聖櫻学園記   作:ササキ=サン

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くぁー、眠い


第二十六話 キノコノコノコ、ゴハンデスヨ

ピコピコ、ピコピコ。

 

無駄にレトロなゲーム音。今時こんな音しねーよとツッコミたいが、現在ファミコンのマリオをやっているのであながち間違ってもいない。

 

ゴールした、クリアーでござる。ぶふぉっ、クッパとかマジ余裕wwwww。

 

カチ、ストップウォッチの止まる音。

 

「おいまじかよ、こいつ初回プレイで世界記録より早いタイムをたたき出してるぞ.....!えぇい、こいつのゲーム力は化け物かっ!」

 

俺の隣りで騒いでるのは姫島木乃子。名前の呼びがキノコで、親の悪意をひしひしと感じるネーミングだ。いや、もしかしたら親が大のキノコ好きなだけなのかもしれないが。

 

薄い紫の髪をツインテールにした若干癖毛な少女。世間一般的な美的感覚と照らし合わせればこいつは十分な美少女だろう。そんな女の子がこの部屋でシャツとハーフパンツでゴロゴロしているこの状況、多分健全な高校生なら普通にビーストっていただろう。俺の自制心が最強すぐるwwと思ったが、性的な興味なんかない俺には自制なんて必要なかった。

 

「さて、キノコよ。お前いつまでここにいるんだ」

 

あくびをしながら、問う。既に時計は夜の十一時を回った。良い子はねんねの時間である。

 

「ん〜、部屋行くのめんど。ここ泊まっていいか」

 

「俺がくつろげねーだろ馬鹿野郎、却下だ」

 

「えぇ〜」

 

ただでさえ最近二日に1〜2回のペースでキノコ襲来しているのに、これ以上一人の時間を減らされてたまるか。それに一回でも泊まらせてみろ、多分そうなったらこいつのことだからいつも泊まることになりそうだ。

 

「ぶっちゃけてここは居心地良いからずっといたいんだけどな」

 

チラッ、俺を見て述べたキノコ。なんだそれ、男子を限りなく勘違いさせそうなセリフじゃないか。何お前、俺のこと好きなの(笑)?

 

まあでも、よくよく考えてみると一番趣味が合うのは多分こいつだろう。色々な枷が無ければ、こいつとは一番の友達になれたかもしれない。この前、櫻井に何故かキノコちゃんだけ名前呼びだよね〜的なことを言われた。特に他意はないんだけどな。たまたまキノコが面白い名前だったからからかい気分で呼んでるだけだし。

 

「まあ...つまり...その...なんだ...座敷童みたいなもんだと思って、その...一生可愛がってみるというのは...どうかな.......?」

 

ーーーーーーーーー

 

「........はははは、何をおっしゃいますかキノコさん」

 

まてぇーい、告白か?告白なのか?えっ、頭大丈夫かこのキノコ?え、え?ちょっと待て。

 

思考冷却、ちょっとクールになろう。よし、命題、このキノコは俺のことが好きなのかどうか。

 

なんというか人が自分を好きなのかどうか考えるのは自意識過剰みたいで嫌だな。おこがましいというか何というか。かといってそこで思考を止めればあのキモい「えっ、なんだって?」野郎みたいになってしまうのも嫌だ。鈍感は大罪だと思います。by.俺

 

「んー、わたしゃ綻のことが大分気に入ってるんだぜ」

 

「おお、そうか」

 

まあ、廊下ですれ違った時点で(趣味的な意味で)同族だと一目で分かったからな。人の中じゃ多分一番一緒にいて楽しいやつなんじゃないだろうか。

 

「でも悪いな。俺は人が苦手なんだよ」

 

はぐらかすことなんていくらでもできた。だけど、それは多分俺の嫌った欺瞞だ。そうですよね、ヒキガヤ先生。だから嫌いでも、怖くても、誠意を見せなくちゃいけない。それができないなら、俺はただの下衆野郎だ。

 

「そっか」

 

数秒の見つめ合いの末、キノコは笑った。そこで笑えることが、なんとなく凄いと思う。

 

「やっと見れた気がするよ、お前の本音」

 

そうなのかー?俺はいつでも自分に正直に生きてたんだけどな。まあ、自分に正直だから他人に嘘をつくんですねー!

 

「とりあえず今日は帰るぜ」

 

キノコは立ち上がり、歩いて玄関の扉を開けた。

 

「また明日」

 

ガチャン、扉が閉まった。

 

「.....はあー」

 

ため息をついた。また明日、か。

 

眠い、眠い。とっても素敵な思考放棄の誘惑。俺は抗う理由もなく、それに意識を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢の中。

 

ここは無意識の世界。余計なしがらみがなく、昔の純粋な思いが残されている。

 

『櫻井もキノコも大好きだよ、だって僕のことを好きでいてくれてるもん!』

 

「そっか」

 

『この学園の人もみんな大好きだよ!心が綺麗でポカポカして、とっても良い人ばかりだもん!きっとお話したらみんなお友達になってくるよ!』

 

「うん、多分そうだね」

 

確かにそうだ。俺からしたら魔力などの力を持たない一般人の思考を読むのも、心を見るのも、朝飯前のことだからそれがよく分かる。まあ、意識的にはそんなことはしていないんだが。

 

「でもさ、だから裏切られたら辛いよ。今までよりもっともっと辛い」

 

『そうなの?』

 

「うん、きっとそうだよ」

 

だから、期待なんてしないよ。辛いのはもう、こりごりだから。





鬱だな、綻。

書いてて思う。なんでこの主人公こんな鬱なん?

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