聖櫻学園記   作:ササキ=サン

32 / 43

完全に椎名心実ちゃんの回。

意外と長い。


第三十話 椎名さんのターン?

休憩中なう。

 

海水浴場から少し離れた場所にある灯台の下で俺はぼーっとしていた。

 

櫻井たちとは休むと言って離れた。ここで考えて欲しいのは櫻井たちという表現だ。櫻井とモノクロームちゃんなら、わざわざ櫻井たちと表現するだろうか?いやしない。つまり、櫻井は海にきた知り合いたちと合流し、より大きなグループとなったのだ。俺も知ってる人が何人かいた気がする。

 

ふと、砂浜の方を見れば若い男女がたくさんいた。男女比はどちらかというと女の方が多い。というか大半の人が学園の生徒っぽい。

 

櫻井曰く、今日は学園の色々な人がこのビーチに来ているらしい。みんなで集まれば楽しいよ!の理論で海に来る人が加速的に増えたと櫻井が言っていた。

 

モノクロームちゃんが持ってきてくれていた携帯を見ると、ラインのアイコンの上に出ている数字が200以上だった。開いてみてみるとクラスラインで今日の予定が会話されていた。リア充盛ってんな。爆発しろ。

 

そもそもラインは元々やっていなかったんだが、櫻井のお願い(がくがく、ぶるぶる)でインストールしたのらー。

 

ふぁーあ、夏の温かい日差しを浴びていると無性に眠くなってくる。本当に最近眠いですね。前もこんな時期があったけど、何、周期性なの?この眠気。

 

ぼんやりとゆらゆら動く海を眺め、泳いでる魚の名前当てクイズを脳内で実行する。はっ、あれはオジサンですね。いや、オジサンこんな浅瀬にいねぇよ。いないはず、ようわからん。

 

うつらうつら、だんだん脳裏で羊をカウントし始め、意識に霞がかかったようにフェードアウトしていく。

 

ほころび は えいえんのねむり についた!いやこえよ。冗談だよ。

 

まあ、悪くはないんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綻くん、起きてください、綻くん」

 

「ふむ、なんだね」

 

起きて、目を開けたらそこには谷間がありました。おう、谷間だ。水着で保護された、肌色の谷間です。ついでだが、俺は寝ぼけることなんてない。よぼど精神にダメージを負わない限り、そんなことはない。

 

だから貴様ら、デレない系主人公によくある寝起きのなんちゃらら、ギャップかわいい!とか、ぼそりと何かを呟いてはっ、この人は一体どんな過去があったんだ!という展開はないと思え!ふふん、俺はさいきょーにくーるなないすがいだから、誰かに靡くなんてないのだ。師匠は八幡先生。ぼっち街道を俺は突っ走ります。

 

さて、で、なんでこんなところにしいなんちゃららさんがいるのかね?

 

「あれ?起きていたんですか?明音ちゃんが探してましたよ、そろそろお昼ご飯を食べようって」

 

「あっ、そうですか。わかりました」

 

敬語なことに他意はない。別に全然水着姿の女子に動揺したりなんてしていない。

 

「ふふ、おかしな口調ですね、何かあったんですか?」

 

「いえ、べつににゃんでもないですよ」

 

ど、動揺なんてしてない。

 

「にゃんでもですか?」

 

「そうだにゃー」

 

猫の真似だにゃー。別に全然噛んでなんかない。ないったらないんだい。

 

灯台に寄りかかって寝ていたので、それに視線を合わせるようにしいなんちゃららこと椎名心実はしゃがんで、俺の顔を覗き込むように見ている。あれだ、これはあれ。うん、先に視線を逸らしたらダメな奴。

 

俺は客観的にしいなんちゃららと見つめ合いながら、いう。

 

「あー、眠いからこのまんま寝ているって櫻井に伝えてくれないか?特に腹も減ってないしな」

 

ふぁーあとあくびをして、俺は眠いアピールをする。あっ、ちゃっかり視線を切ってしまった。というかなんでこんな見てくるの?視線戻したらまた普通に目が合っちゃうよ?

 

「いえ、ダメですよ綻くん。明音ちゃんから朝食を食べてなかったと聞いています。そんな食生活では夏バテを起こしてしまいます!」

 

「あー、うん。確かにそうではあるんだが......」

 

「ほら、行きましょう綻さん!みんな待ってますよ」

 

しいなんちゃららに手を引かれ、強制的にスタンドアップしてからレッツランチされる。しいなんちゃららの手柔らかいなぐふふふふふふふ。と思えれば幸せかもしれないが、現実でぐふふふふふと色めきだつのは鳥肌だけだった。そういえばランチってLを抜くとウンチェだよな。

 

つまりマリオとルイージとピーチが昼食を食べているところで、マリオが(恋敵的な意味で)こいつ邪魔だーとルイージを追い払ってしまったら食べてた昼食はウンチェになってしまったんだな。いや、どうでもよろし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食後、俺は海の家のテーブルでへばっていた。

 

「ふふ、お疲れなようですね、綻くん」

 

「おう、とっても疲れたぜ」

 

言外に連れてきたお前のせいだぞと恨めしげにしいなんちゃららを見る。今の俺に言えることがあるなら一言、櫻井友達大杉。なんなのあの量、紹介された人だけで顔見知りが10人くらい増えたよ?しかももれなく全員美少女&良い人っていう追加攻撃付き。一人一人紹介された時は何?バーサーカーソウルなの?まだいるの?まだ終わらないの?って気分になった。もうやめてくれ。

 

「あら、こんな真夏の日なのに鳥肌ですか?」

 

「ふふん、俺は幽霊より生きている人間の方が怖い派だからな。俺からしたら周囲に怪談が溢れていてエアコンいらずだぜ」

 

ギャグっぼく言ってるけど割と本音。生きてる人間って怖いぜ?本当にね、もう何度そいつらにトラウマを植え付けられたことか。人類の熱心な植林活動のおかげで俺の心はトラウマの森だらけですよー。

 

「そうですか.......対人恐怖症、明音ちゃんが言ってた通りですね」

 

「ん?」

 

ぼそっと聞こえた一言。おいまて櫻井、お前裏でなにやってやがる。

 

「何でもないですよ。行きましょう、まだまだ遊べる時間はたくさんありますよ」

 

「えっ、おいちょ」

 

腕を取られた。あー、腕に胸が当たってます。おおー柔らかい、一般的にはとても幸せな感覚だ。しかも水着だからほぼダイレクトアタック。うぉー!おっぱいだぁー!!おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい!!ちーちちっちっちっおっぱーあい!ぼいんぼいん!

 

「あれ、大丈夫ですか綻さん?元気がありませんよ?」

 

「大丈夫だ、問題ない(キリッ」

 

ごめん、できれば吐きたい。気持ち悪い、嫌悪感と恐怖感が最高のトッピングをしてダブルのサーティーワンなアイスをお見舞いしてくる。顔色を人為的に操り、表情を常に無表情に固定していなかったら今頃すごい相手に失礼な顔をしていただろう。必死に誤魔化してみたけどやっぱダメだった。

 

フッ

 

「?」

 

腕を取った状態を抜け出し、その違和感を一切相手に与えない武術の技を使った。

 

「さて、行こうか」

 

「......?そうですね、みんなも綻くんのことをもっと知りたがっていましたし、思いっきり遊びましょう!」

 

何それ怖い。俺には理由もなく好かれる要素はないはずだぞ。せいぜい容姿が女性よりで、身長が何気に櫻井よりちょっと低いって程度だ。えっ、男の娘?バカを言うな。前世から継承している由緒正しい(?)容姿だぞ。これでも前の世界では人修羅とか化物とか人の形をした災厄とか天災とか色々言われてたんだ、男の娘なんて可愛らしい言葉でラベリングすんな。

 

そもそもちょっと考えてみよう。さっきからしいなんちゃららに振り回されてばっかで、俺がカップリングでいう受けみたいな位置になっている。それはよくない、実によくない。

 

だから、衝撃発言をしよう。

 

「一つ忠告をしよう、椎名さんよ。水難の相が出てるから気をつけろよ」

 

これはガチ。気をつけてね?

 

「ふふふふ、分かりました、気をつけますね。それより綻さん、椎名なんて他人行儀な呼び方ではなくて、心実と読んでくれませんか?」

 

流されたorz

 

 

あっ、このあと頑張ったおかげでなんとか名前の呼び方は椎名さんで継続になった。ふふふ、俺の交渉術SUGEEEEEEEEEE!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然でした。

 

水面が胸元程度の場所で遊んでいる時、唐突に起きた大きな波。

 

「わっ、きゃ!」

 

私は抵抗することも出来ずに波に呑まれました。

 

(く、苦しい)

 

波に流され、急に足がつかないところに流されたせいで私はパニックに陥りました。潜る用意ができていなかったので、額にかけていたゴーグルもつけてはいません。

 

必死で手足を動かして水面を目指すも、水中の中では正しく水面を目指しているのか良くわかりません。前後左右全ての感覚が曖昧で、ただ苦しくて必死に手足を動かしました。

 

がぽっ、ごぽっ。口から空気がこぼれます。

 

(助けて......)

 

ふと、体を力強い何かに掴まれました。それだけでなぜかあれだけ混乱していたパニックは収まり、苦しかった息は急に楽になります。

 

次の瞬間水の感覚がなくなり、私は空気に晒されます。

 

「ふう、だから気をつけろといったのに」

 

そう言って眠たそうにあくびをした彼に、なぜか心臓が強く高鳴りました。

 

 

 

 

回想を終えたバスの中、夕日が沈む夕暮れ。私の席の向かいで私を助けてくれた綻くんはすやすやと無表情で眠っていました。それを見ると胸がほわほわと暖かい気持ちで満たされますが、その隣で綻くんに寄りかかりながら寝る明音ちゃんや、珍しく外出した木乃子ちゃんが綻くんの膝枕で寝ているのを見ると胸に良くない気持ちが湧いてきます。

 

.......もしかしてこの気持ちは。

 

私は頭をぶんぶんと振ってまさかと否定します。会ってまだまだ三ヶ月です、こういった気持ちはもっとゆっくり育んでいくものではないのでしょうか。

 

太陽は沈んでいるのに、まだまだ暑い時間は続くようです。頬に当たる夕日がとても暑い。

 

 

それが夕日の暑いではなくーーの熱いだと気づくのは、少し先の話です。





夏、ダルい、思考が冴えない。

作者は今年から夏より冬が好きになりました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。