異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第42話

「次の三体は俺が貰うぜ。兄ちゃんにばかり良い所を取られたくないからな。それに目立ち過ぎはマズいだろ?」

 

 ある程度、大物を倒しておかないと追撃されてしまう。だが何体倒せば、いつまで戦えば良いのかが分からない。

 だからコッヘル様に同行を願った、そんな判断は僕には分からない。

 

「いえ、最高責任者を最前線に引っ張り出した責任があります。まずは僕が……」

 

 自分より大きい相手の倒し方がなんとなく分かってきた。バランスを崩して一撃入れる、相手の土俵には立たない。

 卑怯っぽいが周りも何も言わないから良いのだろう。

 

「じゃ連携するぞ、兄ちゃんが牽制して俺が止めだ!」

 

 コッヘル様、僕が活躍し過ぎて拗ねたとかじゃないな。軍の立場上、民間人が活躍し過ぎるのは互いに良くないんだ。

 

「了解、サポートします。奴らのバランスを崩しますから止めの一撃入れてください」

 

 僕も興奮して周りが見えていなかった……ベルレ領主軍の最強戦士コッヘル様より目立つことはデメリットしかない。

 このウッカリと言うか考えが浅いのを何とか直さないと、今に取り返しのつかない失敗をするだろう。

 僕は成り上がりたいんじゃない、訳ありのアリス達と幸せに暮らしたいだけなんだから。

 

「ヨシ、まずは先頭の奴からヤルぜ」

 

 単体でノシノシと歩くオークゾンビは腹が裂けて臓物か覗いているが、奴らって何なんだろう?アンデッドモンスターの定義って何だかな?

 

「分かりました、師匠!」

 

 不敬だったらすみません……

 

「おい、師匠って何だよ?」

 

 ツヴァイヘンダーを背中に差して斧を二刀流宜しく構える。僕はオークゾンビの膝を破壊し、バランスが崩れたところをコッヘル様が止めを刺す。

 師匠と呼んだのは兵士たちに僕等の関係をより上下関係の厳しい師弟と思わせるためだ。

 流れの傭兵が活躍するより、大隊長の弟子が活躍した方が受けが良い。自身の保身のためが八割以上だが、師事したいのも本当だ。

 先頭のオークゾンビは僕を近付けないように棍棒を振り回しているが、斧は投げられるんだぜ。

 顔面に向けて投げ付ければ、オークゾンビは庇うために意識を集中する。

 

 躱すか両手で防ぐかだ!

 

 だから足元がお留守になるので膝の部分に簡単に斧を振り下ろせる!

 

 膝関節の皿を砕くように斧がめり込む。凄い悲鳴を上げて膝を押さえるために屈むオークゾンビの首を刎ねるコッヘル様。その断面は滑らかだ……

 コッヘル様は切り裂くのに特化した剣技を好むが、基本的に大剣は叩き切るだから使い続けると切れ味は悪くなる。

 僕の得意技は突きだからマシだが……

 

「ヨッシャー!ヤッたぜ、次いくぞ。左の奴をやるぜ」

 

 前のめりで倒れたオークゾンビを確認すると、汚い腰布が捲れて汚い尻が見える。しかも、このオークゾンビは片玉が潰れていた!

 どうでも良い情報を知ってしまったが、本当にどうでも良いな。

 

 気を取り直して左右のオークゾンビを見るが、左の方が近い。右は何かを警戒するように、その場で左右を気にしている。

 まだ距離もあるし何かを気にしているなら丁度良い。

 

 左の奴を倒すことに専念できる!

 

 膝に刺さった斧を抜き取り軽く振って血糊を払うが、剣と違い意味が無かった……

 最初の奴は丸太の棍棒だったが、コイツは加工されたメイス擬きを持っている。

 丸太の先端に鉄屑を括り付けただけだが、ただの丸太の棍棒より破壊力が高い。

 

 顔は醜悪だが、その目には此方を見下すような嫌な感じだ……モンスターの知性は個体差があって強く長生きな連中ほど狡猾らしい。

 現代でもカラスやネズミがそうだ。害虫駆除で捕まるのは幼獣が成獣でも若い個体ばかり。

 成熟した個体は中々捕まらないんだ。

 

「師匠、コイツは今までの連中と違いそうです!狡猾な感じがします」

 

 よく見れば最初の奴より一回り大きく全身傷だらけだ。体長3mくらいの筋骨隆々の凶悪アンデッドモンスター、それがオークゾンビ。

 

「そうだな……手に持つ武器もそうだが、動きも良いぜ。兄ちゃん、本気出すか?」

 

 今もほとんど本気だが、兵士の士気を上げるための台詞かな?豪快な見た目と性格なのに細かいことにまで気を配れるのが流石だ。

 

「ええ、本気で行きます。左右から攻めますか?」

 

 ニヤリと笑って応えるがイマイチ恥ずかしい、僕はダンディーには程遠いな。

 

「遅れるなよ、行くぜ!」

 

 様子見で顔に向かい斧を投げたが、メイスで弾かれた!その隙にコッヘル様が接近するが、メイスを一振りして牽制しやがった。

 コイツ、力技だけじゃないぞ、それなりの技量も持っている厄介な奴だ。

 

「ならば、コレならどうだ!」

 

 左右からの攻めを前後に変える。

 オークゾンビの真後ろに回り込むが、奴も体を動かして僕とコッヘル様が両方同時に視界に入るようにする。

 

「師匠、奴の隙を作りますから自分のタイミングで攻撃してください!」

 

 先ずは一投目を顔に向けて斧を投げ付け、続いて腰に差していたメイスを二投目として股間に向けて投げる。

 股間なら刃が無くてもメイスでも大ダメージを与えることができるだろう。

 最後にツヴァイヘンダーを抜いて駆け出す。

 

 急所に連続して投げたのに両方躱しやがった。顔は右腕で股間は膝で守りやがった!

 

 そして僕を迎え撃つためにメイスを振り上げるが、視線から外れたコッヘル様が真後ろからオークゾンビの両足を切り裂く。

 堪らず前屈みになったところをツヴァイヘンダーで頭を叩き割る。

 

「どうよ、師弟の連携は!残り一体だ、気張るぜ」

 

 格好を付けたかったが返り血をモロに浴びてしまった、酷くスプラッターだな。シャツの袖口で顔だけ、目の周りを重点的に拭う。

 

「あと一体ですね……アレ?」

 

「ああ、ありゃ誰だ?」

 

 残りのオークゾンビを倒そうと見れば、何故か仰向けに倒れていて、その傍に……

 

 小柄な女の子が一人で立っていた、その手にモーニングスターらしき鈍器を持って。鈍器から血が滴っているしオークゾンビは頭がザクロ状になっている。

 状況的に考えて彼女がオークゾンビを倒したのだろう。だが、彼女のファッションは、この世界では有り得ない。

 

 何たってミニスカのゴスロリだし、頭に小さなシルクハットを載せているし、極め付けはオーバーニーソックスだし。

 アリスの私立幼稚園の制服みたいな服装も驚いたが……あのファッションもヤバい感じがする、この世界の常識と逸脱している。

 

 しかも彼女を見てから手の震えが止まらない。

 

 用心のために斧を拾い構えると、ゆっくりと彼女が僕らの方を見た。かなりの美少女だ、僕と同じ黒髪をボブカットにして瞳も黒いが、胸は薄い……

 

「君は誰?」

 

 言葉は聞こえなかったが唇の動きで、彼女が何を言ったのかが分かった。

 

「君は誰?」

 

 再度、問い掛けられた。カラカラに渇いた喉が痛い、何かを言いたくても言葉が出ない。まるで蛇に睨まれた蛙だ……

 

「俺たちはベルレの街から来た領主軍だ。俺はコッヘル、コイツらを率いている」

 

 コッヘル様が油断無く大剣を構えて少女に向き合った。流石は大隊長、でも彼女の異常さは理解しても危険性は感じていなさそうだ。

 

「私?私はロッテ」

 

 名前を教える時も何故か僕を凝視している。無表情なのが余計に怖い。

 

「ロッテは、この集落の住人か?他に生き残りは居るのか?」

 

 どう見ても寒村に居るレベルの美少女じゃないですよ、コッヘル様!

 

 異常を感じてください、危険ですって!

 

 周りの兵士たちも遠巻きだが警戒している。当然だ、オークゾンビを撲殺できるんだ。

 

「居ない、私に仲間は居ない、他の人も知らない」

 

 無表情かと思えば淡々とだが悲しそうに応える。周りの警戒が少し薄れたのが分かる。

 美少女の憂いには皆さん同情的なんですか?

 

「そうか……俺達はアンデッドモンスターの討伐の途中だ。一旦下がるが一緒に来るか?

希望するなら安全な場所まで送ろう。もっとも増援が来たらベルレの街に負傷者を帰すのに同行させる。道中、近くまでならだ」

 

 首を傾げて考えるロッテさんは中々可愛い。少なくとも兵士たちは警戒を更に緩めている。

 

「君は?」

 

 トコトコと目の前まで接近されて指差された。無警戒じゃなかったのに、易々と接近されてしまった。

 

「僕かい?僕は、この遠征が終わるまでは……」

 

「そう、なら付き合うわ」

 

 少しだけ微笑み、軽く手に持つモーニングスターを振ってから肩に担いだが、この娘……力が強いぞ、半端無く。

 

 近くでじっくり見たモーニングスターは全金属製で、少なくとも10㎏はあるだろう代物だ。コレを片手で軽々持つなんて普通じゃないだろ?

 レベルアップした僕でさえ、片手で軽々は無理だぞ。

 

 ステータスを確認……

 

「ヨシ、兄ちゃん。

姉ちゃんの面倒を見てやれ。かなりの使い手だから、同行してくれるのは嬉しいぜ。

姉ちゃん、報酬は払うから力を貸してくれ!アンデッドモンスターの討伐と不死の王の遺跡の調査だ」

 

 コッヘル様にワシワシと頭を力強く撫でられてしまった。

 

「不死の王?遺跡の調査?分かったわ、手伝う」

 

「しっ、師匠?僕が面倒を見るんですか?無理ですって!」

 

 ニヤニヤ笑いやがって、このロッテさんは間違い無く妖魔だ、僕には分かる!

 しかも強力だし、もしかしたら復活した不死の王と関連が……コッヘル様に肩を抱かれて引っ張られ、ロッテさんから距離を取った。

 そして耳元で囁かれる。

 

「弟子は師匠の言うことを聞くもんだろ?

なぁ、愛弟子の兄ちゃんよ。少なくとも女をこんな危険地帯に一人で居させるわけにはいかないだろ?

領主軍は領内の民を守らねぇと駄目だ。だが本音は怪しい女だと思うぜ。

オークゾンビを倒せるほどの奴だからな。アレに対抗できるのは俺か兄ちゃんぐらいだ。俺はミーアが嫉妬するから駄目だ。

女はお断りだぜ、だから観念して面倒を見な」

 

 ポンと肩を叩かれたが、状況が分からない。もう一度周りを確認するが……

 燃え盛る集落、炎を嫌い近付かないゾンビ、撤退を開始するコッヘル様と兵士達。

 

 それと僕の外套を摘むロッテさん。

 

「どうして、どうしてこうなったんだ?何が悪かったんだろう?」

 

 端から見れば美少女に懐かれた、だが、彼女の瞳には飢えた野獣の凄みがある。

 

「君、君から妖魔の匂いがするよ。ボクと同じ妖魔の匂いが……多分、レイスとラミア?」

 

 スンスンと目を閉じ匂いを嗅がれてます。しかも僕と同じ妖魔とかカミングアウトされた?

 コッヘル様が手招きしてるから、早く来いってことなんだろうけど……

 

 今僕は捕食者と並んで居るんです!

 

「ん、まぁ……ね。

ラミア族のデルフィナさんとね、一緒に暮らしてるんだよ」

 

 直ぐに襲ってこないと判断し恐る恐るだが撤退を行う。

 要はロッテさんと一緒に歩いているのだが、彼女も何も言わずに付いてきてくれている。

 

「そう、ラミア族の……貴方はデルフィナの餌?」

 

 ああ、ヤッパリ吸精妖魔にとって美味しい精気の持ち主は餌扱いなのか……

 

「違うよ、恋人さ」

 

 自分の台詞が凄く恥ずかしかったが、敢えて恋人と言った。ハーレム、いや二股の片方とは言いたくないから。

 ロッテさんは少し目を見開いて驚いていたが「ふーん、そうなんだ。君、珍しいね」と珍獣扱いだ。

 

「急ごう、皆が待ってるよ」

 

「君、気に入ったよ」

 

 ニコって僅かに微笑んでくれたけど、気に入ったのが異性としてでなく食糧としてなのかが気になるのだが……隙を見て彼女のステータスを見た。

 

 

職業 : グーラー

称号 : 寝起きの不死美少女

 

レベル : 28

HP : 255

MP : 104

筋力 : 79

体力 : 57

知力 : 40

素早さ : 66

運 : 35

 

 うん、寝起きってことは封印から目覚めたとか?

 

 でも不死の王としてならパラメーターが低い気がする、何か見落としがあるのか?

 

 因みに僕のステータスと比べると違いが分かるな、僕だって順調にレベルは上がっているのだが……

 

 

職業 : 魔法剣士

称号 : アンデッドキラー

 

レベル : 19

 

HP : 188/188

MP : 59/59

 

筋力 : 63

体力 : 41

知力 : 45

素早さ : 54

運 : 19

 

魔法 : ヒール スリープ ライト キュアパラライズ キュアポイズン

 

装備 : ツヴァイヘンダー メイス 皮鎧 手作りの外套 皮の小手 皮のブーツ

 

 うん、称号が格好良くなったのが嬉しいな。

 


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