異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第6話

「はい、お兄ちゃん!お魚焼けたよ」

 

 少し早めな昼食、野外で美幼女と差し向かいで食べるなど、今までの生活では考えられなかったことだ。

 春のような陽気であり、本来ならピクニック気分の楽しいイベントだろう。串に刺さり程良く焼けた川魚を差し出すアリス。

 甲斐甲斐しい仕草と可愛い容姿と相俟って大変魅力的だが、僕が疲労困憊(ひろうこんぱい)で伏している原因の八割が彼女の所為だ!

 

 右手を動かすのすら辛い。

 

「精気を吸うのをさ、加減してくれよ。モンスターの攻撃より身内の栄養補給がダメージ大きいって、本末転倒じゃないか?」

 

 草むらに大の字に寝ていたが力を振り絞って起き上がり、何とか焼き魚を受け取る。

 栄養補給のために野趣溢れる焼き魚の脇腹にかじりつく。ジュワっと脂が滲み出て振り掛けた塩と相俟って美味い。

 

 力が漲ってくるようだ……

 

 塩は倉庫にあった岩塩みたくなった物を砕いた。人間は塩分摂取が必要。

 だが魚と塩だけではいずれ必要な養分が足りずに栄養失調で倒れるかも……

 

「えへへ、お兄ちゃんの精気ってさ。スッゴく美味しくって麻薬みたいな常習性があるんだよ。

きっとアリス、お兄ちゃんから離れられなくなるよ。嬉しいでしょ?」

 

 女の子座りをして両手を胸の前で組み、頬を赤く染めながら告白してくれました。文面だけ見れば熱烈な愛の言葉とも思える。

 

 金髪美幼女を虜にした僕の精気って、ナンダカナー……

 

 それ、どんなエロゲ的な展開?だがアリスに手は出せない。幼女かつ幽霊(レイス)だから、男の欲望は空回りだ!

 実体化はできるみたいだが、だからどうしたって感じだ。僕はロリコンじゃないから更に辛い。

 成長しない美幼女の好意をどうしたら良いの?ロリコンに成れれば苦労はしないのだが……無理!

 

「確かに世話になりっぱなしだからさ。お礼は構わないが、限界まで吸わないでよね。

精気はHPやMPとは無関係みたいだけど、体力満タンでも精気不足じゃ動けない」

 

 ステータスを確認したがアリスが精気を吸っても、どの値も下がらない。

 隠しパラメーターがあるのかもだが、知る術が無い。ポカンとしてるアリスを見て不思議に思う。

 

 何か変なことを言ったかな?

 

「HPとかMPってなに?」

 

 アレ?コッチじゃ読み方が違うのかな?

 

「体力のことをHP、魔力はMPって言わないの?」

 

 焼き魚を食べ終わると、直ぐに甲斐甲斐しく二本目を渡してくれる。

 

「言わないよ。お兄ちゃんの故郷ではそう言うんだ」

 

 即答だけど、言い回しや発音とかが違うのかな?それとも元々そんな言い方はしないのかな?

 

「うーんと、レベルとか経験は数値化してる?」

 

 二匹目はゆっくりと味わって食べる。この魚は元の世界のニジマスみたいな感じだ。

 だが微妙に僕の知っている生き物達と違う。この魚も模様がパンダみたいに白黒なんだ。

 鯉にはそんな模様もあるが胴回りが鯉のように丸くなく細身だ。類似性はあるが、似て非なる世界……

 

「レベル?経験?数値化?なにそれ美味しいの?

前もレベルアップを手伝えって言ってたけど、てっきりモンスター退治を手伝えって思ってたよ。

具体的に誰が何レベルなんて、普通は言わないよ」

 

 不思議なことを言うね、お兄ちゃんって変!とか言われて笑われた。

 何が楽しいのか分からないが、彼女は無邪気に笑う。こんな可愛い妹なら欲しいと正直に思う。

 うーん、この世界ってレベルやパラメーターって概念が無いのかな?

 ゲーム内じゃ当たり前な自分のステータス確認だが、この世界じゃ僕だけ脳内メッセージが流れるのか?

 

 電波受信は僕だけの変態仕様か?

 

「アリスは自分のレベルやパラメーターの数値って分かる?レベル35とか知力72とかさ?」

 

彼女のステータスは

 

レベル : 35

HP : 129

MP : 173

筋力 : 35

体力 : 18

知力 : 72

素早さ : 54

運 : 40

 

と明らかに僕より強い。

 

 そもそも幽霊に負ける筋力ってなんだ?僕より3倍以上も筋力が高いって何だよ!

 

「レベルって自分の職階のこと?私は高位神官の娘だけど、生前は未だ見習い神官だったよ。経験って試練のことかな?」

 

 職階?会社の役職みたいだけど?それに試練って何だろ?課題をクリアすれば良いのか?

 

「職階って色々あるのかい?」

 

 三本目の焼き魚を貰う。これは鯰(なまず)ににてるが、黒っぽくなく銀色だ。

 

「見習い神官から下級神官、上級神官へと続くよ。司祭とか副司祭とかもあるけど、これらは上級神官になってからなれる役職だよ」

 

 職階や役職なんて、まんま企業と同じだ。

 

「ふーん、どうやったら職階が上がるんだい?」

 

 四本目の焼き魚を受け取る。食べるペースが速いが大体五本で満腹感を得られる。そろそろ腹八分目ってところかな。

 

「見習い神官になるには魔力があることが条件だよ。一定の見習い期間を経て幾つかの魔法を覚えてから昇格試験が受けられるの。

大体5年から遅くても8年くらいで下級神官になれるの。8年以上掛かると見込み無しとして放逐されるよ」

 

 すっ凄いリアルな昇格条件なんだけど?思わず焼き魚を食べる手を止めてアリスを見る。

 ニコニコとこちらを見てる彼女は、昼間に毒舌(言葉責め)を吐いた人物とは思えない穏やかさだ。

 しかし経験を積んで試験をするって現代日本と変わらないぞ。

 

「魔法って、どうやって覚えるの?僕でも使えるのかな?」

 

 彼女は雷や炎の魔法を使っていた。僕にも僅かだがMPがあるってことは、魔法が使えるのかな?童貞で長い年月を経て魔法使いになるより簡単か?

 

「お兄ちゃんも魔力を感じるから使えると思うよ。魔法はね、あるときにいきなり頭の中に閃くの。

これは人それぞれだけど、あらかじめ使える魔法が何かの拍子に解放されるのよ。後は学ぶの。

私は回復系は閃いたけど攻撃系は書物を読んだり教えてもらったりして使えるようになったんだ。

人間で魔力の資質を持つのは、王家や神官の家系以外だと10000人に1人くらいなんだよ。完全な血の繋がりによるものなの」

 

 なるほどな……あるときに閃くとはレベルが上がると自動的に覚えるのだろうか?だが学べは使えるってのは良いな。

 

「僕がアリスに教えてもらえる魔法ってあるかな?」

 

 遂にRPGみたく魔法が使えるようになるのか!実は少しだけ勇者や魔法剣士に憧れている。右手を突き出して「爆発しろ!」とかやりたい!

 

「閃いた魔法を習得してから学ぶんだよ。魔法を使う使える感覚を掴んでからじゃないと、学ぶ魔法は使えないよ」

 

 現実?は非情だ……そう簡単に厨ニな体験は、させてくれないみたいだ……自力で魔法を覚えてから、余所から学べるのか。

 

「えー、そうなの?最初に閃くって、どれくらいで閃くのかな?」

 

 某竜のクエストだと、最初に覚えるのは確か回復の呪文だ。曖昧な記憶だがレベルも5前後だったと思う。

 僕は現在レベル2だから、もう少しかな?後スライムを5匹倒せばレベルが3になる。

 

「私は8歳のときにヒールを覚えたよ。普通、素質があると10歳前後で最初の閃きがあるの。

お兄ちゃんは既に大人なのに閃かないなんて、何か欠陥があるのかな?」

 

 大丈夫、私が養ったげるとか笑われてしまったが、幼女レイスのヒモってどうなんだ?

 

「うーん、僕の住んでいた所だと特定の条件下(童貞)で年を重ねると魔法使いになれる伝説が有ってね。まぁ頑張るよ」

 

 そう言って食べ尽くした魚の頭や骨を埋める。ゴミは地に返すのが、この世界の流儀だ。

 

「さて、取り敢えずスライムを五匹倒したい。だから探してね、無理せず二匹くらいの奴らを……」

 

 レベルを3にして検証してみよう。僕は非童貞だから、魔法使いには成れないかもしれない。だが少しでも魔力があるなら可能性はあるはずだ。

 

 勇者・魔法剣士・魔法使い・僧侶・賢者……称号は見習い剣士だが、転職やジョブチェンジができるかもしれない。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 パチパチと燃える焚き火を見ながら、川魚の焼き加減を調整する。今回は犬擬きの骨付き肉も一緒に炙っている。

 この世界のモンスターは食材でもあるらしい。

 生き物を解体するなんて初めてのことで、恥ずかしながら空腹なのに食欲が無い矛盾を抱えている。

 魚はアリスが採ってくれたので、ほとんどヒモだ……今、彼女は不思議なモノを見るような目で僕を見ている。

 

 嫌悪感を覚えないのが唯一の救いか……

 

「お兄ちゃん、やっぱり普通じゃないね。アリス困っちゃうよ」

 

 あれからスライムを重点的に倒し、レベルを5にした。

 必要経験値も5→10→20→40と二倍に増えてるが、レベル3からは犬擬きとも戦えるようになった。

 犬擬きは経験値が3で合計7匹倒した。スライムの3倍強いと思っている。

 午後いっぱいで60匹近いモンスターを倒したのだが、普通に考えて遭遇率がおかしくないか?

 

「なぁアリス。モンスターの遭遇率が高過ぎないかな?半日で60匹遭遇って、普通なら人が住める環境じゃないよね?」

 

 命を奪う連中がゴロゴロ居るんだよ。普通ならもっと安全な場所を探すよね?

 この街が廃墟になったから、モンスターが増えてるのか?

 

「うん、アリスもそう思う……街が廃墟化して30年以上経つけど、それでも多いね。

普通なら半日探して半分くらいだよ。後は定期的に討伐をしていたけど、廃墟化して放置したから自然に繁殖して増えたかだね」

 

 人の手があったときは定期的に討伐してたのか。ならば、この異常な遭遇率も納得なのかな?

 

「それでも半分くらいなの?そんなに危険なの?異常だよね」

 

 この世界のデンジャラスさは、治安の悪い外国のスラム街以上だ!定期的に危険を排除しないと住めないなんて。

 

「平地に現れるモンスターは弱いからね。お兄ちゃんだって後半は余裕で倒してたでしょ?

初めて会ったときは、魔力があるだけの村人以下の感じだったんだよ。

それが半日モンスターと戦っただけで、下級兵士並みの強さに感じるの。有り得ないよ!

下級兵士は見習いから5年近く修行しないとなれないんだよ。彼等が領地の周辺を廻ってモンスターを定期的に退治するの。

今のお兄ちゃんなら、どこの街に行っても領主様が雇ってくれるよ」

 

 下級兵士とは新しい単語だな。確かにゲームだと村人Aはレベル1でパラメーターもオール1とかだ。

 お城の兵士もモブか精々がやられ役程度だから、ゲーム設定だとレベル5から20くらいだよね。

 つまり村人Aからお城のモブ兵士Aに昇格したんだな。

 だけどステータスが見れないのに、外見を見ただけである程度の強さが分かるアリスってスゲーな。

 

 流石はレベル35のレイスだ。

 

 試しにステータスと思うと頭の中に情報が浮かぶ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

職業 : 見習い魔法剣士

称号 : 美幼女のヒモ

 

レベル : 5

 

経験値 70 必要経験値 80

 

HP : 18/35

MP : 8

 

筋力 : 21

体力 : 15

知力 : 12

素早さ : 15

運 : 5

 

魔法 : ヒール

 

装備 : ショートソード 布の服

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 見習い戦士から見習い魔法剣士になったぞ。どっちも見習いだが、ヒールが使えるようになったから戦士から剣士に変わったのか?

 

 てか、ヒール!これで死ぬ確率が各段に下がる。回復最高!

 

「なぁアリス」

 

「なに?お兄ちゃん。魚は未だ焼けないよ。川魚は生焼けだとお腹を下すんだよ。

お肉も未だ駄目。焦って食べるとお腹を下すから我慢だよ。もう少し待ってね」

 

 衣食住をアリスに頼り切りだから、称号がヒモなのね……でもレイスの餌とかじゃないから良いのか?

 

「あのね、魔法が使えるらしいんだ。回復の……」

 

「はぁ?」

 

 本日何回目かの彼女の驚く顔を見ながら、早く魔法を使いたいと思う。何だかんだと、このふざけた世界に結構順応してきたんだな。

 


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