異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第37話

「勝手に話を進めるな。何故我々がお前の言うことを聞かないとならないんだ?」

 

 装備の良い皆さんから反発が来た。自分たちが中心じゃないと嫌なのだろうか?

 

「じゃ貴方達が我々に納得できる指示を出してください。兵士さんたちは配置に着いてますよ。我々が最後ですよ」

 

 僕らは雇われの身だから立場が低いんだ。

 本隊の兵士さんたちが既に見張り番を立てているのに、僕らがまだってマズいと思わないのかな?

 コッヘル様も居るのにゴタゴタはお断りなんだけど……急かす意味も含めて連中を見て、ついでにステータスも確認する。

 

 

古参の傭兵部隊

 

強運のベルガッド

 

レベル : 27

 

 

HP : 49/49

MP : 6/6

 

筋力 : 24

体力 : 16

知力 : 10

素早さ : 18

運 : 58

 

 

 

 うーん、微妙だ……数値は金髪美人と同程度だがレベルは高い。運が異常に高いことを考えるとアレかな?

 幸運に助けられて生き残ったのか、危険察知能力が優れてるのか?

 

 称号も強運のベルガッドってなってるし、ベルガッドさんって名前なんだな。

 他の三人も似たり寄ったりのステータスだが、運は普通だった。

 

「まぁ良いでしょう。私はベルガッド、この傭兵団のリーダーだ。君の提案に乗るよ、個人参加の連中の責任者は君で良いんだよね?」

 

 サラリと責任を押し付けてきた、この辺も強運で生き残るってことなんだろうか?

 

「いえ、違います。元々個人参加の連中は自己責任が基本ですよ。

ただ、貴方の提案だと個人参加の連中も一グループ扱いで不利だったから、見張りの時は協力しようってことです。

安易に責任を押し付けないてください。それとも貴方が傭兵チーム全員のリーダーをやりますか?

勿論、直接雇われているわけじゃないから言うことは聞かないかも知れません。でも責任は取れますか?」

 

 命令はしたい、責任は取りたくないは駄目だろ。こんな腹に一物抱えた連中を無償で纏めるなんて無理だし嫌だ。

 

「ハッハッハ!

そうだな、責任なんて取りたくないな。じゃ最初の見張りは君たちで良いよ。次を決めようじゃないか?」

 

 強運って言うくらいだから生存率はたかそうだね。何かのときは彼らの行動を真似れば生き残れるかも……参考にさせてもらおうかな。

 

「さて、残り二人誰が見張り番をやってくれますか?」

 

 問いかければ二人名乗り出てくれた。

 

「俺はバール」

 

「ズールだ、よろしく」

 

 バールさんは30代後半くらいのムキムキさん、イメージは木こり。何故なら髭モジャで皮鎧を着込み武器が両刃斧だから。

 ズールさんは20代後半くらいの中肉中背、若ハゲさん。見事なくらいに頭頂部に毛が無い。

 布の服だが所々皮や金属で補強している、武器はロングソード。二人共に悪い感じはしない、信用云々は別としても一安心だ。

 

 あからさまに敵対する人たちだと疲れるから……

 

「よろしくお願いします。早めに配置に着きましょう。兵士さんたちが睨んでますから……」

 

 そう言って荷物を取りに金髪美人さんのもとへ。急いで荷物を持って見張りの場所へ向かう。

 途中で何故荷物を持っていくのかをムールさんに聞かれたが、クッション代わりに座るからと答えた。

 別に見張り番だからと言って直立不動じゃなきゃいけないわけじゃない。

 本音は盗まれるのを警戒してだ、現代日本と違い防犯感覚を高めないと駄目だから。

 

「お待たせ、じゃ始めようか……」

 

 僕等の担当の西側は柵は壊れてるが大体幅が30mくらいあるので中心で見張れば見渡せる。暗くなる前に焚き火をして明かりと暖を確保するか。

 

「焚き火の準備をしましょう。夜は冷え込むし照明代わりにもなる。モンスターには火に寄ってくる習性は無いですよね?」

 

 野生動物は火に弱いが、この世界のモンスターってどうなんだろう?

 

「そうだな、柵から10mくらい離れて焚き火をするか?近過ぎても発見が遅れて不利だろ。俺が林から薪を拾ってくるから穴掘ってくれ」

 

 バールさんの提案に頷く。流石はイメージ木こりだけあり薪は任せろ的な?

 

「分かった、じゃやるか」

 

 若ハゲのズールさんが地面を眺めて土の柔らかそうな場所を探して掘り出した。

 人が通る踏み固められた地面の脇は草が生えて比較的柔らかいので木の枝でも十分に掘れた。

 僕は適当な大きさの石を集めて穴の周りに並べて簡単なカマド擬きを作った。

 バールさんの集めた薪をくべて火を点ければ完成。

 因みに兵士さん達も同じような焚き火を用意してきるが、煮炊きにも使うみたいだ……準備は整ったので後は周囲を確認すれば良い。

 万が一に備えスモールシールドを左腕に装着、外套を羽織りツヴァイへンダーを両手に持つ。腰にはメイスを差せば完璧!

 

 うん、スタイリッシュな感じがするので良いな、如何にも戦士って感じだろ?

 立ったままだと大変だから荷物をクッションにして座り前を見る、今の僕は誰が見ても格好良いよね?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 焚き火を囲む様に周囲を警戒する。見張りを開始して既に1時間は過ぎたかな?

 周囲が暗くなり月明かりを頼りに周りを確認するしかできない。

 時々雲が月を隠し真っ暗闇になるが、焚き火の明かりで周囲が何となく分かる。

 

「アンタが噂の大剣使いかい?」

 

「噂の?どんな噂なんですか?」

 

 ズールさんが神妙な顔で変なことを聞いてきたが、僕も噂の出所が気になっていたので渡りに船だ。

 

「ん、まぁ人から聞いた話だけどさ。

武器屋で大剣を振り回す兄ちゃんは、ラミアの美人と人間の美少女を連れていたって噂だよ。

確かに大剣使いは少ないし、それにラミアが一緒ってことで珍しがられてる」

 

「そうだな。

妖魔って奴らは人間を襲うこともある。精気を吸われて衰弱死とかさ。割と有名な話だろ?」

 

 ああ、そうか……

 

 人間と異種族の壁とかって奴だな、ミーアちゃんも気にしてたし。

 やはり僕とデルフィナさんの関係って、噂になるほど珍しいんだな。

 下手したら敵視されかねない人間の街に行くのにデルフィナさんは楽しそうだったが、種族的上位の余裕なのだろうか?

 

「ラミア族のデルフィナさんのことだね?精気を吸われて衰弱死なんてことは(まだ)無いよ。

大丈夫、ちゃんと自制してるからね。それに精気以外の食事でも大丈夫なんだよ。お酒とか大好きだし」

 

 他のラミア族には会ったことが無いから分からないし、会うことも無いと思う。

 僕の精気の味がバレたらラミア族内で諍いになるから絶対に他のラミア族には近付くなっていわれてるし……

 多分だけどデルフィナさん以外のラミア族さんは僕の所有権を争うみたいな感じなんだろうな。

 

「スゲー惚気だな。背中に気を付けろよ」

 

「全くだね、強くなきゃ虐めるところだ」

 

 しみじみと嫌な台詞が聞こえたが、彼らの目は本気と書いてマジと読むアレだ……ヤバい、話題を変えよう。

 

「なぁ、あの装備の良い連中って知ってる?あと他のグループも……あの農民の集団とか気にならないかな?」

 

 焚き火に小枝を折って放り込む、パチパチと揺らめく炎は僕の心と同じだ。

 

「アンタに絡んだ連中は、ベルガッド率いる傭兵なんだが……決して突き抜けた強さは無いが安定して生き残れるので有名なんだ。

温い仕事だけじゃない、激戦でも必ず生還してるちょっとだけ有名な連中だ」

 

 ああ、なるほど、称号通りの内容でした。やはり悪運か強運の持ち主なんだな、でもそんなに強くないのに態度はデカいのは不思議だな。

 そういう連中こそ、自分の能力を把握してないかな?

 

「あの若い男女混合のグループは?如何にも農民してるよ。鎌や鍬で戦えるのかな?」

 

 如何にもな農業従事者の団体のことも聞いてみる。オッサン六人組?いや情報は要らないです。

 

「アイツらはベルレの北側の村の連中だ。農作物の育ちが悪くて次男三男たちが出稼ぎのために来たんだ。

全員同じ村なんだろうな。果たして生き残れるかが疑問だが、囮くらいにはなるだろ」

 

 結構突き放した言い方だが、討伐参加は自己責任だから無償で助けてはくれない。精々邪魔にならないことを祈るだけとか?

 彼らは生活苦で外に働きに出た若者たちか……基本的に戦闘したことがあるのだろうか?

 だが厳しい農作業をこなしてるんだ、基本的なスペックは高いと思う。

 もしもステータスが村人Aとかだったら、それこそ囮も怪しいだろう。

 

 後でステータスを確認しておくか……

 

「今回の討伐に集まった連中は少ない。だから彼らも人数合わせで参加できたんだ。

募集30人でぴったり30人だったからな。普通はもっと多くて篩(ふるい)に掛ける。

実は最近まで大規模な山狩りをしていたんだ。それが終わった直後だったからな」

 

 定員割れギリギリだったから全員参加できたのか。運が良かったのか悪かったのか分からないな、命の危険が高過ぎるぞ。

 

「山狩り?何でまたそんなことを?危険なモンスターでも出たのか?」

 

 山狩りなんか人を襲った熊を狩るくらいしか思い浮かばないが、モンスターが普通に居るぐらいだから有り得るぞ!

 

「ベルレの街の近くの街道沿いに潜んでいた中規模の盗賊団が何者かに壊滅させられたんだ。

洞窟を焼き討ちされて皆殺しらしいぜ。危ない連中だったんだな。そんな武装組織が街の近くに居るのは脅威だろ?

だけど一月近く被害も無いし探しても見付けられなかった。

結構な人数が募集に応じてたからな、今回続けての参加は少なかったんだ。一仕事終わって直ぐに遠征は辛いだろ?」

 

 危険なキーワードに幾つも反応してしまう。盗賊・街道沿い・壊滅・火事、全て僕たち絡みだ。

 

「へっ、へぇ……そんな事情があったんだ。じゃ仕方ないよね」

 

 それって僕らがアジトを襲って壊滅させた盗賊団のことだと思う。

 確かに街の近くに盗賊団が居て、それが全滅してたら同業者による襲撃とか考えるよね。

 もしかしたら脇差の話をフェルデン様にしたから、その捜索も含まれていた?

 彼らが逃げ出すときに持っていたと考えるのが普通だろう。

 フェルデン様は盗賊が持ち去った脇差を大規模な山狩りをしてまで取り返したかったのか……しまった失敗した。

 早く返すべきだったのかも……いや、考え過ぎだ、偶然だよ、僕らは悪くないよね?

 

「どうした?黙り込んで?何か思い当たることでもあるのか?」

 

「いや、知らなかったんだ。先月も来たんだけど危険な時だったなんて……」

 

 知らないってことは幸せだよねって誤魔化したが、結構ヤバかったんだ。

 少し不審な目で見られたが、まさか僕たち三人が盗賊を壊滅させたとは思うまい。しばらくは無言で真面目に見張りを続ける。

 約束の交代時間が来たのだろう、兵士たちも入れ替わりを始めた。

 

 僕らの交代は……

 

 先ほど話した農民グループの内、五人がやってきた。男四人女一人の編成だが、半々に分けたんだな。

 

「お疲れ様、交代だよ」

 

 前回の話し合いで彼らのリーダーっぽかった男が話しかけてきた。

 

「ありがとう、焚き火は消さないように注意してね。特に異常はないよ」

 

 応えながらステータスと念じる。

 

 

 

ペレの村人

 

青年団の副リーダー

 

レベル : 7

 

 

HP : 15/15

MP : 1/1

 

筋力 : 10

体力 : 10

知力 : 6

素早さ : 8

運 : 8

 

 

 

 低い、完璧に村人Aだ……他の四人も見たけど似たり寄ったりの数値だ。

 だがレベルは上がってるからモンスターを倒しているのか、日常の作業でも経験値が得られるのか?

 彼らと別れてムールさんの居る樹木の下に向かう。彼女は樹木に寄りかかってボーッとしていた。

 

「疲れたのかい?」

 

 声を掛けて隣に荷物をおろす。

 

「ん?いや、暇だったので星を見ていた」

 

 星を見ていたか、女性らしいロマンチックな話だけど、この世界の星って日本から見えるのと似ているんだよね。

 

「良い趣味だね、確かに星は綺麗だから……」

 

 そう応えながら夕飯の準備をする。今夜は雑穀粥と干肉の炙り焼きにしよう。準備していると、何故かムールさんの視線を感じた。

 

 見つめても、あげませんよ?

 


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