需要あるかはさておき。
それと、とある読者の方から指摘を受けたのでここで答えておきます。
本当なら続きを書く上でそれらの矛盾を説明するべきなのでしょうけど、現在そこまで続きを書くかどうか未定なので。
弱いカードがデッキの上の方に浮かぶなら弱いエクゾディアとか簡単に揃えられて無双できるか?
たぶん出来ると思います。
条件を満たせばですが。
まずあの世界で、エクゾディアパーツはそうそう揃えられるような代物ではないのではないかと。
デュエル内で手札にそろえる以前にデッキを組む前段階での困難が予想されます。
あと作中の主人公の考察ではモンスターのカードとしてのレベルではなくカードに宿る精霊の格によって重さが決まるのではないかと推測しました。
カードのレベルは低くても異様に重い。
レベルが高いのに軽い、なんてのもあるかと思います。
そして多分、エクゾディアは重いです。
それでも
遊戯クラスなら出来るでしょうね。
それこそどこかの虫使いが対抗手段を思いつかず、結局海に投げ捨てるなんていう暴挙に出てしまうくらいに。
こういう考察って物凄い大好きなんですよね。
1話
道中にあるカードショップに寄り道して購入した5枚入りのカードパックの袋を、私『暁 遊理』は無造作に開きました。
中身に期待はしません。
幸運の値が個人単位で決定されている世界です。
強力なレアカードは相応の強力な幸運を備えた
私のような弱小
ああ、私がライトロードやBFに好かれていれば世の中本気でチョロかったでしょうに…この世界に存在しているかどうか知りませんけど。
全てがカードゲームの勝ち負けで決定される世界、なかなかどうして世知辛いのです。
あの日、運命のカード(?)に出会ってから2年あまり、紆余曲折を経て全く勝てないという事態からはある程度脱した私ですが……相変わらず
「墓荒らし、強制転移、エクスチェンジ…マジックアームシールド…相も変わらずの偏ったラインナップですね」
今回に限った話じゃないですが、どのパックを買ってもモンスターカードが異様に少ないんですよね。
改めて思いますが、
ここまで毛嫌いして避けられる私っていったい…
『モンスターカードもあるじゃない? トーチ・ゴーレムだって…良かったじゃん。上級モンスターのレアカードだよ』
「いや効果からして裏切る気満々じゃないですか…」
【トーチ・ゴーレム】
悪魔族・闇・星8・攻3000/守300
効果モンスター
このカードは通常召喚できない。
このカードを手札から出す場合、自分フィールド上に「トーチトークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体攻撃表示で特殊召喚し、相手フィールド上にこのカードを特殊召喚しなければならない。
このカードを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。
自分フィールドじゃなくて相手フィールドに召喚されるモンスター。
しかもご丁寧に攻撃力0の的まで用意する周到さ。
死ねと言ってるのですか?
私に
『別に嫌われてないと思うけどな~、むしろ好かれてるんじゃないかな? ほら人間にもいるじゃない、好きな子に意地悪しまくる子』
「冗談でもやめてください」
普通に迷惑です…
『好かれやすい体質……の亜種なのかもね。いうなれば精霊に舐められやすい体質、みたいな?』
「なんですかその不思議体質は?」
精霊にしろ動物にしろ好かれやすい人はいるんでしょうけど、舐められやすい人なんて聞いたことがないのですよ。
私は駅で電車の切符を買いつつそう言い返しました。
周囲の人が怪訝な顔で私を見ますが、無視です。
『ある意味、精霊に好かれやすい人よりレアだよね』
「ちっとも嬉しくない!」
『いやでも実際希少だよ? こうして私が見えているわけだし』
彼女はそう言ってコロコロと笑います。
さっきから極当然のように私の隣で半透明に透けながらふよふよ浮いて話しかけてくる彼女ですが、当然ながら人間ではありません。
この子こそ、私が部屋中にばら撒いたカードの中で私が選んだ……否、私を選んでくれた
ですが、私は彼女を元にデッキを組むことはできませんでした。
必要なカードが足りなかったとか、そういう理由じゃありません。
というのも、彼女が思いっきり公式ルールに違反する禁止カードなのですよ。
要するに私は使えるカードと相性が悪く、逆に
つまり、この世界の通常の
電車の到着を待つ間、私は改めて思います。
どうしてこうなったし。
『人間が決めたルールでしょ? 勝手にカードにしておいて、勝手に禁止にするなんてひどいと思わない? 良いじゃん、お互いはみ出し者同士仲良くしましょうよ。希少なのよ? 精霊が見えてましてや会話ができる人間って。それも貴女みたいな小難しい理屈屋は特に。理論派
「いや、そんなこと言われても私は貴女をデッキに入れるわけには行けないんですよ」
自分がやや擦れていることは自覚していますが、それでもグレるわけにはいかんのです。
あと、私が精霊が見えてましてや会話までできるのは才能云々の話ではなく、前世の記憶と比較して幸運度―――この世界の言葉で言えば『
ちなみに精霊は『カー』というそうです。
総じて『
そしてそれら『見えるけど見えないもの』を誰の目にも見えるようにするのが
この世界における
これのどこが単なるカードゲームなのかって話ですね。
前世のそれとは全然違います。
特撮玩具と本物のヒーローベルトくらい違うのです。
この世界の
なまじパワーがあるだけに、小手先の小技はあまり必要ないのです。
体格の優れたスポーツ選手にテクニシャンが少ないのと似たような理屈です。
エンドサイクとかしませんからね。
勝てる人は―――
『で、話は戻るけどそのカードは結局入れるの? デッキに』
「…………いれます」
出会いは重要です。
偶然が存在しないこの世界においてすべての現象は必然。
ならば
それが良い意味か悪い意味かは解りませんが。
『天邪鬼ね~、むしろこれはツンデレなのかな? 私はそんな貴女が
「天邪鬼とか、貴女にだけは言われたくないですね」
私は改めて彼女の姿を見やりながらそう言い返しました。
左半分からは天使の白い翼、右半分からは悪魔の黒い翼。
左右非対称の一対の翼が生えた少女。
【心変わり】
通常魔法(禁止)
相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。
このターンのエンドフェイズ時まで、選択したモンスターのコントロールを得る。
相手のモンスターをノーリスクでこちら側に寝返らせる破格のカード。
モンスターが言うこと聞いてくれないという悩みを抱える私にとって、この効果は喉から手が出るほど欲しいんですけど……ちなみに私はひそかに彼女のことを心の中で「ココロちゃん」と呼んでます。
「禁止じゃなければなぁ…」
あれ以来、すっかり口癖になってしまったその一言を呟きながら私は到着した電車に乗り込んだのでした。
行先はデュエルアカデミアの入試試験会場です。
よもや電車が事故で遅れるとは思いませんでした。
相も変わらず
『貴女は別に運に見放されているわけじゃないと思うよ? むしろ好かれてるんじゃないかな? ただし幸運にじゃなくて奇運にだけど』
「なお悪いです!」
奇運に好かれたって良いことなんて一つもないじゃないですか!
でもまあ、それでも試験自体には間に合ったのは不幸中の幸いでしょう。
ある意味ラッキーと考えるべきかもです。
デュエルアカデミアの入試はペーパーテストの筆記と、試験官と
とりあえず、筆記試験の結果は上々でしたとだけ。
順位は上から数えて21番目。
筆記受験者の合格者人数は120人くらいだったはずなので、上の中くらいの成績ということになります。
まあまあですね。
もっとも、私の場合問題は此処からなんですけど。
筆記試験をパスした受験者だけが受けることが出来る
地元の中学受験の時は勝たなくてもOKだったので何とかすり抜けることが出来たのですが、今回は勝たないといけません。
試験官は試験用に強さを調節されたデッキを使うとはいえ、難易度ははるかに上です。
大丈夫ですかね…?
見た感じ、試験官に強い
『何人か
ココロちゃんが実技試験会場の観客席を見ながら言いました。
確かに、周りより一回り強いオーラを放ってる人がちらほら見えますね
皆エリートの証であるオベリスクブルーの制服を着ているのですよ。
こういう光景を見てると、名門学校に来たんだなぁと実感します。
<22番の
あ、アナウンスで呼ばれました。
実技の順番は筆記の成績が低い順に行われるみたいです。
いよいよですね。
「「
私と試験官の先生は試験フィールドを挟んでお互いに向き直りました。
「先行は受験生からです」
「あ、そうなんですか?」
ではお言葉に甘えてドロー、私は6枚の手札を眺めて……眺めて…………まあ、こうなることはある程度覚悟はしていたんですけど、それでも実際に起こるとやっぱり絶望しますね。
『……モンスターこないね~、見事に
ココロちゃんが私の手札を覗き込んで苦笑い。
うう、一応デッキには先ほど入れたばかりのトーチ・ゴーレムも含めて17枚もモンスターカードが入ってるはずなのですが……
「わ、私は場に2枚のカードをセットしてターンを終了します」
「おや、手札事故ですか? ついてませんね」
「いえ、いつものことですので」
私の最初のターンは大体いつもこんな感じです。
私の
いつだって相手の攻撃を耐え凌ぐところからスタートです。
もし耐え凌げなかったら……うん、その時は素直に負けるしかないです。
「では、私のターン、ドロー。私はフィールド魔法、伝説の都 アトランティスを発動します」
【伝説の都 アトランティス】
フィールド魔法
このカードのカード名は「海」として扱う。
このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の水属性モンスターの攻撃力・守備力は200ポイントアップする。
また、お互いの手札・フィールド上の水属性モンスターのレベルは1つ下がる。
「このカードの効果は、水属性モンスターをパワーアップさせるかわりにレベルを1つ下げることです。この効果によりレベル4になったギガ・ガガギゴを手札より通常召喚」
「うわぁ…」
【ギガ・ガガギゴ】
爬虫類族・水・星5・攻2450/守1500
通常モンスター
強大な悪に立ち向かうため、様々な肉体改造をほどこした結果恐るべきパワーを手に入れたが、その代償として正義の心を失ってしまった。
1ターン目からいきなり攻撃力2450…いえ、フィールド効果でさらパワーアップして2650ですか。
正直キツいです。
どうしてこの世界の人たちはこうも簡単に強力なカードを初手から引けるのでしょうか?
「さらに手札より【古のルール】を発動」
【古のルール】
通常魔法
手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。
「手札よりレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚します。私は【ゴギガ・ガガギゴ】を特殊召喚!」
【ゴギガ・ガガギゴ】
爬虫類族・水・星8・攻2950/守2800
通常モンスター
既に精神は崩壊し、肉体は更なるパワーを求めて暴走する。
その姿にかつての面影はない…。
「……」
私はフィールドに並んだ舌を噛みそうな名前の二足歩行のムキムキ武装トカゲを呆然と見つめました。
タクティクスは別段驚くようなことじゃないです。
問題は詰み込み紛いの超絶な神引きです。
ホント、この世界の物理法則はどうなってるんでしょうか…
『で、どうするの? このままだと
「そんなこと言われなくても分かってるんですよ!」
私はココロちゃんの他人事のような突っ込みに叫び返しながらリバースカードオープン!
「……? さっきから貴女は何を一人で…」
「速攻魔法、月の書!」
試験官の先生が何か言ってきますが無視です!
【月の書】
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。
「フィールド上のモンスター1体の表示形式を裏側守備表示にします。私はゴギガ・ガガギゴを指定!」
指定されたゴギガ・ガガギゴの姿が消えて裏側表示のカードになりました。
これでフルアタックは防げたはず。
「でも、ギガ・ガガギゴがそのままですね。ギガ・ガガギゴでダイレクトアタック!」
「くぅ!」
暁 遊理
LP4000→1350
攻撃力2650のダイレクトアタックは普通に痛いです。
理屈で言えば単なる
身体じゃなくて
「カードを1枚伏せて、ターンを終了します」
「私のターン、ドロー」
私はダイレクトアタックの衝撃によろけながらもデッキからカードを引きました。
『ねえ? あの伏せカード』
「(分かってますよ)」
どう見ても
それもかなり強力な。
この世界のカードはただのカードではなく、精霊の宿った特別なカードです。
故にとんでもなく強力な精霊が宿ったレアカードだったりすると、目には見えない威圧感を放っていたりするのです。
私は見たことはないですが神のカードとかはさぞかし物凄いんでしょうね。
重要なのはその理屈はモンスターカードだけでなく、魔法カードや罠カードにも適用されるということで。
ざっくり言えば、戦況を一発でひっくり返せるような強力なカウンタートラップはたとえ伏せ状態でもなんとなく「これはヤバい」みたいなのが分かっちゃうんですよ。
余程巧妙に仕掛けない限り一発でバレてしまいます。
ミラーフォースなんかは特に威圧感と存在感がパない上に有名過ぎるので引っかかる
そのせいで、カウンタートラップをデッキに多用してしかもちゃんと使いこなせる
で、そんなわけであの伏せカードは要注意です。
この重圧、ミラーフォース級の地雷である可能性が大です。
『もっとも、モンスターを召喚できなきゃその地雷を踏むことすらできずに終わるけどね』
「やかましいですよさっきから。それにモンスターはちゃんと引けました!」
「……ずっと気になっていたのですが、貴女はいったい誰と会話をしているのですか?」
「独り言です! 私はモンスターをセット、さらにリバースカード、太陽の書を発動!」
【太陽の書】
通常魔法
フィールド上に裏側表示で存在するモンスター1体を選択し、表側攻撃表示にする。
「このカードにより先ほど私のフィールド上にセットした裏側守備表示モンスターを表側攻撃表示に変更、反転! 幻惑のラフレシア!」
【幻惑のラフレシア】
植物族・地・星2・攻300/守900
リバース効果モンスター
リバース:ターン終了時まで相手フィールド上表側表示モンスター1体のコントロールを得る。
反転召喚で不気味にうごめいて花粉をまき散らす毒々しい花がフィールドに現れました。
「幻惑のラフレシアのリバース効果発動! 相手フィールド上の表側表示モンスターを選択してコントロールを奪い取ります!」
「何っ!?」
「私はギガ・ガガギギョ……ギガ・ガガギゴを指定!」
「……」
『……』
変な沈黙が場を支配する中、花粉を吸ったギガ・ガガギゴが虚ろな表情でこちらのフィールドにやってきます。
『なんでこのタイミングで噛むかな…』
「(うるさい!)」
全部、このトカゲの名前が言いにくいのが悪いんです!
「……だが、その効果はこのターンの間だけ、しかも私のフィールドには守備力3000のゴギガ・ガガギゴがまだいます!」
試験官の先生、スルーしてくれてありがとうございます。
私は若干顔を赤くしつつ
「はい、ですので私は奪い取ったギガ・ガガギゴに装備魔法を装備します」
「攻撃力を上げて攻撃するつもりですか?」
「いえ、攻撃はしません」
トラップが怖いですからね。
「私は手札より装備魔法、反目の従者を2枚、ギガ・ガガギゴに装備します」
「っ!?」
鋭い目つきの鳥がカードから2羽現れて、ギガ・ガガギゴの肩に止まりました。
「私はこのままターンを終了します」
私がそう言った瞬間、虚ろだったギガ・ガガギゴに光が戻り、試験官側のフィールドに帰っていきます……肩にとんでもない爆弾を止まらせたまま。
試験官の先生が顔をひきつらせて後ずさりましたが、もう手遅れです。
【反目の従者】
装備魔法
装備モンスターのコントロールが移った時、装備モンスターのコントローラーに装備モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。
「ターン終了により、幻惑のラフレシアの効果が切れ、ギガ・ガガギゴのコントロールが相手に戻ります。そして戻った瞬間、装備していた反目の従者の効果発動。装備したモンスターのコントロールが移った時、装備モンスターのコントローラーに装備したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与えます。装備しているギガ・ガガギゴの元々の攻撃力は2450、反目の従者は2枚なのでその倍の4900ダメージを相手に与えます」
ギガ・ガガギゴが試験官のフィールドに足を踏み入れた瞬間、反目の従者が試験官に襲い掛かりました。
「ぐあああああ!?」
試験官
LP 4000 → 0
「…勝った」
『勝ったね…しかもワンショットキル』
気づけば観戦していた人たちが騒いでいます。
全然気づきませんでした…
「負けました。素晴らしいコンボでしたよ」
試験官の先生が手を差し伸べてきました。
私はそれに応じながら
「いえ、別に……ところで1つ聞きたいのですが、結局あの伏せカードは何だったのですか?」
「ミラーフォースだよ。攻撃には警戒していたんだが…まさかあんな方法で
「やっぱり」
【聖なるバリア -ミラーフォース-】
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。
攻撃しなくてよかったです。
どのみち攻撃なんてできませんでしたけど。
<21番の
アナウンスを聞き流しつつ、私はフィールドを後にします。
…ふと思い、デュエルディスクからデッキを外し、一番下のカードをめくってみました。
……強欲な壺でした。
『…よく合格できたね』
「はい」
僕はポケモンを捕まえる時、たとえ意味がないと分かっていてもボタンを連打するタイプです。
そして多分、遊戯王の世界ではボタン連打行為が無意味じゃない。
気合で幸運を引き寄せる、なんてことがリアルで可能なんだと。
腹が減っては
ところで、世界観はなんとなくGXにしましたけど良かったのですかね。
一応まだ修正できなくもないですが…
なお僕自身は遊戯王は漫画にもゲームにもアニメにも詳しくありません。
何か明らかなプレイミスとかがあったら指摘お願いします。
無論誤字報告も。