八月になった。まじ、念願の八月です。
なぜかって?みなさんは覚えているだろうか、聖櫻学園には月初めに不審者が大量に湧くことを。
察したか?察したよな。待望のサンドバッグ祭りです。
この学園に来てから増える女の子の知り合いと、比例して増える俺のストレス。もう俺は限界だ、ここらでちょっとはっちゃけさせてもらうぞ。
俺は自重をやめるぞ、ジョジョーッッ!!って気分で暴れます。
レッツゴー。
屋根を蹴ったりして、音速よりちょっと遅い程度の早さで空を跳ぶ。目標を見つけ次第その勢いに乗ったまま裏拳や回し蹴りを放ち、悪落武者とかいうふざけた奴らをぶっ飛ばしていく。
サーチアンドデストロイ。見つけ、ぶっ飛ばし、見つけ、ぶっ飛ばす。足を止めることなく常に動かし、学園周辺の悪落武者を殲滅する勢いでキルしまくる。
途中、知り合いと何度もすれ違った。目があった次の瞬間には再び跳躍するので会話はなかったが。
「おっ、そこそこ硬くなってきたか」
超レア悪落武者 LV.500
やっと俺の一撃に耐える輩が現れた。
「ふふん、そうこなくっちゃ面白くない」
音も置き去りにして放たれた第二撃は超レア悪落武者の鳩尾に突き刺さり、相手をノックアウトさせた。
「ふぅーむ、LV.500でツーパンか。まだまだつまんねぇな」
再び俺は狩りを再開する。まだまだ溜まったストレスがたくさんあるんだ、今日はとことん狩らせてもらうぞ。
数十分後、
超レア悪落武者 LV.9999
「はははははははははは!!!!楽しいなぁっっ!!!!」
ラッシュ、滅茶苦茶ラッシュ。秒間に1000発以上の拳撃を叩き込みまくる。
威力は全然本気を出していないが、そこそこのスピードで殴りまくる俺。やばいっ、超楽しいわー。
肘鉄で強打し相手をぶっ飛ばして、それとほぼ同時に後ろに回り込んで上に蹴り上げる。跳躍してあとを追って勢いのままに拳を数千打叩き込み、踵落としで下に蹴り下げ、弾丸より速くぶっ飛んでいく相手を地面に着弾する前に回り込んで昇竜拳で打ち上げる。
さらにホーミング性能を持った気弾を乱射して追撃。最後に瞬間移動で後ろに回り込んで裏拳の如き手刀で相手の体を真っ二つ。そのまんま残骸を気功波で消し飛ばしてはい終わり。
ふぅ、Z戦士に勝るとも劣らない怒涛の攻撃だったぜ。俺まじスーパーサイヤ人。ついでに今の戦闘が分かりづらかった人のために擬音で表現すると、ズガンッッ!シュキン、ドガンッッ!シュキン、ズガガガガ×3000ドゴンッッ!シュキンズドッ、ドドドドドドドドドドドド!!!!シュキン、スパッ、キィィィ カッ シュワッ......
って感じだ。ごめん、もっと分かりづらかった。とりあえずドラゴンボールみたいなものだと考えてくれ。
「ふぅ、体が温まってきたぜ」
久々の運動に身体が喜んでる。えっ、学校でやったスポーツとか?あんなの俺の全力からしたらハイハイ未満だ。むしろ指先を動かすのと同レベルの低運動。まあ、魔力とか気を使わなければそこそこの運動にはなるんだがな。
この調子で次にいってみよー。
「おっ、綻くんだ。こんにちわー!」
「おや、櫻井か。こんにちわ」
休憩がてらにコンビニでガ○ガ○くんを食べていると、櫻井と会った。
「そういえばトムくんが綻くんのことを探していたよ?何かあったの?」
「いや、そもそもトムくんって誰だよ」
なに?ネコなの?ネズミと仲良く喧嘩すんの?
「えーっと、今までランキング一位だった人らしいよ?」
「ああ、あいつか.......」
あれな、前にフルボッコしたイケメソな。おk、把握。
「ふふ、覚えていてくれて嬉しいよ」
「うわぁ!?急に出てこないでよトムくん......」
にゅっ、と現れるイケメソ。櫻井は気づいていなかったようだが俺は気づいていたぞ。さっきあいつか、って見ながら喋ってたし。
「やぁ、ポイントを見たよ綻くん。もう既に表記が不可能なほど稼いでいるらしいじゃないか」
「おう、サンドバッグとしてさっきまで殴りまくってたからな」
その気になればどれもワンパンできたけど、流石にそれは面白くない。
「ふぅん、そうか。それじゃあ綻くん、試しに君が一体悪落武者を倒すところを見せてくれないかい?少し君の戦い方には興味があるんだ」
や、お前は不正をしてないか疑ってるだけだろ。
そう思ったけど、さすがに口で言ったりはしない。
「綻くんが戦ってるとこ!?私見てみたいよ!」
「うーむ、めんどくさいけど丁度いいからよしとするか」
よっこらしょっと。腰を上げ、視線を向けた先にはレア悪落武者がいた。
レア悪落武者 LV.9999
「なっ.......!?そんな馬鹿なっ!」
イケメソが序盤で大魔王に会ったような顔をした。いや、そんな驚くことか?これ。
「ふぅ、まあ良く見とけよ」
一般人にも見える程度の早さで、こいつを倒す。こいつらに俺の実力の一端を見せるにはいい機会だろう。そしてきっと櫻井は俺から離れていく。それがテンプレだからな。あっ、バースデーカードとケーキとプレゼントをあげなきゃ。それは誕プレな。
距離を詰める。歩法に特に名前はつけていない。ただ普通の人が今の俺を見たら、残像が無数に残っているように見えるだろう。名付けるなら幻惑瞬歩かな?
先制の腹部への掌打。からの流れるように回転して肘鉄、発展して拳打、裏拳、ジャブ、ストレート、フック、回し蹴り、アッパー。
浮かび上がった相手の肉体に八卦を六十四掌叩き込む。
そして止めの足刀。流麗に描かれた脚撃の軌跡はレア悪落武者の首を真っ二つに切り裂いた。
おおよそ武術を極め、その極みの壁を超え、物理法則や概念すらも超越した俺の武術の一端。常人には発想すら浮かばない理解不能な超越技法。自分でいうのもなんだが、まあ、俺ってば超最強?
ころんころんとレア悪落武者の首が転がり、レア悪落武者の遺体(?)はすぅーと空に溶けて消える。
「はい、終わり」
息を乱すことなくいつも通りの様子で終わらせた俺。くぅー、最高にクールだと思わんかね?
二人の様子を見てみると、なんだか茫然としている。おー、この表情懐かしいな。
ズキツ、頭が痛んだ
そういえば前世だとこうやって武術の技を見せたっけ、親に化物って言われたっけな。いやー、化物だと思った相手を素直に化物って言えるって、中々度胸があると思うんだよ。ははははははは。
ズキツ、頭が痛い
まあ、これでとりあえず櫻井とはおさらばかな。明らかに人智を超えた理外の拳法を見せたからな。大丈夫、痛くも痒くもない。これで少しは俺の周りも静かになるかな?それはいいね。Facebookでいいねをあげるレベル。ツイッターならお気に入りした後にリツイートする感じ。
ズキツ、ズキツ、痛い、痛い
ああ、櫻井が今感じている恐怖をみんなに伝えてくれれば、もっと俺の生活は楽になるかもな。いいぞ櫻井、今のお前が抱く俺への恐怖で、俺の社会的評価を消し去ってしまえー!ははははは、まじウケるwwww
ズキツ、心が、痛い
「す、すすすすすすっごいよ綻くん!!!あんなにすっごい闘い、初めて見たよッッ!!」
ーーーーーーえ?
「うん、僕もあんなに美しい武術は初めてみたよ!すごい、感動したよ!綻くん!」
「ははははは、そうだろそうだろ。武術は俺の超得意分野だからな」
「うん、本当に凄かったよ!!何だかもう、涙が止まらないよ」
そういう櫻井はなぜか興奮のあまり笑いながら泣いていた。
「あんなに凄い武術があるなんて夢にも思わなかったよ!今度できれば僕に武術を教えてくれないか?いや、教えてください!」
いや、めんどいよ。
「はははは、俺は休憩も終わったしこの後も悪落武者殴りにいくからここでさらばだな。じゃあな」
「えっ、あっ、綻くん!?」
振り向きもせず、その場から跳躍して去る。屋根を何度も蹴って飛び上がり、風を切り大空を舞う。
ははははは、なんだよあれ。櫻井滅茶苦茶興奮してたじゃん。すごいすごいって、馬鹿みたいに連呼して。ついでにイケメソもなんか色々と言ってたし、前の世界の奴らと全然リアクションがちげぇっつーの。
笑えるー、前の世界で化物って散々罵られた武術が櫻井たちの感涙を頂戴するとか。ははははは、これがワールドギャップってやつかぁ?
ははははは、あら、前が見えないな?おいおい、俺の視力は10の10乗以上だぞ?本当におっかしいなぁ。
なんとなく、適当に誰も人目のつかなさそうな路地裏に着地し、なんとなく、膝を抱えて座り込む。
ポタ。
あれ?今日って雨だっけ?思いっきり天気は晴れてるのにな。
ポタ、ポタ。
うーん、あれか?これが噂のお天気雨って奴か?はははは、珍しいな。
ポタポタ、ポタ。
ははは、中々激しいな。今日はお天気ゲリラ豪雨なのか?
ポタポタポタ
あれぇー?
ポタポタポタポタ
あれぇー?
ポタポタポタポタポタポタ
あれぇー?
あれ、あれぇー?
あっ、あれぇえーっ..........?
あっ、あれぇー?
ものごっつシリアルじゃないか。
ここからは俺のターンだ(シリアス)