異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第30話

 酒、それは大人の嗜み。

 

 お酒は二十歳を過ぎてからが現代人の常識だが、異世界では飲酒の境界が曖昧だ。自立して稼ぎがあれば飲んでも問題無いみたいな?

 酒、アルコール度数により酔い方が変わる。強ければ早く、弱ければ中々酔わない。

 強い酒は少し飲んでも酔うし、弱い酒はたくさん飲まなければ酔い辛い。

 そしてよく分からないが蒸留の技術が低いと強い酒はできない。

 

 醸造酒って極論で言えば水とエタノールの混合だから、沸点の低い(水100℃エタノール約78度)ことを利用してエタノールを濃縮、アルコール度数を上げるのが蒸留だ。

 この世界の酒は精々が低アルコール度数で2%くらいだ、普通の麦酒の半分くらいかな。

 材料があれば家庭でも作れる「どぶろく」でもアルコール度数10%ぐらいはあるのに、何故低いのかな?

 因みに日本でアルコール度数1%以上の酒を造るのは違法です、密造酒です。

 

 じゃ家庭で作る梅酒とかは密造酒かと言うと厳密には違う、自分で飲む分ならば酒類と他の物品(酒類以外の物)との混和をする場合については種類によっては大丈夫だそうだ。

 梅やカリンはOKだが葡萄や米・粟・ヒエなどの穀物類は駄目らしい。

 果汁を絞るカクテル類も飲む直前なら良いそうだ、駄目なら居酒屋のサワー系のほとんどが違法になるから納得かな。

 因みに酒税は大衆から税金をたくさん集めるのに都合の良い税金だそうです。発泡酒に税金を掛けようとか、まさにそうですよね?

 

 コンパや接待宴会を数多くこなし一気飲みとかの無茶な飲み方に慣れ親しんだ僕は、量を飲まないと酔わないんだよね。

 アルコール度数の低い酒は水分を多く摂るからお腹パンパンなんです。

 酔う酔わないの前に水分の摂り過ぎで膀胱が破裂秒読みです、カウントダウン入ってます。

 

 そしてデルフィナさんは生粋のウワバミ。

 

 そんな二人に挑んだオッサンは……丸テーブルに突っ伏していた。

 

「何だよ、呑めないのかと思えば酒に強いじゃねえか……」

 

 グダグダのグデングデンに酔っ払ってるよ。真っ赤になって唸るオッサンは居酒屋でよく見る上司の愚痴を酔って晴らすサラリーマンに似ている。

 所謂「部長のバッキャロー!」だね。

 

「オッサンが弱すぎなんだよ。こんなアルコール度数の低い酒で酔えるかって」

 

「主様がお酒も強いなんて感激ですわ。今度、私とトコトン飲み明かしましょう」

 

「アリス、もう飽きたよ。早くお風呂に入って、お兄ちゃんとイチャラブしたいな」

 

 奢る連中から散々な言葉を掛けられて涙目のオッサン。

 

「そろそろ店を出たいんだけど平気かい?」

 

「ゲフッ、平気だそ……こんな酒くらい……ウッ……」

 

 突然立ち上がり口を押さえて店の中へと走り出したが、多分トイレでリバースかな?

 変なオッサンだが、実は呑み比べと言いつつ接待宴会テクニックで僕よりたくさん飲ませた。

 多分だが瓶二つくらい、デルフィナさんも同じくらいで、僕は瓶半分ほどかな?既に食事も済ませて満腹なのに更に水分を摂るのは無理だからね。

 

「ちょっと様子を見てくるよ。

急性アルコール中毒だったらヤバいからね。ヒールかキュアポイズンが効くかな?

それとデルフィナさん、奢りって言われたけど……

お勘定を精算しといてください。オッサンの様子を見たら店を出よう」

 

「そうですわね。あの方の飲んだ量は大したことは無いですもの……」

 

 はははは、デルフィナさんは先に瓶二つの麦酒を飲んでたから合計四つだった。それで頬に赤みが差すくらいなんて、どんだけ酒豪なんだよ!

 店のオッサンに声を掛けて奥のトイレに向かう。この店は宿泊施設も兼ているらしく、二階が客間らしい。

 階段の所に案内が書いてあるが、食事の後に直ぐ寝れるのは良いな。

 

 勿論、大部屋で雑魚寝の低いランクの宿泊施設だが……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ゲホッ……ゲェ……ハァハァ、このコッヘルとしたことが……ゲェ…不覚。

飲ませても顔色すら変えぬとは、どんだけ酒豪なんだ、あの二人は……」

 

 腹の中の物を全て出してようやく落ち着いた。個室を出て廊下の壁に寄り掛かりズルズルと座り込む、全く恥ずかしい。

 

 こんな醜態は久々だ。

 

「オッサン大丈夫かい?」

 

 心配そうにこちらを窺ってやがる、全く善人なんだか……

 

「む、これしきの酒など大丈夫だ!大丈夫だが、今日は体調が悪かった。まぁ、今回は俺の負けで良いぜ」

 我ながら恥ずかしい言い訳だな、兄ちゃんも苦笑いしてやがるし……

 

「楽しかったから良いけどさ。

無理に大量の酒を飲むと急性アルコール中毒で危ないんだぜ、全く酒に酔って死んだとか嫌だろ?……キュアポイズン」

 

 右肩に添えられた掌が輝くと、酷い酔いが醒めた?まさか、この若者は神殿関係者か?それに急性アルコール中毒ってなんだ?

 古い酒や腐った酒は毒だってアレか?

 

「兄ちゃん、神聖魔法が使えるなんてスゲェな……神官だったのか?」

 

 神聖魔法の使い手が放浪の身とは納得いかない。神聖魔法の使い手を教会が手放すとは考えられない。

 魔法も使えて剣も人並み以上なんて聞いたことが無い。まさかベルレの街を調べに来たのか、何を調べに来たんだ?

 

「違うよ、適性があっただけだよ。楽になったかい?」

 

 まさか貴重な魔法を酔い醒ましに使うとは驚きだな。

 普通なら治療でも高いお布施を取られるのに、断りも無く神聖魔法を使ったから無料(ただ)なのか?

 

「ああ、大分楽になったぜ。じゃ2ROUNDに突入するか?」

 

 未だ俺は負けてない、負けてないぞ!

 

「もう嫌だよ、精算しといたから少し休んでから帰りなよ。楽しかったよ、オッサン」

 

 ポンと肩を叩かれて笑いながら立ち去る兄ちゃんの後ろ姿を見ながら、奢りと誘って奢られたことに気付いたのは暫く経ってからだ。

 ノロノロとトイレから食堂まで移動する。相変わらず無愛想なオヤジがカウンターの中で店内に睨みを利かせてるぜ。

 

「オヤジ、すまんが水をくれよ。ふぅ、アイツらは先に帰ったみたいだな」

 

 カウンターに座りいつも無表情なオヤジに、酔い醒ましの水を頼む。

 神聖魔法で酔い自体は醒めたが、口の中がネバネバでいけねぇ。

 椀に水を入れてカウンターの上に置いてくれたオヤジに礼を言って一気に飲む。

 

「ふー、やられたな。しかも誘った方が奢られたら立場が無いぜ」

 

「コッヘル様、奴らは何者なんですかい?」

 

 無表情なオヤジが警戒するように聞いてくる。危険分子と勘違いさせちゃ駄目だな、借りができちまったし……

 残りの水を飲み干し、お代わりを貰うために椀をオヤジに差し出す。

 

「ん、できれば領主軍に引き込みてぇんだ。未熟だが素質はあるし脳筋じゃねぇのが良い。

ウチの連中は突撃と撤退しかできない馬鹿ばっかりだから、考えられる奴ぁ貴重なんだ。オヤジ、世話になったな」

 

 本当にウチには考えられる奴が足りねぇ。

 

 だが、女連れで充実している奴が領主軍に入ってくれるとも思わねぇ。少なくともベルレの街に居るうちに借りは返しとくか……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「主様、変な男でしたが強い力を感じました。人間にしてはですが名の有る戦士でしょう。

何か目的があって近付いてきたと思いましたが、酔って潰れてお終いとは……何がしたかったんでしょうか?」

 

「そうだよ、お兄ちゃん。あのオッサンだけど、私たちのことを調べに近付いたと思うよ。

お兄ちゃん、武器屋で目立ち過ぎたもん。だから無害を装い同席を許可したんだ」

 

「ああ、ちゃんと理由があったんだね。ごめんなさい、直感だと思ってた」

 

 腹ごなしを兼ねて市場を散策してるが、オッサンと同席を許した意味を聞いて驚いた。

 でも偉いオッサンだったんだな、領主軍の上の方だろうか?

 同類(人間)の男と普通に世間話とか話したのは初めてだったから、少し無警戒に話し過ぎたかもしれない。

 店の連中とは話したが、基本的に商売絡みだから会話じゃなくて交渉だし。

 市場に来たのは人混みに紛れられると思ったから……宝石商から出てきたんだ、お金目当てに様子を窺う連中も多いだろう。

 何軒かの露店を冷やかし急に路地へと入るが、慌てて後を付けてくる奴は確認できない。追跡されてはいなかった。

 

「さて、公衆浴場に行こうか。前とは違うのにしようか?それとも同じにする?」

 

 ベルレの街には複数の公衆浴場があるそうだ。微妙に価格とサービスが違うらしいが、前回の公衆浴場は中くらいらしい。十分満足だったけどさ。

 

「慣れてる方が良いでしょう。話し込み過ぎたので、今から新しい公衆浴場を探すのも億劫ですわ」

 

「そうだよ、お兄ちゃん。早くお風呂に入りたいな!」

 

 確かに夜8時には追い出されちゃうからな、早めに行かないと楽しい時間が無くなっちゃうな。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「バインバインとツルンツルンも最高だった。人生って素晴らしい、生きてるって素晴らしい。ありがとう神様!」

 

 宿屋をチェックアウトして大通りに出た。まだ夜7時前と爽やかな空気を胸一杯に吸い込む。

 ああ、昨夜はこの世の春を堪能した。公衆浴場で混浴を堪能し宿屋で川の字で寝ることも堪能した。

 

 まさに幸せの堪能尽くし……

 

 最高です、今は周りに対して優しくなれると思います。

 

 この優しさを誰かに……

 

「よう!また会ったな、兄ちゃん。暇なら少し付き合えよ」

 

 

 後ろから野太い声が掛かり爽やかな気持ちが半減した。

 

「オッサン、ストーカーかよって……やっぱり偉い人だったんだな」

 

 振り向けばハーフプレートを着込み背中に大剣を背負ったオッサンが居た。ベルレの街中で武器を持ち歩けるのは領主軍だけだ。

 そして金回りが良くて強いオッサンは、領主軍の中でも地位が高いとみた。

 

「そんなに偉くねぇよ。上から数えれば軍じゃ領主の次だ。領主軍大隊長コッヘル、それが俺の名前だ!」

 

 領主の次って軍のトップじゃん!

 

 デルフィナさんとアリスの表情を窺うが、能面みたいに無表情になってる。

 警戒してるんだろうな、特にアリスは過去に討伐され封印されてたし。

 

「僕らは日用品を買ったら帰ろうかと。午前中に出発しないと夜に危ない場所を通る羽目になるんですよ。何か用ですか?」

 

「おいおい、そんなに警戒するなって!大剣を初めて使うんだろ?少し稽古を付けてやるぜ。

俺は大剣使いとしちゃ、それなりに有名なんだ。昨日の奢りの礼だから、安心しろって」

 

 正規軍人の大剣使いか……久し振りに相手のステータスを盗み見る。

 

レベル : 28

 

 

HP : 173/173

MP : 8/8

 

筋力 : 67

体力 : 41

知力 : 31

素早さ : 36

運 : 20

 

職業 : 領主軍大隊長

称号 : 燻銀(いぶしぎん)の苦労人

 

 

 おお、最近稀に見るステータスの高さだ。そして苦労人なんだ……運が低いのには親近感が湧いた。

 だが高い筋力と体力、それに素早さだ。およそ理想の剣士のステータスではなかろうか?

 

「主様、手解きを受けてはどうでしょうか?」

 

「そうだね、実質ベルレの街のNo.2のお願いだから断れないよ」

 

 僕の両手の花からの言葉に、確かに権力者のお願いという命令を無碍に断れば大変だと感じた。

 彼女たちの平坦な口調からも読み取れたし……

 

「おいおい、俺はどんな悪人なんだよ。

深く考えるな、俺は昨日大剣を振り回す兄ちゃんに興味を持っただけだ。素質はあるが技術が低過ぎる。

別に領主軍に入れとは言わないが、少しは腕を上げさせてやるぜ。なに、気に入ったからには早死にしてほしくねぇんだ」

 

 やはり目立ち過ぎたのね……

 

「分かりました。手解きをお願いします、コッヘル様」

 

 ニカッっと男らしい笑みを浮かべるオッサン。領主軍の大隊長ともなれば貴族階級かもしれない。

 僕は平民の商人の次男坊設定だから、下手に出なきゃ駄目か……最悪無礼討ちとかでも言い訳できないかも、散々オッサン呼ばわりしたし。

 

「様は要らねぇよ。んじゃ付いてきな」

 

 コッヘル様の後に付いていくと、どうみても領主の屋敷みたいな街の中央の豪邸に来ました。罠だったらどうする?

 いや、コッヘル様は街の人たちから親しげに声を掛けられていた。悪人ではないが、親切だけで剣の手解きをしてくれるのだろうか?

 正面ゲートの両脇に立っている警備兵が僕らを訝しんで見るが、コッヘル様が手を上げると引き下がった。

 

「ほら、遠慮するな。奥に練兵所があるからよ、そこで軽くやろうぜ」

 

 ズンズン進むコッヘル様の後を追うが、どうみても屋敷中の連中が興味を持ってしまってる。

 巌つい大隊長に連れられた貧弱な若者と美幼女、それにラミア族の美女なんて不思議がらない方が不思議だ……

 屋敷中の連中の興味を引いた一団はようやく広い空間に出た。室内練兵所は日本で言う武道館みたいな板張りの大広間だ。

 

「ほらよ、大剣を使うならコレくらいの木剣は使えるだろ?」

 

 無造作に放られた木剣は長さが150㎝はあるしかなり重い。

 

「じゃ始めっか?」

 

 いや、心の準備ってモノがですね?まだなんですが……

 


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