すこやかふくよかインハイティーヴィー   作:かやちゃ

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第06話:月楼@夜の到来と夜明けの象徴

 昔から、均衡した状態を現すことの例えとしてよく使われている言葉というものがある。

 三つ巴、三竦み。

 周囲に敵ばかりが存在していた戦国時代なんかではよく見られたであろう状況だけど、現代においてもそれは国家の基盤たる中枢の権力分散、所謂『三権分立』という形で示されている通り、社会のバランスを保つ構図としてはわりとポピュラーな考え方ではないかと思う。

 システムとしてのそれをもっと手近なもので例えるならば、じゃんけんなんかはこの法則を如何なく発揮して、実に様々な場面で有効活用されていたりするものの一つだろう。

 

 『3』、それは均衡を生み出す数字。

 

 ただ、それによって生み出されてしまう均衡は、時に深刻な停滞を引き起こす原因でもあることから、白黒はっきり付けなければならない状況下においては敬遠されがちであるのもまた事実。

 日本国の法の下では夫婦とは男女一組のパートナーが基本であって、そこに加わる三人目の存在は、男女どちらの相手であろうとも世間一般の常識だと浮気あるいは不倫と呼ばれ、不貞で不潔な行為として認識される。

 

 あるいは野球、サッカー、バスケ、バレー、テニス、ハンドボール、ボクシング、柔道、相撲、etc……数え上げればきりがないほどに、対戦相手が存在しなければ成立しないタイプの競技などでは、一対一の構図に拘る傾向が強い。

 トーナメントやリーグ戦を奇数のチーム数で争うことはあっても、三つの異なる陣営が一つの試合中に同じフィールドで三つ巴のまま戦うフットボール、なんて絵面はほとんど見た事がないはずだ。

 これらの事実は、関係性についての理解のし易さを求めるのであれば、トリオで考えるよりもペアで考えるほうが第三者の状況把握と理解を望むには遥かに理に適っている状況である、ということの証左ともいえる。

 

 『3』、それは時に望まれる安定を破壊する悪魔の数字。

 

 

 

 プロアマ交流戦が無事終わり、週が明けての月曜日。久しぶりに顔を合わせた三尋木咏という名の悪戯好きな一人の女性が、私の顔を見るなりこんなことを言った。

 

「あー、小鍛治プロ。ちょーどいいところに。今週末ちょっと長野に行って来るんだけどさ~、弟子の須賀某氏とやらに挨拶してきてもいいかね?」

「……は?」

「いや~、なんか知らんけど藤田プロが言うには清澄がちょうど学園祭らしいんだよね~。で、知り合いの子にお呼ばれしてるっつーんで、ついでに私も行ってみようかと思って」

「ついでにって……ああ、咏ちゃんはっていうか横浜は今週佐久で試合なの? 首位攻防戦っぽい組み合わせだったよね、たしか」

「そそ。ここで一個勝っとけば本拠地で優勝決められるかもしれないってんで、今週は頭からなんかみんな殺気立ってるよ。怖い怖い」

「他人事みたいな言い方だなぁ。しかもその状況なのに試合の後で遊びにいくこと考えてるんだ……」

 

 さすがというか、なんというか。私も人のことは言えない部分があるけれども。

 この週末にかけて清澄高校が学園祭だという情報は、先週の交流戦の折に宮永(咲)さんに聞いて知っていた。ただ、その時にはたしか……そう、麻雀部として何かイベントを行うということは予定していない、みたいなことを言っていたはずである。

 外部の知り合いを招くという事は、予定でも変更して何かやることにしたのだろうか?

 

 それとも……と冷静になって考えてみたところ、一つの結論があっさりと出た。

 この絶好の来季新入部員の獲得チャンスを華麗にスルーすることなんて元部長さんの気性というか性格を考えても絶対に有り得ない、と。

 思い出してみれば心当たりがないわけでもない。実際にその話を横で聞いていた竹井さんが一切リアクションを見せなかったことから考えても、宮永さんだけが聞かされていない秘密の計画が着々と進行している可能性は高かった。

 

「――あ、そういえば松山も今節は横浜と対戦だったよね? ってことは良子ちゃんも?」

「さっすが小鍛治プロ、よく知ってんね~。ま、私はあっちがどのメンバーで来るのかまではさすがに知らんけど、売り出し中のエース候補がこの時期に帯同しないってことはないっしょ」

「そうだよね。でもそれだと良子ちゃんも清澄行きに便乗しそうだな……うーん、まぁ会いに行くのは別に構わないけど。あることないこと京太郎君に吹き込むのだけは止めてよ?」

「へ~い」

 

 ひらひらと着物の袖を揺らしながらニヤニヤと厭らしい表情を浮かべる咏ちゃん。

 あ。前向きに善処する気すらないな、この顔。

 

「……飛行機チャーターしてでも当日行くべきな気がしてきた」

「お? その口ぶりだとやっぱ小鍛治プロは行かんの?」

「うん。この時期は何かと忙しくて……そりゃ時間があったら行ってみたいとは思うけど、それだけのために長野までっていうのはさすがに厳しいよ。金曜日に京都で試合があるんだし……何かしらの理由が別にあるならまだあれだけどさ」

「ふ~ん。へ~、ほう」

「……くれぐれも、お願いするから」

「お任せあれ~ってね」

 

 その言葉を好んで発する相手に限って、お任せするには不安しか浮かんでこないのは何故だろう。

 ――幸か不幸か。

 後にこのなんでもない二人のやりとりが大きな意味を成して来ることになるんだけど……その切欠が私の手元に届くのは、この二日後のことになる。

 

 

 で、その二日後の水曜日。

 話題の中で再び〝学園祭〟というキーワードが浮かび上がってきたのは、ネットでの指導が終わって、京太郎君と近況報告という名の雑談的なやりとりをいくつか交わしていた時のことだった。

 どうやら清澄高校では十一月の中旬頃に学園祭を行うのが毎年恒例になっているようで、今はその準備に大わらわなのだというある種の愚痴のような会話から始まって。そこから話題が派生して、私の高校の頃の学園祭の話だとか、オリンピック後に大学祭で講演に呼ばれた時の話だとか、主にそれ関連の話題に花を咲かせること小一時間。

 京太郎君がふと何かを思い出したかのように、こんな事を言った。

 

「そういえば師匠。例の二人がウチの学園祭に顔を出すって言ってましたよ」

「……うん? 例の二人って――あ、もしかして高遠原の子たち?」

「そうです。和と優希が招待してるらしくて、他にも後輩が何人か来るかもって竹井先輩と二人が話してました。前に師匠、会いたいって言ってましたよね?」

「うん、覚えててくれたんだ。ありがとう」

「岩手の取材の時からまだ一ヶ月も経ってませんから、さすがに忘れたりはしませんって」

 

 照れたように笑う京太郎君。ちょっと可愛いと思ってしまった。

 ただ、いつまでも見惚れているわけにもいかないので、こちらから話題を動かさなければならないのがちょっと勿体ないと思いつつ、後ろ髪を引かれながらも視線を切った。

 

「今週末だよね……ちょっと待ってね」

 

 傍らに置いてあった鞄を漁り、スケジュールの書かれた手帳を広げてみる。

 今週は――うん。週の前半に畳み掛けるようにして取材(私が受ける側)やらラジオや番組の収録やらが待ち受けていたから、目が回るくらい大変だった……。

 それもこれも、金曜日に開催予定の最終節直前のリーグ戦(京都遠征)があるが故の皺寄せで。普段なら週の半ばでも大丈夫なはずの仕事が全部前倒しになってしまって、先週末の白糸台取材と交流戦でのイベントを含めればまさに激動の四日間だったと思う。

 

 ただ、この戦いを勝利で終われれば昇格に向けての山場を完全に越えられるということもあって、日曜日と月曜日は比較的時間が取り易くなるはず。

 土曜日はあっちで仕事が残っているので動けないとして、翌日の朝から電車で移動すれば昼過ぎには目的地へと到着できる。ちょっと強行軍になるかもしれないけれど、長野へ赴く時間が取れないというわけでもなさそうだ。

 彼女と実際に会う機会が作れるのならば、行かない手はない。

 こうやってモニター越しに確認するよりは遥かに精度の高い情報が手に入るだろうし、何よりもその日であれば良子ちゃんや咏ちゃんが同席している可能性が高い。異能力に明るい二人に立ち会ってもらえるのは、こちらとしても心強い面もある。

 

「わかった。もしそっちに行けそうなら顔を出すことにするよ。ところで麻雀部は何か催し物をするの?」

「竹井先輩が色々と考えてはいるみたいっすよ。なんでも咲には内緒らしくて和や染谷部長と裏でコソコソやってるんですけどね、俺と優希はポロッと零しそうだからとかいって具体的な内容は教えてくれないんスよ。謎の作業を手伝わされてはいるんですが」

「うーん、竹井さんがコソコソってなると途端に不安になっちゃうのはなんでなんだろうね……」

「気持ちはよく分かります。でもあの人の立場上、けっこう学校行事に関してはマトモな考え方をするはずですから、大丈夫……ですよ。きっと」

「だといいけど……」

 

 言い淀んでいる時点で、京太郎君の竹井さんに対する感情の種類が分かるというものだ。何かを仕掛けているだろうという点においては信頼度もかなり高いということだろう。

 おそらく何か特別なことをさせられることになるであろう宮永さんには、ただただ同情の念しか浮かんでこなかった。

 

 

 雀士の中には特殊な能力を有する者達がいる、という事に関してこれまでも幾度か触れてきた事があるけれど。

 熊倉先生を含めた能力肯定派の人たちが分かり易く分類した組み分けの、その頂点に立つ三つの符号、白・發・中。所詮言葉遊びでしかないそれらは、しかし最も分かり易い形で私に教えてくれる事がある。

 それは即ち――その素質を有する者達こそが、私の麻雀(こどく)を打ち破る可能性を有している類稀なる打ち手候補なのだということ。

 

 一人は現トッププロの日本代表エース、三尋木咏。

 おそらくもう一人が、来季からプロの舞台へ上がってくるであろう現阿知賀の顧問、赤土晴絵。

 私が『發』、そしてその二人ともが『中』のカテゴリーに属していることから考えると、些か芽生える方向性が偏っているようにも思えてしまうかもしれないが、本来はそう簡単に出現するものではないと言う事はきちんと覚えておくべきであり、同じ時代に三人集うというのは限りなく奇跡に近い特異点のようなものであることを忘れるべきではないだろう。

 ……その上で、だ。

 まさか四人目、それも唯一該当者が確認されていなかった『白』の能力を有するかもしれないその少女の出現には、さすがの私をしても驚愕せざるを得なかった。

 

 

 その少女の名は、夢乃マホというらしい。

 長野県、高遠原中学校に通う中学二年生。容姿は年齢から考えるとどちらかといえば幼い感じであり、小学生……とまでは言わないまでも、小柄でどこか小動物チックな印象を抱かせる快活な少女だという話を弟子からは聞かされている。

 かつて原村和と片岡優希、花田煌らが所属していたという高遠原中学校の麻雀部。

 そこに所属しているかの少女は、しかし牌を握るようになったのも中学生になって麻雀部に所属してからということで、未だ初心者の域を出ていないといっても過言ではないという。

 その互いに食い違いが激しい二つの知識は、あまりにもアンバランスな情報であり、故に余計私の興味を強く惹いた。

 

 昇格のためには勝利が不可欠となる最終節までの最後の一か月。熾烈な戦いが待ち受けるだろう十一月の月中が多忙を極めるだろうことは予め分かっていたし、だからこそモニター越しに確認するだけで致し方なしと自分を納得させていた……はずなのに。ああそれなのに。

 こんな風に大義名分が成立してしまっては、抑えも利かなくなってしまうじゃないか。

 

 未だに成立すらしていない三竦み。その一角を担うかもしれない件の少女との面会を求めて――この数ヶ月で実に三度、私はここ長野県へと足を踏み入れることになってしまったのである。

 

 

 

 

 ――清澄高校学園祭、二日目。

 世間一般的には日曜日と呼ばれる休日の一幕であるためか、私を含め外部から学園祭を目当てで訪れているらしき人たちも多数見受けられる。

 がやがやわいわいと賑わいを見せる雑踏の中、ふとあることに気が付いた。

 それは、先ほどまで隣にいたはずの彼女が、いつの間にやらふらりと視界から消え失せてしまっているという切ない現実。

 

「はぁ……どうしてこう、私の周りにいる子たちは大人しくしていられないかなぁ……」

 

 思わず漏らしてしまう心からの愚痴。それを向けられているはずの少女――いや、一応世間の認識上というか戸籍の上ではれっきとした成人女性ではあるんだけど、その子は既に視界の中には影も形も無く、完全に消え失せてしまっている。

 単純な迷子ならば近くを歩いている実行委員さんにでも声をかけて呼び出してもらえば済むことかもしれないけれど、こと自分の意思で消えてしまった相手に対してそんな正攻法を用いたところで如何ほどの効果があるものか。甚だ疑問である。

 

 ちらりと腕時計に視線を落とせば、約束していた時間まであと僅か。

 仕方が無い。私だけでも待ち合わせの場所に向かっておこう。

 つい先ほど購入したばかりの美味しそうなチョコバナナを両手に持っているという事実を、年甲斐も無いかなとちょっとだけ恥かしく思いつつ。足取りをメールで送られてきた場所――校庭の一角と思わしき場所に設置されたタコスの屋台へと向けた。

 

 

 

「おう、小鍛治プロ。ご無沙汰しとります。京太郎、小鍛治プロが来んさったぞ」

「師匠! お久しぶりです」

「こんにちは染谷さん、京太郎君。ところで……咏ちゃん、三尋木プロはここに来た?」

「三尋木プロ? いや、見とらんが」

「さっき券とカツ丼タコスを引き換えに藤田プロなら来ましたけど」

「おかしいなぁ……咏ちゃんのことだから出し抜いて先に来てると思ってたのに」

 

 まさか本気で迷子になったって訳でもないだろうに。

 しかしここに来ていないとなると、先にもう一つのほうに行っちゃったのかな。

 

「京太郎、ここはわしと紫芝さんらに任せて案内がてらあっちへ行ってきても構わんぞ」

「そうっすか? んじゃあとはお願いします」

「おう。あっちに行ったら咲と久にはあんまりお客を苛めてやるなと言うといてくれ。特にウチの生徒から苦情が絶えんとな」

「はは、了解です。それじゃ師匠、行きましょう」

「うん、お願い。染谷さんたちも頑張ってね」

 

 

 京太郎君たち麻雀部の面々は、麻雀部主催の『タコス屋台』と竹井さんのクラスの有志一同主催による『カジノ喫茶』を組み合わせる形で出展しているという。

 カジノといっても別にお金を賭けるわけではなくて、どうやらゲームに勝てば『タコス引換券』なるものをゲット、あるいは増やす事ができるという仕組みになっているらしい。

 もちろん屋台ではお金を払ってタコスを買うことも出来るし、カジノで得た引換券で出来立てを貰うこともできるという、なかなかに手の込んだシステムだと思う。

 

 高校の学園祭というと、時期的に受験を控えている三年生に関しては任意での参加となるのが通例のはず。推薦で余裕があったりお祭り騒ぎが好きな子達だけでやるにしても、どうしても小規模なものになってしまうのは避けられない。

 それならばいっそ――と、麻雀部を巻き込んだ合同出展という形にしてしまおうというのだから、こういう場面での竹井さんの行動力は実に大したものである。

 

 タコス屋台の責任者は部長の染谷さんで、調理&指導が京太郎君。あとは竹井さんのクラスメイト、あるいはその人脈で借り出されたという生徒会の子たちがヘルプ要員として配されていた。

 あと、何故だかメニュー一覧の中には以前行われた例の企画で作ったチョコレート寒天タコスだったり肉じゃがタコスなんかも含まれていて、その中には私が作ったものもきちんと加えられている。なんかちょっとくすぐったいよね、こういうのは。

 

 で、もう一つのカジノ喫茶という呼び名がついた催し物は、麻雀部の部室がある旧校舎の一階部分にある空きスペースを使っているらしく、こちらの責任者は竹井さん。責任者と催しの名称を並べた時点で不安しかないわけだけど、京太郎君の言葉を信じるのであれば、きちんとしたものであるはず。

 そんな一縷の望みを抱きつつ、開け放たれた入り口の扉に誇らしげに掲げてある『アリスの不思議なタコス屋』と書かれたプレートに若干嫌な予感がしながらも。

 敷居を越えて中に入ると――まず最初に視界の中に飛び込んできたのは、教室の中央に置かれた五つの手積み用麻雀卓と、それを囲むようにして集まっている観客の輪。

 その真ん中の卓に座らされて牌を握るのは絶対王者の冠を戴く宮永咲その人で、まるでハートの女王様のような格好をさせられているかの少女は、真剣な表情で向かい合うお客さんと思わしき一人の子供と捲り捲られの攻防を繰り返しているようだった。

 

 但し、牌を握って一進一退といっても別に四人で囲んで麻雀を打っているというわけではない。

 伏せられたいくつかの牌が卓上に散らばるように置かれていて、それをひっくり返しては一喜一憂を繰り返す二人――つまり彼女らは、麻雀牌を使って神経衰弱をやっているのだ。

 

 その卓を挟んで向かって左側の二つの卓には、ピラミッド状に積み上げられた牌の山。所謂『上海』と呼ばれるゲームを再現しているらしいこちらを担当しているのは、水色のエプロンドレスを着て頭に黒いリボンのカチューシャを装着した状態で、まんざらでもなさそうな表情をしている原村さんと、時計の兎っぽいタキシード姿の見知らぬ男子生徒A。

 向かって右側の二つの卓には、三人のお客を相手にディーラーの真似事をしている猫耳姿の竹井さんと、バニーのウサ耳を付けた見知らぬ女生徒B。どうやらこちらでは麻雀牌を使った擬似ポーカーのようなゲームをやっているっぽい。

 

 部屋の装飾も全体的にメルヘンチックになっていて、アリスが迷い込んだ不思議の国をモチーフにしているらしく何処となく異国風の雰囲気を醸し出している。

 まぁそんな中で部屋の中央ではギャンブルに興じる人がいて、部屋の周囲に置かれた休憩用の飲食スペースでは片手にタコスを持っているお客さんがけっこういるという、実にシュールな空間が出来上がっているわけだけども。

 

 ちなみに片岡さんを筆頭に何人かの女生徒がメイド服を着た状態で店内を子犬の如く走り回っており、私たちの来訪に最初に気づいてくれたのも彼女だった。

 

「あ、京太郎! 小鍛治プロも久しぶりだじぇ!」

「こんにちは片岡さん。こっちも盛況っぽい感じだねぇ」

「うむ。勝てばタコス引換券がもらえるんだからそりゃお客もたくさん来るってもんだじぇ」

「あはは。君は相変わらずだね」

 

 ところで気になったのは視界の片隅に見え隠れしている着物姿の女性の後姿なんだけども。

 あれはどう見ても咏ちゃん……だよね。やっぱりこっちに先に来ていたか。京太郎君が向こうの担当でよかった。

 

「優希、これ染谷部長から追加のタコスな。お前のじゃねーんだから食うなよ?」

「さすがの私でもそんなことしないじょ! まぁ、これは貰っておくが――先輩、追加の出来立てタコスが来たじぇ~」

 

 京太郎君からバスケットを受け取ってくるくると回転しながら喫茶スペースのほうへ消えていく片岡さん。ミュージカルじゃないんだからさ。

 

「京太郎君、ちょっとあっち行って来るね」

「竹井先輩のとこすか?」

「うん。なんだかあそこに見覚えのある背中が見えるから……」

 

 

 麻雀牌を使った擬似ポーカー。

 簡単にいうと、最初に配られた十四枚の牌の中にできている順子または刻子の数で勝敗を決めるというルールらしい。

 また一盃口・一気通貫なんかの麻雀の役が成立している場合、こちらが優先で累計飜数の多いほうの勝ちとなる。牌の変更ができるのは一回のみで、牌五つまで。

 当然ながら、順子よりも刻子のほうが優位性は高いっぽい。

 

 今現在この卓に座っているのは、正面に親の竹井さん。左手に靖子ちゃん。対面に咏ちゃん。そして右手に天江さんというなんとも恐ろしい面子だった。

 龍門渕の生徒である天江さんがどうしてここにいるのかは謎だけど、その顔を見た瞬間、この卓に一般の子が紛れ込んでいなくて良かったと心の底から安堵したのもまた事実。

 普通の麻雀だと相応の時間がかかるところ、一方この形式で行われるゲームなら勝敗は一瞬で決まる。お客さんの回転率を考えてもこちらのほうがよっぽど効率がいいし、よくもまぁ考えたものだとちょっと感心してしまった。

 

「ちっ……順子が一つと刻子が一つか」

「ん~、ちょっと安かったかな。こっちは三色同順のみだねぃ」

「むむ、衣は刻子が二つだ」

「三尋木プロ、それぜんぜん安くありませんよ……ったく、私は刻子が一つだけ。あーあ、今回は私の一人負けかぁ」

 

 四人が一斉に手を開き、結果が衆目の目に晒される。

 配牌の段階で三色同順を揃えるあたり、さすがは高火力雀士の咏ちゃんとでもいうべきか。

 靖子ちゃんはスロースターター、この形式のせいか天江さんの支配力は効いていないようだし、竹井さんの悪待ちも活かす場面がなければ意味が無いということかな。

 まぁ、普段の実力としても頭三つ分くらいは抜けている咏ちゃんが一位というのは実に妥当な結果だろう。

 

「――あ、小鍛治プロ。ようこそ清澄高校学園祭へ」

「ん? ああ、やっと来たんですか、小鍛治プロ。迷子になるなんてらしくないですね」

「竹井さんはこの前ぶりだね。で……靖子ちゃん? 迷子って何のこと?」

 

 視界の隅で、こそこそと場を離れようとしている人物が一人。

 逃げられないように襟首を掴まえたまま、じたばたともがくそれを無視して笑顔で問いかける。

 

「三尋木さんが言ってましたよ? あっちこっちふらふらしてて迷子になったから置いてきたって」

「――だ、そうだけど。咏ちゃん、なにか申し開きはあるかな?」

「い、いや~……あんだけ人が多いと逸れちゃうのは仕方が無いと思うんだよね~。知らんけど」

「散々駄々こねて人にチョコバナナ買いに行かせておいて、よくもまぁ……」

 

 いま思えば、あれも私を出し抜くための作戦だったに違いない。チョコバナナは美味しかったけれども……それはそれ、これはこれ。

 元々私が来る予定が無いと事前の会話から判断していた咏ちゃんは、油断をしていた。

 靖子ちゃんとだけ連絡を取りつつ、私も一緒に行く旨を伝えて彼女には内緒にしてもらうよう取り計らっていたこともあり、お昼が過ぎて駅前で顔を合わせた時のあの苦虫を噛み潰したような表情は今でもはっきり思い出せるほどである。

 ついでにいえば、最初から咏ちゃんと一緒に来る予定だった良子ちゃんはクラブの都合で用事が出来たため後から合流。靖子ちゃんは別の拾い物があるから先に行く、という話だった。

 

 しかしまぁ、そこまでして私抜きで京太郎君に会いたかったんだろうか。

 噂話というのは尾びれを追加したままどんどんと原型を留めない形で流布されていくものだというけれど、本人も知らない間に勝手にハードルを上げられている彼にとっては迷惑以外の何物でもないだろうね。

 

「まーまー、過ぎたことは水に流してほれ、弟子くんを紹介して欲しいんだけど~」

「……それって被害者の側が言うから説得力が生まれるんだよ? まぁ言うだけムダっぽいから別にいいけど――京太郎君ごめん、ちょっとこっちに来てくれる?」

 

 呼びかけに応じて、見知らぬ男子生徒と談笑していた京太郎君がこっちにやって来る。

 そんな彼のことを、上から下まで舐め回す様にしてじっくりと品定めをする咏ちゃん。その視線があまりに怪しかったせいか、さしもの京太郎君をして少しだけ引き気味になっていた。

 臼沢さんの時も似たような態度を取っていたし、もしかしてわりと押しに弱かったりするのかな。

 

「ふ~ん、ほう――へぇ、いやぁ、なるほどなるほど。こりゃちょっとわっかんね~な」

「あ、あの……? 師匠?」

 

 明らかに困惑気味である。

 ……まぁ幼女っぽい和装の大人に絡まれるなんてことはそうそう経験できることではないだろうからね。気持ちは分かる。

 

 私も決して大きいほうではないものの、咏ちゃんはそれに輪をかけて背が小さい。大抵の場合は立って会話をすると自然と上目遣いにならざるを得ないためか、彼女は常にあえて正面から見ず、文字通り斜に構えて相手と対峙する傾向がある。

 おそらくは年下相手に舐められないようにしたいという複雑な心理が働いているのだろう。

 

「ごめんね、ちょっと待ってて。ほら、紹介だけ先に済ませちゃうから咏ちゃんはちょっと下がる。大人なんだから」

「う~い」

「ええと、それじゃまず咏ちゃんからかな。知ってると思うけど、こちらは横浜ロードスターズの看板選手で現日本代表の先鋒を務めてる三尋木咏ちゃん。で、こっちの背の高い子が私の弟子になってくれた清澄高校一年生の須賀京太郎君」

「お~、君があの一部界隈で有名なすこやんの弟子か~。よろしくな須賀少年」

「知ってます。通った後にはぺんぺん草さえも残らない日本屈指の高火力って言われてる三尋木プロですよね。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 差し出された手を躊躇無く取る京太郎君。

 背の高さがあまりにちぐはぐなため、握手の場面というよりはむしろ父親に手を引かれる少女の図に見えて仕方が無いんだけど……そんなことを漏らそうものなら余計な火種になりかねない。

 喉元まで飛び出しかけていた科白をぐっと飲み込んだ自分を褒めてあげたいと思う。

 

「あのー三尋木プロ、ところでその一部界隈ってのは具体的にはどのような……?」

「さあ、わっかんね~。さっぱりわっかんね~」

 

 ケラケラと笑う咏ちゃん。それをみて京太郎君はポカンとしているみたいだけど、それが彼女の通常運転だから突っ込むだけムダだ。

 

「ねえねえ、今度はこっちから質問だけど、君はいつもそんな感じでいんの?」

「へ? そんな感じって言われても……まぁ、だいたいこんな感じじゃないすかね」

「ふぅん」

 

 何が言いたかったのか今一よく分からない、という表情を隠さないまま京太郎君は離れていく咏ちゃんの後姿を見つめる。

 その視線がこちらへと向いて、どういう意味でしょうかと問いかけてくるけど私は答えを返せなかった。

 咏ちゃんが何を考えているかなんて卓に付いていてもそうそう読み取れるものじゃないのだから当然だろう。

 

 

 

「藤田プロも弟子がいるみたいだし、こりゃ私も弟子を持つべきなのかねぃ」

「む。衣は藤田の弟子じゃない。衣のほうが強いのだからそんな相手に師事する必要など――ふにっ」

「そういう科白はプロに上がってきて直接対決に勝ってから言うんだな。ほれほれ、酒も飲めないぐにぐにほっぺのおこちゃまめ」

「ひゃ、ひゃめろー」

 

 天江さんの柔らかそうな頬肉が、引っ張られるたびに形を変える。

 涙目になっているから止めたほうがいいかな、と思いつつもなすがままの彼女があまりにも可愛いので誰も止めようとはしない。

 

 しばらくの間じっくりとその柔らかさを堪能した靖子ちゃんがようやく手を離し、天江さんの抗議が一息ついたところで話を切り出した。

 

「ところで天江さんはどうしてここにいるの? 靖子ちゃんが連れてきたの?」

「だから衣は藤田の付属物では無いというに!」

「付属物って……ああうん、ごめん。それで?」

「莫逆の友である咲とののかから招待状を貰ったからには顔を出さねば傲慢不遜というものだろう、覇王よ」

「ああ、お友達からの招待なんだ……って、覇王?」

「うむ」

 

 それって私のこと……だよね、たぶん。ばっちり視線が交錯しているわけだし。

 覇王、覇王かぁ。魔王とか大魔王って呼ばれるよりはまだ救いがあるのかな。でもあんまりいいイメージがないのはやっぱり覇道と呼ばれる治世の基盤が実力行使ありきだからなのだろうか。そう考えるとどっちもどっちであって、褒め言葉として受け取るにはだいぶ無理があるという結論に達してしまうわけだけど。

 天江さんってもしかして私の事が嫌いなのだろうか?

 ちょっとだけ凹みつつそんなことを考えていると、天江さんは視線を私の隣で部屋の中央の様子を伺っている京太郎君へと移す。

 

「それに――覇王の弟子、たしか須賀京太郎と言ったな」

「……ん? お、俺っすか?」

「咲から聞いたぞ。お前、不完全とはいえ衣でさえ手を焼いたあの嶺上開花を封じてみせる程の打ち手だと」

「え!? あ、いやそれは……」

「お前の能力に些か興味がある。一度、衣と麻雀を打って欲しい」

「俺が、天江さんと……?」

 

 青天の霹靂とでも言わんばかりに驚愕の表情を浮かべる京太郎君。その心中は察するに余りある。

 龍門渕高校の天江衣といえば、県大会から全国大会までの間で対戦した中で最も清澄高校――というか宮永咲を苦しめた、その象徴たる人物の一人だ。

 彼女が自分に対して興味を抱いているというのが信じられないという思いと、そんな泰山の頂を望むかの如き強敵から対局を申し込まれたことへの幾許かの恐怖心。

 

 今年スタイルとして定着させた海底一発自摸ならばまだしも、それがなくとも昨年度のようにただ単純に高火力の手を直撃させることで十二分に押し切れる天江さんは普通に手強い。対宮永戦での凶悪なイメージも強く残っているだろうし、宮守の子たちの時とは少しだけ状況が異なっている。

 それに天江さんはおそらく私と同類……知らないうちに他人の心を折るタイプだろう。指名された当の本人が明らかに乗り気であるならばともかく、少しでも躊躇する気持ちが残るようであれば経験値稼ぎにしても逆効果でしかない。彼女には申し訳ないけれどここはいったん辞退して――。

 

「いやー、そのイベントけっこう面白そうだねぃ。んじゃせっかくだし私も入っていい?」

「ちょ――咏ちゃん!?」

「面白い。奇々怪々な打ち手が増えるというならば衣は大歓迎だ!」

 

 や、天江さんはそうだろうけど。今の京太郎君に咏ちゃんまで相手にさせるのは流石に無謀すぎる。

 

「ちょっと待ってください。三尋木プロ、いつの間にかやること前提になってませんか!?」

「なんだ? まさかかの高名な小鍛治健夜の弟子ともあろうものが、敵前逃亡などと腑抜けた事を?」

「――っ」

 

 あ……まずい流れになってる、止めないと――。

 

「分かりました。天江さんの期待に応えられるかはわかんないすけど、俺なんかでよければお相手します」

「フフ、いい目だ。それでこそ試す価値があるというもの――」

 

 

 ああ、遅かったか……京太郎君、あれでいてけっこう負けず嫌いなところがあるっぽいし、あからさまに過ぎたあの程度の挑発を受け流せなかったのかな。

 バチバチと火花を散らす双方を知り目に、咏ちゃんがいそいそと寄ってきた。

 扇子で上手く口元を隠していて見えないけれど、あれは確実にほくそ笑んでいるに違いない。まったく底意地が悪いんだから。

 

「いやいや、青春だね~。お師匠さんはアレに介入しなくて良いの?」

「……煽っておいてそれはどうかと思うけど。咏ちゃん的にはここで私が止めて対局できなくなっても良いの?」

「まぁ私は別にあの少年の実力そのものはさほど気にしてるわけでも無いからねぃ~」

「え……? じゃあ天江さんのほうを気にしてるの?」

「ぶ~、それもハズレ」

 

 京太郎君でもなくて、天江さんでもない……となると、対象者は空席になっている最後の一人ということになるけれども。今のところ名乗り出ている人もいないし、後ろから戦況を見る事が役目でもある私は最初から対局に加わるつもりなんて毛頭ない。

 靖子ちゃんは我関せずだし、竹井さんを筆頭に清澄麻雀部の子たちは他のお客さんの相手で忙しそうだ。となると他に該当者はいなさそうだけど……。

 

「小鍛治さんさ~、ここに来た本来の目的もうさっぱり忘れてるんじゃね? 知らんけど」

「ここに来た目的……あっ」

 

 そういえばそうだった。

 学校に到着するまでの間に私が来た理由を問うてきた咏ちゃんには、事前にあの子のことは話してある。彼女があの子に対して私と同等の興味を抱くのは別に不思議なことではないんだった。

 

 けど、いくら彼女がその資質を持っているかもしれないと言ってもまだ中学生二年生である。

 いきなり日本代表エースと龍門渕の大将、あと一応京太郎君の中に混ざって麻雀を打てというのは余りにも酷ではなかろうか。下手するとそのまま頭のネジの一本や二本ぶっ飛んでしまっても不思議ではないと思うんだけど。

 幸いまだ姿を現していないようだから、今すぐにどうこうという事態にはならないものの……先輩の高校の学園祭に遊びに来たらそこは地獄の一丁目でした、というのは流石に可哀相過ぎるでしょう。

 

 

 

 結局京太郎君は天江さんが仕掛けた実に分かり易い挑発に乗ってしまい、学園祭が終わった後に時間を作って対局する事を約束させられてしまったようだ。

 精神的にタフな彼だから、できれば必要以上のダメージを負わずに生き延びて欲しいところではあるけれども……易々と挑発に乗るのはちょっといただけないな。

 故意か天然かは置いといても、姫松の愛宕さんのように勝負の最中に精神的な部分を揺さぶってくる相手もいる。あの程度の挑発を受け流せないと敵の術中に嵌まって後手を踏むことにもなりかねないし、そこはきちんと考えて欲しかったかな。

 

「ふ~む……」

「……? どうかした、咏ちゃん?」

「いやね、自分で振っといてなんだけど……あの小鍛治さんが他人のことで悩んでるってのが妙に不思議な光景過ぎてさ~。いやぁ、恋って偉大だよねぃ」

「こ、恋とかじゃないから! 私だって普段から他人を気にすることくらいあるよ!?」

「へ~、ふ~ん、ほ~」

「オッケー分かった。今すぐ勝負したいってことだよね? 竹井さんのところが空いたら一勝負しよっか」

「お、いいねぃ。そりゃこっちも望むところだっての」

 

 意気揚々と戦場へと向かう私と咏ちゃん。

 途中で先ほどの険悪なムードも何処へやらの状態でただひたすらキャッキャウフフとじゃれあっていた二人のうちの片割れ、ウサ耳カチューシャ装着済みの女子高生のほうを拾い上げて空いた卓まで持っていく。

 キョトンとしたまま為すがままの彼女ではあったものの、座らされた場所が場所だけに事態はきちんと把握したらしい。

 

「ほう、覇王直々にご指名とは」

「フフ――天江さんも咏ちゃんも、京太郎君と無事に対局したくばまずはこの私を倒してからにしてもらうよ」

「む……支離滅裂だが面白い! 受けてたつぞ、その挑戦!」

「あ~……さっきのでどこかのネジがぶっ飛んじゃったかな。普段はけっこう冷静な人なんだけどねぃ」

「弟子と戦うために師匠から倒すって……普通それ逆なんじゃないですか?」

 

 呆れ顔の咏ちゃんと冷静に突っ込んでくる靖子ちゃんは置いておく。こういうのは勢いが大事なんだから。

 

「師匠、頑張ってください!」

「大丈夫だよ京太郎君。君に害を及ぼそうとするこの有象無象、すべてを踏み潰して今すぐ無に帰してやるからね――」

 

 幾何学模様を取り込んだどんよりとした重苦しい空気が、周囲の世界を覆い尽くしていく。

 能力をフルで開放するのっていつぶりくらいだろうか。天江さんと竹井さんはともかく咏ちゃんには貫通されてしまうかもしれないけれど、ほぼ配牌での一発勝負ならば問題は無い。

 

「こっ、これは……っ!?」

「おいおい、お遊びで本気出すとか大人気ないっしょ」

「私なんて巻き込まれ損じゃないの……これもお仕事のうちだけど、正直泣きたいわ」

「そろそろストレス発散しとかないと本気でぷちっといっちゃいそうだったから。付き合ってくれるんでしょ――咏ちゃん?」

「あー……これ逆鱗踏んづけちまったっぽい? でも私は悪くないと思うんだけどな~……」

 

 今さら日和ったところで慈悲などあろうはずもなし。

 

「あ、やっぱこのひと覇王だわ」

 

 ぽそりと呟いた私の言葉と、それを聞いて漏らした竹井さんの言葉。

 京太郎君を含むその場にいた全員が、後者を肯定するかのごとくただひたすらに頷いていた。

 ……何故?




ここから番外編の二部スタートとなります。
本編のほうは難航中につき、今しばらくお待ちください。

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