異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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僕っ娘はゾンビガール編
第35話


 討伐前の最後の食卓は和やかだ。妙に肌が艶々なアリスとデルフィナさん。

 凄く機嫌が良いミーアちゃんと普通なコッヘル様。

 

 そして疲労困憊な僕……

 

「何だよ、昨晩は激しくお楽しみだったんだな。音が五月蝿かったぞ。随分げっそりしてるが大丈夫か?」

 

 半分理性を無くした二人の愛情表現(吸精行為)をいなすのが大変だった。

 二人して迫ってくるのは夢見心地だったが、気を抜くと文字通りに昇天しちゃうんだよね。

 まさかコッヘル様との特訓で体得した体捌きが役に立つとは驚きだった。

 まぁ逃げ回ったとも言うが、部屋の中を縦横無尽に動き回れば音も凄かっただろう……

 

「ええ、ハッスルし過ぎまして……コッヘル様は大丈夫みたいですね」

 

「当り前だ!ミーアは華奢だから無理なことはしない。壊れちまうだろ!」

 

 少しだけ頬を赤くして視線をミーアちゃんに向けるオッサン。きっとミーアちゃんを腫れ物を扱うように優しく抱くのだろう。

 子供を二人も仕込んだことやミーアちゃんがご機嫌なことも考えると、優しく抱かれても彼女自身は性的にも満足してるんだな。

 

「それはそれは大変ご馳走様です。では頂きます」

 

 体力を回復するためにも沢山食べなければ!

 目の前に並べられた料理をムシャムシャと食べはじめる、主にたんぱく質を優先的に……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 朝食を終えてトイレに行き身嗜みを整える。

 朝シャンとかできないから寝癖を水で濡らして整えるくらいだから直ぐにできる。

 玄関に向かうと既にコッヘル様が待っていた、完全武装とまではいかないがライトメイルを着込み帯剣している。

 

「じゃ行くか。ミーア、留守を頼む」

 

 軽くハグる年の差夫婦を横目に、僕らもハグとキスをする。

 

「じゃ行ってきます」

 

 暫しの別れを惜しみ、ミーアちゃんの用意してくれた荷物を背負う。

 

「はい、丈を合わせておきましたわ」

 

「僕にですか?ありがとうございます、外套ですね」

 

 ミーアちゃんから焦げ茶色の外套、あれですよマントですよ、を貰った。

 正直凄く嬉しい、今までは盗賊から奪った服が多かったので真新しい外套は前回来たときに買った皮鎧と同じくらいに嬉しい。

 

「おお、似合うな。夜営のときに布団代わりになるからな。ミーアの手製だ、大事にしろよ」

 

 早速羽織るが中々良いと思う。だが内側に荷物を背負ってるので後ろ姿はイマイチだ。

 コッヘル様は配下の輸送隊が居るが、募集で参加する連中は食事から何から全て自前だ。

 門を出て直ぐに別れる、コッヘル様は領主様のもとへ、僕は武器屋へと急ぐ。遅刻は恥ずかしいからね。

 武器屋に顔を出せば既にミーアちゃんから連絡が行ってたのだろう店員が待ち構えてた。

 挨拶もソコソコにツヴァイへンダーを受け取る。鞘は背中に背負うタイプらしく抜くのは簡単だが逆は大変そうだ。

 既に食料やら衣料品やらを詰め込んだ袋を背負っているからな、先に大剣を背負い後からリュック擬きを背負う。

 

 更に外套を羽織ると……外套は畳んで袋の中にしまった。

 

 しかし慣れないと格好良く抜いたりはできないかも、練習が必要だな。

 

「兄ちゃん、ゾンビ討伐に参加するんだろ。サブの武器はどうだい?」

 

 背中の荷物を気にしているとサブの武器を勧められた……

 マジックアイテムの皮袋にはダガーやショートソードが入っているが、破壊力が足りなくないかな?

 首チョンパか頭を潰さないとゾンビは倒せないんだよな。

 

「何だよ、不審そうな顔してさ。これだよ、ハンドアックスかメイスなんてどうだい?ゾンビの頭を確実に潰せるぜ。

それにツヴァイへンダーは高い武器だから、ゾンビ切りまくったら刀身が傷むんだよ。頭蓋骨って固いからな」

 

 確かに雑魚に最上級の武器を使うのも考えものだ。

 

「獅子は鼠を襲うのも全力全開なんだぜ!」

 

 みたいな厨二全開は遠慮したい、状況に合わせて武器を使い分けるべきか……店員のお勧めはハンドアックスにメイスか。

 ハンドアックスと言っても30㎝くらいの棒に片刃の伐採斧だ、武器以外でも汎用性は高そう。

 メイスは60㎝ほどの木製の柄を皮でグルグル巻きにして補強し先端に鉄の丸い柄頭が付いている。

 完全に凶悪な殴打武器だ、星型のモーニングスターやピック型のもあるが重そうでサブ武器しゃない。

 

 比較的造りは粗いが叩くや叩き切るだから問題無いのか?どっちもイマイチだと思い壁にぶら下がる武器を眺める。

 

「おっ?そのナタを見せてよ」

 

 刃渡り30㎝握りは20㎝、武骨で肉厚の刃は斬るより叩き切る表現がしっくり来る猟師の武器だ。これなら脳天カチ割れるだろう。

 

「コレかい?確かに破壊力は有るけど高いよ、300Gだよ。ハンドアックスは70Gでメイスは60Gだ。どれにするんだ?」

 

 300Gだと?手持ちが無い、正確にはマジックアイテムの皮袋から出してない。

 ツヴァイへンダー分と予備の100Gしかあらかじめ出して持ってないんだ。馬鹿正直にマジックアイテムの存在を教えるのは嫌だな。

 

「手持ちが無いんだ……じゃメイスで良いかな」

 

 ナタは残念だが無理する必要は無い、所詮はサブの武器だしツヴァイへンダーで十分だ。両方刃物よりはメイスの方が面白いかもしれないしね。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 門の守衛に討伐参加を伝えるが、既にコッヘル様から連絡が行っていた。

 僕とデルフィナさんの預けた武器は継続で保管してくれるそうだ。

 教えられた集合場所は門の直ぐ前で、既に領主軍の兵士は整列している。50人近く居るんじゃないかな?

 荷駄隊は馬車を二台、両方共にほとんど樽を積んでいる。つまり飲み水だな、水は重いから支給してくれるそうだし。

 

 コッヘル様は軍馬に乗っている、流石に大隊長は格好良いな。他にも二人軍馬に乗っているが、彼等が副官かな?

 それにユッタリした服を着て杖を持ってるのが神官かな、二人居る。

 神官って祭事用の杖やフレイルみたいな武器を持ってるのかと思ったけど魔法使いの杖っぽい。

 その後ろには幌馬車があるので、神官用かもしれない。流石は軍隊、整然としてるな。

 

 それに比べて……

 

 その脇に屯(たむろ)するのが募集に参加した一般の方々だ。妙に若い連中で固まったグループ、多分だが10代後半の男女。

 女性と言うか女の子が三人、全員素朴で可愛い感じ。

 二人ほど弓を持っているが残り八人は明らかに農民だな、手に鎌や鍬を持ってる。

 農耕具が武器って西洋系ならピッチフォークとか無かったのか?武器としては心もとないな。

 当たり前だが誰も鎧は着ていない、全員簡素な布の服。

 

 他に男六人グループが居るが、彼らは食堂に居た連中だ。

 皮鎧にロングソードで武装している、何人かは木の盾を持っているね。

 

 同じく男四人のグループが居るが、こちらは身なりが比較的に綺麗だし装備も良い。

 皮鎧に皮の盾・ロングソードにショートスピアを持っているが一人だけマントを羽織っている。

 羽振りが良いのは強い証拠だろう、彼等が一般募集の主力かな。

 

 残りは僕と同じ個人参加だろう、それなりに装備の整った連中が四人、勿論全員が男だ。

 

 あと異彩を放つのが二十歳くらいの金髪美人が居ます。

 だけどハーフプレートにロングソード二刀流みたいです、腰の両脇にロングソード吊してるし。

 いや少し短いかな、ショートソードよりは長いが中途半端な感じだが重量の関係かな。

 皆と距離を置いて難しい顔をしてる、協調性は無さそうですゼロです。

 

 暫く観察していると、コッヘル様から話があるそうだ。兵士達に注目しろって怒られました。皆さん渋々と整列し話を聞く態勢になる。

 

「良く集まってくれた!

今回はナドレの丘周辺に集まるアンデッドモンスターの討伐と近くの遺跡を調べる。

特に指示が無ければ独自に動いて良いが、逃亡は許さん。最後まで同行した者にのみ報酬を渡す。

水は支給するが、残りは自前だ。では出発!」

 

 カッポカッポと軍馬に跨り先頭を進むコッヘル様。その後ろに荷駄隊と幌馬車を囲む様に領主軍で、最後尾に一般募集の連中がついていく。

 目的地には一泊して明日の昼前に到着予定だ。徒歩がほとんどだからコッヘル様もスピードを調整してくれている。

 

 長閑な田園地帯を抜けて草原を歩く……

 

「長閑だなぁ……」

 

 頭上には名の知れぬ鳥が旋回し適度に吹く風が草を揺らす。

 僕は兵士の直ぐ後ろを歩いているが、後ろの連中はグループおきに会話が弾んでいます。

 下卑た笑い声や楽しそうな笑い声を聞くと複雑な気持ちになる。

 皆さん金髪美人に話し掛けるが、全く相手にされてないみたいだな。

 

 悲惨なセリフで滅多切りされてる、例えば「失せろ下郎が!」とか「口が臭い、話し掛けるな」とか……

 

 二時間も歩けば疲れたのか皆さん無言になった。休憩まではまだ一時間近く歩かないと駄目だから、体力を温存してるのだろう。

 誰かとコミュニケーションを取りたいけど難しい。

 金髪美人は先ほどの対応を見れば分かる、僕じゃ怒鳴られるか無視されて終わりだろう。

 オッサングループは却下だが、年下グループも無理。やはり孤独な一週間になりそうだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「よーし、休憩だ。各自飯を食って休めよ。二時間後に出発だ!」

 

 見通しの良い草原のド真ん中で昼休みとなった。直ぐ脇に小さな池があるので飲料水には困らない。

 コッヘル様の号令の下、各自が食事を始める。二時間は長いと思うが、煮炊きするんですよ。

 やはり温かい食べ物は体力を回復させるからね。

 

 僕も適当な枯れ枝を集めて素焼きの椀を鍋に見立ててスープを作る。

 干し肉を刻んで入れて塩で味を整えれば完成。それに固く焼いたパンを浸して食べる。

 

 ミーアちゃんが用意してくれた雑穀は夕飯に取っておく。雑炊を作る予定なので楽しみだ。

 

 一人の食事など直ぐに終わってしまう。荷物を枕に外套を布団代わりにして昼寝と洒落込むかな。

 用心のためにツヴァイへンダーをしっかりと抱いてね。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ふざけんな!お高く止まりやがって、痛い目みたいのかよ!」

 

「下郎、喋るな!息が臭いのだ、私に近付くな」

 

 気持ち良く寝ていたのに、何やら騒がしい声で目が覚めた。薄目を開けて周りを窺えば、金髪美人と誰かが揉めている。

 どうやら相手は、あのオッサン六人組の連中みたいだ。

 

「何だと!淋しそうだから一緒に飯を食おうって誘っただけで下郎呼ばわりかよ!」

 

「私に構うな、迷惑だ!」

 

 典型的な売り言葉に買い言葉だな。兵士の人たちは楽しそうに見てるだけだ、娯楽ぐらいに考えているのかもね。

 言い合い?はヒートアップして、ついには互いに武器に手を掛けたぞ。それでも誰も止めないのか?

 

 オッサン六人が金髪美人を取り囲むようにして今にもロングソードを抜きそうだ。

 完全に厄介事だが誰も止めようとしない、知らないうちにコッヘル様も近付いていたが腕を組んで笑っている。

 金髪美人も凄惨な笑みを浮かべて両手をロングソードの柄に乗せた、いつでも抜ける体勢だ。

 

「よう、誰か金髪の姉ちゃんに加勢しろよ。おぃ大剣使いの兄ちゃん、加勢してやれよ」

 

 コッヘル様、完全に楽しんでますね……オッサンのうちでリーダー格の奴のパラメーターを確認する。

 

 

 

中年狩人のリーダー

 

レベル : 12

 

 

HP : 39/39

MP : 1/1

 

筋力 : 18

体力 : 13

知力 : 7

素早さ : 15

運 : 12

 

 

 

 うーん、低い低すぎる。因みに金髪美人の方は……

 

 

没落貴族のお嬢様

 

レベル : 9

 

 

HP : 45/45

MP : 10/10

 

筋力 : 26

体力 : 14

知力 : 13

素早さ : 22

運 : 18

 

 

 

 うん、強いけど六人に対しては苦戦するかも……コッヘル様が話を振ったからには、何かしら対応しなければ駄目なんだろうな。

 

「分かりました、女性側に加勢します」

 

 手にメイスを持って無造作に近付いていく。

 

「何だと、兄ちゃん!舐めんじゃねーぞ」

 

「ええ格好するじゃねーか?なら先に死ね」

 

 オッサン二人がロングソードを抜いて襲い掛かってきた。男だから容赦無いのか、躊躇なく殺しにきやがった。

 

「だが遅い!」

 

 初めて使うメイスだが、結構使いやすいぞ。撲殺するのは気が引けるのでロングソードの根元をメイスで思い切り叩く。

 良い音を立てながら吹っ飛ぶロングソードは安物のためか曲がってしまった。

 

 良かった人に当らなくて……

 

 この世界の剣は鉄製で焼き入れ法が普通だが表面しか硬化させることができないので、殴ると衝撃で硬化した皮膜が剥れて柔らかい芯部分が露出し曲がるんだ。

 鋼の武器は高価で数が少ない。

 

「安物だね、身を守る武器には金かけなよ。これ以上やるなら脳天カチ割るけど?」

 

 クルクルとメイスを振り回す、ヤバイこれ凄く楽しいぞ。渋々とオッサン達が金髪美人から離れていく、捨て台詞は忘れずにだが。

 後には此方を睨む金髪美人だけが残った。

 

「一応助けたつもりなので睨まないでほしいな」

 

 彼女はツンデレかもしれない。

 


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