異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

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第16話

「所変われば常識も変わるか……日本人が平和ボケしてるって言われるのも分かる気もするけどさ、やり過ぎじゃね?」

 

 自分が襲われた相手に情けなど不要。復讐は正当な権利であり、それを行使しない方が異常なのだ。

 勿論復讐には相応の力が必要で返り討ちに遭う恐れもあるのだが、それらは自己責任らしい。

 

「主様、敵は五人ですが油断は禁物です。様子を見に来た盗賊を締め上げてから既に三日過ぎてます。

留守番の連中にすれば、彼らを派遣して一週間以上経ってますから、増員された可能性もありますよ」

 

「そうだよ、お兄ちゃん。

盗賊団の中で三番目の参謀的な奴が残ってるから、戦力増強は有り得るよ。それで、どうする?」

 

 美女と美幼女から熱い視線を投げ掛けられてます。さて、どうしたら良いのだろうか?

 盗賊団の調査隊を捕まえて、肉体言語で情報を教えてもらった。

 彼らのアジトは破棄された坑道なのだが、内部の様子は詳しく聞けなかった。

 だが長い間、放置されていたので水が溜まって半分以上は水没しているらしい。

 つまり出入口は見えている一ヶ所だけだ。犯罪集団のくせに退路を確保してないのは無用心過ぎるだろ!

 

 常に襲う側とでも思ってるのかな?

 

 見張りは一人だが、気を付けないと分からない程度に隠れている。

 坑道の入口はカモフラージュで半分岩やガラクタで塞いであり、ガラクタの隙間から見張りが周りを警戒している。

 まぁこれ見よがしに見張ってたら、ここがアジトですって宣伝してるだけだからな。

 その辺は用心してると考えても良い。つまり中途半端な盗賊団なんだよね。

 

 総勢20人前後の中規模な盗賊団だが奪うしかしない連中を20人も賄うためには、何倍もの人達が不幸になってるはずだ。

 だから全滅させるのに、反対はできない。

 

 さて危険だからと、半ば強引に同行したわけだが……どうしようかな?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 先ずは情報を集めたい。奴らが何人居るのか?強さはどれぐらいなのか?ステータスの確認は、僕が直接見なければ分からない。

 つまり洞窟に籠もられていては分からないし、見張り役は交代しても全員が下っ端だろうから意味は無い。

 実際に一日中見ても三交替で全員が下っ端レベルの雑魚でしかない。

 ならば参謀役と武闘派が残ってる可能性が高い。

 

 水は坑道内に溜まったものを利用しているし、食事の煮炊きも外ではしていない。

 トイレすら中で済ませているとなると、中の環境は劣悪だろうな。

 

 この文化レベルだと、そんなに深く長く掘れないだろうし……奴らのアジトを監視できる場所にベースキャンプを設置する。

 

「暫く監視したけど、下っ端の三人しか確認できなかった。少なくとも中に居る二人は下っ端以上の力があるよね。

交替時間もマチマチだから分からないけど、見張りを倒せば交替の二人目までは気付かれずに倒せる。

警戒されずに倒せるのはここまでだ。見張り二人が帰ってこなければ警戒されて待ち伏せされる。

後は地力の勝負で力押しするしかない」

 

「三対三ですね。

ですが奇襲できる私達が有利です。見張り交替なら一人は戻ってくるので多少の音は誤魔化せます。

後は奇襲のときに強い奴らを見付けられるかですね。流石に襲われれば、私達の存在はバレます」

 

 そう、奇襲は一回だけ。それを凌がれたら相手のフィールドでの戦いを強いられる。

 

「では見張りが交替してしばらくしたら最初の奴をスリープで眠らせる。

できれば中の情報を聞き出したい。そして交代要員が来たらソイツは倒す。二人減らしたら洞窟内に侵入して奇襲だ。

駄目元でスリープを掛けてみよう。奴らのボスにも多少の効果はあったし、一瞬でも気を逸らせれば儲け物だ。

アリスは火の魔法を多用してほしい。灯りが必要だし何かに燃え移り煙が充満しそうなら直ぐに外に出よう。

待ち伏せすれば良いし、最悪籠城されたら入口をガラクタで塞いで待てば良い。

補給の無い奴らはいずれ干上がるし、ずっと中に居るわけにはいかないからね」

 

 補給も応援も無い籠城は勝てない。仮に籠もられてても、交渉の余地はある。

 それにボス以上の強い奴は居ないから、最悪の場合でも力押しで勝てる。

 

 問題は、デルフィナさんだ……

 

 尻尾を含めると4m以上もあるから、狭い場所では行動に支障が出るよね。

 

「デルフィナさんは狭い場所だと動き辛いから、先頭は僕が行く。

とにかく、人数を一人か二人に減らせれば後はデルフィナさんに任せるよ。直線的な坑道ならブレスも良いと思う」

 

「アリスだってレイス化すれば気付かれずに奴らの後ろに周りこめるよ!お兄ちゃんばかりが危険だよ、この作戦は」

 

 あっアリス、声がデカいって……彼女を抱き締めながら口を塞ぐ。

 右手で口を左手で胸を押さえると、至福の感触が……幼女体型でも胸は柔らかいのである!

 

「ムグムグ、プハァ!お兄ちゃんのエッチ、変態、野外プレイは早過ぎるよ」

 

 右手だけ放すと真っ赤になりながらワタワタと小声で文句を言われた。何この可愛い生き物?

 

「ごめんごめん、だって見付かったら大変だからね?」

 

 今は盗賊のアジトを襲撃しようとしてる最中だ。些細なことでも細心の注意を……

 

「私も主様のイケナイ手を見付けましたわ。いつまで揉んでいるんですの?」

 

 そう言われて左手をツネられたが、結構痛い。

 

「うっ……すみません。つい柔らかくて……」

 

 言い訳にならないようなことを言ってしまう。デルフィナさんって、色事に対して緩そうで実は貞操観念は強い。

 普段は無用心な程に胸を見せたり押し付けてくるのだが……アレは天然というヤツなんだろうか?

 

 取り敢えず、その場で二人に土下座をする。

 

 この世界に土下座文化は無いらしいが、何とも居たたまれない雰囲気になるらしく大抵のことは許してくれる。

 勿論、毎回土下座はしない。これは切り札なのだ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「見張りが交代してしばらく経ったね。それじゃ始めるよ」

 

 小声で両隣に居る女性陣に話し掛ける。いよいよ襲撃だ。

 

「スリープ」

 

 対象物を直視しながら呪文を唱える。下っ端盗賊は、うつらうつらし始めた後に座り込んだ。

 

「成功だ、行くよ」

 

 完全に動かなくなったのを確認して、なるべく音を立てずに下っ端盗賊に近寄る。

 倒れて眠っている盗賊をデルフィナさんが縛り上げて草むらへ連行。

 彼女たちが尋問し僕はこの場で待機、見張り交替が来たら……音を出さずに殺す。

 洞窟から見えない場所に隠れて、盗賊が出てきたら口を塞いでナイフで刺す。

 これはアリスでは小さ過ぎて体格的に無理があり、デルフィナさんでも同じく体長が長過ぎて隠密性が悪くて無理。

 

 だから僕が、僕しかできないんだ。

 

 幸い力は下っ端盗賊よりも倍近く強いから問題無く拘束し殺せるはずだ。

 魔法で眠らせることも考えたが、異常を察して大声を出すかもしれないから物理的に口を塞いで処理をするしかない。

 僕はこの世界に来てから既に一人を殺している。ホモの盗賊を正当防衛と男の尊厳を守るために。

 

 今回はアリスとデルフィナさんを守るために。

 

 理由を付けないと人殺しができないが、理由無く人殺しをするよりはマシだと思いたい……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ほら、起きてくださいな」

 

 盗賊の後頭部を軽くロングソードの鞘で叩く。長柄の武器は洞窟内では取り扱いが難しいので、主様のを借りた。

 主様は弓とナイフだけだが、構わないと言ってくれました。主力に良い装備を集めるのが当たり前だと……気遣いが嬉しいですね。

 

 それに比べて、この不潔で嫌らしい盗賊ときたら!

 

 口に猿轡を噛ませて手足も拘束している。起きても騒いだり暴れたりはできないですわね。

 

「ほら、起きてくださいな」

 

 二度目は強く叩く。主様と同じ台詞での起こし方だが、片や優しく体を揺らすのとでは雲泥の差だ。

 彼は私の愛しい人(美味しいご飯)であり、コレは殺す敵でしかない。

 あのとき、主様が加勢してくれなければ私は女性としての尊厳を踏み躙られた後で殺されていた。

 今の私が生きていて、生まれてから初めて味わう幸せ(精気)を与えてくれたのは主様。

 種族間の壁を気にせず妖魔と呼ばれる私たちに普通に接してくれる珍しい人間。

 

 この足元で呻いているゴミとは違う不思議な人。

 

「デルフィナ、コイツ喜んでるよ。ハァハァ言ってる、気持ち悪いよ」

 

 主様のことを考えていて注意が逸れてしまったが、この盗賊は私に叩かれてもアリスのスカートを見上げて悶えている。

 

「騒ぐと殺す、黙って質問に答えなさい」

 

 ロングソードの切っ先を喉に押し当てて脅しをかける。勿論、聞き出すだけ聞き出したら殺す。

 盗賊は捕まったら死刑。だから気に病む必要は無い。

 

「分かったのなら合図しなさいな。それとも、このまま死ぬ?」

 

 ブルブルと首を振るから、薄皮一枚切れてしまったわね。ロングソードで猿轡を切る。少し頬が切れたが問題無いわ。

 

「洞窟内には何人居るの?貴方以外にですよ」

 

 切れた頬をロングソードでペチペチと叩く。

 

「よっ、四人だ、四人居るぞ」

 

 完全に怯えているのだが、何故か少し恍惚としてないかしら?

 

「洞窟の出口は一ヶ所だけかしら?」

 

 黙って頷くが、やはり興奮してるみたい。目が潤んでるし鼻息も荒い、それに汗が凄いわ。

 生理的に受け付けない気持ち悪さがある。

 

「洞窟内に居る連中で注意しないと駄目な奴は居るかしら?」

 

「ち、注意とは?」

 

「特殊能力があるとか魔法を使うとかよ。又は洞窟内に仕掛けてある罠とかね?」

 

 何か考えているみたいね……もう少し脅そうかしら?

 

「言わないと耳を削ぐわよ」

 

 何か怪しい行動をすれば直ぐに殺すために首に当てていた刃で耳をなぞる。盗賊の怯えの色が濃くなったわ。何故かしら?下半身が熱くなるわね。

 

「わわわ、罠は無い。無いが、中には魔法使いが一人居る。後は剣を使う連中たけだ……」

 

 魔法使い?

 

「それは……」

 

「デルフィナ!お兄ちゃんが見張りの交替の奴と揉み合ってるよ!」

 

 聞きたいことは聞けたので、首にロングソードを突き刺す。刃を抉って傷口を広げ、一振りして着いた血を払ってから草むらを飛び出す。

 主様に何かあったら大変だわ、急がねば!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 眠りこけた見張りを草むらに連行する二人の背中を見る。うん、逞しく頼りになる?

 見張りが居なくなれば警戒して様子を見に出てくるだろう。だから洞窟の左側の壁に張り付く様に立つ。

 出てきたら後から口を塞いでナイフで刺す。行動は簡単だが、気持ちは複雑だ。

 

 僕はコレから人殺しをするのだから……

 

 汗で濡れた掌をズボンで拭いて深呼吸をする。息を深く吸い込み、ゆっくりと吐き出す動作を二度三度と繰り返す。

 

「うん、落ち着いた……アリスとデルフィナさんの幸せのために。何よりも僕の幸せのために、出てくる奴を殺す!」

 

 どれくらい待っただろうか?中から声が聞こえた。

 

「オイ!持ち場ぁ離れるなよな!オイ、ションベンか?」

 

 ダミ声が近付いてくる。右手のナイフを握り直し、洞窟の出口に集中する。

 

「アレ?どこだ?」

 

 無用心に外へ出てきた奴を後から抱き付き口を塞ぐ。成功、右手のナイフで脇腹を突き刺すが……刃が刺さらない?

 

 しまった、ベルトか何かで防がれた?

 

 再度刺そうとするが、暴れだしたので片手では押さえ切れない。床に倒れて揉み合いになる。

 間近に見た盗賊は、目は血走り無精髭だらけで口は臭い。仕方なくナイフを放り投げて両手で首を締める。

 これなら相手を喋らせずに倒せるが、抵抗が凄い。最初は脇腹を殴られ続けたが、何とか耐えた。

 苦しくなったのか僕の腕を引っ掻くが痛みに耐えて締め続けた。ようやく力無く動かなくなったので、絞めていた手を離す。

 

 もの言わぬ骸となった盗賊を見て僕はその場で、吐いた……


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