聖櫻学園記   作:ササキ=サン

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いやー昨日は更新できませんでした〜。

すいません、マイヒーローのラストスパートをかけていたんです。炭酸使い切りました。


第五話 村上文緒

「なるほどなるほど、そんなからくりがあったんですね。ほんとびっくりびっくりです。」

 

ハロー、前回少し取り乱した綻です。いやまあ、美少女に矢が刺さるなんてショッキングな光景を見たら誰だって少しは慌てると思うので、前回のはなかったことにして欲しい。なにはともあれ、現在俺はガールズカードについての説明を図書委員らしき人物から受けていた。

 

曰く、ガールズカードとは主にキューピットの放つ矢によって作られる女の子のイラストが描かれた不思議なカードらしい。カードには攻援力と守援力があり、他のカードをエールと呼ばれる行為で消費する代わりにレベルを上げ、攻援力と守援力を上げることができるらしい。

 

また、同じカード二枚を進展と呼ばれることをすることで、レア度が上がったりカードの攻援力と守援力のステータスを一部受け継ぐことができたり等のこともできるらしい。

 

ここまで聞いて思った俺の感想は、

 

ソーシャルカードゲームかっ!!

 

だ。

 

ついでにだが、ソーシャルカードゲームというジャンルのゲームは、あまり俺は好きではない。理由は結構あるが、何よりも大きな理由としては課金をしないとランキング一位等になれないことだ。

 

FPS系のゲームや格ゲー、アクション、ボード系のゲームは実力次第でランキング一位にわりかし楽に上り詰めれるが、ソーシャルカードゲームは無課金でイベントのランキング一位とかは無理ゲーだ。

 

いや、本当に無理。課金して最大効率でイベントを巡ってもたまにランキング一位が危うくなる時があるんだ、ソーシャルカードゲームはガチ目の鬼畜ゲーだ。

 

しかもだいたいあれは年中無休でイベントやり続けるから、ランキング一位を維持するのにどれだけこちらが労力を割いてるか分かってるのか?授業中だって黒板見ながらノールックで進めてるんだぞ。こっちの身にもなれ。

 

とまあ、どうでもいい愚痴は置いとくとして、俺はこのカードの説明を受けて、この学園はどこかのゲームなのではないか説を提唱したいと思っている。

 

いや、ふざけてるわけじゃない。無駄にカラフルな毛髪、顔面偏差値、謎の不審者、珍生物、ガールズカードと、それっぽい要素がいくつも並ぶと、ゲーマーな俺としてはついつい冗談でもそういうことを疑ってしまうわけなのだ。

 

「いやー、それじゃあ貴方も大変ですね、年がら年中あの不気味なキューピットに矢で射られているんですから。男子はまだしもこの学園の女子はみんな大変そうですね。」

 

「はい、初めて矢で射られた時はとても、びっくりしましたけど、今では少し慣れつつありますね。あまり、良い慣れとは言えそうにないですけど。」

 

「なるほど、人間住めば都、どんなことでもそれが日常になれば案外非常識でも慣れてしまうんですね。いや怖い、少女に矢が突き刺さるのが常識な学校ってどういうことだこれ。」

 

後半は完全に独り言だ。

 

「あははは.......そういえば貴方のお名前はなんていうんですか?私は三年の図書委員会所属の村上 文緒です。」

 

「おや、先輩さんでしたか。これはご丁寧にどうも。私はYESロリータNOタッチの会会長こと保育園の守護者と最近名高い綻 東です。冗談ですのでよろしくお願いします。」

 

少し引きつった顔をし始める村上さんを見て早めに冗談宣告をして自己紹介をしてしまう。うーん、あまり冗談が通じそうな人ではなさそうだな。

 

「..........冗談ですか.........びっくりしました。」

 

「ええ、冗談ですよ?私は冗談と幼女をこよなく愛する男ですので、大半の言葉はスルーしてくださいね。」

 

「................」

 

「................」

 

「................」

 

「................冗談ですよ?」

 

「................はい。」

 

これがゲームなら、この先輩の好感度が下がる音が盛大に鳴り響いてる気がする。まあ、気にしない気にしない。それはそれである意味こちらの望むことなのだ。今さら誰かに嫌われようが、傷つくような繊細なメンタルは持ち合わせていない。つまり、今の俺超余裕。ちょ、ちょちょちょちょ超余裕なのだ。

 

まあ、常にあまり表情を変えないで、若干死んだ魚みたいな目して言葉を発すればあまり冗談には聞こえない。割とこれはガチで自分からやってることなので、なんだかんだ言っても普通に俺は動揺していない。

 

「...........綻さん。」

 

「はい、何でしょう?」

 

「本は、本は.........好きですか?」

 

そう聞いた村上先輩の瞳はまっすぐに俺を見抜いていた。俺を見極めようとする素直な瞳だ。いや、うん。この学園良い人多過ぎない?あれだけやらかしたのに櫻井とかは割と普通に話しかけきやがるし、村上さんにいたってはしっかりロリコンアピールしているのにも関わらず、しっかりと俺の本質を見ようとしてくる。うん、ええ人や〜。煩わしいと思ってる自分が本当に申し訳ない。

 

「ええ、好きですよ。ライトノベルが個人的に一番好きですけど、それ以外の本も普通に大好きですね。ここの図書室はあまり他には置いてないような文学の本とか、論文とかまあその他色々があったので、貸し出しカードができたらすぐ借りたいと思ってますよ。」

 

ここは本音。適当に冗談ではぐらかして完全に失望させるのも良かったが、なんとなくまあ........少しだけ、誠意に答えてやろうと思った。

 

「そうですか.........。」

 

その言葉とともに、村上さんは笑った。とても美しくて眩しい、花開くような笑顔だ。

 

いやー、この学園の人は笑顔が素敵だな。うん、笑顔の練習の時間でもあるのだろうか。素直で、美しく、自分の心を隠さない純粋な笑顔を見せてきやがる。

 

だけど、それが眩しくて、眩しくて、色々あった俺には目が潰れてしまいそうな眩しくて尊いものに見えるから、

 

 

 

 

村上先輩も、近寄らないで欲しいな........と思った。

 

 

 

 

 

いや、別に向こうから人が寄ってくるほど俺はモテモテ少年でも主人公でもなんでもないけど、やっぱり人の側は落ち着かない。みんな優しそうだからな。櫻井も村上先輩も、泣いている子がいたら手を差し伸べずにはいられない質の人っぽいし。

 

気をつけよう。あまり人にほだされないようにしなくては。

 

俺は、一人で生きるんだから。

 





この主人公、敬語と平常の言葉の入れ替えがしっかりできるタイプのひとなので、先輩相手だと誰だこいつ!ってなる時もありますが、安心してください。

主人公は主人公です。

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