すこやかふくよかインハイティーヴィー   作:かやちゃ

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第16局:仮装@されど天使は逢魔に舞踊る

 東北地方の中秋の夕刻は、首都圏と比べると遥かに早く寒さが降りてくるような気がする。

 実際に茨城県土浦市と比べると岩手県遠野市は緯度がおおよそ三度――距離にすると約350kmほど北に向けてずれているから、そもそものイメージからして気温差があることに間違いは無いんだろうけど。

 それにしても、地元の子たちは風の冷たさにも慣れているのか、あまりそういった様子は見られない。

 私たちを先導するようにして数メートルほど前を歩いている姉帯さんと鹿倉さんは、特に気にした様子もなく京太郎君と他愛も無い話で盛り上がっているようだし。その京太郎君にしても寒さを感じている風には見受けられないところを考慮すれば、どうやら肌寒いと思っているのは私だけのようである。

 さてはあれか。単純に私が寒冷地仕様に向いてないというだけなのか。それとも松実(宥)さんのアレが伝染してしまったのか。

 前者はともかく後者は危険すぎる。

 

「うう……」

「どったのすこやん?」

「こーこちゃんは寒くないの……?」

「んーん別に」

 

 言葉の通りけろっとしている。お互いに厚着をしているわけでもないのに、どうしてこうも違うのだろう?

 脂肪に覆われている下に程よく筋肉が付いていると冬でも温かいらしいけど、こーこちゃんはどちらかというと細すぎるタイプだし、それに該当するとはとても思えない。

 

「そりゃちょっとは肌寒いかなーとは思うけどさ。そんなプルプル震えるほどじゃないっしょ」

「そうかなぁ……でも、そうなのかも。あっちの二人は分かるけど、京太郎君も特になんでもなさそうにしてるし……」

「そりゃそうでしょ。長野って南のほうはともかく山岳地帯だから冬はかなり寒いらしいよ? 土地勘無いとイメージ沸き辛いかも知れないけど、北のほうとかスキー場いっぱいあるしわりと豪雪地帯らしいから」

「あ、言われてみれば……」

 

 単純に茨城と比べて西のほうにあるから暖かいものだとばかり思っていたけれど、地形とか標高とかも関係してくるんだったっけ。

 ということは京太郎君もある程度寒さには耐性を持っているということかな。羨ましい。

 

「ていうか上着持ってきてないの?」

「ええと、いちおうあるにはあるけど……」

「なんだ持ってるんじゃない。なら着ちゃえば良いのに」

「うん、でも……」

 

 そもそも朝の時点では取材で岩手に来るなんて考えてもいなかったということもあって、鞄の中には上から羽織るタイプの薄手のカーディガンくらいしか入っていない。

 普段から冷房が効きすぎているお店で冷房病対策で使うために常備しているやつだから、それほど防寒に適しているというわけでもないし。

 

 あと問題がもう一つあって、あいにくと私の荷物はいま京太郎君が持ってくれている。お目当ての物はその中に詰め込んであって、つまり取り出すには鞄を持ってきてもらわなければならないわけで。

 先ほどから前を歩く三人は何の話かよく分からないけど凄く盛り上がっているっぽいし、その程度の案件で後ろからは声をかけ辛いというのが本音だった。

 

「あのね。楽しそうに話してるから邪魔したら悪いかなぁ、って」

「……は~。すこやんってホント変なところで遠慮しいだよね。それで風邪でも引いたら目も当てらんないってのにさ」

「う……」

「しょうがないなぁ。おーい須賀くん、ちょいこっちに来てくれない?」

 

 ちょっと呆れ顔のこーこちゃんが、京太郎君を呼び止める。

 立ち止まり、三人ともが振り返る。当たり前だけど、誰一人として不満げな顔を見せる子はいなかった。

 

「どうかしたんですか?」

「すこやんが少し肌寒いらしいから、ちょっとその鞄を――」

「寒いんすか? なら俺のパーカー使います?」

「――って、おおう? まさかの提案きたこれ」

「えっ? いや、だってそれだと京太郎君が寒いんじゃ……」

「これくらいなら別に平気っすよ。長野だと普通に薄着で出歩ける程度の涼しさなんで」

 

 なにそれ。長野って怖い。

 

 って、いやいや今はそれどころじゃないってば。京太郎君が今しがたまで着ていたパーカーを私が借りるということは、脱ぎたてのそれに袖を通すということであって……。

 でも、せっかく差し出してくれたものを受け取らないというのは不誠実に過ぎる。それにこんな道端で鞄の中身を漁るというのもみっともないし。

 ああもう、そこの二人っ! 人の顔を見てニヤニヤしてるんじゃないの!

 姉帯さんは姉帯さんで、まるで憧れのシチュエーションでも見ているかのような輝いた瞳をしないで欲しい。

 私がどんなに抵抗を覚えていようとも、こうなってしまってはもはやそれを受け取る以外の選択肢は存在していないようなものである。

 

 ああ、ううん。別に嫌がっているわけではないんだけど。その、ね? えーと……うん。

 

「……あ、ありがとう」

 

 真っ赤になりかけている顔を伏せるようにしながら、差し出されたそれを素直に受け取ってもぞもぞと袖を通してみた。

 うん……なんていうか、衣服に残った人肌の温もりって絶妙な感じで暖かいよね。これならば肌寒さなんてものとは無縁のまま生活していけそうだ。

 ただ、二人の基本サイズがまるで合っていないせいか、当然ながら袖はぶかぶか、丈はちょっとしたミニスカワンピくらいの長さがある。どことなく高鴨さんを髣髴とさせる格好になってしまった。

 いやまぁ、下にはちゃんとロングスカートを履いているんだから、さすがにあそこまでビジュアル的には際どく無いんだけど。なんていうか、イメージ的にね。

 

「どうせだから直接肩にかけてあげたらよかったのに。気が利かないなぁ、須賀くんは」

「いやさすがにそれは……キザっぽすぎるといいますか」

「恥ずかしい?」

「……ぶっちゃけすげー恥ずかしいっす」

 

 私だってそんなことをされるのは嬉し……じゃなくて恥ずかしいってば。服を借りているだけでも既にちょっといけないことをしているような気分なのに。

 なにより、自分が少し動くだけでふわりと香る、自分とは違う人間の匂いが……こう、なんだか妙に気恥ずかしく感じてしまう。

 ついついフードを被って頬を隠してしまいたい衝動に駆られるものの、それをすれば完全な不審者の出来上がりである。周囲が薄暗くなっているとはいえ、この天下の往来でさすがにそれをするわけにはいかないし、今度は逆に熱くなり過ぎている頬を夜風で冷ましておくためにも、顔を隠すわけにはいかなかった。

 

「ふぅん、そんなもんかねぇ」

「紳士的な所は良いと思うよー」

「うん。仕方が無いからちょっとだけ評価を上げてあげようかな」

「あの、鹿倉さん。それまでの俺の評価って一体どんなだったんすかねぇ……?」

「トヨネの頭を許可なしで撫でたところで若干マイナスに落ちてたけど?」

「うっ……」

「あ、あれは別に気にしなくて良いよっ!?」

「まぁ相手がトヨネだったからこうやって許してくれてるけど、気をつけておかないとダメだからね? 嫌われるのは須賀くんなんだから!」

「はい。肝に銘じておきます」

「ん、よろしい!」

 

 えへんと胸を張る鹿倉さん。京太郎君に対しては、何故かムダにお姉さんぶっているように見えるのは私の気のせいだろうか?

 いや、たぶん気のせいじゃないよね。

 口では厳しいことを言ってはいるけれど、きちんと年上として敬ってくれているような言動をしてくれる京太郎君のことを気に入っているのは間違いないだろう。

 同年代の子たちと比べてあまりにも小柄すぎるあの体型だと、普段から年齢に不相応な子供扱いを受けているということもあるのかもしれない。そのコンプレックスを満たしてくれる京太郎君の態度は素直に嬉しいんだろう。私も似たような部分があったから、よく分かる。

 

「ところで三人はさっきまで何を盛り上がってたの?」

「ああ、鍋の話をしてました。ほら、長野だとさくら鍋とかきのこ鍋とか色々ありますんで、岩手だとどんな鍋があるのかなーって」

「ほほう、なるほどなるほど。それは実に興味深い話題だね。あとすこやん、浸ってるところ悪いんだけどそろそろ戻ってきて?」

 

 別に浸ってるわけじゃないから。京太郎君の優しさに感動していただけで。

 それを口に出して伝えるよりも前に、こっちの心理をどうやって読み取ったのか、こーこちゃんは三人に聞かれないよう耳元で囁いてくる。

 

「そういう言い訳はさ、せめて真っ赤になった顔を引っ込めてから主張するべきだよん」

「う、うるさいなぁ……分かってるんだから言わないで」

 

 いま頑張ってそれをしようとしているんだから、それなら余計なことを言って邪魔をしないで欲しい。

 

「師匠は茨城でしたよね? 茨城県はなにかご当地っぽい鍋ってあるんですか?」

「え、えっと……ご当地鍋? んー、何かあったっけ……あ、強いて言えばどぶ鍋がそうなのかな」

「どぶ……?」

 

 ああ、そうか。それだけ聞いても具体的なメイン食材はイメージできないか。

 

「ええと、分かり易く言ったらアンコウ鍋だね。コラーゲンたっぷりで美味しいの」

「うぇー、アンコウ……」

 

 あまり露骨に表情を崩さない鹿倉さんをして、心底げんなりとした声が漏れる。

 確かにアレは全体を見るとビジュアルもやたらとグロテスクならば、ダシになった際の風味にも若干癖があるため、苦手という人はけっこういるらしい。切り身で出てくると見た目のヤバさも気にならないし、普通に美味しいのに。

 

「ま、まぁたしかにアンコウ自体はアレだけど、きちんとしたお店で食べるのは本当美味しいんだよ……? お肌にも良いし」

「すこやんの言ってるきちんとしたお店って、コースで一人前ン万円とかする老舗の高級店でしょうが。そりゃ美味しいだろうけど、私ら一般人的には高嶺の花過ぎるって」

「わっ、さすがトッププロ! どうしよう胡桃、私たちの予算規模とは桁が違うよー」

「どうもしなくても、それなら無理して食べなくて良いんじゃないかな」

「私だって毎回そんなところで食べるわけじゃないからね!?」

「あ。やっぱりそういうお店に行ったことはあるんだ。さすが元世界ランカー!」

 

 う……たまにくらい贅沢したっていいじゃない。自腹だもの。

 

「そんな高くないお店でもちゃんと美味しいんだけどなぁ……それじゃさ、岩手ならではの名物鍋って何かあるの?」

「どんこ汁っていうのがあるんですけど、我が家では家族がみんな好きじゃないんで食べません」

「うわ、これはまたバッサリ斬り捨てたね……」

「たしかどんこって魚のことなんだよね? 村にいた頃はぼたん鍋とか山菜鍋が主流だったし、お魚ベースの鍋って私まだ食べたこと無いんだー」

「そうなの? まぁ一回くらい食べてみても損はしないと思うけど……それよりもお勧めは今マイブームのもやし鍋かな!」

「もやし鍋っていうのがあるの?」

「ご当地のやつじゃなくて、鍋の素みたいなのがスーパーに売ってますよね? もやしとかキャベツとか鶏肉とか入れるとトンコツベースで美味しいんですよ!」

 

 豚骨ベース……なんだか嫌なことを思い出してしまいそうになるフレーズだけど、たしかに話を聞く限りは美味しそうかも。

 

「まぁ今晩はどう頑張ってもアンコウ鍋ってわけにはいきませんしね。鹿倉さんお勧めのもやし鍋の素がスーパーにあったら、それにしときましょうか」

「ウンウン、それがいいと思う!」

「わー、ちょー楽しみだよー」

 

 まぁ、今日のところはそれが無難かな……って。あれ?

 

「……ん? 姉帯さんと鹿倉さんも夕飯一緒に食べていくの?」

「えっ? というか今日は全員熊倉先生のお家にお泊り予定なんです! こんな大勢で鍋パーティーなんてはじめてだからちょー楽しみ!」

「あ、トヨネ! それ言ったら――ってもう遅いか」

「――は?」

 

 反射的にこーこちゃんのほうを向く私と京太郎君。

 まともに吹けもしない口笛を口ずさみながらどこか明後日の方向を向いているその横顔を見て、二人揃ってため息をついた。

 

「またなんだ……」

「またですか……」

 

 どうやら今回の取材旅行中は、とことん私を騙しつくすつもりでいるらしい。

 それをしたのがこーこちゃんじゃなくて、それをされたのが私じゃなかったとしたら、そろそろ殺傷沙汰になっていてもおかしく無いと思うよ? いや、ホントにさ。

 

 

 

 地元民の彼女らに近場のスーパーまで案内してもらい、鍋の材料を実に九人分も仕入れてから熊倉先生のお家へと向かうご一行。

 

 いくら申し出てくれたからといって、さすがに五袋近くある荷物を全部京太郎君一人に持たせるわけにはいかない。比較的重い野菜類やら飲み物やらの入った二つの袋を任せ、残りの食材を一人一袋ずつに行き渡るよう詰め込んだ。

 中にはカボチャのような「本当にこれ鍋に入れるの?」というような不穏当な食材もいくつかあったような気がするけれど、きっと気のせいだろう。

 

 ちなみに、私は京太郎君に預かってもらっていた自分の鞄を手元に引き取っているため、買い物袋は持っていない。本日の鍋パーティの実質的なスポンサーということもあって、その扱いは上々である。

 買い物袋と一緒に持ってくれると彼は言ってくれたんだけど、さすがにそれは固辞しておいた。

 上着を借りている上に両手が塞がっている相手に私物まで持たせて自分は手ぶらとか、そんな厚顔無恥な真似が大人としてできようはずもなく。

 

 そんなこんなで、姉帯さんにせがまれる形でこれまで行った海外での出来事を話しているうちに、目的地が見えてきた。

 

「ここが熊倉先生のお家です!」

 

 外見は少し古ぼけた一軒家という感じの民家でしかなかったが、敷地も広ければ庭もやたらと広かった。熊倉先生が一人で住むにはちょっと広すぎるというお話だったけど、たしかにこれはそうかもしれない。

 鹿倉さんを先頭に、引き戸を開けて中に入る。私たちを最初に出迎えてくれたのは、意外な人物だった。

 

「オカエリ!」

「ただいまー。って、エイちゃんだけ? 塞とシロは?」

 

 その問いに、彼女は自慢の絵で答える。速筆で描かれた棒人間チックなそれは、どうみても片方は寝転がっており、もう片方は三角巾にはたきを持つという、いかにもお掃除中といった様相だった。

 

「……どっちがどうなのか、確認するまでも無い気がする」

「シロは自分が必要だと思った時にしか動かないからねー……」

「話だけ聞くとナマケモノみたいな子だねぇ」

「でもさ、部室で怠けたいだけのために家からこたつを持っていく実行力とか無駄に持ってたりもするからね、シロ」

「いろんな意味でそれはどうなの……?」

 

 思う存分だらけるためならそれまでの労力を惜しまないというスタンスなのだろうか? 本末転倒な気がするんだけど……いや、先行投資と割り切れば逆に効率が良いのかな。

 

 出迎えに来てくれたウィッシュアートさんが鹿倉さんとこーこちゃんの持っていた買い物袋を回収しつつ、姉帯さんと京太郎君を引き連れて台所へと向かった後、残された私たちはテレビの置いてある居間へと通された。

 そこには事前の情報どおり、座椅子に深く埋もれるように背中を預け、ボーっとテレビを見ている小瀬川さんはいたものの、掃除をしているはずの臼沢さんの姿は見当たらない。

 

「おかえり」

「ただいま! 塞は?」

「たぶんお風呂の掃除中じゃないかな。帰り際に先生に頼まれてたから」

「ふぅん。で、シロは何を頼まれたの?」

「んー……留守番?」

 

 少しだけ考える素振りを見せながら、首をかしげてぽそりと漏らす。

 鹿倉さんがツッコミを入れるまでもなく、誰がどういう風に勘繰ってみたところで、彼女の態度はウソをついているようにしか見えなかった。

 

「――で、本当は?」

「人数分の布団の用意とか……あっち、もう終わらせてある」

「あ、そうなんだ。よしよし」

 

 ああなんだ、さっきの受け答えは彼女なりの冗談だったということかな。

 さっきも玄関でそれっぽいことを言っていたけれど、ダルそうな見た目とは裏腹にやるべきことはきちんとやる子なんだろう。

 私がそんなふうに感心している間に、もう一人のお客様である福与恒子さんはというと。何時の間にやら鞄を部屋の隅っこに置いて、さっさと座椅子の上に腰掛けてテーブルの上のお煎餅に手を伸ばしていた。

 

「ちょ、こーこちゃんっ! お行儀悪いよ!」

「えー、でもお家で寛いでなさいねって熊倉先生も仰ってたじゃん。いやぁ初めてお呼ばれしたはずなのになんかすごく落ち着くわー、この家」

「それはそうだけど、社会人としての体面っていうものも少しは……はぁ、言うだけ無駄っぽいかな」

 

 いやまぁ、私も今さらだとは思うけれども。そこは一応大人なんだから、家主か、それに準じた人から勧められるまでは猫くらい被っておこうよと思わなくもない。

 呆れ顔でため息を一つ。幸いマナーに厳しい鹿倉さんが何も言わなかったので、見て見ぬフリをしてくれると言うことなんだろう。

 ここは一つその高校生の出来た心遣いに甘えさせてもらうことにして、私も部屋の隅っこで荷物を降ろすことにした。

 

 あと、既に建物の中にいる以上、このパーカーともおさらばということになるから……名残惜しいけど、きちんと畳んで荷物の上に置いておこう。

 私が部屋の片隅で色々ごそごそとやっていると、台所へ向かったはずのウィッシュアートさんが一人で戻ってきた。

 

「あ、エイちゃん。熊倉先生は何時ごろ帰って来るって言ってた?」

「バンゴハンマデニハモドルッテ」

「それって、私たちで晩御飯作れってことかな?」

「ウン」

 

 コクコクと頷く。

 ウィッシュアートさんと宮守の子たちがコミュニケーションを交わす際には、片言の日本語か絵を用いて行うのが通例になっているっぽい。でも、それだと伝達情報の齟齬やら曲解やらが出てきてしまいそうなものだけど……大丈夫なんだろうか?

 手持ち無沙汰だったのと、少し心配になったこともあって、横から口を挟むことにする。

 

『ねえウィッシュアートさん。先生、他に何か言ってなかった? できたらこれをやっておいて欲しい、みたいなことを』

『あ、言ってたかな。サエが知ってると思うけど、先生の家にある炊飯器だけだと人数分炊けないから、トヨネの家から持ってきて追加で炊いておいて欲しいって』

『姉帯さん? 家近くなんだ?』

『トヨネは先生が身元引受人のようなものだから。あ、あとお鍋の下ごしらえはトヨネと小鍛治プロに頼みなさいって』

『最初から任せる気満々だったってことだよね、それ……うん分かった、ありがとう』

「オネガイシマス」

 

(※『』部分は英語です)

 

 ふんふむ。なるほどなるほど。さすがは先生、お客様相手にも容赦がないというか。

 まぁ、一夜の宿を借りるのはむしろこちら側なんだし、やれといわれなくても持ち回りのお仕事くらいはこなしてみせるつもりだけどね。

 

 会話を終えてふと気が付けば、鹿倉さんもテレビを見ていたはずの小瀬川さんも、揃って私のほうを向いていた。

 えーと、なんだろう?

 

「ど、どうかしたの二人とも?」

「小鍛治プロ、英語堪能なんですね……」

「ちょっとびっくりしたというか。あ、決して悪い意味ではないですから!?」

 

 あー、ああ。そういうことか。こーこちゃんは私が英語を話せることを知っているからスルーしてテレビに夢中なんですね、分かります。

 これは別に私特有のスキルというわけではなくて、トッププロと謳われている人たちはだいたい英語での日常会話くらいはできるものと思ってもらっても構わない。世界大会に出場する場合に共通言語として採用されている英語が出来ないとなると、いろいろな面で不都合というか、不利な局面が出てきてしまうからだ。

 良子ちゃんは言わずもがなだし、現日本代表として八面六臂の活躍を見せる咏ちゃんなんかもあれでいて英語は凄く流暢に話すことができる。はやりちゃんに至ってはドイツ語とかフランス語とかも普通に喋ったりできるみたいだし……逆にそれが出来ないとなると、世界の中で成績を残すのは難しくなるだろう。

 というかさっきもウィッシュアートさんのインタビューで喋ってたんだけどね。別撮りだったから気づかなかったのかな。

 

「それより、私はちょっとお鍋の下準備をしなくちゃいけなくなっちゃったから、鹿倉さん、こーこちゃんをお願いね。くれぐれも甘やかさないようにビシビシ叱ってあげて」

「分かりました!」

「えー、ぶーぶー!」

「うるさいそこっ!」

 

 ブーイングが飛んでくるけど、即座に撃ち落としてくれた鹿倉さんに満足しつつ。ウィッシュアートさんに案内をお願いして台所へと向かうことにした。

 

 

 宿泊組の中で料理担当班となるのは以下の四名。

 主任は私こと小鍛治健夜で、その助手にエイスリン・ウィッシュアート。宮守側からの代表は姉帯豊音で、その助手に須賀京太郎となった。

 どうしてわざわざこのジグザク配置なのかというと――まぁ、そのあたりの事情は全員が並んで台所に立っている情景を思い浮かべて察して欲しい。お互いの頭の位置に差があると、指示を出すだけにしてもけっこう喋りづらいものがあるんだよね。

 で、お互いのペアが担当する分野を分けて別々に作業をしていたわけだけど。その結果、

 

「スコヤ、デキタヨ」

「ありがとう、エイちゃん」

 

 何故だかすごく懐かれました。

 ……ああ、何故だかというのはちょっと語弊があるか。何故なのか、その部分には十分に思い当たる節があるのだから。

 その時の様子を一部ダイジェストでお送りするならば、こんな感じ。

 

 

『ウィッシュアートさんは普段料理とかしてるの?』

『向こうだとママと一緒に作ることはあったけど、こっちに来てからはあんまり……』

『ってことはホームステイなのかな? 一人暮らしだとある程度は自炊しないとダメだろうし。あ、できれば海老はこんな感じで背わたをちゃんと取ってね』

『うん。パパが大学時代にお友達だったっていう小父さまの家にお願いして。可愛がってもらってはいるんだけど、包丁は危ないからって握らせてもらえなくて……。こう、かな?』

『あはは。大切なお友達の娘さんを預かってるんだから神経質になっちゃう気持ちは分かるけど、ちょっとそれは過保護だね。うん、そんな感じでよろしく』

『小父さまや小母さまに郷土の料理も作って食べさせてあげたいわ。子供じゃないんだからそれくらい平気なのに。この海老はそのまま鍋に入れちゃうの?』

『郷土っていうとニュージーランドだったっけ? それはこっちの蓮根のすり身と合わせてつみれにしようかと思ってるの。鍋といえばやっぱりつみれは欠かせないからね』

『日本と似たような島国でね、綺麗な景色も美味しい食べ物もいっぱいあってとってもいいところなの! つみれっていうと、肉団子みたいな?』

『へぇ、一度行ってみたいなぁ。あっちのほうは海もすごく綺麗そうだし、バカンスにはもってこいかも。そうだね、似たようなものかな?』

 

 というふうに、世間話と料理の指示を交えながら作業を進めていると。ポカンとこちらを見ている残りの二人に気が付いた。

 ああまたこの感じなの。そんなに私が英語を喋ると不思議な光景に見えるんだろうか?

 

「うわー、エイスリンさんがちょー英語喋ってるよー」

「本場の発音ってやっぱ流暢っていうか、綺麗っすねぇ」

 

 って、え、そっち? 母国語が英語(ネイティブ)なんだから喋るのなんて普通だと思うんだけど。

 ……あ。もしかしてウィッシュアートさん、普段はあんまり英語で喋る事がないのかな? 郷に入れば郷に従えとは言うけれど、それだとあまりにも精神的に窮屈なんじゃなかろうか。

 私も一ヶ月単位で海外を拠点にして生活していた経験があるから分かるけど、円滑なコミュニケーションが取れないというのはけっこう心にくるものがあるから、ある程度はストレスを発散しないと辛いはず。

 それでも作り物じゃない自然な笑顔を絶やさない彼女の心は、私が思う以上に強靭なのかもしれないけれど……何処かで無理をしているんじゃなければいいな、と思わずにはいられない。

 

「ヒサシブリダカラタノシクテ」

「うう、ごめんねぇエイスリンさん。私たち、英語喋れないから……」

「ウウン、ワタシモニホンゴオボエタイカラダイジョウブ。トヨネ、ナカナイデ」

 

 涙目になる姉帯さんに、にっこりと微笑みかけるウィッシュアートさん。天使か。

 昼間の京太郎君じゃないけれど、岩手に天使が降臨していたという説が信憑性を帯びてくる、実に微笑ましい光景であった。

 

 

「師匠が英語ペラペラなのは、やっぱりトッププロが英語とか話せないとダメだからなんすか?」

「んー……まあそうだね。少なくとも国際試合に出場するくらいのプロになると喋れないのはマイナス要素かな。チーム内の人相手なら通訳を介してでも良いかもしれないけど、対局中の選手だったり審判だったりに直接ルールの確認とか指摘をできないとお話にならないからね」

「あー、たしかにそうっすね」

「そういう事情もあるから、姉帯さんもせっかく身近にエキスパートがいるんだし、実践で少しでも会話できるようになっておくと将来役に立つかもよ。プロになった後とか」

「プロ!? 私なんてとても、そんな、恐れ多いですっ」

「恐れ多いって、そんな卑屈な……でもじゃあ、何処かのチームから誘いがあったとしてもプロになるつもりはないの?」

「か、考えたことも無かったかもー……」

「モッタイナイ」

 

 そろそろ高校卒業後の進路決めも大詰めの時期だろうに、ちょっとのんびりし過ぎというか。

 例年通りに開催なら十二月中旬にドラフトがあるはずだから、彼女の特異な部分に目を付けているどこかしらのチームから前段階のご挨拶(と言う名の獲得オファー)があってもおかしくないんだけど。たとえ本人が大学への進学を希望しているんだとしても、それを覆すのがスカウトの仕事なんだし遠慮して話を持ってこないということはないはず。

 ……あ、もしかすると熊倉先生のところで話が止まっているのかな? 色々と特殊な事情を抱えているらしいから、彼女に限ってはそれも有り得ない話ではない。

 

「ウィッシュアートさんは、来年は――」

「エイスリン!」

「……って、え? もしかして名前で呼べってこと?」

 

 コクコクと頷くその期待に満ちた瞳の輝きからは逃れられそうにもない。

 国外で生まれ育った彼女的には、たしかにある程度顔見知りの相手にはファーストネームで呼び合うほうが習慣としては正しいということもあるのだろう。

 うーん、でも……ま、いいか。

 

「じゃあ、鹿倉さんみたいにエイちゃんって呼ぶことにしようかな。私のことは健夜でいいよ」

「スコヤ!」

「うん、改めてよろしくね」

「ウン!」

 

 

 ……とまぁ、こんな感じでね。母国語で普通に会話をすることが出来る相手ということで、どこかで安心した部分があったんだろうと思われた。

 姉帯さんのように純粋な尊敬を向けられるのも嬉しいものだけど、親愛的な感情を向けられることにあまり慣れていない私としては余計にドキドキするというか、どうにもむず痒いものがあったりして。

 無論、天使が懐いてくれることに対しては吝かでない私である。

 

 常に隣に引っ付いてくるエイスリンを見て、京太郎君が(私に対して)心底羨ましそうだったのとか。

 ご飯の準備が出来た頃を見計らって帰って来た熊倉先生が、そんな私たちを見て心底驚いたような表情をしていたのとか。

 摘み食いをしに来たこーこちゃんをスケッチブックの一撃で撃退したエイスリンの雄姿とか、妙に似合っていた臼沢さんの割烹着姿とか、語るべきことはまだまだたくさんあるけれども。

 この後も寝るまでに色々とやるべきことは残っているし、まずは晩御飯を食べて鋭気を養うことにしよう。

 

 

 騒々しくもお祭り気分で楽しかった夕飯が無事に終わり、宛がわれた部屋でお風呂の順番が回ってくる前に着替えを準備をしておこうと荷物の整理をしていたところ。

 トントン、と襖を叩く音は二つ。誰かが私を尋ねてきたらしい。

 

「どうぞ」

 

 パジャマ代わりのジャージを一旦畳んでから、声をかける。すると、ゆっくりと空いた襖の向こう側から現れたのはエイスリンだった。

 

「エイちゃん? どうしたの?」

『あのね。コーコからこれを持って言ってあげてって頼まれたから持ってきたの』

「こーこちゃんから?」

 

 なんだか嫌な予感しかしないんだけど。気のせいであって欲しい――という私の儚くも些細な願いは、一瞬にして木っ端微塵に砕かれてしまった。

 差し出された手の中には、実に見覚えのある紙袋が一つ。

 またか……福与さん、また貴方は私にこれを着れと? そしてこれを着させるからには、何かしらの面倒そうな企画を用意していると?

 

『これってメイド服よね? スコヤはこういうのが好きなの?』

『好きじゃないけど、必要に迫られて着るしかないというかね……はぁ』

『ふぅん。私はてっきりちょっと早いハロウィンでもやるのかと思ったのに』

「……ハロウィン?」

 

 ああ、言われてみれば。

 今は十月の下旬。特典用の企画にあえて季節のイベントを盛り込むとしたら、このタイミングだとそれが一番近いのか。

 実際のハロウィンパーティーというのは十月の末日に行うものと相場は決まっているんだろうけれど、少しくらいの誤差はしれっと無視するのがこーこちゃんである。

 

『ほらこれ。私にもこれを着たらって用意してくれたのよ』

 

 廊下に置いてあったもう一つの紙袋を取り出して、中身を見せてくれるエイスリン。その手には何故か、裾がボロボロになっている漆黒色の外套が握られていた。

 さらに、嬉しそうに笑っている彼女の口元には、にゅるりと不自然なまでに飛び出した八重歯が。

 

『ああ、なるほど。吸血鬼だ』

『女性の吸血鬼はヴァンピレスっていうんですって。どうかな、怖そうに見える?』

『うーん、どちらかというと可愛い、かな』

『え、ヴァンパイアが可愛いの?』

 

 マントを羽織ってくるりと回ってみせる彼女。どこから得た知識だか、「がおー」という感じでポーズを決めているようだけれども……怖そうというには程遠い出来栄えだった。

 あと多分その呼称の仕方は日本特有の造語というか、一部界隈でしか使われていないと思う。

 

『そうだ。それに着替えたら一度リビングに集合だって。キョータローを驚かせに行くって言ってたわ』

『京太郎君を?』

 

 今回の被害者はあちら側で私は加害者側に組み込まれることになるのか。それを素直に喜ぶべきか、はたまた彼の師匠としては喜ばざるべきか。微妙なところだなぁ。

 とりあえずその判断は企画の内容を聞いてからということにして、げんなりとしつつもいつもの装い(猫耳メイド)に着替えてから他の子たちが待つ居間へと行くことにした。

 

 

 綺麗な()()()()碧色(アイス)の瞳(ブルー)という、異国情緒溢れる出で立ちのエイスリンが定番中の定番“吸血鬼”ならば、他の子たちはどうなっているのやら。

 

 居間に戻ってきてまず目に付いたのは、その銀白色の髪にちょこんと犬耳(?)っぽい何かを乗せ、茶色のジャケットに合わせて茶色い膝丈のフレアスカートを履いているダルそうな子。両手に肉球付き手袋を装着済みなせいで物が握れないらしく、もう一人のおかっぱ着物少女にお煎餅を食べさせてもらっているところだった。

 ……どうみても“狼女”と“座敷わらし”だ、あれ。

 

 その隣でしきりに自分の腰周りをチェックしているのが、スリットが妙にセクシーなチャイナドレスを纏った臼沢さん。お札の付いた帽子を被っていることから、どうやら中国の“僵尸”(キョンシー)をイメージしているらしかった。

 あの格好が無理を感じさせないレベルで似合うということは、臼沢さんはかなりスタイルがいいということだ。羨まけしからん。

 

 しかし、真打とでも言うべきか。さらに圧巻なのが、その隣に清楚に佇む黒ずくめの淑女である。

 ぱっと見でどの妖怪かは分からないし、他の子たちのようにとっさに候補が浮かんでくるようなことはなかったものの……その姿を見た瞬間、ゾクリと。何故だか背筋を冷たいものが通り過ぎていくような、悪寒にも似た感覚を味わった。

 思わず呆然と入り口付近で佇んでいると、不意に、こちらに気づいたキョンシー(臼沢さん)が首を傾げながら問いかけてくる。

 

「あ、二人とも来たの――って、エイスリンは吸血鬼だって分かるんだけど、小鍛治プロのそれは何の妖怪なんですか?」

「いや、私のは別に妖怪ってわけじゃな――」

「すこやんのはあれだね、妖怪アラフォー(猫耳メイド仕様)ってとこ」

「アラサーだよっ! 何その顔が縦に異様に長くなってそうな妖怪の名――!?」

 

 後ろから聞こえて来たいつもの声に反応して、振り返ってツッコミを入れたところで。真正面からかぼちゃのお化けと遭遇して、思わず反射的にその場を飛び退いてしまう私。

 隣にいたはずのエイスリンに飛びつかれてしまったものの、正直それどころではなかった。

 

「……ジャック・オー・ランタン?」

「へいへい。どうだいすこやん、この私の見事なかぼちゃ野郎っぷりは」

「あ、うん……なんていうか、本格的過ぎて逆にひく」

 

 腕に絡み付いてきているエイスリンも、その言葉に賛同してコクコクと頷いてくれている。

 どうしてこーこちゃんはいつもこう、明らかに間違っている方向にむけて全力疾走するんだろうか? 走り出す前に確認とかすれば良いのに。

 加えてその手に持っている器の中のかぼちゃの煮つけ(臼沢さん作)がやたらとシュールだし。小腹が空いて台所に盗みに行って来たんだろうけど、時と場合は考えようよ。

 

「さて。これで全員揃ったかい?」

 

 最後に登場した熊倉先生は、綺麗な白い色の着物を着て隣の部屋から現れた。

 先生の年齢からするとそれが普段着のようにも見えるし、妖怪のようにも見える……っていうのはさすがに失礼か。仮装というよりは普通に着物を着ているだけだし。

 まぁ、あれがもし妖怪の仮装だとするならば、それはもう思い浮かぶのは一つしかないだろう。さながらそれは、砂かけ――。

 

「先生のそれ、やっぱり砂をかける妖怪ですか?」

「……塞、それは私をお婆と言っているのと同義だね。ご希望とあらば心臓まで凍りつかせてあげても良いんだよ……麻雀で」

 

 ――うん、知ってた。雪女だよね、うん。知ってた。

 

 

 というわけで、熊倉先生の仰るとおりにこれで全員が揃ったことになる。

 但し、今回驚かされる対象になっている京太郎君を除いて、だけど。

 吸血鬼と狼女、座敷わらしとキョンシーに、かぼちゃのお化けと雪女。何故だかその中に平然と組み込まれている猫耳メイドの私と、いまだ名前の分からぬ漆黒の淑女。

 多種多様のこの妖怪たちを前に、一体彼は何をさせられるというのだろう……今回は半分以上他人事ながら戦々恐々である。

 

「こーこちゃんは今回、何を企んでるの?」

「そりゃもちろん、トリックオアトリート! ってことでね、須賀くんにいたずらしちゃうぞー!っていう企画さ」

「京太郎君に悪戯……」

 

 なんだろう、そのちょっとイケナイ雰囲気を醸し出しているフレーズは。

 

「あれ? でもそれって大丈夫なの? 宮守の回の特典に清澄の京太郎君が出ることになっちゃうんじゃおかしくない……?」

「そこらへんは大丈夫。撮影スタッフの新人君ってことでごまかしちゃうから」

「……ごまかしきれるの、それ? だって清澄のところで普通に顔も声も出ちゃってるのにさ」

「そこらへんは何とでもなるって。須賀くんけっこう良いキャラだし、いっそ今回から準レギュラー化しちゃうのも手じゃない?」

「あの子はまだ高校生で普通の一般人なんだから少しは自重しようよ、こーこちゃん……」

「平気だって。カットしなくちゃいけなそうならすればいいだけなんだし。すこやんが料理対決で強権発動したみたいにね!」

「……まぁ、やりすぎた場合はそうさせてもらうかもだけど。それでもいいなら、私は別に……」

「おっけー。んじゃご一同、哀れなる子羊の元へといざ参らぬ!(それに――掴みがそれなだけで、本来の企画は別に用意してあるんだよね)」

 

 というこーこちゃんの心の声には当然誰も気づかないまま。

 一行は、おそらく宛がわれた部屋の中で何も知らされずに普通に寛いでいるだろう京太郎君を襲撃すべく立ち上がった。




ここから恒例の特典パートに入ります。京太郎と健夜さんの対局反省会(?)は番外編にてやる予定。
次回、『第17局:百語@そして誰も居なくなった夜?』。ご期待くださいませ

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