異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第21話

 気が付くと体がスベスベのツヤツヤになっていた。そう、全身がだ。

 自分の体を隅々まで見回すが……股間もお尻もスベスベのツヤツヤで顎髭も綺麗に剃られている。

 

「僕に何があったの?」

 

 デルフィナさんの尻尾にぶら下がるアリス。楽しそうに笑っているが、僕が湯当りしているうちに何があったの?

 何で君たち仲良くなり過ぎてるの?

 

「お兄ちゃん、蜂蜜水とドライフルーツ食べない?」

 

「せっかくですから夕食もここで済ませましょう。日替わりの食事がありますからね。私は蜂蜜水でなくビールを瓶(かめ)で頂きますわ」

 

 質問を笑顔でスルーされたが、怖くて更に聞くことができない。

 それに瓶(かめ)でビールって飲み過ぎですよ。確かに古代ローマの風呂は現代感覚の体を清める以外に、色々な意味があった。

 食事や休憩、社交場でありスポーツ場でもあったんだ。

 市民の憩いのほとんど全てが、そこに集約されていた。この世界の公衆浴場も同じ役割なのかな?

 

「宿屋は寝るだけらしいし夕食もここで済ませようか……注文は任せるけど、僕は新鮮なフルーツが食べたいな」

 

 寝台から起き上がり浴槽の縁に座る。香油塗れの体を洗いたいが、湯船に油だらけで入って良いのかが悩み所だ。

 取り敢えずザバザバと足だけ洗ってみる。お湯に薄く油膜が張ったから駄目だな。

 

 最後に掛け湯で洗い流すか……

 

 この世界に来てから甘味は殆ど食べていない。偶然見付けたブルーベリーみたいな果実を数個食べただけだから楽しみだ。

 彼女たちは自分の体に麻布を巻いて、扉を開けて従業員を呼んでいる。慌てて僕も腰に麻布を巻く。

 

 デルフィナさんが「アリス?主様ですが、ちゃんと股間を隠しますよ」とか言ってる。

 アリスが「アレおかしいな?確か初めて会ったときは露出して見せ付けてたんだよ」とか応えてるが、アレは誰も居ないと思ったのとトイレが近かったんだ。

 

 不幸が重なった不可抗力な事故だったんだ!

 

「僕に露出趣味も、そういったアブノーマルな性癖もありません。至って健全で普通だから!」

 

 生温かいアリスの視線が痛かった。やはり最初の出会いで股間を見せ付けたことが、トラウマになっているのか?

 徐々に見せて慣らさないと……いや、それじゃただの変態露出狂じゃないか?

 一人悩んでいると食事の用意が整っていた。串焼き肉に生野菜サラダ、魚のスープに固いパン。

 簡素だがデルフィナさんの家庭料理とは違う、お店の食事感の漂う感じがする。

 

 頼んだフルーツはオレンジみたいな果汁だ。ドライフルーツは杏(あんず)だろうか?

 

 新鮮な野菜や果物を食べられるのが、流通の拠点たる街の利点だろうな。

 三人でテーブルを囲み、如何にしたら僕が彼女たちに香油を塗ることができるかを考える。

 夏の浜辺でサンオイルを塗りたくる恋人同士のアレをやるために……

 

「主様、食事が終わりましたら私たちにも香油を塗ってくださいな」

 

「そうだね、お兄ちゃん塗ってよ」

 

 少し頬を赤くして、微妙に視線を彷徨わせて提案してくれた彼女たちは恥じらいもあって大変よろしい!勿論、僕が隅々まで塗りたくりますよ。

 

「勿論だ、任せてくれ!」

 

 良い笑顔でサムズアップする。デルフィナさんのイケナイ双房やアリスのプニプニなお尻に香油を塗りたくりまくるぜ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 結果的に言えば、僕の学習能力は低いのだろう。

 

 調子に乗って彼女たちをいたずらに興奮させてしまい、返り討ちに……精気を吸われ寝台に横になり休憩中です。

 

 だが、一片の悔いも無い!

 

 デルフィナさんの胸は盗賊の潜む洞窟を襲撃する前に少しだけ触らせてくれただけだった。

 だが今回は……薄目を開けてアリスとデルフィナさんを見るが、惜し気もなく裸体を晒して仲良くふざけている。

 何かしらの垣根が無くなった感じがするんだけど……換気用に開いている格子窓を見れば既に辺りは暗い。

 

 時刻は夜7時を過ぎてるくらいかな?

 

 お腹も気持ちも膨れているし、もう少し休んだら宿屋に行くか。公衆浴場は夜8時には閉店しお客は全員出されるそうだ。

 因みに開店は15時からだ。お湯を沸かしたりするには燃料も必要だから営業時間が短いのは仕方ないのかな?

 

 これだけの設備だし維持メンテも大変なんだろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 宿屋は可もなく不可もなく本当に小部屋だった。

 

 窓は無く板で仕切りを作っている簡素な部屋だ。一人5Gで三人で15G、ランプと油も貰えたが2時間も点ければ無くなるだろう。

 あと瓶に入った水とお椀が人数分。鍵は扉の内側から閉めるスライド式で、一般的には閂?

 

 ランプの灯りを頼りに戸締まりをして寝袋を用意。

 

 念のためにデルフィナさんにはロングソードを渡した。何かあれば盗賊から奪ったと言えば良い。

 盗賊は問答無用で死罪だし、証言も信用無いだろう。

 僕等は守衛に武器を預けているから、最悪は盗賊の持ち物としてロングソードを没収されるだけだ。

 こんなことなら手頃な棍棒くらいは袋に入れておけば良かったよ。

 三人で川の字に横になるのだが、部屋が狭くてデルフィナさんの尻尾が扉を塞ぐように横たわった。

 これなら扉が開けば直ぐに気付くので安心だ。

 

「じゃランプの灯りを消すよ。おやすみ……」

 

「お兄ちゃん、おやすみ」

 

「主様、お休みなさいませ」

 

 左右の温もりを感じると安心するな。文明社会からは程遠い暮らしだが、自分の順応性に驚いたよ。

 直ぐに寝息が聞こえてくるが、日が暮れれば寝て朝日が昇れば起きる。こんな生活も良いよね?

 

 この世界に来てから初めての街、ベルレの夜が更けていく……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 本当に日が昇ったら起きられた。

 

 窓は無いのに起きられた、朝日なんて射し込まないのに体内時計がこの世界基準になったのかな?

 

「おはようございます。今日は日用品を買ってから帰りましょう」

 

「おはよう、お兄ちゃん。荷物が嵩張っても平気だし、お兄ちゃんの服を多めに買おうね」

 

 ようやく僕も下着が着れるのだ!今はズボンを直履きなんだよね。盗賊たちから服も奪ったが、流石に下着は嫌だったんだ。

 収まりの悪かった股間がようやく安定すると思うと嬉しくなってきた!

 

 宿屋を出ると6時くらいだと思うが、既に街の人達は活動していた。

 屋台で固いパンと魚のスープの朝食を取り、安い露店商を見て周り必要な物を買っていく。

 下着や替えの服、香辛料や塩などの生活必需品を買い揃えると既に日が頭の真上に来ていた。

 基本的に値段は交渉次第なので結構な時間が掛かるのだ。

 お昼は軽めに串焼き肉になり、昨日と同じお店で買ったので一本オマケしてくれた。

 

 僕ら三人は記憶に残りやすいんだろうな……

 

 正午過ぎに日用品の買い物を終えて正門まで到着。行きに見忘れた領主からの依頼をチェックする。壁に板に書かれた依頼が幾つかある。

 

「驚いた、会話が成立してるからな。もしかしてと思ったけど文字が読めるや」

 

 日本語でも英語でもない、多分地球上の文字じゃないのに読める。

 

「あの剣についての依頼は無いですわね……モンスター討伐軍への短期参加依頼に、此方は領主軍への入隊希望者の受付ですわ」

 

 詳細は受付で尋ねるようにか……確かに板にインクみたいな物で書かれているが、皆に見えやすいように文字が大きい。

 細かい物までは書けないか……

 

「兄ちゃん、何て書いてあるんだい?」

 

「ん?ああ、二件書いてますよ。モンスター討伐軍への短期参加依頼と領主軍への入隊希望者を募集してます。詳細は受付で聞いた方が早いですよ」

 

 ハーフプレートを着込んで無精髭を生やしたオッサンが話し掛けてきた。

 オッサンの後ろには10代後半の少年が二人、共に皮鎧を着ている。

 

「文字が読めるんて商売人かい?貴族にゃ見えないが、品は良さそうだし」

 

 世間話を装っていて、柔和な笑顔を張り付けているが、逆に粗暴な感じのオッサンが笑顔なのが気になる。

 オッサンは偽装しているが、子供たちが思いっきり警戒してるのが不自然だ。

 僕たちの表情を見逃さないように注目してるのがね。普通に話し掛けるだけなら、しかも警備の守衛が近くにいるのにだよ。

 

 文字が読める?ああ、この世界は識字率が低いんだっけ。

 

「実家が商いをしてましてね、兄貴が家を継ぐときに飛び出したんですよ。今は気楽な暮らしをしてます。じゃ、これで!」

 

 どんどん自分の嘘設定が固まっていく。中途半端な知識が、あやふやな立場なんだろうな。

 字が読めたり暗算ができるのは、その立場や商売に必要なスキルなんだ。つまり僕は怪しい人物ってことか?

 

 さり気なくアリスの背中を押すときに様子を窺ったが目が合った。

 

 僕達は6000G近い金を持ってるから用心するに越したことはないな……最後に武器屋を冷やかす。

 

 剣・槍・斧・棍……オラ、ワクワクしてきただ!

 

「あら、これは同じ剣かしら……」

 

 デルフィナさんが何かを見付けたみたいだ。

 小さな声だけど、随分驚いたようだけど……彼女が指差す物は、何と日本刀だった。

 

「デルフィナさん、それは……」

 

 同じ剣とか言ってしまったぞ。口止めしてないから仕方ないけど、変なオッサンに注目されてる時にだ!

 

「お目が高い!

それに目を付けなさるとは、流石はラミア族のお嬢様ですな。同じ剣とは、どこかで見られましたか?」

 

 揉み手をする店員に気付かれてしまった。だが無造作に棚に飾られたソレは、間違い無く日本刀だろう。

 実は僕が警戒し過ぎで普通に売っている物なのか?

 

「珍しくロングソードですね。盗賊が持っていたのは、ショートソードだと思ったけど……」

 

 デルフィナさんが何かを言う前に言葉を重ねる。

 

「ほぅ?短いですか?この刀は大小一組が本来の姿なんですよ。

その盗賊が持っていたのは、この刀の対かも知れませんね。良ければ、その盗賊について教えて頂けませんか?」

 

「そいつは俺も聞きてえな!元々その刀は、俺が買おうと思ってたんだ。対の刀が有るなら両方欲しいぜ」

 

 さり気なく脇に居るオッサン。

 

 偶然にしては出来過ぎている話の流れだ。偶々話し掛けられた相手の欲している日本刀が店に陳列されている。

 これは情報収集の手口に引っ掛かったのか?

 別に盗賊のアジトを襲ってお宝を根こそぎ奪ったことは悪ではない。

 僕の勘が、ただ脇差絡みのことに関わり合いになりたくないだけなんだ。

 

「実はですね……」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 即興で考えた言い訳はこうだ。

 

 

 ベルレの街に向かう途中、街道脇の森から盗賊の一団が現れた。

 不意討ちもせず、ただ飛び出してきた連中に偶然に遭遇した感じがした。

 実際に盗賊達は何かに追われていたらしいが、ついでにとか目撃者は危険だとか言って襲ってきた。

 だが息も絶え絶えに走ってきた連中に負けるはずもなく、何人かを返り討ちにした。

 昨日ここで売った皮鎧は盗賊から剥ぎ取った物だ。その中の一人が変わったショートソードを持っていた。

 切るに特化した薄い刃を持つショートソードだが、デルフィナさんは長柄の斧を僕は折れてしまったがロングソードを使っていた。

 

 あんな細いショートソードじゃ打ち合ったら折れるか曲がるかするだろう。

 

 実際に盗賊も分かっていたんだろう、直ぐに逃げ出した。そう説明し話を締め括った……

 

 

「盗賊?襲われた場所は、どの辺だ?」

 

「ここから西の街道沿いで半日歩いた辺りでしたよ」

 

 実際に盗賊のアジトがあった辺りだが、信憑性を高めるために正直に話した。

 

「確か謎の煙が上がったとか聞いた辺りだな……兄ちゃん、ありがとよ。

何か噂を聞いたら教えてくれよな。武器屋の親父に言ってくれれば良いからよ、礼はするぜ」

 

 そう言って肩を力一杯叩いて離れていった。何だったんだ、あのオッサンは?

 

 その後、僕らは後を警戒しながらベルレの街を後にした……

 


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