうだけど?」
「そうだったっけ? じゃあ今日は誰なんだろ? はやりちゃんはレポーターやってるから違うだろうし……あ、もしかして理沙ちゃん?」
「わっかんね~。でも野依プロならさっき相方の子と朝ごはん食べるっつって出て行ったから違うんじゃね? 知らんけどさ」
今日の午後担当の良子ちゃんが違うのは分かってるから、あと目ぼしいところで残ってるのは……あ。
「そっか、赤土さんかな?」
「おお、阿知賀のレジェンドは今年から解説呼ばれてんだっけ? そいやそーだったか」
「アナウンサーは誰なんだろう? 咏ちゃん知ってる?」
「いや知らんし」
「にべもないなぁ」
ま、そういう答が返ってくるだろうことは八割方分かってはいたけどさ。
それにしても――初っ端の担当は赤土さん、か。それならまだ、目の前にいるこの子よりは空気を読んで発言してくれるから安心して見ていられるかもしれない。
ここに篭っているのも不健全に過ぎる。そうと決まれば。
「んじゃ、行こっかね~」
「……あれ? 咏ちゃんもどこかに行くの?」
「例の喫茶店、小鍛治プロも今から行くんっしょ? お腹空いたしど~せだから一緒に行くかって思ってねぃ」
「奢らせようとか思ってないよね?」
「なんのことだかさっぱりわっかんね~」
ケラケラと笑ういつもの咏ちゃん。
奢らせる気満々じゃないか。恵比寿時代ならともかく今は私よりぜんぜん多く稼いでいるはずなのに、この子ときたら……。
それでもまぁ、一人でいるよりかは全然マシだ。奢ってくれと言うならば喫茶店の全メニュー制覇するほどの勢いで奢ってやろうじゃないか。
そんな無駄に力強い決意を胸に、連れ立って喫茶店へと向かう私たちだった。
結果だけを簡潔に述べるとするならば、予選は無事に突破できた。
ただ、予選での戦いにおける京太郎君はどこか本調子とはいえなかったように見えたのが多少気懸りではあったけれど。
東風戦二十戦での総合順位が十八位に留まっていたことが、それを裏付ける証拠になるだろうか。
今の彼ならば、きちんと実力を出し切れていれば一桁順位に入れない理由は無い。もしかすると、また何か問題でも――と思ってしまいそうになる自分の心を、必死になって否定する。
ともあれ明日へと繋いだわけだし、きちんと褒めておくべきだろうかと携帯を手に取って。
「……」
文字を打つよりも先に身体ごとベッドの上に投げ出してしまった。
どんな内容の文を送ればいいのか、さっぱり頭に浮かんでこない。
もしかして私、疲れているんだろうか?
覚えの無かったはずの疲労感は、そんな風に自覚をした時点ですぐさま身体中に広がっていく。
ぼんやりとした頭の片隅で、なんとなく理解した。
ああ、私は今日一日中、結果が出るまでずっと緊張したまま過ごしていたんだろうな――と。
このまま心地よい微睡の中に身を任せてしまいたい衝動に駆られるものの、せめてシャワーを浴びて着替えくらいは済ませておかないと。
そう思いつつ、私の意識はそのまま闇の中へと沈んでいった。
一夜明け、遂にその日がやってきた。
朝からえもいわれぬ緊張感が会場の至る所に立ちこめ、否が応にも表情を引き締めざるを得ない中。
「おはようすこやん。昨日はぐっすり眠れた?」
「おはようございます、小鍛治プロ」
「こーこちゃん。針生アナも、おはよう」
控室に入ったところで、本日実況を担当するアナウンサーの二人がいつも通りに出迎えてくれた。
お互いに違う局のアナウンサーだったと思ったけど、仲のよろしいことである。
午前の実況を担当することになる針生アナは咏ちゃんとペアを組む事が多く、この界隈では珍しく常識的なアナウンサーとして有名だ。
相方が相方だからなのか、それともそれが生来のものなのか。時には生真面目すぎると揶揄されることもあるけれど、こーこちゃんみたいに常時メーター振り切っている人より安心して見ていられるのは間違いない。
「咏ちゃんはまだ来てないの?」
「そのようです。あの人は基本時間にちょっとルーズなところがありますから」
「そういえばそうなんだっけ……針生アナも大変だね」
「ええ、本当に……あ、いえ。実際に遅刻をするということはないので、そのあたりは」
本音がポロリとこぼれたように思えるけど、大人としてそこはスルーしておくべきだろうか。
二人が話をしている間、なぜだか少し離れた場所で黙り込んだままじっと私の方を見ていたこーこちゃん。
不思議に思いつつも、近づいていく。
「……? どうかした?」
「いやね、さすがに今日は気合入ってるなぁと思ってさ。勝負用ってことかな」
「ちょっと待ってこーこちゃん。今どこ見て言った?」
「さっき屈んだ時にちらっと見えた下着」
「どこから見えたの!?」
胸元が開いている服を着ているわけでもないし、ロングサイズのフレアスカートを履いているのに中が見える訳がないんだけど。
もしかしてどこかに穴でも空いているのかと思わず自分の身なりを確認していると、呆れ返った表情の針生アナがぽそりと呟く。
「お二人も相変らずですね……」
「んふふ、まぁこんな人だからこそ弄りがいがあるってもんですよ」
「あっ、まさかこーこちゃん!?」
「その通りっ! まだまだ修行が足りないね!」
くっ、まんまとブラフに騙されたということか。
「っていうか、今の反応を見るにやっぱ勝負下着とか履いてきてるんだ?」
「……ノーコメントです」
「小鍛治プロが試合に対してそんなゲン担ぎのようなことをするというのはちょっと意外ですね。もしかして、試合の時はいつもやっているんですか?」
「私も別に自分の試合の時ならそんなことしないよ」
「ほうほう、つまり今日はそれ以上に特別な試合ってことなんかねぃ」
「――!?」
のんびりとしたそんな声が背後から聞こえ、振り返る。そこには着物姿の少女――じゃない、女性が扇子を片手に立っていた。
どうしてこう、来なくていい話題の時に限って面倒な人が揃うかな。
「おはようございます、三尋木プロ」
「お~えりちゃん、おはよ~さん。小鍛治プロと福与アナも、おはよ~」
「おはようございます」
「……おはよう」
「そう辛気臭い顔しなさんなって。別に私は小鍛治プロがどんなド派手な下着つけてようと何も言わないからさ~。まぁあの少年には少々目の毒かもしれないけどねぃ」
「その話題を続けられることにこそ辛気臭い顔をしちゃうんだって、咏ちゃんは気付いてるよね?」
「くくっ、わっかんね~。さっぱりわっかんね~」
おおもう。
ニヤニヤと笑っているその締りのない顔のどこを見てその言葉を信じろというのか。
ちなみにそんなド派手な下着なんて持ってすらいないワケだけど。どうせ知っててからかっているんだろうからもう好きにしてもらおう。
「時に小鍛治プロ。本選に残った他の連中、どう見る?」
「問題になりそうなくらい強い能力持ちはいなさそうだったけど……京太郎君より上手い打ち回しをする子が何人かいる感じだったかな」
「京太郎少年も防御だけなら今年の女子部トップクラスにも通用するくらいなんだけどね~。男子部としたら今年はなんかデジタル打ちに偏ってるけど豊作つってもいいくらいだし、課題の攻撃がどれくらいやれるかでだいぶ順位も変わってくるか」
「そうだね。でも――だからこそ、京太郎君は嬉しいんじゃないかな?」
「あ~、たしかにアイツは根っからのマゾだからな~」
「咏ちゃん、その言い方はさすがにどうかと……」
「それはどういうことでしょう? 強い相手が多いなら、それだけ優勝からは遠ざかるということですよね? 喜ぶ理由が見つかりませんが」
「えりちゃんは分かってないね~。相手が弱っちいのばっかだと張り合いないっしょ?」
「……?」
いまいち理解が及んでいないのか、咏ちゃんの言葉に首をかしげる針生アナ。
たしかに、相手が強ければ強いだけ京太郎君の優勝の確率は低くなっていくだろう。
でも、彼の場合はそれでもいいのだ。弱い相手だけを倒して得られる栄冠など、端から求めてなどいないのだから。
あの子の目標でもある、二年前の清澄高校団体戦女子メンバー。彼女らが力を振り絞って戦ったあの舞台で、自分も力いっぱい戦ってみたい。
それこそが彼の根幹にある思いであり、目指すべき頂でもある。
無論優勝を狙わないわけではなく、そういった強敵と戦った上で勝ち取ったものにこそ価値がある、と京太郎君は考えているのだ。
「ともかく、あとはあの子次第――ってことだよね?」
「うん。あと半荘十回、泣いても笑ってもそこで決着が付くことになるんだよね」
午前八時半を回った今現在、試合会場には本選に出場する選手たちが集まり始めている頃だろうか。
ドクン――と、心臓の鼓動が高鳴る。
麻雀を本格的に打ち始めてから、約二年。この期間を長いと取るか短いと取るかは人それぞれに異なる部分だろうけれど。
こうして高校生活最後の全国大会の出場権を自ら勝ち取り、本選まで進んで見せた彼のがんばりは誰よりもよく理解しているつもりだ。
不安がないといえば嘘になる。けど、それ以上に彼ならやってくれるだろうという期待が胸の鼓動を高鳴らせ、それが余計に落ち着かない原因にもなっていて。
こんなことならまだ自分が卓に座ったほうがよほど冷静でいられるだろう。
見ているだけというのはいつになっても慣れるものではない。昔も今も、国を背負って団体戦を戦っていた時にすらあまり感じたことのない名状しがたい感情が、胸の中を渦巻いていた。
「私たちはそろそろ行きましょうか、三尋木プロ」
「そだね。んじゃそういうことで先に行ってくるぜ~」
「うん、よろしくね」
「三尋木プロ、いつもみたいな面白い解説期待してますよ!」
「あっはっは、わっかんね~けどまぁ任せとけ~」
「……はぁ」
能天気に笑う咏ちゃんと、先が思いやられるせいか深いため息をつく針生アナ。二人が控え室から退出して、中には二人だけが残された。
――男子個人戦本選。
全国でも地方大会と同じレギュレーションで行われるため、本選となる今日は半荘戦が十戦ほど、抽選によるランダムな組み合わせで行われる。
47都道府県の中で、東京や大阪のように東西あるいは南北に分かれている地域も含めれば、予選時の参加者総数は160名前後だったということになるだろうか。
そこからある程度絞り込まれ、現在残っている48名が今日の本選へと進んできているわけだけど。
総当りという訳ではないので、運が悪ければ上位の相手ばかりと卓を囲むことにもなりかねないこのシステム。過去にも色々と物議を醸してきたものではあるものの、別に同じ人間と二回対戦するようなことは起こらないため、見直されることはなく今日までやってきた。
そして今現在、そのシステムによって組まれた最初の対局となる試合の組み合わせが、電光掲示板に表示されている。
「ふむふむ、初戦の京太郎くんの卓はあんまり名前の知られてない子ばっかだね」
「そうだね。でもみんな本選まで残ってる子たちなんだし、油断は禁物だけど」
兵庫二位、北神奈川三位、青森一位、そして長野一位の京太郎君。
同じ地方一位の子が同卓することになったとはいえ、近年は魔境とすら呼ばれている長野と青森とでは、同じ一位同士でも基礎部分の強さがまるで異なる。
普通に考えると、三位までの全員が本選に残っている地域は全体的に手強い相手ともいえるだろうか。
特に一年生で団体戦優勝メンバーの先鋒を担っていた南大阪二位の狭山陽彦選手は要注目の選手の一人だと思われる。
直接対局することになるかどうかは別としても、総合得点の上ではおそらく直近で競うことになるだろう相手。
「さて。全員卓に着いたみたいだし、ようやく始まるか――長い長い一日が」
「……(頑張れ、京太郎君)」
私たちだけでなく、テレビの前にいる視聴者も、観客席に集ったお客さんたちも固唾を呑んで見守る中――開始のベルが鳴り響き、半日に渡る戦いの火蓋は切って落とされた。
「――小鍛治プロ」
少しお腹が空いたので売店に軽食を買いに来た際、背中越しに声をかけられた。
振り返るまでもなく、声で誰かは理解する。
本来であればこの会場にいるはずのない人物――だけど、後輩の応援に来たというのであればここにいても不思議ではない、そんな子だ。
サンドイッチを片手に振り返れば、そこにはにこやかな笑みを浮かべた清澄高校元部長――竹井久の姿があった。
「竹井さん」
「おはようございます。珍しいですね、解説のプロが一般客がたくさん来るこっちの売店に出てきてるなんて」
「こーこちゃんがお腹空いたって煩くてね。お昼からは仕事だから外食するには時間もないし、じゃんけんで負けた私が買いに来たの」
個人戦の中継というのは、決まった選手だけを追いかける訳ではない。
始まったばかりの午前中は特に順位の変動も激しく、今の順位というよりは、前大会で入賞していたり団体戦で活躍したりした前評判の高い選手が主にカメラに追われることになる。
私の弟子という触れ込みではあるものの、実績という面では明らかに不足している京太郎君が注目されることはほとんどなくて。
だから今のうちにじゃんけんで負けたほうが買いに行こう、と言うこーこちゃんの甘言に見事乗っかってしまった結果が今の私といえた。
「福与アナは相変わらずなのね……」
「竹井さん、女子部の応援に来てたのはちらっと見たから知ってたんだけど。まだこっちにいたんだね」
「そりゃ、須賀くんだって立派な清澄高校の一員なんだから応援するに決まってますよ」
もっとも――と続けた彼女の表情が、少しだけ沈んだ。
「私にそれを言う資格があるかと問われたら、はっきりと頷くことはできませんけど」
「……二年前のこと、後悔してるの?」
「まさか。前の時にも言いましたけど、後悔なんてしてたら他の子に何を言われるか分かったもんじゃありませんよ。
ただ……そうですね。私は一つ、小鍛治プロに謝らなくちゃいけないことがあるんです」
「私に? って、一つだけなの?」
「あー、そこに食いつかないでいただけません? ちょっと真面目な話なんで」
ふぅん、まぁいいか。竹井さんが素直に謝りたいというのであれば、話は聞いておかなければならないだろうし。
サンドイッチを元の場所に戻し、竹井さんを連れて今日は使われていないはずの、もう一つの控え室へと向かった。
「ここなら平気かな? それで、私に謝りたいことって?」
「……まこの店でバイトをした時のこと、覚えてますか?」
「忘れたくても忘れられないよ、さすがにあれは」
メイド服を着させられて、挙句猫耳を付けた状態のまま人通りの多い場所までお使いに行かされたのだ。忘れようにも忘れられない。
他の学校でもわりと滅茶苦茶な企画で苦労したけれど、その中でも一二を争うほど内容の濃い一日だったと思う。タコス事件も含めて。
「あの時、須賀くんを小鍛治プロに指導してもらえるように裏で企んでいたの――私、なんですよね」
「……うん?」
どういうこと、だろう?
「最初の取材の時、須賀くんのことを気に入ってもらえるよう事前に言葉遣いをきちんとさせたりして、色々と企んでたんです。上手くいけば、須賀くんを通じて清澄にトッププロのコネができるかもしれない――って。だから次の企画の時に福与アナに手伝ってもらったり、須賀くんをけしかけたりもして」
「……」
「小鍛治プロに指摘された問題点、私にも分かっていましたから。それを補って余りある存在がいるとしたら――それは」
「私だった、ってことか」
「……はい。小鍛治プロの善意を利用しようとしたこと、本当に申し訳ありませんでした」
竹井さんが頭を下げる。私は無言のままその頭頂部を見つめながら――ともすれば噴出しそうになる笑いを堪えるのに必死だった。
転んでもただでは起きなさそうなこの子がこうして頭を下げている姿が、現実味から剥離しすぎていてある意味滑稽だったというのが主な原因だ。
もしこの姿まで計画のうちだというのであれば、一周回って逆に尊敬さえするかもしれないけれど……真面目な場面で申し訳ないが、正直言って似合わない。
「……っ、頭を上げて、竹井さん」
笑い顔を見られないよう、とっさに表情を消す。
これまで散々振り回してくれたお礼だ。一度くらいはこちらからちょっとした悪戯を仕掛けてみてもいいだろう。
「……」
「今更になってそんなことを言い出すなんて、どういうつもりなの?」
「そ、れは……」
「京太郎君は全国大会に出られるくらい強くなった。女子部のほうも団体戦二連覇を達成したし、宮永さんは個人三連覇も間違いないと思う。竹井さんの目論見はこれでほとんど達成されたわけでしょ? なら今になってそれを告白して懺悔する必要なんてないじゃない」
古来より軍師は策が成った暁にはその成功を高らかに謳い上げるものではなかったか。
「……須賀くんが言ったんです」
「うん? 京太郎君が?」
「小鍛治プロのお陰で自分はこうして戦えるって。一人だけ仲間はずれだったはずの自分が、全国の舞台で輝けるのはあの人のお陰だから。
だから、小鍛治プロと師弟になれるチャンスをくれて感謝してる、ありがとう――って」
「――……」
ああ、そうか。まったく本当に彼らしいというか何というか。
演技をするのを忘れて、ついつい頬を緩めてしまった。
「ああやって楽しそうに麻雀を打ってる須賀くんを見てたら、その思いすら利用していた自分がなんだかすごく……」
「ふふっ」
「……小鍛治、プロ?」
「しっかりしてるように見えてたけど、そっかそっか。竹井さんもやっぱりまだ子供だったんだねぇ。よしよし」
思わず近づいて頭を撫でくり回してしまう。
「ちょ――や、止めてくださいっ! 私は一応今年で成人なんですから!」
「年齢はそうだろうけど。だって竹井さん……なんか完全に思い違いをしてるみたいだから」
「思い違い……?」
「そう。私が京太郎君に麻雀を教えてあげようと思った理由、なんだと思う?」
「それは――須賀くんのことを気に入ったからで――」
「それは当然そうだけど。でも、それだけじゃなくてね。あの子は最初から正直な気持ちを私に伝えてくれたよ。仲間に置いていかれるのは嫌だ、寂しいって。
だから私は――その心の叫びを掬い取った。ただそれだけのことなんだ」
「……」
「私と京太郎君の関係の裏には黒幕なんて存在しないの。あの子が信じて手を取ってくれたから、私は今ここにいる」
そこに第三者の意思なんて介在しない。する余地なんて有りはしない。あの時に魅せられた真剣な瞳は、真っ直ぐにそれを教えてくれていたのだから。
だから私は、竹井さんの謝罪を受け入れる訳にはいかなかった。
平然とありもしない罪を被せてしまえるほど、私は傲慢にはなりたくない。
「だから私も一つだけ、愚痴の代わりに竹井さんにちゃんと言っておかなきゃいけない言葉があるんだ。聞いてくれる?」
言葉での返事の代わりに、視線が交差する。
「――私に京太郎君と向き合うキッカケをくれて、ありがとう」
私たちがどれだけのことを積み重ねてきたのか。
それはきっと、当事者の二人にしか分からないことで。
二年間という期間の中で、いろいろな人たちと出会い、関わり合いになる中で育まれていった絆は、きっと偽物なんかじゃないと思う。
だからこそ、私はこうして解説者として言葉を並べ、一プロとしての仕事を全うすることさえできている。
真剣な表情で牌を握る彼らの戦いを、きちんと見つめていられる。
決着はそう遠くないうちにつくだろう。
その時どんな光景を目の当たりにすることになるか、それは分からないけれど。
ただ一つ言えることがあるとするならば――。
願わくばこの物語の終焉は、彼の若者の心を救いたもう結末であらんことを。
(中編に続く)
11月7日は健夜さんの誕生日!
……てことで、本格的な投稿再開の前に読み切りっぽい三部作でございます。
特別編のカテゴリーに加えてありますが、実際は本編→番外編と続く本筋のラストに組み込まれるはずのお話であり、『健夜さん主人公の京太郎√最終話』を想定しております。
ただ、二ヶ月近く更新できなかった現状と、そのまま健夜さんの誕生日が来てしまったこと、あと本編が恒子ちゃんとの掛け合いが主流で√確定になっても別にいいかー的なノリで発表することになりました。
この後も本編と番外編はまったり続けていきますので、限りなく正史に近いIF的な未来のお話と捉えてお楽しみ頂ければと思います。
※この√における個人戦ルールは長野県大会のものを採用しております。