異種族ハーレムを作るぞ?   作:Amber bird

1 / 51
プロローグ
第1話


「どうして……どうして、こうなったんだろう?」

 

 見上げれは雲一つない晴天。

 

 長閑な平原には遠く険しい山々が、左を見れば見事な透明感漂う湖。

 その畔には古代ヨーロッパの石造りの城塞都市みたいなモノが見える。

 

 正に王道ファンタジーな世界だ……

 

 しかも僕の周囲には人間は一人も居ない。そう、一人もだ!

 右隣を見れば、素直クールでスレンダーなゾンビ美少女。左隣を見れば、女王様で巨乳な下半身ヘビな美女。

 

 頭の上には……

 

「ほら、お兄ちゃんボヤボヤしない!次の敵が来るゾ」

 

 肩車の要領で頭にしがみ付く美幼女幽霊。彼女はしっかり者のツンデレ幽霊だ……

  正面を見れば、草原を走ってくる狼のような動物。その数五匹。

 

 狼のようなと言うのは、アレに頭が二つ有り大きさが牛ほどあるからさ。

 僕の知識ではケルベロスみたいだけど、此方では双頭狼らしい。まぁ僕らは狼モドキって呼んでるけどね。

 

 とにかく、明確な敵意を示す相手に適切な対応をしなければならない。

 

「ゾン子ちゃん!接近されるまで弓で攻撃」

 

 隣で既に臨戦態勢なゾンビっ娘に声を掛ける。

 

「ゾン子ちゃんって言わないで……ちゃんと名前ある。君はいつも人の言うことを聞かないね」

 

 文句を言うが、素直に弓を構えてくれる。

 

「ヘビ子様。ブレスの準備を……攻撃範囲に入ったら一声掛けて攻撃してください」

 

「ふふふふ……その呼び方を直しませんと、今宵も主様をベッドの上で締めますわよ」

 

 妖艶な笑みを向けてくれますが、締めるとは文字通りそのヘビな部分で体を三重巻きにされます。

 あはは・うふふ、な展開でなくデッドかアライブな関係ですから。

 

「ツンデ霊子!皆に補助魔法の準備を。僕も弓で迎え撃つが、ヘビ子様のブレス後は突っ込むよ」

 

 頭の上に浮いている美幼女に声を掛ける。

 

「なにそのツンデ霊子って?お兄ちゃん変な薬でもキメてないよね?」

 

 ポカポカと頭を叩かれるが結構痛い。それに怯まずクロスボゥを構え、大まかな指示を出す。

 

「ゾン子ちゃん、先頭のヤツを同時に狙うよ」

 

 先頭の狼モドキの額を狙い攻撃。和弓のゾン子ちゃんは曲射。クロスボゥの僕は直射。

 互いに狼モドキの顔を射抜いた。血飛沫をあげて倒れる狼モドキ。しかし他の四匹は怯まず接近してくる。

 

 そのスピードは思ったより速く、二射目は間に合わない。

 

「主様、ブレス逝きますわ!」

 

 ヒュウと息を吸い込んだヘビ子様の口から、青白い炎が残り四匹の狼モドキを舐めるように燃やしていく……

 灼熱の炎が狼モドキと大地を燃やしていく。毛皮が焦げる何とも言えない異臭が辺りに漂い始めた。

 

 しかしいつ見ても凄い威力だよね。

 

 種族的能力らしいが、別に体内に炎を生成する器官があるわけでなく、舌の上に現れる魔力の篭った炎を吐き出す感じだ。

 因みに毒の息や吹雪を吐く亜種の方々も居るらしい。では弱って足を止めた狼モドキ達に追撃だ!

 

「みんな、補助魔法掛けるよ。ブースト」

 

 ツンデ霊子の掛け声と共に、キラキラと体に光る粒子が纏わり付いて体が軽く力強くなった。

 僕はクロスボゥをその場に置いて、腰に差していた片刃の剣を抜く。ゾン子ちゃんは薙刀、ヘビ子様は長柄の斧を各々構えた。

 

「突っ込むぞ!」

 

 弱り切った狼モドキに襲い掛かる。一番近くのヤツの脇腹に剣を突き立てれば、狼モドキは絶叫を上げながら息絶える……

 

「次っ!」

 

 残りの狼モドキを攻撃しようと振り返れば、残りは既に絶命していた。首を刎ねられれば、幾らなんでも生きてはいまい。

 ゾン子ちゃんは薙刀で綺麗に首を切断し、ヘビ子様は力任せに叩き切っていた……返り血の付いた彼女達は、恍惚の表情だ!

 

 美しいのかスプラッタなのか判断に困る。

 

「ピロリロリロリーン!」

 

 突然、頭の中でファンファーレが鳴り響く。ああ、レベル上がったのか……脳内で文字が流れる。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

Level 28

HP+12

MP+18

筋力+3

体力+3

知力+7

素早さ+5

運+2

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 うん、微妙に運が低いのが現状にマッチして悲しいけど納得だ。

 しかも知力のみが上がってくんだよね、数値の上がりによって持てなかった物が持てるようになったり理解できないことが何となく分かったり……

 だけど肉体を酷使した戦闘で知力が上がるって何だろ?アレかな、作戦を考えるから?

 

 日々の筋トレが無意味なシステムだが、経験値が分からないので戦闘以外でレベルアップするのかが不明なんだ。

 

「お兄ちゃん、ボサッとしない!ファイヤー」

 

 最後の一匹が僕に飛びかかってきたところをツンデ霊子の魔法の炎で撃退する。

 

「キャイーン!」

 

 断末魔の鳴き声をあげながら、燃えていく狼モドキ……プスプスと黒焦げになった亡骸から、良い匂いが辺りに漂う……

 

「ぐう……」

 

 ブレスは生焼けで体毛が焦げて嫌な臭いだったが、ツンデ霊子の魔法で更に焼かれた狼モドキは良い匂いがする。

 なので盛大にお腹の虫が騒ぎ出した。モンスターの焦げた匂いで空腹を感じ、思わず真っ赤になってしまう。

 

 随分とこの世界に馴染んでしまったものだ……

 

「あらあら、主様のお腹は正直ですわね。ではコレで昼食にしましょう」

 

 ヘビ子様は、これでも元主婦のために料理の腕は良い。

 旦那様も同種の方だったらしいが、意に沿わない相手だったらしく……それって怖い話で詳細は聞けなかった。

 彼女は黒焦げの狼モドキの皮を剥ぎ、肉を削ぎ落としていく。

 程良く焼けて食べられる部分を選別し不要な脂身や筋を取り分けば、あら不思議?ローストビーフっぽい何かに早変わり!

 

 その仕草は台所に立つ若奥様のようだが、使っているのはハンドアックスと大振りの鉈だからなー……器用だよね?

 

 力が大変強い彼女は、厳つい武具が大変よく似合う。別にムキムキじゃなく普通にしなやかで柔らかいんだけど。

 何故か上半身はビキニアーマーに薄いショールを纏うだけなんだよね。

 鋼鉄製のブラジャーみたいで、屈んだりすると隙間ができてえらいことになるぞ!

 

 いや、なってますぞ!

 

 彼女は紫のロングヘアーを無造作にバレッタで纏めている。瞳の色は金色で肌は抜けるように白い。上だけ見れば絶世の美女なんだが……

 

「私は生焼けの方を貰う」

 

 ゾン子ちゃんは自分が首を刎ねた狼モドキの腹に手を突っ込み食べ始めた。コラコラ、手掴みはマナー違反ですよ。

 それにモツは火を通さないと、お腹を壊すって!

 

 彼女は黒と白を基調としたゴスロリファッションで、頭に小さな帽子を載せている。ヘビ子様同様に防御力はとても低いだろう。

 黒い瞳に黒髪のボブカット。青白く不健康な肌色だが、不思議と腐敗はしていない。短いスカートにオーバーニーソックス。

 

 動きが機敏なゾンビって、物凄く不条理だよね。

 

 因みにパンチラ見放題のサービス精神が旺盛な女の子だ。大体パンツは縞パンで、青白を多用しているが他にも何種類かある。

 僕的には薄いピンクに白が良いと思う。誘うようにヒラヒラ捲れるスカートの中には、何時も女性の神秘が隠れているんだ!

 一人称が僕だし、素直クールな美少女だが死して200年物の大変貴重なゾンビ?っ子だ。

 

「私は良いや。今晩、お兄ちゃんの精気貰うから」

 

 頭上の美幼女は、この世界に飛ばされて初めて憑かれた幽霊だ。

 本来は廃墟となった城に棲み憑いていたのだが、ひょんなことから僕に鞍替えした。

 気を抜くと、足腰立たなくなるまで精気を吸いやがる危険な洋ロリだ。普段は薄く透けているが、実体化もできる。

 どこかの幼稚園の制服みたいな物を着込み、金髪をツインテールにしている。

 瞳の色がエメラルドで高貴な雰囲気を醸し出しているので、生前は貴族の娘さんだったのだろう……

 

 頭の上で捕食者が騒いでいるのを無視して、リュックからランチョンマットと食器を出して食事の準備を手伝う。

 並べたお皿にヘビ子様が粗塩と胡椒で味を調えた肉を乗せてくれる。

 

「はい、主様。沢山食べて精力を付けてくださいな」

 

 500グラムはありそうな肉の塊。だけと食べやすいように切り分けられている。

 そこにヘビ子様の愛情を感じてしまうが、肉オンリー肉だけの昼ご飯。だけど我慢できないほどの良い匂いだ。

 

「……頂きます」

 

 最初は抵抗があったモンスターの肉。しかし、この世界では当たり前の食材だ。

 一切れ口に入れて噛み締めれば、野趣溢れる味だが不味くはない。

 

 意外と旨い!

 

 猪とか熊や鹿に馬とかも食べられるんだし、モンスターは食べられないって先入観はいけないよね?

 ランチョンマットの上で、下半身ヘビな美女と向かいあって肉を食べる。

 

 隣ではダイナミックな手掴みで食事をするゾンビ美少女。

 

 頭の上でフワフワ浮く幽霊。

 

 僕が放り込まれた世界は、めっさファンタジーだった!

 

「ヘビ子様、お代わり下さい」

 

「はい。今夜も張り切るためにたくさん食べてくださいな。それとちゃんと名前で呼んでくださいね」

 

 新しい肉をお皿に乗せながら、サラリと危険なことを言ってくれましたぞ。

 

「ははははは……お手柔らかにお願いします」

 

 ゾン子ちゃんもヘビ子様も普通の食事で栄養補給ができるが、効率が良いのは人間の精気らしい。

 そして僕の精気は、この世界では有り得ない濃度らしいが……ツンデ霊子は精気のみで体を維持している。

 実体を常に持たない彼女には、飲食は無理らしい。

 

 因みにヘビ子様の精気を吸う方法は、体を巻き付けてのキス。

 ゾン子ちゃんは、ハグしながら体のどこかを甘噛みだ。

 

 二人共、ワザとなのかスキンシップしまくりの食事方法だが、それだけだ。それ以上には進展しない。

 多分、その先に進むと取り殺されるくらいに精気を吸われてしまうのだろう……だから一歩手前で我慢してくれているんだ。

 

 その心遣いは大変嬉しいが、問題はソコじゃない!

 

 因みにツンデ霊子は……僕の肩車しながら頭をポカポカ叩いたり、髪の毛を引っ張ったりすると補給できるそうだ。

 なんの旨味も無い方法で、僕の精気を毟り取る洋ロリめ!上の二人を少しは見習えよ。

 

 でもヘビ子様のキスは情熱的で嬉しいが、感極まると締め付けがえらいことになるので程々でしか楽しめない。

 ゾン子ちゃんのハグも同様に、興が乗ってくるとマジ噛みになるので喰い千切られそうになるんだ。

 

 エロも命懸けだが、寸止めなんで笑えない。

 

 こんなファンタジーな世界でも、人間は簡単に死ぬし怪我の治りも悪い。

 体力を回復したり傷を癒やしたりする魔法もあるが、間に合わないときはアッサリ死ぬからね。

 狼モドキの肉を咀嚼しながら、この世界に飛ばされたばかりの頃を思い出す。

 あれから6ヶ月ほど過ぎたが、全く帰れる手段も方法も手掛かりさえも分からない。

 

 日々、彼女達とハンターモドキな生活の日々。

 

 黄昏から戻ってみれば、彼女たちが狼モドキの牙を抜いていた。

 このファンタジーな世界では、モンスターを倒してもお金もアイテムも落とさない。全て現地調達だ!

 だから動物系なら牙や毛皮を剥ぎ、人型なら装備品を頂く。人間の盗賊も同じ扱いだ。襲ってきたら倒す。

 

 倒したら装備品・所持品を根こそぎ奪う。

 

 たまにショボいヤツが大金を持ってたりするのが楽しい。

 逆に苦労して倒しても、ボロボロにすると買取が安くなり美味しくない。この辺が妙にリアルな設定だ。

 

 僕は、この世界をゲームの中に取り込まれたんじゃないかと思っている。

 もしかしたら夢なのかもしれない……しかし夢にしては体感時間が長すぎる。

 幾ら何でも半年以上の日常を体験するには一晩の夢では不可能だ。

 

 仮に、仮に最悪の場合。

 

 本体が怪我か病気で植物人間みたく寝たきりってことも考えられるが……それならば余計に意識が戻る確率は低いだろう。

 半年も寝たきりの病人が回復するとも限らない。仮に回復はしたが、重大な後遺症が残るやもしれない。

 どちらにしても、この世界には魔物は居るが魔王は居ない。貴族や王様は居るが勇者は居ない。

 

 温いロープレな世界観。

 

 神の視点で分かる自分や他の連中のステータス。だけど死ぬことは簡単な世界……

 ゲームの死亡はリセット可能だが、それを確かめる勇気も無い自分。

 

「お兄ちゃん、ボケっとしない。ほら、早く片付けて移動するヨ!」

 

「主様。あと何匹か狩ったら帰りましょう。大分換金が楽しみですわ」

 

 彼女の持つリュックの中身は、倒したモンスターの体の一部が詰まっている。換金すれば、一月は働かなくても大丈夫な金額になるだろう。

 

「分かった分かった。さて、出発しようか」

 

 ランチョンマットから立ち上がり、お尻を叩いて埃を落とす。

 食器類は既にヘビ子様が片付けているので、あとはランチョンマットを畳むだけで出発だ。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。