聖櫻学園記   作:ササキ=サン

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神楽坂さん出すはずがまさかまさかの櫻井さん回。

やばい、フラグが立った。


第十話 櫻井明音

ガラガラ

 

「む、遅いぞ、えーっとなんだっけな、綻だったかな。」

 

「はい、綻であってますよ先生。」

 

科学室に遅れて到着する俺。周りのクラスメートはそこそこ驚いた顔をしており、櫻井に至ってはけっこう怒ってそうな雰囲気を出していた。

 

「あ〜、一応聞いとくがなんで遅れたんだ。」

 

ふむ、この先生からは俺と同類の素質を感じるな。第一にこの人目がめっちゃ死んでる。

 

「ちょっと、世界を救ってきました.......。」

 

.............。

 

..............。

 

何か含みがあるような厨二臭い表情で言ったんだが、科学室は静寂で包まれた。うむ、俺への好感度が目に見えて下がるのを感じるな。

 

「冗談です、ちょいとお花を摘みに言ってたんですよ。大きい方だったんで気づいたらこんな時間でした。」

 

さらっと嘘を吐く俺。俺の言い分でさらに好感度が下がった気がするが気にしない。まあ、学校の先生への言い訳なんてこんな感じでいいだろう。みんなに先生への言い訳のコツを教えよう。信憑性が大事なんじゃない、その言い訳の合理性が大事なんだ。つまりどういうことかと言うと、どれだけ信じられるかという言い訳より、どれだけそれならありえるという言い訳をすることだ。

 

「あ〜そうか、ちゃんと時間見てからトイレに行けよ。じゃあ席つけ、教室と同じ席だ。」

 

先生も面倒なことはしたくねぇースタンスの先生なのか、俺の適当な言い訳への追求はしないようだ。うん、この先生は本当にあれだな、色々と腐ってる。

 

で、席につく。うーん、怒ってますかね?櫻井さん。

 

「.............。」

 

「.............。」

 

「.............。」

 

「.............。」

 

俺も櫻井さんも喋らず、授業は続いていく。もし、俺がハーレムとか築くラノベ主人公ならここで謝り倒して、本当に反省してますか?はい、してます。それじゃあ私のお願いを聞いてください、わかりました、ちょっとデートしましょう、えっ。みたいな展開になるかもしれないが、残念ながらここは安心安全の俺クオリティー。去る者は一切追わない主義なので、仲違い上等。さらばだ櫻井、お前は良いツッコミ役だった。

 

「綻君は........道に迷ったのかな?」

 

おや、俺の予想を裏切って櫻井は話しかけてきたようだ。

 

「まさか、俺は道が分からないことがあっても、道に迷ったことはないぞ。」

 

「..........ふーん、じゃあどうして遅れたの?」

 

「それはお花を摘みにむぐぅ.......。」

 

驚いた。俺は櫻井に頬を引っ張られた。

 

「........嘘つき........。」

 

「うそひふぃやなきゅへじょふふぁんひゅきなひゅひゃけひょな(訳.嘘つきじゃなくて冗談好きなんだけどな。)」

 

櫻井、怒ってるとは思ったけど........こういう状況でこれをやりますか。今授業中ですよ?まあ、流石に今俺が櫻井にやられてることが見られたら色々とめんどくさいことになりそうなので、武術の技を使って視線を全て逸らし、意識の死角に入り込む。

 

「まあ落ち着け櫻井、俺は色々と厄介な所用があったんだよ。それゆえの遅刻だ、別にお前の善意を踏みにじったわけじゃない。」

 

櫻井は善意で俺に科学室の案内を申し出たんだろう。だが、それを断っときながら授業に遅刻した俺は櫻井の視点からみたらどのような思いをさせたんだろう。まあ、答えは言わずとも知れている、今の櫻井の行動そのものがその答えだ。

 

でもな、腑に落ちない。俺への櫻井の好感度はそんなに高くないはず。なら、何故この程度で腹をたてるのだろうか。いやー、解せぬ。俺の勘は自分の危機や利点とかに反応しても、人の細かい心情にはあんま反応しないからな........めんでぇー。

 

「綻君はさ、なんかこう......わざと人に嫌われるような発言ばっかするよね。」

 

「はっはっはっ、違う違う。俺のセンスに時代が追いついてないんだよ。」

 

んなわけあるかい。自分で言っときながらも自分でつっこむ。いやだが何だろうこれ、とてもとてもシリアスなムードが漂ってる。

 

ずい

 

唐突にそんな効果音がつきそうなほど、櫻井が俺に顔を近づけてきた。何ようだ?こやつ。俺の動揺を誘おうってのか?はっはっはっ、無駄無駄、この俺がその程度で童謡すると思っていたのか。あっ、脳内変換間違えた。

 

「私ね、綻君が冗談とか嘘ついてる時、分かるよ?」

 

その言葉で、言外に誤魔化すなと櫻井が伝えている気がした。

 

「..............。」

 

「..............。」

 

「..............。」

 

「..............。」

 

櫻井の真摯な瞳は揺るがない。ちぇっ、分かったよ、しょうがない。少しだけ自分語りをしよう。綻 東という人間の本質を少しだけ、櫻井に知ってもらおう。

 

「櫻井.........」

 

「...............。」

 

櫻井が息を飲む音がした。距離が近いからか、こういった些細な音でも身近に聞こえる。

 

 

 

 

 

「鼻毛、出てるよ。」

 

 

 

 

静寂。

 

「冗談だけどね。」

 

「..............。」

 

「..............。」

 

「ばっ、」

 

「ば?」

 

「馬鹿あああああああああっっっっ!!!」

 

ずごっ

 

「あべしっ!」

 

櫻井の渾身のアッパーが俺の顎に炸裂する。わざとしっかりダメージを喰らったため意識が薄れるのを感じる。ああ、事後処理?気にするな、櫻井が叫んだのも特殊な技で音量を10分の1くらいまで下げたし、誰も俺達を見てなんかいない。

 

やっばりね、シリアスは俺には似合わないんだ。あんまり俺の内側に踏み入ってくんなよ、櫻井。

 

 

 

 

その後、俺と櫻井は割とギクシャクしたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ガチものの恋愛小説って疲れるんですよねー。

こう、くっついたり離れたりすれ違ったり。読んでで気分が上がったり下がったりするんで、あまり好きではないですね。

おい、ならなんでこんな話を書いたんだ、俺。作者でも不思議に思ってます。どういうことでしょうか、これ。

まあ、なんだかんだで櫻井さんはすぐにツッコミ要員に戻りますよ、多分。

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