異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第4話

 糞忌々しい神官に宝玉に封じられて多分30年くらい。

 あの神官、お父様に便宜を図ってもらっていたくせに裏切りやがった。

 確かにお父様は病弱で死んでしまった私のために禁忌の呪文に手を染めたわ。

 

 生命を甦らせる禁忌の呪文。

 

 お父様は代々我が家に伝わる古文書を読み解き、そして実行してくれた。しかし呪文は不完全……

 私は生き返られずに、幽霊としてこの地に括られた。儀式に必要な秘薬は高価で希少価値の高い物ばかり。

 

 二度目の試みは物理的に不可能だ。

 

 でも、お父様と再びお話しできることに私は喜んだ。

 お父様も完全復活は無理でもコミュニケーションは取れるのだからと、微妙ながら私を受け入れてくれた。

 しかし現実的に私達親子が普通に暮らすのは無理だ。タダの幽霊なら問題は無かったかもしれない。

 でも私は幽霊になると同時に、体を維持するために生き物の精気を必要とした。

 

 最初は家畜で十分だった……

 

 しかし精気を吸えば吸うほど、私の魔力は高まっていった。元々、高位神官の娘。

 魔力の素養はあり、お父様も色々な魔道書を持っていたので習得は容易だったわ。

 あるとき、私の存在に気が付き危険視した下級神官を精気を吸いつくして殺してしまった……あのときの快感と高揚感は初めてだった。

 あの快感を覚えてしまっては、もはや家畜では我慢できなかったわ。

 

 これが魔に堕ちるということなのね。

 

 それから私は夜な夜な人々を襲った。勿論、殺すようなことはしなかったけど、それが私を早期に追い詰めた。

 それはそうよね。被害者が生きていて、周りに話すんですもの。

 

 バレるのは時間の問題。

 

 人々は被害を収めることを高位神官たるお父様に懇願したわ。

 人に害なす存在が居るので退治してほしい、と……お父様は悩んだ末に私を逃がそうとした。

 しかし、あの腐れ神官が私の存在に気付き不意を突いて宝玉に封じてしまった。

 お父様は怒り狂い、その神官に戦いを挑んだが……負けてしまったわ。

 

 ヤツは、その戦いの余波で崩壊した教会に私を封じ込め人払いの結界を施し、この地を去った……

 

 兄と慕っていたのに、私とお父様を裏切った男。確かにお父様の弟子の中では、抜きん出た才能の持ち主だったからね。

 宝玉に封じ込められたとはいえ、思考はできる。私の体感で30年くらいと思ったが、実際は分からない。

 

 暗く退屈で屈辱な世界。

 

 この世界から解放してくれる人が居るなら、最大限の感謝をしよう。そう思っても中々そんな人は現れない。

 人払いを施せば、人は当然来ない。それは同時に宝玉に封じ込められた私に害なす存在も来ない。

 

 アイツの僅かながらの善意かしらね?

 

 しかし人の手が入らなければ教会は廃墟と化し、段々と崩れていった。このままでは、瓦礫の下敷きとなり永遠に私は解放されないわ。

 そんなときだった。人払いの結界を物ともせず、小部屋に施された結界をも解除し、私を宝玉から解放してくれた恩人。

 

 そう!「全裸の救世主(ヌーディストメサイア)が現れたのよ!」

 

 何故、何故全裸なの?何故、私を無視して部屋の隅の藁に潜り込むの?

 確かに、この小部屋は物置だったから色々ガラクタはあるけど非道くない?

 暫し呆然としてしまったが、せっかく解放されたので外の様子を見に行ったわ。

 

 しかし時は、とても残酷……

 

 私の中の思い出の詰まった教会は、既に廃墟となり記憶の中とは全然違ったわ。

 昔の思い出にも浸れず室内に戻り呆然と立ち尽くしていた私は、突然突き飛ばされた。

 慌てて注意を向けてみれば、真っ裸の男が困ったようにこちらを見下ろしていた。

 

 真っ裸?ナニ、コイツ変態ナノ?

 

「えっ?ごめん、誰か居たの。見えなかったから……ごめんね、大丈夫かい?」

 

 慌てて謝ってくれたけど、何故真っ裸なのかの説明は無い。そもそも全裸にブーツのみって何なの?

 危険人物には間違いないが、全然強くなさそうだ。私の貞操が危険……いや、幽霊だし肉体無いから安心?

 でも私を見て随分驚いているわ。何故、解放してあげた相手を見て驚くのかな?女の子を突き飛ばすなんて紳士じゃないわよ。

 

「もぅ、私を解放してくれたから我慢するけど、普通なら殺しちゃうところだゾ」

 

 少し脅してあげる。でも大して怖がっていないわね……私の噂を知らないで解放したのかな?

 

「「あっ」」

 

 って何故ナニをオッきくして見せつけてるの?ソレをマジマジ見たのは、お父様とお風呂に入って以来だけど。

 知識でしか知らないオッキくなる形状を見せつけるなんて……ボッという擬音が聞こえそうなほど速攻で真っ赤になった。

 

「おっおおおおお、お兄ちゃん?いいいいい、いくら開放してくれたからって、いきなり体を要求するってなによ?」

 

 見た目は幼女の私に何てモノを見せるのよ!コイツ、私の体が目当ての変態なんだ。肉体の無い私に欲情しても無理だよ!

 ヨシ、コイツは精気を吸いつくして殺そう!その方が、この世界の為になる気がしてきた。

 そう思って襲いかかろうとしたら、慌てて外に飛び出していった。

 

 何か言い訳をしながら……何だったんだろう、あの真っ裸な変態お兄ちゃんは?

 

 もう良いや。もっと自分の置かれた状況を把握するために、周辺を探索しましょう。

 お兄ちゃんが戻ってきたのと入れ替わりで外へ出る。まだ真夜中だけど、私には持ってこいな時間帯だわ。

 

「久し振りの夜景……

変わらないのは夜空の星だけで、私の住んでいた街も家も無くなっちゃった。お父様やお友達の皆は、どうなったのかな?」

 

 既に30年くらいは経っているから、皆既に中年ね。会っても私の方は分からないかな?

 などと考えながら、ふよふよと教会の周りを探索する。でも、本当に何にもないわね。

 これはお兄ちゃんに最近のことを詳しく聞かないとダメだわ。最初はお礼を次は貞操の危機を回避するために精気を吸いつくそうと。

 

 今は自分の置かれた状況を把握するために、話し合いをしようと考えている……

 

 でも、でも多分だけど久し振りに人と話せるのが嬉しいんだと思うわ。

 孤独はもうイヤなの……たとえ、どうしようもない変態性欲者でも人と話したいんだわ。

 此方から歩み寄ろうと小部屋に行ってみれば、コイツ寝ようとしてるわ!

 

 ちょっと私を放置プレイって、どんな性嗜好なの?

 

「お兄ちゃん?ねぇ、お兄ちゃんったら?私を放っておいて寝ちゃうの?ねぇ、寝ちゃうの?」

 

 ユサユサと体を揺する。我関せず的に無視するなんて、泣いちゃうよ!

 

「ねぇ?無視されると悲しいんだよ?ねぇ、起きてってば!」

 

 声を掛けて何度も体を揺らすが反応が鈍い。段々乱暴に揺らす。

 ついでに足でグリグリしてみる。何故かニコニコしだしたわ?お兄ちゃんってドM?

 

 もう怒ったから、私怒ったんだから!

 

「お兄ちゃん。私を放っておいて寝ちゃうなんて良い度胸だよね。罰として死なないくらいに吸っちゃうゾ」

 

 これだけ脅しても反応しないなんて……もう我慢しなくても良いわよね?

 お兄ちゃんの頭をかき抱いて精気を吸う……久し振りの精気は、とても新鮮で美味だわ!

 

 でもナニ、ナニこの精気は!

 

 まるで、この世のモノではない異質な……この世界では有り得ない感じがするわ。でもでも、それでいて悪くはない味だわ。

 

 不思議……こんな精気は味わったことがないわ。

 

 ヤバっ!

 

 つい吸い過ぎちゃった。えへへ、久し振りだから仕方無いわよね?散々私を無視したお兄ちゃんがいけないんだよ。

 でも、取り敢えずは謝ろう。

 

「ご馳走様。ゴメンね、吸いすぎちゃった。でっでも、無視したお兄ちゃんが悪いんだからネ?」

 

 白目を剥いて気絶したお兄ちゃんに向けて一言、お礼は言っておこうかな。

 

「お兄ちゃん、ご馳走でした!めっ珍しいからしばらく一緒に居てあげてもいいわ!たっただ珍しいのとお礼の意味だから、勘違いしないでネ」

 

とても良いツンデレ具合だが、白目を剥いて倒れている男に聞こえているとは思えなかった……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 この爆睡して、だらしなく涎を垂らしている男を改めて見る。

 うん、全然私を解放しに来たとは思えないショボさだ……装備品なんて、棍棒と薬草数種類だけ。

 この世界はモンスターの脅威があるために点々と城塞都市があり、その周辺に農村が点在している。

 城塞都市には権力者や商いをする者達が住み、広大な土地を必要とする農民は周辺を耕し有事の際には権力者の庇護を求める。

 大切な民と食料を守るために、権力者は兵を差し向けてモンスターを退治するのが普通だ。

 つまり城塞都市は国であり、隣接する他の都市とは距離がある。

 

 しかし……しかし、この男の装備はちょっと街の外に行ってくるみたいな軽装だ。

 

 弱い者は群れないとモンスターには勝てない。でも、どう見ても強者には見えないの……

 素養はありそうな感じだし、極僅かだが魔力がある。魔力とは先天的な力だから万人は持ってない。

 

 これは、この感じは、まるで力ある子供だ。

 

 成人してるのに全く鍛えてない、まるで成長してないなんて……血統は良いはずだよね?

 魔法を使える一族なんだし、本当に権力者のボンボンかしら?いや権力者なら護衛団は強力だし、本人に権力者のオーラは皆無。

 

 考えても全く分からない。

 

 取り敢えず、お腹がグゥグゥ鳴ってる男のために食事の支度をしよう。

 私の食事は今のところこの男だけだし、放っておけば野垂れ死に確定だし……人差し指で頬をグリグリと突っつく。

 

「世話が焼けるよ、お兄ちゃん!」

 

 食べられる物か……確か小川が近くにあったから魚でも焼こうかしら?

 木の実や動物は難しいわね。森は遠いし、この場所から離れるのは危険だし。

 

 小川に向かい適当に弱めた威力でサンダーの魔法を唱える。水面に白いお腹を見せて、プカプカとお魚が浮いてくる。

 

「うん、お魚取ったドー!」

 

 それなりの大きさの魚が5匹穫れたわ。後は調理だけど……適当に焼けば良いのかな?

 小枝に刺して魔法で灯した火で炙る。でも物に触るって実体化しないと駄目だから大変だわ。

 

 またお兄ちゃんの精気を貰わなきゃ!でも労働に対する正当な報酬よね?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 途中、食事を振る舞い少し意地悪をして消えてみせたら慌てて泣きそうになってたわ。

 しかし幽霊な私を見ても動揺しないのは、やはり私の事情を知っているのかな?

 焚き火を囲んで向かい合わせに座る。改めて自己紹介!

 

「改めて初めてましてかな?私の名前はアリスよ。お兄ちゃんは?」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 目の前のロリっ子幽霊をマジマジと見る。どうやら他人のステータスは確認できるみたいだ。

 

 

職業 : レイス

称号 : 取り残された孤独な幼女

 

レベル : 35

HP : 129

MP : 173

筋力 : 35

体力 : 18

知力 : 72

素早さ : 54

運 : 40

 

 

 レイス?確か北欧を起源とする幽霊の一種だよな。ゴーストもスペクターも同じ意味だが、彼女は北欧系なのかな?

 妙に無い胸を張りながら、此方を見る幼女幽霊。

 

「ああ、宜しくね。アリスちゃんで良いかな?」

 

 アリスってペルソナのアリスを連想するよね?

 

「死んでくれる?」とか、即死系の凶悪な魔法だったし……

 

「うん。お兄ちゃん、仕方無いからよろしくしてあげるわ。ほんとーに仕方無くだけどね!」

 

 輝く笑顔で言ってくれました。

 

 ナイス、ツンデ霊!

 


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