異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第26話

 マウントコングの第一陣、食料調達部隊を倒すことができた。奴らは群れをなす連中で半分の6匹を倒した。

 だが、群れは1匹の雄(♂)を頂点に無数の雌(♀)で構成され厳格な順位がある。

 人間だとハーレムの順位は好みやバックヤードの勢力によるけど、奴らは純粋に力。

 強い順の雌をより強い雄が率いている。つまり今日倒した連中は群れの下位陣であり雑用係だ。

 1匹だけ棍棒じゃなくてナイフを加工してピッケル代わりに使っていたが、アレが食料調達部隊のリーダーだったんだろう。

 残りの連中は全員が棍棒以上の武器を持ってると思って良いだろう……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 捜索隊が現れるのは明日以降だそうだ。毎回半日くらいで全員分の餌が確保できるわけじゃない。

 彼らも十分な餌を捕るまでは帰れないだろうから、遅くなるときもあるだろう。

 騒ぎだすのは日が替わってから、奴らの空腹感が我慢できなくなってからだ。

 待ち伏せした場所は夜営に適しているが、倒した奴らが酷い状況で転がっている。

 死体を漁るモンスターも寄ってくるだろうから、奴らが捕ったアルマジロ擬きを貰って待ち伏せの第二候補の場所へ移動する。

 歩くこと15分、6本の枯れた木々と1本の倒木のある場所だ。

 

 何故第二候補かと言えば単純にデルフィナさんの尻尾が隠れないから……頭隠して尻隠さずじゃ待ち伏せにならない。

 

 日も沈みかけてきたので夕食の準備に取り掛かる。最近覚えた獲物の解体方法を思い浮かべながら、初めて見るアルマジロ擬きを捌く。

 

「このアルマジロ擬きの外殻?って凄いね。これは剥げないな……」

 

血抜きと臓物の抜き取りは完了。だが皮を剥ぐのと身を切り分けるのが難しい。アルマジロ擬きとはいえ外殻は亀みたいだ……

 

「主様、このモンスターの外殻は防具、兜や鎧の関節部分に使われます。

ですが棍棒で叩かれた所為で亀裂が入ってますね。肉は外殻の内側に沿ってナイフの刃を入れます。こう削げ取るように……」

 

 慣れた手つきでナイフを小刻みに動かし捌いていく。流石はデルフィナ先生だ、綺麗にアルマジロ擬きが外殻から外れた。

 赤身で全体的に脂身が少ない。剥がした身を関節部分て切り分け野趣溢れる焼肉にする。

 肋骨部分はスープに放り込んで具兼出汁とした。

 アリスが食用になる野草、蕗(ふき)擬きを採ってきてくれたのでスープの具に、小麦粉も練って丸めて団子にして水とん擬きにする。

 基本的に知らない食べ物は全て煮るか焼く。加熱殺菌の要領だ。

 そして寒い夜に食べる温かいスープは、それだけで最高の調味料だろう。

 

 夜営ゆえに手間の掛かる料理はできない。

 

 だから時間も掛からずに夕食が完成、焚き火を囲みながら食べる。素焼きの器は意外に熱を通す、つまり熱い。

 縁の部分を持って、フゥフゥと息を吹き掛けながらスープを啜る。

 

「体が暖まるね……」

 

 肋骨の部分の肉をカリカリと噛るが、これも美味い。

 

「流石に遠征中ですから、私もアリスも主様の精気は我慢しますが……嗚呼、禁断症状がですね。

主様の精気は我々妖魔にとって麻薬と同じです」

 

「うん、分かる。我慢し過ぎると手が小刻みに震えるの。保って一週間だよね?」

 

 なにやら女性陣が怪しい会話を始めたので、無言で食事をして体力を蓄えることにする。

 今回は僕の修業の他に奴らが溜め込んだお宝を奪うことも大切だ。またベルレの街に行って公衆浴場に入りたいし変わった物も食べたい。

 

 特に甘味に飢えているから、果物が食べたいんだ!

 

 空を見上げれば驚いたことに見慣れた星座が見える、一角獣座にうさぎ座・エリダヌス座・おおいぬ座……

 有名な双子座に牡牛座まであるが、これって日本の冬の星座だっけ?

 

「もしかして他の星に?いや、見え方は日本の冬の星座だし、まさかな……」

 

「主様、夜は冷えますわ。さぁ私の上に乗ってください」

 

 文字だけ読むと大変疑わしいが、デルフィナさんの巻いてくれた尻尾の上に乗るんです。

 凄いスベスベで柔らかくて、それでいて弾力があるベッドなんだよね。

 地面だと固くて冷たくて寝にくいって言ったら、デルフィナさんから提案してくれた。肉布団ならぬ蛇布団だが嬉しいです、はい。

 お言葉に甘えて尻尾の上に布を敷いて横になる。

 

「先に寝るね。じゃ交代の時に起こして……」

 

 デルフィナさんが、ゆっくりと尻尾をくねらせてくれる。これが揺り籠みたいで気持ち良いんだ。

 

 僕は直ぐに意識を手放した……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「お兄ちゃん、直ぐに寝ちゃったね。

デルフィナ、お兄ちゃんを甘やかせ過ぎじゃない?ラミア族は尻尾を他人に触られるのが嫌だって聞いたよ?」

 

 揺り籠みたいに尻尾をくねらせて、お兄ちゃんを微睡みに引っ張り込むデルフィナを見て羨ましいと思う。

 私じゃ自分が上に乗るなら良いけど、お兄ちゃんに乗られたら潰れちゃうよ。

 

「そうね、私たちは伴侶か家族以外には触らせないわ。

異種族に触らせるなんて、ましてや乗せるなんて普通じゃ考えられない。アリスも乗せてるでしょ?そういうことよ。

それよりも、主様の成長って異常じゃないかしら?それは良いことだけど、他の人族と違い過ぎない?」

 

 確かに毎回思うが、お兄ちゃんの成長は異常だ。

 普通の人間が城勤めの小隊長クラスになるのに、少なくとも10年以上は修業しなければならない。

 20代後半でもエリートクラスだけど、お兄ちゃんは一月にも満たない期間で成長してる。

 普通と比べたら成長速度は100倍以上じゃないかな?

 

「うん、経験値とかレベルとか不思議なことを言ってたよ。

何となくだけど、お兄ちゃんには他人の能力が分かるみたい。私たちが相手の力量を何となく分かるのよりも詳しく……」

 

 むにゃむにゃと幸せそうにデルフィナの尻尾に頬擦りしている、お気楽な見た目とのギャップに萌える。

 昔戦ったことのある、私を討伐しに来た神官と大隊長クラスの兵隊と見比べても力量は近付いたのに威厳は全く比べようが無いくらいに乏しい。

 

「でも人族の上位陣って私達を蔑む目で見るじゃない?あんな風に育ってはほしくないわね。主様には、今のままの優しい主様で居てほしいの」

 

 繁殖力の高い人間は爆発的に増えるから数の暴力が酷い。個の力は弱いのに少数の種族を見下す傾向がある。

 勿論、彼らに比べて少数な種族も個の力で劣る人族を見下している。

 

「それは同感。

威張り散らすようなお兄ちゃんはお断り。デルフィナ、しっかりお兄ちゃんを育てないと駄目だよ!」

 

 元人間で現レイスの私には、両方の思いが分かるから……お兄ちゃんには、そんな人になってほしくない。

 

「そうよね。殿方を自分好みに調教……いえ、育成できるなんて。

昔話にもあったわ、確か“ひかるげんじプラン″でしたか?言葉の意味は分かりませんが、内容は合っているはずです」

 

『ひかるげんじプラン』か……

 

 懐かしいな、言葉の意味は不明だけど最初に実行した人の名前かな?

 

「うん、聞いたことがあるよ。

幼児を攫って自分好みに育てるんだっけ?子供の頃にお父様によく言われたわ。

良い子にしないと『ひかーるげんーじ』が攫いに来るぞって。

てっきり王侯貴族か金持ちのハーレム要員確保か人攫いの犯罪者の類(たぐい)かと思った。でもラミア族にも伝わってたんだね」

 

 ラミア族は一夫一婦制だと思ったけど、やはり族長辺りはハーレム作るのかな?

 

「そうね、言われてみれば不思議な話だわ。ラミア族にはハーレムなんて無いのに……何故かしら?」

 

 二人してウンウン悩むけど、曖昧な記憶しかないし言い伝えの元に興味も無いから良いかな。

 

「お兄ちゃんにとっては私たちが居るから既にハーレムだね。

でも、もう増やさないよ。日々鍛えて精気の総量は増えてるけど、やっぱりたくさん吸いたいもん!」

 

「そうですわね。総量は増えましたが、味の濃さは変わりませんし。ああ、早く吸いたいですわ……あら?主様が、うなされてますわ」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「むぅ、嫌な夢を見た気がする……」

 

 デルフィナさんの尻尾ベッドは快適なはずなのに、嫌な寝汗をかいたな。あれから深夜に見張りを交代し、明け方に二度寝をした。

 刻んだとは言え十分な睡眠時間は取れたのに、妙に疲れている。

 

「まだ野宿は慣れませんか?」

 

「お兄ちゃんって意外に繊細だよね?私に股間を見せ付けた時の大胆さが嘘みたい」

 

 悪気は無いと思いたいが、もしも股間を見せたときにあの笑顔だったら……僕は洞窟に引き籠もって出たくなくなる。

 

 そんな無邪気な笑顔だった……

 

 彼女たちとの会話を楽しみながら?マウントコングの捜索隊を待ったが、ようやく昼前に現れた。

 遠目で確認すると予想通り3匹だが、2匹がハンドアックスを1匹は鉄製のメイスを持っている。

 メイス持ちを先頭に三角形のフォーメーションで近付いてくるな。岩陰から隠れて覗くが、既に20mくらいしか離れてない。

 覚悟を決めて飛び込むしかないな!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「アリスとデルフィナさんは待機してね。危なくなったら援護よろしく!」

 

 そう言って岩陰から飛び出しマウントコングの群れに対峙する。

 今回は弓を使わないから奇襲は無理だし、慌てた行動には隙ができやすい。

 

 先ずは久し振りのステータス確認だ。

 

 

 

マウントコング

 

レベル : 8

 

HP : 52/52

MP : 4/4

 

筋力 : 38

体力 : 26

知力 : 9

素早さ : 15

運 : 11

 

 

 

 ちょっと前の僕なら筋力と体力がほとんど同じだったな。デルフィナさんの訓練は本当に的確だ。

 突然飛び出してきた僕に一瞬だが驚いたが、奴らはニヤニヤ嫌な笑いをしだした。

 まるでネギを背負ったカモが向こうからやってきたみたいな?

 本来なら全員で連携攻撃だと思ったが、奴らは三方向に取り囲もうと広がった。逃げられないように?

 マウントコングは全員右に得物を持っているので左に移動している奴を最初に狙う。

 相手の左側、利き腕と違う方向に移動している奴の進行方向から斬り付ける。

 これなら武器も振り辛く重心も反対側に移し難い。つまり避け難い!

 

「ウギャ、ギャン!」

 

 初撃は当ったが致命傷にはならなかった……武器で受けるか、しゃがむか、反対方向へ避けるかと思ったが、後ろへ跳んだ。

 だが傷は浅いが首の近くを切り裂いたので、戦うには辛いはずだ。

 これで戦力は1対2.5、怪我した奴を庇ってくれれば更に優位になるだろう。

 味方を庇いながら戦うのは難しいから、上手くすれば庇うのを優先して攻め手は一人に……

 

「ウキャッキャ!」

 

「ウホッ、ウホウホ!」

 

 アレ?庇うどころか手を叩いて喜んでるよ。怪我した奴は傷口を押さえて苦しそうなのに……奴らって厳しい序列があるって言わなかった?

 仲間意識が強いから捜索に来たんじゃないの?群れとして弱った個には厳しいのなら対応を変えるべきだ。

 

 一旦バックステップで無傷な二匹が同時に見える位置まで下がる。

 

「スリープ」

 

 そして未だ無傷の奴らに向けて眠りの魔法を掛ける。グラリと眠気で片膝を突いた奴に飛び掛かり、脳天にロングソードを振り下ろす!

 顎まで刃が食い込み両手に嫌な手応えを感じる……これは刃が骨に食い込んだか?

 引き抜くのに時間が掛かりそうなロングソードから手を離し、予備のショートソードを抜くと残り一匹と対峙する。

 頭を振って眠気を飛ばしているが、スリープの魔法自体は効いてるな。戦いに集中できない敵など怖くはない。

 何回か浅い傷を負わせた後で、出血で弱った頃を見計らい首を切り裂いて止めを刺した……

 

 

「魔法剣士らしいと言えば、らしい戦いだったな。でも僕には剣技で複数を圧倒は無理だ……」

 

 やはり僕は戦う手段を増やして搦め手で戦う事が理想かな?それとも魔法使いか僧侶に方向転換した方が良いかな?

 群れのリーダーを倒した後に再度レベルアップの方向を考えるか。

 


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