異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第45話

 端から見れば僕っ娘クール美少女に頬を舐められたリア充野郎な僕だ。

 

 大変不本意だが、周りのヒソヒソ話が辛い。

 多分だが僕は強いけど女性を独り占めにする男の敵として認定されただろう、それは嫉妬と呪いの籠もった視線で分かる。

 嫉妬パワーで人が殺せるなら僕はダース単位の回数で死んでいるぞ。

 

「兄ちゃん、姉ちゃんの面倒を見ろとは言ったが嫁にしろとは言ってないぞ」

 

「違います、全くの誤解です」

 

 そんな誤解をされて、万が一帰ったときにアリスやデルフィナさんに変な風に吹き込まれたら大変だ。

 ここはハッキリと否定しておかねば!

 

「いや、説得力ねーし……兄ちゃん、自分の姿を見てから言えよな」

 

 ん?自分の姿?別に変な所は……アレ?

 

「ロッテさん、外套掴むの止めてください」

 

 ロッテさんが僕の外套の裾を掴んでいた、まるで子供が母親から離れないためにするのと同じように。

 

「イヤ、僕は君と離れたくない」

 

「オイオイ、熱々じゃねえかよ。兄ちゃん風紀は乱すなよ、続きはベルレに帰ってからにしな」

 

 全く、何人の女を誑かせば良いんだ?俺がミーア一筋なのにラミアと幼女に続いて美少女たぁ節操無しじゃねぇか!

 

「コッヘル様!小声の部分、聞こえてます!」

 

「遊びはここまでだ!砦に入るぞ、松明に火を付けろ。第一隊と第二隊は槍を装備して同行しろ。

第三隊と第四隊は入り口付近で待機、残りは周辺の捜索だ。行くぞ!」

 

 槍は今回の増援部隊が持ってきた武器だ。

 狭い室内では取り扱いが難しいと思うが、集団で槍襖(やりふすま)みたいにすれば敵の接近を止められる。

 邪魔なら手放せば良いだけだからな。照明係の兵士さん二人の後ろにコッヘル様、両脇に僕とロッテさん。

 その後に槍を構えた兵士さんが二十人と中々の大所帯だ。

 

「結構広いですね……」

 

 今歩いてる廊下だが幅は3m高さは2mはあるだろう。

 廊下の左右に小部屋があるが、扉なんて既に無いから廊下から見れば中が空っぽなのが確認できる。

 この砦は大岩を積み上げて建てたみたいだ。

 壁の石積みの形状は不揃いながらも1m角クラスの大岩を組み合わせている。

 現代で言うと城の石垣のイメージだろうか?

 コツコツと靴音、ガチャガチャと鎧の金属部分が擦れる音が響く。

 少し埃っぽいが生物の居る臭いがしない、腐敗臭とか糞尿の臭いがだ。

 

「そうだな、何にも無いな……突き当たりに階段か。ヨシ、二階へ上がるぜ」

 

 真っ直ぐな廊下、左右に小部屋、突き当たりに階段と砦としては単純な構造じゃないか?

 軍の施設って普通は侵入した敵が迷うように入り組んだ造りを……色々と考えながら階段を上ると二階に着いた。

 二階は大広間だ、柱しか無い大空間の突き当たりに同じような階段が見える。

 窓も多いので自然光が差し込み松明が要らないくらいに明るい。

 

「凄い大空間ですね。これだけの空間を柱だけで支えるなんて凄い建築技術だな……

天井は一枚板形状の岩を使って梁を無くして柱だけで構造体を保たせてるのか。プレハブみたいだな?」

 

 一枚当たり数トンもの巨岩をどうやって積み上げたのだろうか?古代の神秘を考えさせられるな、暫し幻想的な空間を見つめて……

 

「なぁ兄ちゃん?土木か建築の技術にも詳しいのか?梁とか柱とかさ、それにプレハブって何だ?」

 

「えっ?その、まぁ……興味がありまして……独学で……色々です」

 

 まただ、また疑われるようなことを言ってしまった。いくら感動したとは言え、このウッカリ属性は酷くなってないか?

 コッヘル様が、しどろもどろな僕の肩を叩いて先を促す。うーん、色々と疑われてるかもしれないな。

 

 三階に到着したが、この階は一階と同じ造りだ。真っ直ぐな廊下の左右に小部屋があり突き当たりに四階に続く階段。

 先頭の照明係が周辺を照らしながら歩いていくが、特に何も居ないし無い。

 

 そのまま進み最上階に続く階段を上がる。

 

 最上階である四階に到着、だがこの階は半分屋根が重みで崩れていた。

 そしてトンビモドキの巣があり突然の侵入者である僕らを威嚇している、その数は八匹で巣は複数あり雛がピャーピャー鳴いている。

 

「降りるか、雛の親を殺すのは忍びないぜ」

 

「そうですね、僕等はアンデッド出現の討伐が任務ですし……」

 

 我が子を守る親の姿はたとえモンスターと言えども美しいものだ。槍を携えた兵士たちが先に階段を降りていくのを見ていたが頭上に影が通ったので見上げると……

 

 腐敗した液体を撒き散らしながら羽ばたくロック鳥ゾンビがトンビモドキの巣に降り立った。

 

 羽根を広げれば5m以上はあるロック鳥は鋭い嘴(くちばし)と爪が武器だ。ロック鳥のゾンビ化なんて初めて見たぞ。

 我が子を守るために群がる親鳥を威嚇しながら雛を食おうとしている。果敢にロック鳥ゾンビに襲い掛かる親鳥を羽根の一振りで弾き飛ばす。

 

「飛ばれたら逃げられる……殺るなら今しかない!」

 

 雛鳥を三匹一度に咥え上を向いて飲み込もうとしている奴の胸に目がけて斧を投げ付ける!

 縦回転が掛かるように振り下ろして二本共に投げた後、ツヴァイヘンダーを抜いて真っ直ぐ駆ける。

 投げた斧は二本共に刺さらなかったが、打撃力はあったのだろう奴の胸の辺りの肉が飛び散った!

 クェェェーと耳障りな鳴き声を聞きながら、先ずは逃げられないように右羽を根元から叩き切る。

 片羽だけでも2m以上の長さがあるが、腐りかけているためか何とか切断できた。

 

「危ない!」

 

 振り下ろした体勢は無防備、僕の首に鋭い嘴で突こうとしていたのを横に転がって躱す。だがトンビモドキの巣を潰してしまった。

 慌てて逃げる雛鳥を潰さないようにして後に飛び去る……

 

「君は無謀……」

 

「兄ちゃん、先走るな!」

 

 コッヘル様とロッテさんが兵士から槍を受け取り連続して投げ付ける。

 ロック鳥ゾンビは残された左羽根で槍を払おうとするが数には勝てずに胴体に二本刺さった。

 止めを刺すタイミングを計っていたが、ロック鳥ゾンビは不利を認めたのかヨロヨロと逃げようとするが片羽では飛び上がることもできず……

 建物の端によろけていって、奇声を上げながら四階から一階へと落下していった。

 

「えっと、下の連中は大丈夫か?」

 

 慌てて下を覗き込めば、入口付近で待機していた第三隊と第四隊の連中にタコ殴りにされていた。

 暫くして勝鬨(かちどき)が聞こえたので上手く倒せたのだろう。

 

「良かった……何とか倒せましたね」

 

 ホッとして、その場に座り込んでしまったがコッヘル様から脳天に拳骨を食らった。

 

「痛い、痛いです、師匠……」

 

「馬鹿野郎、無理するな!確かに飛行するモンスターの羽を切り飛ばした判断は正しい。

もし奴が飛べたら俺たちは危なかったがな。でも一声掛けろ、無茶はするんじゃねぇ!」

 

 結構本気で殴ったのか僕が石頭だからか、コッヘル様は自分の右手を振りながら説教をくれた。

 

「すみません……先走ってしまって……」

 

 頭を下げたが殴ったその手で今度はワシャワシャと撫でられた。

 

「いや、良くやってくれた。助かったのは俺たちだ。だが、もう無理はするな、お前は俺の愛弟子なんだからな」

 

 そうダンディーに笑いながら兵士たちと一緒に下に降りていった。

 愛の鞭にしては本気で痛かったが、本当に心配してくれたのが分かってニヤニヤと笑ってしまった。

 頭を擦ると大きなタンコブができていたがご愛嬌だろう。取り敢えず僕が転がって壊してしまった巣を直す。

 直すと言っても散らばった巣材の枯れ枝とかを掻き集めてドーナツ型に形成するだけだが……

 粗方直してからパンパンと手を叩いて埃を払う。

 そろそろコッヘル様の後を追おうと振り返るとロッテさんが立っていた。

 そういえば彼女が危ないと叫んでくれなければ攻撃を受けてしまったんだよな。

 

 未だお礼を言ってなかった……

 

「有り難う、ロッテさん。君が叫んでくれなかったら危なかったよ」

 

 頭を下げながら僕は皆にお礼を言ったり謝ったりばかりだなと思った。頭を上げると目の前にロッテさんが……

 

「僕、君を助けた。だからお礼が欲しい」

 

「お礼?ん!」

 

 頭を抱えられて唇を奪われ……精気も奪われ……

 

「ん……んん?これは……んー」

 

 ビックリした顔でキスを一旦止めたロッテさんだったが、更にディープなキスをしてきた。ヤバい精気の減りが……

 

「グギャ!グギャギャ!」

 

 意識を失う前にトンビモドキたちがロッテさんに飛び掛かり、驚いて彼女は僕を放してくれた。

 

「あ……ごめんなさい。僕、吸い過ぎた。でも凄く濃厚で美味しい。君って何者?」

 

 瞳が輝きを放っていた深紅から徐々に黒に変わりながらロッテさんが僕を見つめる……

 

「いや、僕は普通の……って痛い、痛いよ、止めて……」

 

 どうやらトンビモドキたちは僕を助けてくれたわけじゃなくて僕らを巣から離したいんだ。

 嘴でお尻を突かれながら僕等は建物の中へと逃げ出した……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「やれやれ、酷い目に遭ったね……」

 

「ごめんなさい。僕、吸い過ぎたけど大丈夫?」

 

「違うよ、トンビモドキたちのことだよ。せっかくロック鳥ゾンビから助けたのにさ、お尻を突くなんて酷いよね?」

 

 親鳥五羽にお尻を突かれながら逃げ出したことが恥ずかしかった。

 いや、モンスターだから倒しても良かったんけど、親子の愛を見せられた後だとね……

 

「変な人だね、君って。モンスターを助けたり妖魔の僕を怖がらなかったり……決めた!僕、君と一緒に行くよ」

 

「どこに?」

 

 確かにベルレの街に戻るけど、その後はアリスとデルフィナさんと一緒に家に帰るんだけど……

 

「君の恋人のラミアと話をつける。

君をシェアしたい、その代わり他の妖魔から協力して君を守る。君の存在が他の妖魔に知られたら大きな諍いが起きるから……」

 

 ムン!みたいな感じで小さくガッツポーズをしてるけど、何言ってるの?

 

「何を言ってるの?僕をシェアするって何だよ!僕は物じゃないんだぞ」

 

 テコテコと前を歩くロッテさんに文句を言うが無表情で首をかしげられて終わりだ。僕は妖魔の美少女に(餌として)好かれたらしい。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「おう、兄ちゃん!遅いぜ、ナニやってたんだよ?」

 

「壊した巣を元通りにしていました。コッヘル様たちこそ何をしてるんですか?」

 

 下に降りると兵士たちが倒したロック鳥ゾンビの解体をしていた。腐肉を取り外し骨や羽根を集めているけど……凄く臭いです。

 

「ああ、ゾンビ化したとは言え元はロック鳥だからな。素材としては貴重なんだぜ。

それにロック鳥は固く輝く物を飲み込む性質があるからな、お宝が見付かる場合があるんだ」

 

 光り物を集める性質ね?

 

 マウントコングもそうだったな、武器に宝石に銅鏡も見付けたっけ。

 どの道遠征中に発見した物の権利は雇い主にあるので僕は関係無いか……

 

「良い物が見付かると良いですね。僕は少し休ませてもらっても良いですか?緊張が取れたら疲れてしまって……」

 

 まさかロッテさんに精気を吸われて疲労困憊(ひろうこんぱい)ですとは言えないのだが、正直立ってるのも辛い。

 

「ん?そういえば眼の下にも隈ができてるな?今日の功労賞は兄ちゃんだからな。

構わないぜ、休んでな。おい、神官に兄ちゃんの治療をさせな!」

 

 コッヘル様の恩情で砦の一階の小部屋を与えられて休むことができた。神官さんにヒールを掛けてもらうと気持ち楽になったのだが……

 

「何で貴女が居るのよ?」

 

「僕?僕は護衛。彼は貴重だから奪われないように守らないと駄目だから」

 

 ムールさんとロッテさんが狭い小部屋の中で睨み合っているんだ。

 中年の神官も、程々にしないと干からびるぞ!とか訳の分からないことを言って肩を軽く叩かれた。

 

「ヤレヤレ、あのロック鳥ゾンビがボスだったら討伐遠征は終わりだが他にも居るのかな?」

 

 僕の呟きを女性陣は聞いてくれなかった……

 


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