異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第40話

 アンデッドモンスターの討伐遠征に参加した。

 

 最下級のゾンビだけかと思えば中級のオークゾンビが八体以上混じっていると避難民からの情報が……

 中級と言えども本職の兵士が10人連携で倒せる相手だ。

 圧倒的に物量が足りないが、コッヘル様は自分と僕なら単体でも相手になると言った。

 恩有るコッヘル様の頼みを断ることは辛いので、申し入れを受けた。

 

 コッヘル様は露払いで二部隊も付けてくれたので、先ずは先頭のオークゾンビに戦いを挑む!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 オークゾンビは、その回りに多数のゾンビを侍らせていたので正面の四体を兵士さんたちに倒すようにお願いする。

 流石は戦うことが本職の兵士だけあり、僕とオークゾンビの間に一瞬の空白地帯ができた。

 

「出し惜しみはしない。いくぞ、刺突三連(しとつさんれん)!」

 

 適当な技名を言いながらオークゾンビに向かって駆け出す!

 

「ウガァー!」

 

 両手を上げて威嚇するように吠えるが、丁度良い。ツヴァイヘンダーを水平に構えて接近、飛び上がりながら突きを連発する!

 

 両目と口の中にツヴァイヘンダーを連続で突き刺す。

 

 三度目の突きで勢いが止まったので、オークゾンビの胸を蹴って後ろに飛び去る。

 着地をして周囲を警戒、ゆっくり後ろに倒れるオークゾンビを確認するが倒せたみたいだ。

 

 念のためにツヴァイヘンダーを薙ぎ払いオークゾンビの首を刎ねる。

 

「凄い、一撃だぞ……」

 

「よく分からないうちに倒したぞ」

 

「刺突三連、格好良いじゃないか!」

 

 周りの兵士が褒め称えてくれるが、独り言の技名をしっかりと聞かれてたのが赤面モノだ、厨二病が発病だ!

 

「周りに注意してください!次は右側の奴を倒します。周囲のゾンビを倒してください」

 

 一体目は成功、難なく倒せたが運が良かっただけだ。両手を上げて威嚇してくれるなんて、何て親切なモンスターなんだ!

 次のオークゾンビに辿り着くには十体以上のゾンビが居る。

 僕はツヴァイヘンダーを本来の用途である叩き斬るに変えてゾンビの首を刎ねていく。

 両手を伸ばして振り抜けば圧倒的なリーチがありゾンビの攻撃は全く危なくない。

 三体のゾンビの首を刎ねれば次のオークゾンビに辿り着いた。

 先程は急だったから余裕が無かったが今回は違う。

 

 オークゾンビをゆっくり観察するが……酷い格好だな。ボロボロの腰布を纏った筋肉と脂肪の塊な肉体。

 黄色く濁った目に上を向いた団子っ鼻、唇は捲れ上がり汚い牙と涎が垂れている。

 コイツは右手に丸太を握っているから、武器を使うという程度には思考能力があるんだな。

 

 しばし睨み合うが奴は唐突に丸太を投げてきた。クルクルと回転する丸太を右側に飛んで避ける。

 

 コイツ、意外に頭が良い。

 

 両手を前にして掴むように接近してくるので右足で踏ん張り膝を曲げて、更に伸ばすことで反動を付けて後ろに飛ぶ。

 僕を掴み損なった奴は前屈みの体勢だから、丁度頭が僕の腰の高さにある。

 迷わずツヴァイヘンダーを振り下ろしオークゾンビの頭を真っ二つに叩き斬る!

 勢い余って地面まで切ってしまったが、固い地面を叩いたことで両手が痺れた。

 

 何とかツヴァイヘンダーを引き抜き、周りを警戒する。

 

 お付きの兵士20人が周囲のゾンビを近付けないので、最悪な隙を突かれることが無くて安心した。まだだ、まだ僕は未熟なんだな……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「おいおいおい、僅かな時間でオークゾンビ二体を倒したぞ!負けられねぇな、おい」

 

 俺をも守りに徹させる独自の連続の突きを入れて一体目を倒した後、ぎこちない体捌きからの一撃でオークゾンビの頭をザクロみてぇに砕いて仕留めた。

 

 まだ一体も倒してない俺の立場がねぇぞ!

 

 兄ちゃんは突出し過ぎていたので警戒しながら後方の仲間の援護に向かった。

 中々できる判断じゃねぇな、普通なら敵を目指してドンドン先に進むだろう。仲間の危険にまで気を配れるのは将として必要だ。

 兄ちゃんの戦い方を観察し危なげないことを確認してから自分も敵を倒すために行動する。

 

「オラオラオラ!邪魔だ、どきやがれ!」

 

 目の前のゾンビ三体を薙ぎ払い、奥に居るオークゾンビに駆け寄る。

 

「回転連舞三連!」

 

 飛び上がりながら必殺の一撃を見舞い、オークゾンビの頭と両手を切り裂く。

 

「ヨッシャー!次だ、向こうの二体を攻めるぜ。付いてきやがれ」

 

 オークゾンビ二体を中心にゾンビが五体、だが周囲に気を取られて俺には気付いてない。

 後ろから回り込み、足を切り裂いて跪かせて頭を刎ねる。これで二体、兄ちゃんと同じだぜ!

 

 三体目を見れば、兵士の頭を丸太で潰していた。しまった、突出し過ぎたか?周りを見れば遠巻きにゾンビに取り囲まれた。

 

「一旦引くぜ、俺に続け!」

 

 俺には10人の兵士を付けたが、一人やられた。態勢を立て直さないとヤバいぜ、数で押し込まれたら危険だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 一旦部隊を後ろに下げて態勢を整える。

 苦戦している傭兵部隊の所に向かい、ムールさんが相手にしていたゾンビの頭を刎ねた。

 

「大丈夫かい?」

 

「ありがとう、数が多くて一対一に持ち込むのが大変なのよ」

 

 そう言って双剣を器用に使い、ゾンビの両手を斬り飛ばした後に首チョンパしたぞ。ムールさんも中々の使い手なんだな。

 

「一旦引いて追ってくる奴を倒すんだ。ゾンビは獲物を認識しないと動きは緩慢だから距離を置けば良いよ」

 

 そう言ってから農民チームを探すと……居た!隅の方でゾンビを押さえ付けてタコ殴りにしている。

 様子を見に近付いてみると、妹さんが丸太でゾンビの頭を連打してた。

 

 返り血で頬を濡らし目が完全にイッてる……

 

「兄さんの仇(かたき)、兄さんを返して、兄さんに謝れ!シネシネシネ、死んで兄さんに謝れ!」

 

 息も絶え絶えに、でも殴るのを止めない彼女に正直ドン引きだ。

 アレは関わり合いにならない方が良いな、初めて見るがヤンデレ?いやデレは無いから病んでる系?

 撲殺ハッピー状態の彼女から気付かれないように慎重に距離を取る。

 漸く安全圏まで離脱し目を逸らすと、コッヘル様がオークゾンビ二体に向かって走りだすのが見えた。後を追うように10人の兵士たちが走っていく。

 

「コッヘル様、無謀じゃないか?」

 

 見ている最中に既に一体目を倒して二体目に向かい難なく倒した。

 だが、三体目のオークゾンビをコッヘル様に近付けないように牽制していた兵士が丸太で殴られたぞ……

 

 アレは死んだな、頭が潰れてしまった。

 

「僕はコッヘル様のサポートに向かいます。

兵士さんたちは態勢を整えてから進軍してください。もう大勢は決したので、コッヘル様を守れば僕らの勝ちです!」

 

 僕に20人も付けるからコッヘル様が危険になるんだ。戦況は悪くない、このまま油断無く戦えば間違い無く勝てる。

 だからコッヘル様に、遠征の責任者に怪我をされたら困るんだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 無謀とも思えるほどに真っ直ぐ走り、途中でフラフラしているゾンビを薙ぎ払う。

 ツヴァイヘンダーがゾンビの体液で汚れ切れ味が悪くなるが、本来は叩き斬る武器なのでまだ大丈夫。

 日本刀みたいなデリケートな武器なら、もう使えなくなってるな……

 

「コッヘル様、一旦態勢を整えましょう。露払いしますから、そのオークゾンビは頼みます」

 

 漸くコッヘル様の近くまで辿り着いたが、苦戦している周りの兵士たちに加勢しゾンビから倒す。

 ようやく周りのゾンビを倒してコッヘル様を見れば、四体目のオークゾンビを切り刻むところだった。

 残りのオークゾンビは三体、見回すとまだ距離があるのが救いだ、一息つける。

 

「兄ちゃん助かったぜ。俺も熱くなると周りが見えないタイプだな。部下を一人やられちまったぜ……」

 

 苦悶の表情が本当に部下を亡くしたことを悔いているのが分かり、周りの兵士たちも下を向いたり目を閉じたりして死者の魂に祈りを捧げた。

 

「コッヘル様、周りのゾンビ達は全て倒しました。

残りは前方のゾンビ約50体と……オークゾンビは三体だけど近付いては来ませんね。

隠れる場所も無いから不意討ちも心配する必要も無い。兵士さんたちも集まりましたが、態勢を整えてもう一戦しますか?」

 

「勿論だ、一体残らずブッ壊すぜ!

兄ちゃん、悪いが遊撃として苦戦してる仲間を助けてやってくれ。俺は指揮を執る、もう熱くなって無謀な突撃はしないぜ」

 

 そう言うと部隊に細かい指示を出し始めた。自分の非を認められるって凄いんだろうな……

 

 特にコッヘル様は大隊長として軍のトップなのだから、誰も責める人は居ないし突撃も悪い判断じゃないはずだ。

 敵の主力を早目に潰せば味方の被害も抑えられるから……

 

 三人一組で走りだす兵士たちを見ながら、傭兵部隊の様子を見る。ムールさんは無事だな、肩で息をしてるから疲労してるな。

 汗のために前髪が額に張りついているし双剣もゾンビの体液でドロドロだ。

 近くに寄って無事を確認するが、仄かに体臭が漂ってくる。

 

 女性は汗をかいても良い匂いなのね、オッサンは耐えられない臭さなのに……剣技は凄くても貴族のお嬢様だからスタミナは少ないのは納得だ。

 

「ムールさん、怪我は無い?」

 

 ヤン系の妹ちゃんを見た後だとムールさんが素晴らしく見える、当社比二割増しだ!

 

「ええ、大丈夫……薬草を食べたから体力は回復したわ。

でもスタミナが少ないのが分かったのが今後の課題ね。走り込みでもしようかしら……」

 

 スタミナを付けるのにマラソンか、このお嬢様も自分に足りない物を認めて伸ばすことができる。

 厳しい世界だからか、貴族様たちも有能な人が多いのかな?フェルデン様も後継者に対して厳しかったし。

 僕の中の想像の貴族たちは腐敗してる奴が多かったのだが、単に思い込みと偏見だったと反省する。

 

「そうだね、スタミナは必要だよね。

僕も瞬発力とスピード重視だけど、直ぐに息切れじゃ戦えない。確かに走り込みは必要かも……」

 

 レベルが上がれば基本スペックも上がる、だけど使いこなす技量とかはレベルに依存してない。

 

「貴方が鍛錬不足ならほとんどの人が鍛錬不足よ。ねぇ?あの農民の娘、何だか怖いわ。どうするの?」

 

 正面から見ずにチラ見をするのだが、この強いお嬢様が格下の妹ちゃんに対して震えている。

 

 やっぱりムールさんも怖いんだ!良かった、同じ感性の人が居て。

 

「放置かな……

彼らには生き残る術を教えたから、後は彼ら次第だと思うよ。全員生き残れば640G貰えるから生活の足しにはなるだろ?」

 

 僕は基本報酬が500Gでオークゾンビを二体倒したから上乗せ200G、合計で700Gだ。悪くない稼ぎだな、ヒモじゃなくなったのが嬉しい。

 

「私は80Gなのに、何か納得できないわね。倒した数は圧倒的に私の方が多いのに……」

 

 僕が700G貰えるとか言ったら更に不機嫌になりそうなので黙秘する。わざわざ教える必要は無いのだから……

 

「さて、少し休めたしムールさんの無事も確認できたから僕は行くよ。ムールさんは無理しないでね」

 

 見回す限り苦戦している仲間は居ない。ゾンビだけなら注意すれば大丈夫なはずだから……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「漸く片付いたな。兵士の治療を急げよ。

終わったら、この先の集落まで行くぞ。奴らに襲われたらしいが生き残りが居るかもしれん」

 

 コッヘル様の指示を倒木に座って休みながら聞く。もう30分くらいは休めるだろう。

 要らないボロ布でツヴァイヘンダーに付いたゾンビの体液を拭き取り荷物から取り出したメンテ用の油を薄く塗り伸ばしていく。

 流石に高いだけあり、見た目には刃零れも湾曲も認められない。

 

 デルフィナさんの目利きは本当に信用できるなぁ……ツヴァイヘンダーの手入れを終えた頃には兵士の治療も終わったみたいだ。

 

 死者三人、軽傷15人。

 

 農民チームから二人の死者が出たのは単純にゾンビに力負けしたから。転ばして押さえ続けることができなかったそうた。

 残り七人だが女の子三人は生き残っていた、やはり女性は強いわけだな。

 目をギラギラさせて隈を作っている妹ちゃんがお辞儀をしてくれたが、本気で恐かった。

 顔立ちは可愛いのに血だらけだし髪は乱れまくってるし手には血と体液が付着した棒を握ってるし。

 

 僕はぎこちない笑顔を浮かべて軽く会釈をした。

 


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