異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第31話

「おいおい、見世物じゃないんだ。お前らはどっか行ってろよ」

 

 ニヤニヤ笑うコッヘル様がムカつきます。

 

「こんな楽しい見世物を見逃すことはできないっすね」

 

「全くだ、噂の大剣使いの実力を見せてもらおうか」

 

「女連れ、しかも美女と美幼女……モゲれば良いんですよ」

 

 屋敷詰めの兵士たちが練兵所に集まってくる。広さは20畳ほどで床は木板が敷き詰められている。

 屋根は有るが壁は無い、故に見やすくギャラリーが多く集まるよね。

 

 既に10人以上が集まっているが、早朝なのに暇なのか?

 

 まぁギャラリーが集まるのは当たり前だろう、正面入口からゾロゾロ歩けば目立ちまくりだよね。だけど気になる会話があった。

 

「噂の大剣使い」だと?

 

 まだ二回しか訪ねてない街で噂になるのは変だ、おかしい。前回は身分を隠した領主に、今回も身分を隠した大隊長に声を掛けられた。

 

 何故だろう?手渡された木剣を両手でしっかり握り締める。

 

 大剣を使うのは初めてだ、僕は剣道とかもやってないから実戦経験は盗賊とマウントコングだけ。

 レベルアップの恩恵でステータスは上がった。筋力と素早さがアップしたことで、力強く素早く動けるようにはなったが技術は無い。

 

 見よう見真似で木剣を構える。

 

「野次馬は気にするな。初手は譲ってやるから掛かってこいよ」

 

 木剣を左手で持ち肩に掛け、右手でオイデオイデをして挑発された。確か利き腕は右のはずだ、昨日は椀を右手で持っていたし……

 圧倒的な経験不足、相手は軍人で戦争の達人、僕はド素人に毛が生えた程度。端から手解きを受けるので、勝つことは無理だろう。

 

 いや、勝てる要素は一つも無い。

 

 だけど一矢報いるくらいはしたい、プライドもある。技術も無いから、自分にできる最高の攻撃をするしかない。

 大剣は突きも切りもできる武器で、僕は突きはほとんどしたことがない。いつも振り下ろして叩き切る、それだけだ。

 今回は魔法や弓での不意討ちも駄目。ならば左手一本で持つ木剣で受け辛い攻撃は?

 

「行きます!」

 

 突撃しながらコッヘル様の右肩に向かい水平に木剣を振り抜く。

 

「おっと、危ないな」

 

 バックステップで真後ろに下がる、木剣は未だ担いだままだ。

 筋力52は振り抜いた木剣を止めることができるので、今度はコッヘル様の左脇腹に向かって水平に振り抜く。

 

「力はあるんだなって?おい、俺より筋力ないか?」

 

 木剣を片手で操り僕の攻撃を受けたが、力任せに振り抜くことができた。つまりコッヘル様を弾き飛ばせたんだ!

 

「「「おおっ、見た目より筋力があるんたな!」」」

 

 野次馬達も驚かせたようだ……右に振り抜いた木剣を強引に引き戻し、後に飛び跳ねる。

 一瞬、ほんの一瞬でコッヘル様は体勢を立て直して僕の腹を突いてきた。

 二歩ほどよろけて何とか踏み止まるが、全身の毛穴から嫌な汗が吹き出した。

 

 攻撃と共に発せられた殺気に心臓が止まる思いだ。

 

「やるな、兄ちゃん。俺の剣筋が見えたのか?本気だったんだが……お前、俺より力強く素早くないか?」

 

 コッヘル様、僕の肋骨を粉砕する勢いで攻撃しませんでしたか?

 

「いや偶然ですよ。嫌な予感がしたから後に跳んだだけで剣筋は見えなかったです……」

 

 僅かに見えたが、ほとんど勘で避けたに過ぎない。単純に運が良かっただけだ。乱れた息と動悸を整えるために、ゆっくりと話す。

 

 駄目かも、手が震えてる……

 

「そうかい、楽しいぜ。次は最初から本気で行くから、上手く避けるか受けろ!」

 

 一瞬で距離を詰められる。

 

「ちょ、速いっす!うわっ、はっ、よっ、ちょー」

 

 突きと払いを連続で仕掛けられ、五回目の攻撃を受け切れずに左脇腹に食らってしまった。

 

「ぐふっ、げはっ……まっ、参り……ました……」

 

 ああ、痛みで意識が……僕は視界の隅に、飛び出してくるデルフィナさんとアリスを見た。

 意識が薄れゆくのを根性で耐える、意識が消える前に彼女たちが僕に触れるのが分かる。

 

「アリス、回復魔法を使っちゃ駄目だぞ。アリスは普通の女の子なんだから……」

 

 薄れゆく意識の中で、何とか伝えることができただろうか?

 デルフィナさんに尻尾枕をされて痛い腹を揺らすアリスの頭を撫でながら、やっぱりコッヘル様には勝てなかったかと思った。

 痛みで意識を失うのは初めてじゃないかな?

 

 いつもは精気を吸われて……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「よう、目覚めたか?ラミアのネーチャンに膝枕?されるたぁ珍しい奴だな?」

 

 意識が戻って最初にオッサンの声を聞くと凹む。だが見上げればデルフィナさんの豊かな双房を下から見上げている、眼福だ。

 

 下乳最高!

 

 息を吸うと脇腹に痛みが走る、アリスは約束通り回復魔法を使わなかったんだな。左脇腹に手を添えて回復魔法を唱える。

 

「ヒール、ヒール……ふぅ、楽になった」

 

「便利だな、自分で怪我を治せるのは凄く便利だ。割と本気の攻撃だったが打撲傷で済んでるはずだぞ。

普通なら冷やして終わりなのに、回復魔法ってのは便利だな」

 

 デルフィナさんの尻尾のスベスベ感を味わっていたいが、そうもいかない。腹筋に力を入れて起き上がる。

 泣きそうなアリスを膝の上に乗せて頭を撫でる。うん、癒されます……

 

「いや、イチャイチャされても困るんだがよ。兄ちゃん素質は有るし地力も高いな。

俺より力強く素早く動けるだろ?アンバランスだが強くなるには絶対に必要なことだ」

 

 べた褒めと言って良い評価じゃないか?周りを見る余裕ができたので見回せば、場所は練兵所だ。気を失っていた時間は僅かなのか?

 

「完敗です、手も足も出なかったです……」

 

 両の拳に力が入るのは悔しかったんだな。何だかんだ言って今まで負けたことは無かったから、負けは死に直結だったから。

 

 アレ、アレレ、涙が……畜生、涙が止まらない……

 

「悔しくて泣けるなら見込みがあるぜ。簡単に諦める奴なんざ男じゃねぇ。

兄ちゃん、三日間俺の扱きに耐えろよ。今よりは強くしてやるぜ」

 

 ガッチリと大きな手で僕の肩を叩く、絶妙な力加減だ。

 

「何故ですか?何故、僕を鍛えようとするんてす?僕は領主軍には……」

 

「兄ちゃんが気に入ったからだ。領主軍に入らなくても構わないぜ。

勿論、入ってくれれば嬉しいが女連れは軍隊にゃ不向きだ。同じ大剣使いだからな、知り合って知らないうちに死んだじゃやりきれねぇ」

 

 三日、たった三日間で強くなれるのか?

 

「お兄ちゃん、手解きを受けなよ。アリスとデルフィナは宿屋で待ってるよ」

 

「そうですわね。私では大剣の使い方を教えることはできません。私たちは大人しく留守番していますわ」

 

 二人に言われたら断るのも失礼だ、それに僕は強くなりたい。アリスのことがバレたら戦うことになるかも知れないけど、今は教えを請おう。

 

「コッヘル様、よろしくお願いします」

 

 ジャパニーズ土下座をして頼み込む。日本人にとって一番の礼は……

 

「兄ちゃん、それは土下座だろ?何故、兄ちゃんが土下座を知ってるんだ?」

 

 アレ?土下座しちゃ駄目だったかな?日本刀や脇差が重要なアイテムなら、日本式の行動ってタブーかフラグか?

 

「一番礼を尽くすなら土下座と聞いたことがありましたが……違いましたか?」

 

 如何にも誰かから聞きました的に返したが、微妙な顔を見れば怪しまれたかもしれない。

 

「いや、間違ってないが随分と特殊な方法を知ってるから驚いたんだ。

さて、兄ちゃんと連れの女性は家で家内に世話させるぜ。まずは朝飯を食おう。今度こそ奢りだ!」

 

 やっぱり騙せてないみたいだ……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 コッヘル様の家は屋敷の直ぐ近くにあった。

 

 見た目は瓦屋根を板葺きに変えた武家屋敷、木造平屋建ての大きな家だ。門を潜ると正面玄関?そこに一人の美少女が立っていた。

 

「お帰りなさいませ」

 

 ペコリと頭を下げる仕草が可愛いが、年齢は中学生くらいだろうか?この世界に来て初めて見た人間の美少女だが娘さんだろう。

 他の連中より身なりが良かったし装飾品も付けていた。働く使用人は指輪やネックレスは着けないだろう……

 

「おぅ、帰ったぜ。まずは酒と飯だ!客人分も用意してくれ」

 

「お邪魔します」

 

「お世話になるね」

 

 僕とアリスは言葉を発しデルフィナさんは頭を軽く下げた。奥の部屋に通されたが、やはりテーブルと椅子で日本式の畳は無い。

 どこまで日本文化が浸透してるのかが分からない。ドカッと椅子に座るコッヘル様は嬉しそうだな。

 

 様付に違和感を覚えないのは一般ピープル感覚が抜けないからかな?

 

「可愛い娘さんですね」

 

 無言が辛いので、当たり障りの無い身内を褒める作戦に出た。

 デルフィナさんもアリスも訓練自体は賛成してくれたが、積極的に関わるつもりは無さそうなんだよね。

 片やラミア族、片や封印されし妖魔、人間には複雑な感情がありそうだし……

 

「ん?娘さんだ?アレは家内だぞ」

 

 家内?奥様?嫁?コッヘル様を見る、巌つい40代後半のオッサンだ。さっきの美少女は精々15歳だぞ……

 

「何だよ、自分は異種族のラミアの美人に幼女を侍らせて俺は駄目なのか?ミーアは後妻だ。

俺は先妻に先立たれてな、跡継ぎを作るためにだな、周りから勧められて……

ミーアの家系は多産系だし若ければ何人も子供を産めるだろ?」

 

 真っ赤になって照れるオッサンは正直気持ち悪いのだが、この対応だとコッヘル様はミーアちゃんを大切にしてるんだな。

 流石は異世界、オッサンに周りから美少女と再婚しろと勧められるとは!

 僕の感性だったら犯罪だ、後ろから棍棒で殴っても文句は言われないぞ。

 

「はぁ、大変ご馳走様でした。奥様を大切にされてるんですね、分かります」

 

「なぁ?お前はどうなんだ?ラミア族の戦士デルフィナと言えば有名だ。

人間と異種族には正直越えられない壁があるんだぜ、普通はな」

 

 越えられない壁か……元の世界だって国や宗教、肌の色の違いで何百年も争ってることを知ってるから綺麗事は言えない。

 

「それは……」

 

「勘違いをしないでください。

私は人間とラミア族の垣根を越えたとかで主様を選んだのではありません。主様だからです。

正直に言えば主様以外の人間には、言われた通りの感情を持ってますわ。あくまでも主様は特別な方なのです」

 

「そうだよ、お兄ちゃんは特別なの!年の差なんて関係無いんだよ」

 

 デルフィナさん、アリス、ありがとう。でもデルフィナさんの特別は精気のことも含むよね?

 世界で一番美味しい特別な精気って言ってたし。

 アリス、年の差なんてって言うが封印80年物のアリスと僕の年齢差って……

 

「そりゃスゲーな。ある意味最高の愛の言葉だぞ。兄ちゃん、実は凄い奴なんだな」

 

「いえ、それほどでも……凄く嬉しいですが、彼女たちに見合うだけの男にならないと駄目なんです」

 

 真面目な恋愛相談みたいになってますが……

 

「あなた、お食事の用意ができましたわ。随分と楽しそうでしたね。あなたがあんなに笑うなんて久し振りですよ」

 

「ん、んん。まぁ何だ、この色男にだな。色々と言っていたところだ」

 

 コッヘル様、幼妻に頭が上がらないのですね?分かりますよ。

 

「いえ、コッヘル様が如何に奥様を大切にしているかをお聞きしまして。大変に夫婦仲が良いそうですね、羨ましいです」

 

 あら、嫌ですわ。あなたったら人前で……とか照れるオッサンとミーアちゃん。

 

「デルフィナさん、アリス。ありがとう、僕も君たちに見合う男になるように頑張るから」

 

 そう言うと彼女達が抱き付いてきた。左右からだが、アリスが飛べるのを隠すために慌てて腕を巻いてホールドする。

 昨日の混浴時に揉み込んだ香油の匂いが仄かに匂ってきて……

 

「おい、兄ちゃん!人ん家で朝からイチャイチャすんな。午後からミッチリ鍛えてやっから覚悟しろよな!」

 

 しまった、朝食を呼ばれたのに恋人と抱き合って発情しましたじゃ人として最低かも……


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